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日本で働く外国人労働者は230万人を超え(厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」)、もはや外国人の社会保険手続きは多くの企業にとって避けて通れないテーマになっています。「国籍が違うと加入条件も違うのか」「帰国するときに年金はどうなるのか」といった疑問を持つ人事担当者の方も多いのではないでしょうか。結論として、外国人であっても日本人と同じ条件で社会保険に加入する義務があります。本記事では、外国人労働者の社会保険加入条件・手続きの流れ・帰国時の脱退一時金まで、入管届出済行政書士が実務上のポイントを交えて解説します。
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目次
外国人労働者にも社会保険の加入義務がある
日本の社会保険制度は、国籍を問わず日本国内で就労する者に等しく適用されます。これは健康保険法・厚生年金保険法・雇用保険法・労働者災害補償保険法のいずれにおいても同様です。「外国人だから加入しなくてよい」という例外は原則として存在しません。
社会保険とは(健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険)
社会保険は大きく「狭義の社会保険」と「労働保険」に分けられます。企業が外国人を雇用する際に関わる制度を整理すると、以下のとおりです。
| 区分 | 制度 | 主な給付内容 | 保険料の負担 |
|---|---|---|---|
| 狭義の社会保険 | 健康保険 | 医療費の自己負担軽減(原則3割)、傷病手当金、出産手当金 | 労使折半 |
| 厚生年金保険 | 老齢年金、障害年金、遺族年金 | 労使折半 | |
| 労働保険 | 雇用保険 | 失業給付(基本手当)、育児休業給付、教育訓練給付 | 労使双方(料率は異なる) |
| 労災保険 | 業務上・通勤途上の傷病に対する補償 | 全額事業主負担 |
労災保険は雇用形態や国籍に関係なく、労働者を1人でも雇用していれば事業所に適用されます。個々の労働者が「加入する・しない」を選ぶ性質のものではなく、事業所単位で自動的に適用される点を覚えておいてください。
外国人に適用される社会保険の種類
外国人労働者であっても、適用される社会保険の範囲は日本人と基本的に同じです。ただし在留資格の種類や滞在期間によって、実務上の取扱いが異なる場面があります。たとえば、厚生年金の支給要件である「10年以上の加入期間」を満たさずに帰国する外国人には脱退一時金制度(後述)が用意されています。
よくある誤解として「短期間しか日本にいないのに年金を払う意味がない」という声がありますが、厚生年金保険は法律上の強制加入制度であり、滞在予定期間の長短にかかわらず加入義務があります。帰国時の脱退一時金で保険料の一部が還付される仕組みが整備されているため、制度趣旨としても「払い損」にはならないよう配慮されています。
社会保険の加入条件|外国人特有の注意点
健康保険・厚生年金の適用基準
健康保険と厚生年金は適用事業所に使用される者が加入対象となります。法人であれば業種を問わず適用事業所となり、個人事業でも常時5人以上の従業員がいる場合は原則として適用されます。
パートタイムやアルバイトの外国人についても、以下の2つの基準のいずれかを満たせば加入対象です。
- 4分の3基準: 1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事する正社員の4分の3以上
- 短時間労働者の適用拡大: 従業員51人以上の企業で、(1)週の所定労働時間が20時間以上、(2)月額賃金が8.8万円以上、(3)2か月を超える雇用の見込みがある、(4)学生でないこと — の4要件をすべて満たす場合
2024年10月から短時間労働者への適用拡大の対象企業が「従業員101人以上」から「51人以上」に引き下げられました。これにより、パートタイムで働く外国人が新たに加入対象となるケースが増えています。
雇用保険の適用基準
雇用保険は、以下の2つの条件を両方満たす労働者が加入対象です。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用見込みがある
ここで注意したいのが「留学」の在留資格を持つ外国人です。昼間学生である留学生は原則として雇用保険の適用除外となります。資格外活動許可を得てアルバイトをしている場合でも、昼間学生であれば雇用保険には加入しません。ただし、課程や就労形態によって取扱いが異なる場合があるため、個別の確認が必要です。なお、留学生が卒業後に就労ビザへ変更して正社員として勤務する場合には、当然ながら雇用保険の加入対象になります。
在留資格による違いはあるのか
社会保険の加入義務は在留資格の種類によって変わるものではありません。「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「技能実習」「永住者」「日本人の配偶者等」——いずれの在留資格でも、上記の適用基準を満たせば加入が必要です。
ただし、「外交」「公用」の在留資格を持つ者は、その地位の性質上、日本の社会保険が適用されない場合があります。また、日本と社会保障協定を締結している国の出身者については、二重加入を防止するための特例が適用されることがあります。2026年3月時点で日本は24か国と社会保障協定を締結しており、相手国の社会保険に加入していることを証明する「適用証明書」を提出すれば、日本の厚生年金への加入が免除される仕組みです。
外国人雇用に関する手続き全体の流れは「外国人雇用の手続き完全ガイド|採用から届出まで時系列で解説」で体系的にまとめていますので、あわせてご覧ください。
外国人の社会保険加入手続きの流れ
外国人を雇用して社会保険に加入させる際の手続きは、日本人の場合とほぼ同じです。ただし、在留カードの確認や基礎年金番号の取得など、外国人特有のステップがいくつか加わります。
