相続関連

任意後見契約とは?制度の概要をわかりやすく解説します。

更新: 約9分で読めます
ツリーちゃんツリーちゃん

任意後見契約って、なんですか?

行政書士行政書士

ひとことで言うと、
「将来、判断が難しくなったときのために、今のうちに“頼れる人”を決めておく契約」です。

ツリーちゃんツリーちゃん

えっ、今は元気でも作れるんですか?

行政書士行政書士

はい。
元気で判断能力がある“今”だからこそ作れる制度なんです。
もしものときに備えて、自分の意思を残しておくための契約ですよ。


任意後見契約は、将来、認知症などにより判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ「支援してくれる人(任意後見人)」と「支援内容」を決めておく制度です。
元気なうちに準備できる点が特徴で、本人の意思を反映しやすい仕組みとして注目されています。(詳しくは法務省の公式サイトをご参照ください)

任意後見契約の基本

任意後見契約とは、判断能力が十分にあるうちに、将来の判断能力低下に備えて、支援者(任意後見人)と支援内容を契約で定める制度です。

ポイントは次の3点です。

・本人の意思で、任意後見人を選べる
・本人の意思で、任せる内容(財産管理・手続き等)を決められる
・契約しただけでは始まらず、一定の要件で後から発動する

任意後見は「もしもの時に備える制度」なので、元気な間は本人が従来どおり生活し、必要になった時点で支援が開始される設計になっています。

ワンポイント

任意後見契約は、高齢になってから考える制度だと誤解されがちですが、実際には判断能力が十分にある段階でしか利用できない制度です。

認知症が進行してからでは契約自体が成立しないため、「まだ元気だから大丈夫」と先送りしてしまうと、かえって選択肢を失う結果になりかねません。また、任意後見契約は締結しただけで後見が始まるものではなく、将来のために備える契約に過ぎません。この点を正しく理解し、「今の安心」ではなく「将来への備え」として位置づけることが重要です。

任意後見契約が開始するタイミングと手続きの流れ

任意後見契約は、契約した瞬間から任意後見人が動けるわけではありません。
家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任した時点で、初めて任意後見が開始します。

一般的な流れは次のとおりです。

  1. 公正証書で任意後見契約を作成
    任意後見契約は法律上、公正証書で作ることが必要です。
  2. 将来、認知症等で判断能力が低下
    医師の診断書などから、判断能力の低下が客観的に示される局面が出てきます。
  3. 家庭裁判所に申立て(任意後見監督人選任申立て)
    申立ては、本人・任意後見人予定者・親族などが行うことが多いです。
  4. 家庭裁判所が任意後見監督人を選任
    任意後見監督人は、任意後見人の業務をチェックし、必要に応じて裁判所に報告します。
  5. 任意後見開始(任意後見人が契約内容に沿って活動)

この仕組みがあることで、任意後見人が独断で動くリスクを抑え、本人保護を図っています。

ワンポイント

任意後見は、判断能力が低下したという事実だけで自動的に始まる制度ではありません。

家庭裁判所が任意後見監督人を選任して初めて、任意後見人が契約に基づく業務を開始できます。そのため、判断能力の低下が見られても、申立てがなされなければ支援が始まらないという「空白期間」が生じることがあります。実務上は、この空白を防ぐために、あらかじめ「誰が、どのタイミングで申立てを行うのか」を想定しておくことが、制度を円滑に機能させるポイントとなります。

任意後見契約における後見人になれる人・なれない人、選び方のポイント

任意後見人になれる人

任意後見人は、原則として幅広く選べます。

  • 配偶者、子、兄弟姉妹などの親族
  • 友人・知人
  • 弁護士、司法書士、行政書士などの専門職
  • 法人を任意後見人とする形もあり得ます

重要なのは「肩書」よりも、継続的に任務を遂行できる信頼性です。

任意後見人に不向きなケース(実務上の注意)

法律上の欠格事由は法定後見ほど強く列挙されませんが、実務上は次のような場合は慎重に検討します。

  • 本人の財産状況が複雑で、家族だけだと負担が大きい
  • 親族間に不仲・対立があり、後で紛争になりやすい
  • 任意後見人候補者に借金問題や浪費傾向などがある
  • 近くに住んでおらず、実務対応が難しい

選び方のポイント

  • 財産管理を任せる以上、金銭感覚と誠実性が最重要
  • 将来にわたり支援が継続するため、健康状態・居住地・時間的余裕も検討
ワンポイント

任意後見人は、親族でなければならないわけではなく、友人や専門職を選ぶことも可能です。

しかし、「家族だから安心」「長年の付き合いがあるから大丈夫」といった感情面だけで選んでしまうと、後にトラブルに発展することがあります。特に財産管理を伴う場合、他の親族から不信感を持たれやすく、紛争の火種になるケースも少なくありません。また、任意後見は短期間の制度ではなく、長期間にわたる可能性があるため、候補者の健康状態や生活環境、実務対応力といった継続性の視点も欠かせません。信頼性と実務適性を分けて考えることが、後悔しない選任につながります。

