入管・ビザ関連

外国人向け雇用契約書の作成ポイント|多言語対応と記載の注意点

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「外国人を採用したいが、雇用契約書は日本人と同じでいいのか」「特定技能と技人国では契約に違いがあるのか」――外国人雇用が初めての企業担当者にとって、雇用契約書の作成は最初にぶつかるハードルの一つです。外国人の雇用契約書は労働基準法に基づく明示義務に加え、在留資格ごとの固有要件(報酬・業務内容・帰国旅費など)を正しく反映しなければ、ビザ申請の不許可や労務トラブルの原因になります。外国人雇用契約書で押さえるべきポイントは、(1)在留資格に合った業務内容の記載、(2)日本人と同等以上の報酬設定、(3)母国語併記での労働条件明示、(4)特定技能では保証金・違約金の禁止への対応、(5)2024年4月改正に対応した「変更の範囲」の明示、の5点です。

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外国人の雇用契約書は日本人と何が違う?

外国人を雇用する場合も、日本国内で働く以上、労働基準法をはじめとする日本の労働法規が等しく適用されます。雇用契約書に記載すべき法定事項(賃金、労働時間、休日、就業場所など)は日本人労働者と同一です。

ただし、外国人の場合は以下の点で追加の配慮が求められます。

項目 日本人の雇用契約 外国人の雇用契約で追加で必要なこと
言語 日本語のみで可 母国語または理解できる言語の併記が望ましい
業務内容 一般的な記載で可 在留資格の活動範囲と合致する具体的な記載が必要
報酬 最低賃金以上 日本人と同等以上の報酬が在留資格の要件
契約期間 企業の任意 在留期間との整合性に注意(停止条件付契約の検討)
帰国旅費 規定なし 特定技能:本人が負担できない場合は企業が負担する義務
保証金・違約金 労基法で違約金予定の禁止 入管法でも保証金の徴収・違約金契約を明確に禁止

外国人雇用の手続き全体については「外国人雇用の手続き完全ガイド|採用から届出まで時系列で解説」で詳しくまとめています。

在留資格別に見る雇用契約の注意点とは?

雇用契約書の書き方で特に重要なのは、在留資格ごとに求められる契約条件が異なるという点です。特定技能と技術・人文知識・国際業務(技人国)では、以下のような違いがあります。

特定技能の雇用契約に求められる条件

特定技能外国人との雇用契約は、入管法第2条の5に基づき「特定技能雇用契約」として法令で記載事項が定められています。出入国在留管理庁が公開する参考様式第1-5号(特定技能雇用契約書)を使用するのが一般的です。特定技能雇用契約に求められる主な条件は以下のとおりです。

  • 報酬額が同一の業務に従事する日本人と同等以上であること
  • フルタイム雇用であること(受入れ機関の通常の労働者と同等の所定労働時間が基本)
  • 保証金の徴収や違約金契約を結んでいないこと
  • 外国人が帰国旅費を負担できない場合、企業が負担する旨を契約に含めること
  • 外国人の健康・安全の確保に配慮した業務体制を整備すること
  • 一時帰国を希望した場合に必要な休暇取得に配慮し、年次有給休暇の取得を妨げないこと

ビザ申請時には、雇用契約書に加えて「報酬に関する説明書(参考様式第1-4号)」の提出が求められ、日本人との報酬比較を客観的に示す必要があります。

技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザの場合

技人国ビザでは特定技能のような法定の契約書フォーマットはありませんが、業務内容と在留資格の整合性が審査上の最重要ポイントです。在留資格認定証明書交付申請や変更許可申請の際に、雇用契約書のコピーを提出するため、以下の点を正確に反映させる必要があります。

  • 業務内容が専門的・技術的な分野に該当することが読み取れる記載にする
  • 報酬額が日本人と同等以上であることを明示する
  • 現場での単純労働が業務の主たる内容でないことが分かるようにする
  • 入社後に研修として現場業務に従事する場合は、研修期間と研修後の業務内容を雇用契約書とは別の研修計画書で明示する

技人国ビザの要件について詳しくは「就労ビザの在留資格変更と在留期間更新の違い|必要書類と申請の流れ」もご参照ください。

雇用契約書に記載すべき項目一覧

外国人の雇用契約書には、労働基準法第15条で定められた絶対的明示事項に加え、外国人雇用ならではの項目を盛り込む必要があります。以下に主要な記載事項を整理しました。

区分 記載項目 注意点
労基法上の絶対的明示事項 契約期間 在留期間との整合性を確認
就業場所・従事する業務 在留資格の活動範囲と一致させる
始業・終業時刻、休日、休暇 変形労働時間制の場合はその詳細も
賃金(計算方法・支払方法・締日・支払日) 控除項目(社会保険料・税金等)も明示
退職に関する事項(解雇事由を含む)
2024年4月改正で追加された明示事項 就業場所の変更の範囲 転勤の可能性がある場合はその範囲を記載
業務の変更の範囲 配置転換の可能性を具体的に記載
有期契約の更新上限 更新回数・通算契約期間の上限(有期雇用の場合)
外国人雇用で追加すべき項目 在留資格が取得できなかった場合の取扱い 停止条件付契約にする方法が有効
社会保険・雇用保険の加入 外国人も日本人と同じ加入義務あり
帰国旅費の負担(特定技能の場合) 本人負担不能時は企業が負担
保証金・違約金を徴収しない旨 入管法上の必須要件(特定技能)

2024年4月の労働条件明示ルールの改正により、すべての労働者に対して「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が義務化されています。外国人の場合、配置転換で在留資格の活動範囲外の業務に従事させることはできないため、変更の範囲は在留資格で認められた活動に限定して記載するのが適切です。

