終活関連

尊厳死宣言公正証書とは?リビングウィルの作成方法・必要書類・効力を解説

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結論から言えば、尊厳死宣言公正証書とは、本人が回復の見込みのない状態に陥った場合に延命治療を希望しない旨を公正証書として残す書面です。「リビングウィル」とも呼ばれる終末期医療に関する事前の意思表示を、公証人が認証することで証拠力の高い形式に仕上げるものです。日本では尊厳死に関する法律は未整備ですが、尊厳死宣言公正証書は厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の趣旨にも沿った備えとして、公証役場で作成されています。この記事では、尊厳死宣言公正証書とリビングウィルの関係、作成方法、法的効力と限界、そして周辺の終活準備について解説します。

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尊厳死宣言公正証書とは

尊厳死とリビングウィルの関係

尊厳死とは、回復の見込みがない終末期において、人工呼吸器の装着や心肺蘇生術などの延命治療を行わず、自然な形で最期を迎えることを指します。安楽死(積極的に死を早める行為)とは明確に区別される概念であり、あくまで「過剰な延命措置を差し控える」という考え方です。

リビングウィル(living will)は、終末期医療に対する本人の意思を書面に残したもので、「延命治療を望まない」「苦痛を和らげる処置は希望する」といった内容を記載します。このリビングウィルを公証役場で公正証書として作成したものが尊厳死宣言公正証書です。

尊厳死宣言公正証書の内容

尊厳死宣言公正証書には、一般的に以下のような事項が記載されます。

  • 宣言者が意思能力を有する状態で自発的に作成したこと
  • 回復の見込みのない末期状態になった場合に、延命措置を差し控え、または中止してほしい旨の意思表示
  • 苦痛を和らげるための緩和ケアは最大限に施してほしい旨
  • この宣言に従った医療従事者の行為について、宣言者やその家族が民事・刑事上の責任を問わない
  • 宣言者の署名・公証人の認証

公正証書にすることで、作成者本人が自らの意思で作成したことが公的に証明され、私文書のリビングウィルと比べて証拠力が格段に高まります。

尊厳死宣言公正証書の法的効力と限界

日本では2026年3月時点で「尊厳死法」に相当する法律は制定されていません。そのため、尊厳死宣言公正証書には法的な強制力はなく、医療機関が宣言内容に必ず従う法的義務はありません。

ただし、実務上は以下の理由から医療現場で尊重される傾向にあります。

  • 厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(厚生労働省ガイドラインPDF)では、本人の意思決定を尊重することが基本原則とされている
  • 公正証書は本人の意思が明確であることの証明として医療機関に受け入れられやすい
  • 日本公証人連合会の案内では、日本尊厳死協会の機関誌「リビング・ウィル」のアンケート結果として、尊厳死の宣言書を医師に示した場合の医師の尊厳死許容率は近年9割を超えていると紹介されている

一方で、限界もあります。

  • 医療機関の判断により、延命治療の中止を拒否される可能性がゼロではない
  • 「回復の見込みがない末期状態」の医学的判断は医師に委ねられる
  • 家族が反対した場合に医療現場で板挟みになるケースがある

こうした限界を踏まえ、尊厳死宣言公正証書を作成する際は家族への事前説明と理解の取り付けが非常に重要です。家族が宣言の存在と内容を知らないまま終末期を迎えると、宣言の趣旨が実現しにくくなります。

尊厳死宣言公正証書の作成方法

Step 1:意思の明確化と家族との対話

尊厳死宣言を作成する前に、自分が終末期にどのような医療を受けたいのか(受けたくないのか)を具体的に考え、整理します。「延命治療はすべて不要」なのか「人工呼吸器は不要だが水分・栄養の補給は希望する」なのかなど、希望は人によって異なります。また、家族や信頼できる人に自分の考えを伝え、理解を得ておくことが、宣言を実効性のあるものにするための前提条件です。

Step 2:公証役場への相談・予約

尊厳死宣言公正証書は全国の公証役場で作成できます。事前に公証役場に連絡し、作成の予約を取ります。公証人に宣言の趣旨を伝え、文案の作成に入ります。日本公証人連合会の事実実験公正証書に関するページで、公証役場の所在地や公正証書の概要を確認できます。