任意後見契約でできること/できないこと

任意後見の中心は、財産管理と生活支援(事務手続き)です。

できること(例)

  • 預貯金の管理、支払い(家賃・施設費・公共料金など)
  • 年金、介護保険、福祉サービス等の申請・更新
  • 医療費や介護費の支払い手続き
  • 不動産の管理(賃貸管理、修繕契約など)
  • 施設入所に関する契約(内容により検討)

※「どこまで任せるか」は契約の定め方次第です。

できないこと(典型例)

  • 結婚・離婚・養子縁組などの身分行為を本人の代わりに行う
  • 遺言を作成・変更する(遺言は本人の意思表示が必要)
  • 「医療行為そのものへの同意」など、本人の身体への直接的同意を全面的に代行すること
    (実務では、医療同意は別論点で、事前指示書等と併せた設計が検討されます)

任意後見は万能ではないため、「何を守りたいか」に合わせて契約設計することが重要です。

法定後見との違いは?

任意後見と法定後見は、どちらも判断能力低下時の支援制度ですが、性質が異なります。

最大の違い:本人の意思を反映できるか

  • 任意後見:元気なうちに、本人が後見人と支援内容を決められる
  • 法定後見:すでに判断能力が低下してから、家庭裁判所が後見人等を選任する

任意後見契約のメリット

  • 後見人を本人が選べる(家族・専門職・友人など)
  • 支援内容を本人が設計できる(必要な範囲に限定しやすい)
  • 将来の紛争予防(意思の可視化)につながりやすい

任意後見の注意点

  • 契約しただけでは発動しない(監督人選任が必要)
  • 契約内容が曖昧だと、運用で揉める可能性がある
  • 任意後見人の不正防止・透明性の確保(報告、監督、記録)が重要

法定後見の特徴(補足)

  • 裁判所主導で開始し、監督が強め
  • すでに判断能力が落ちている場合に利用される
  • 一方で、本人が後見人を自由に選べない等の制約が生じやすい

任意後見契約を検討すべきケースと、併用したい制度

任意後見を検討しやすいケース

  • 子どもがいない、親族が遠方など、将来の支援者が不安
  • 介護・施設入所・支払い関係を、揉めない形で整えておきたい
  • 事業や不動産があり、判断能力低下時の管理が心配
  • 親族間で意見が割れそうなので、本人の意思を明確化したい

併用を検討したい制度(実務上よくある設計)

任意後見は「発動までの空白」や「できない領域」があるため、次の制度と組み合わせると設計が安定します。

  • 財産管理等委任契約:元気なうちから、銀行手続きや支払いを一部任せたい場合
  • 見守り契約:定期連絡・安否確認を仕組み化したい場合
  • 遺言(公正証書遺言):死後の財産承継を確実にしたい場合
  • 死後事務委任契約:葬儀・役所手続き・解約等を誰が行うか決めたい場合

「判断能力低下への備え」と「死後の備え」は別物なので、セットで設計すると安心感が高まります。

最後に

任意後見契約は、将来の判断能力低下に備え、本人が自分の意思で支援者と支援内容を決められる制度です。
一方で、開始のために家庭裁判所の関与が必要で、できること・できないこともあります。

ご本人の状況(家族関係、資産内容、介護の見通し)に応じて、任意後見単体ではなく、関連制度の併用も含めて設計することが大切です。

弊所にて任意後見契約のサポートができる範囲

弊所では、任意後見契約の制度内容や手続きの仕組みをご説明するだけではなく、お一人お一人の状況やご希望に合わせた契約内容の設計から、公正証書の作成まで包括的にサポートいたします。
任意後見契約は、将来、認知症やご病気などで判断能力が低下したときに備えて信頼できる方に財産管理や生活の支援を任せる制度です。制度の特性上、「誰に」「何を」「どのように」任せるかを自由に設計できる反面、内容の設計や手続き方法によって将来の安心度が大きく変わってきます。

弊所のサポートは、次のようなサービスを含んでいます。

まず、丁寧なヒアリングを通じてご希望や不安をしっかり伺いながら、最適な契約内容を一緒に整理します。「将来これだけは任せたい」「これは絶対に残したい」といった具体的な想いを反映させることは、任意後見契約の安心度を高めるうえで非常に大切です。

そして、設計が決まった内容を公正証書として成立させる手続き全般を一括でお手伝いします。原案の作成、公証人との打合せ、必要書類の準備案内、日程調整など、多くの方にとって難しく感じられる部分も、専門家として丁寧に伴走します。これにより、「手続きが複雑でわからない」「時間を取れない」といった不安を軽減することができます。

また、ご希望に応じて財産管理委任契約との組み合わせ提案(移行型設計)や、将来の見守りの仕組みづくり、死後の手続きに関する契約とのセットプランなどもご案内可能です。こうした総合的な契約設計は、単独の任意後見契約だけではカバーしきれない「元気なうち〜将来〜死後」までのライフステージをつなぐ安心につながります。

弊所は全国対応で、対面が難しい方でもメール・電話・オンラインでのやり取りが可能です。相談料は何度でも無料ですので、まずはお気軽にご自身のご希望をお聞かせください。

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