Step 1: 在留カードの確認
雇用の前提として、在留カードで在留資格・在留期間・就労制限の有無を確認します。在留カードの裏面に「資格外活動許可」のスタンプがあるかどうかも確認してください。就労が認められていない在留資格で雇用すると、企業側も不法就労助長罪に問われる可能性があります。
在留カードの番号は、雇用保険の届出にも記載が必要になるため、コピーを保管しておくことをおすすめします。
Step 2: 年金番号の取得(基礎年金番号)
日本で初めて就労する外国人は基礎年金番号を持っていない場合があります。基礎年金番号がない場合は、健康保険・厚生年金の資格取得届を年金事務所に提出すると、後日基礎年金番号通知書が届きます。マイナンバーが付与されている外国人であれば、マイナンバーで届出を行うことも可能です。
Step 3: 健康保険・厚生年金の届出
雇用開始日から5日以内に、管轄の年金事務所(または健康保険組合)に「被保険者資格取得届」を提出します。届出には外国人のローマ字氏名の記載が求められるため、在留カードに記載されたとおりのスペルで正確に記入してください。
氏名のローマ字表記は「在留カードのとおり」が原則です。アルファベット氏名欄の記載ミスがあると、後日の手続き(脱退一時金の請求など)で支障が出ることがあるため注意が必要です。
Step 4: 雇用保険の届出
雇用保険の「被保険者資格取得届」は、雇入れ日の翌月10日までにハローワークに提出します。外国人の場合、この届出が「外国人雇用状況の届出」を兼ねるという重要なポイントがあります。取得届には在留資格・在留期間・国籍・在留カード番号を記載する欄が設けられており、提出することで外国人雇用状況の届出義務(労働施策総合推進法第28条)も同時に履行できます。
雇用保険の適用除外となる外国人(留学生アルバイト等)については、雇用保険の届出とは別に「外国人雇用状況届出書」をハローワークに提出する必要がありますので、忘れないようにしましょう。
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脱退一時金制度|帰国時に年金を取り戻す方法
外国人労働者にとって大きな関心事の一つが、帰国後に厚生年金保険料を取り戻せるかどうかという問題です。日本の年金制度には、短期間で日本を離れる外国人のために「脱退一時金」という制度が用意されています。
脱退一時金の請求要件は以下のとおりです。
- 日本国籍を有しないこと
- 厚生年金保険の被保険者期間が6か月以上あること
- 日本に住所を有しないこと(出国後に請求)
- 年金(障害手当金を含む)の受給権を有していないこと
支給額は被保険者期間に応じて計算され、2021年4月の法改正により上限が60か月(5年)分に引き上げられました。請求手続きは帰国後に日本年金機構へ郵送で行います。請求期限は出国後2年以内ですので、帰国する外国人従業員には退職時にこの制度を案内しておくとよいでしょう。
なお、脱退一時金を受け取ると、その期間の年金加入記録は消滅します。将来的に日本に戻って就労する可能性がある場合や、社会保障協定の対象国で年金加入期間を通算できる場合には、脱退一時金を請求しないほうが有利なケースもあります。外国人従業員に制度の内容を正確に伝え、本人の将来設計を踏まえた判断を促すことが、企業の人事担当者として重要な役割です。
特定技能外国人の受入れに関する費用の全体像は「特定技能とは?1号・2号の違いと16分野を行政書士が徹底解説」でも触れていますので、制度の全体像を把握したい方はあわせてご確認ください。
よくある質問
Q. 外国人を雇用する場合、社会保険の手続きは日本人と違いますか?
基本的な手続きの流れは日本人と同じです。ただし、健康保険・厚生年金の資格取得届にはローマ字氏名の記載が必要であり、雇用保険の被保険者資格取得届には在留資格・在留期間・国籍・在留カード番号の記載欄があります。また、基礎年金番号を持っていない外国人の場合は番号取得の手続きが加わります。
Q. アルバイトの外国人留学生も社会保険に加入する必要がありますか?
雇用保険については、昼間学生である留学生は原則として適用除外です(課程や就労形態によって取扱いが異なる場合があります)。一方、健康保険・厚生年金については、所定労働時間が正社員の4分の3以上であれば留学生でも加入義務が発生します。ただし、留学生が週28時間以内の資格外活動として働く場合はこの基準を満たさないケースが大半です。留学生は通常、国民健康保険と国民年金に個人で加入しています。
Q. 社会保障協定の対象国の外国人は厚生年金に加入しなくてもよいですか?
社会保障協定の締結国から派遣されている労働者で、相手国の年金制度に継続して加入していることを証明する「適用証明書」を提出した場合は、日本の厚生年金への加入が免除されます。ただし、日本国内で現地採用された場合や適用証明書がない場合は、協定対象国の出身者であっても日本の厚生年金に加入する義務があります。
Q. 脱退一時金はいつまでに請求すればよいですか?
脱退一時金の請求期限は、日本を出国した日から2年以内です。期限を過ぎると請求できなくなるため、帰国前に必要書類(年金手帳のコピー、銀行口座情報など)を準備しておくことが大切です。請求書は日本年金機構のウェブサイトからダウンロードできます。
まとめ
外国人労働者の社会保険加入は、国籍に関係なく日本人と同じ基準で判断されます。健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の適用条件を正しく理解し、入社時の届出を漏れなく行うことが企業の法的義務です。帰国予定の外国人には脱退一時金制度を適切に案内し、在留資格の確認と各種届出を確実に行ってください。
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|---|---|
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