Step 3:公証役場での作成・認証

予約した日時に公証役場を訪問し、公証人の面前で宣言内容を確認・署名します。尊厳死宣言公正証書(事実実験公正証書)は、法律行為に関する公正証書とは異なり、通常は証人の立会いが不要です。宣言者本人の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)と印鑑が必要です。

Step 4:保管と関係者への周知

作成した公正証書の正本は本人が保管し、謄本を家族やかかりつけ医、任意後見人(選任している場合)に渡しておきます。いざというときに関係者が宣言の存在を知らなければ意味がないため、保管場所の共有が極めて重要です。エンディングノートに「尊厳死宣言公正証書を作成済みであること」と「保管場所」を記載しておく方法も有効です。

作成費用の目安

費用項目 金額の目安
公証人手数料 13,000円〜(公証人手数料令に基づく事実実験公正証書。2025年10月改正後の金額。事実実験と証書作成に要した合計時間について、1時間までごとに13,000円)
謄本・正本の交付手数料 数千円程度(1枚250円×用紙枚数。謄本2通で概ね2,000〜4,000円)
行政書士への作成支援依頼(任意) 数万円程度(事務所により異なる)

公証人手数料は法令で定められた金額であり、公証役場による差異はありません。証人の手配方法や行政書士への依頼の有無によって総費用が変動します。

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ACP(アドバンス・ケア・プランニング)との関係

近年、厚生労働省が推進しているACP(アドバンス・ケア・プランニング)は、将来の医療やケアについて本人・家族・医療従事者が繰り返し話し合い、本人の意思を共有するプロセスを指します。「人生会議」という愛称でも知られています。

尊厳死宣言公正証書は、ACPの中で本人の意思を書面として明確に残し、その証拠性を高める手段の一つとして位置づけることができます。ただし、公正証書を作成して終わりではなく、定期的に自分の意思を見直し、家族や医療者と共有し続けることがACPの本質です。

体調の変化やライフステージの変化に伴って終末期に対する考え方が変わることもあります。尊厳死宣言公正証書は撤回や変更が可能であるため、必要に応じて内容を見直すことが推奨されます。

任意後見契約の基本的な仕組みについては「任意後見契約とは?制度の仕組み・手続き・費用を解説」で詳しく解説しています。判断能力が低下した後の財産管理や身上監護まで含めた備えを検討する際は、あわせてご確認ください。

よくある質問

Q. 尊厳死宣言公正証書は撤回できますか?

撤回できます。本人が意思能力を有している限り、いつでも尊厳死宣言を撤回・変更することが可能です。口頭での撤回も法的には有効ですが、書面で撤回の意思を残しておくほうが証拠として明確です。必要に応じて新たな公正証書を作成し、以前の宣言を撤回する旨を記載する方法もあります。

Q. 尊厳死宣言公正証書を作成すれば医師は必ず延命治療をやめてくれますか?

法的な強制力はないため、医師が必ず従うとは限りません。ただし、公正証書という形式で本人の明確な意思が示されていることは、医療現場での判断に大きな影響を与えるとされています。家族も宣言の内容を理解・支持していることが伝われば、医療機関が宣言を尊重する可能性はさらに高まります。

Q. 尊厳死宣言公正証書と安楽死は違いますか?

全く異なります。尊厳死は過剰な延命措置を差し控え、自然な経過に委ねることです。安楽死は薬物投与等により積極的に死を早める行為であり、日本では刑法上の犯罪(嘱託殺人罪等)に該当する可能性があります。尊厳死宣言公正証書は延命治療の不実施を求めるものであり、安楽死を求める文書ではありません。

まとめ

尊厳死宣言公正証書は、終末期に延命治療を望まないという自分の意思を、法的に証明力の高い形で残す手段です。

  • 法的な強制力はないが、公正証書という形式は医療現場で尊重される傾向にある
  • 作成にあたっては家族への事前説明と理解の取り付けが不可欠
  • ACPの一環として位置づけ、定期的に意思の見直し・共有を行うことが重要
  • 判断能力低下への備え(任意後見契約)や死後の備え(死後事務委任契約)と組み合わせることで、終活全体がより充実する

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※ 2026年4月時点の法令・厚生労働省ガイドラインに基づく解説です。尊厳死に関する法制度は今後変更される可能性があります。個別の終末期医療の判断については、かかりつけ医や法律の専門家にご相談ください。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の医療行為を推奨または否定するものではありません。終末期医療に関する意思決定は、ご本人・ご家族・医療チームの話し合いに基づいて行ってください。

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