多言語対応はどこまで必要?母国語併記のポイント

法律上、雇用契約書を外国語で作成する義務はありません。しかし実務上は、外国人本人が内容を十分に理解できる言語での併記が強く推奨されます。理由は以下の3点です。

  • 入管の審査では、外国人本人への電話確認が行われることがあり、契約内容を正しく理解していないと審査に悪影響が及ぶ
  • 労働条件の認識相違によるトラブル(「聞いていた条件と違う」)を未然に防止できる
  • 特定技能外国人の場合、事前ガイダンスで労働条件を母国語で説明する義務がある(義務的支援の一環)

厚生労働省は、英語をはじめ13言語(英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語・タガログ語・ベトナム語・インドネシア語・タイ語・ネパール語・クメール語・ミャンマー語・モンゴル語)に対応したモデル労働条件通知書を公開しています。また、出入国在留管理庁の特定技能関連の参考様式も複数言語の翻訳版が用意されているため、これらを活用するのが効率的です(対応言語は入管庁サイトで最新版をご確認ください)。

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「停止条件付雇用契約」とは?ビザ不許可リスクへの備え

外国人の採用では、雇用契約を締結した後に在留資格の申請を行うのが一般的な流れです。しかし、在留資格が不許可になった場合に雇用契約の効力がそのまま残ると、企業側に不要な義務が発生してしまいます。

この問題を回避するのが「停止条件付雇用契約」です。具体的には、契約書に以下のような条項を入れます。

「本契約は、乙(労働者)が日本国の在留資格を取得し、適法に就労できる状態になったことを条件として効力を生じるものとする。在留資格が許可されなかった場合、本契約は効力を生じない。」

停止条件付にしておけば、ビザが不許可になった場合に雇用契約は自動的に不成立となり、解雇の手続きは不要です。入管への申請時にも、この停止条件が付されていることは問題視されません。むしろ、実務上は停止条件付で締結するのが一般的です。

雇用契約書で見落とされがちな3つの落とし穴

1. 業務内容の記載が曖昧で不許可になるケース

「営業全般」「事務作業」のような抽象的な記載では、入管の審査官が業務内容と在留資格の適合性を判断できず、追加資料の提出を求められたり不許可になったりすることがあります。「海外取引先との英語による受発注管理及び貿易書類の作成」のように、具体的かつ在留資格の活動範囲に合致する表現で記載してください。

2. 控除項目の説明不足がトラブルを生むケース

外国人労働者は、社会保険料や住民税が給与から天引きされることに馴染みがない場合があります。手取り額と額面の差に「約束と違う」と感じてしまうことが、労働トラブルの原因になりがちです。雇用契約書・労働条件通知書に控除項目(健康保険料・厚生年金・雇用保険・所得税・住民税)を明記し、手取り概算も示しておくと誤解を防げます。

外国人の社会保険加入については「外国人労働者の社会保険加入ガイド|加入条件と手続きの基本」で詳しく解説しています。

3. 契約書と実際の業務が乖離して在留資格に影響するケース

契約書上は「通訳・翻訳業務」としながら、実態はレジ打ちや配膳が中心という場合、在留期間更新時に不許可となるリスクがあります。入管の審査では契約書と実態の一致が確認されるため、雇用後に業務内容を大きく変更する場合は、契約書の変更と必要に応じた在留資格の変更手続きも忘れずに行ってください。

よくある質問

Q. 雇用契約書は日本語だけでも法的に有効ですか?

はい、日本語のみの雇用契約書でも法的には有効です。ただし、外国人本人が契約内容を正しく理解できるよう、母国語または理解できる言語の併記が強く推奨されます。特に入管の審査では外国人本人に電話確認が行われることがあり、内容を理解していない場合は不利に働く可能性があります。

Q. 特定技能と技人国では雇用契約書の書式は異なりますか?

特定技能の場合は、出入国在留管理庁が定める参考様式(第1-5号)を使用するのが一般的です。技人国ビザでは法定の書式はなく、企業独自の雇用契約書を使用できますが、業務内容や報酬額が在留資格の要件を満たしている必要があります。

Q. 外国人に保証金を求めたり違約金を設定したりすることは可能ですか?

いいえ、認められません。労働基準法第16条で賠償予定の禁止が定められているほか、特定技能においては入管法・基準省令でも保証金の徴収や違約金契約が明確に禁止されています。違反した場合は最長5年間の特定技能外国人の受入れ停止など、重大な行政処分の対象となります。

Q. 在留資格が不許可になった場合、雇用契約はどうなりますか?

停止条件付雇用契約を締結していれば、ビザが不許可になった時点で契約は不成立となります。停止条件を付けていない場合は、合意解約や契約解除の手続きが必要になるため、あらかじめ停止条件付で契約を締結しておくことを推奨します。

Q. 雇用契約書の作成に使えるテンプレートはありますか?

特定技能の場合は出入国在留管理庁の参考様式がそのまま使用できます。一般の就労ビザ向けには、厚生労働省のモデル労働条件通知書(多言語版)をベースにカスタマイズするのが効率的です。

まとめ

外国人の雇用契約書は、労働基準法の明示義務を満たすだけでなく、在留資格ごとの固有要件を正確に反映させることがビザ取得の成否を左右します。特に報酬の同等性、業務内容と在留資格の整合性、特定技能における保証金・違約金の禁止、母国語での理解確保、そして2024年4月改正への対応は、見落としがあると不許可やトラブルに直結する重要ポイントです。

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※ 本記事の内容は2026年3月時点の入管法令に基づきます。制度・手数料・様式は変更される場合があります。最新情報は出入国在留管理庁でご確認ください。

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