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遺留分とは?遺留分侵害額請求の方法と計算例を行政書士が解説

更新: 約14分で読めます

「遺言で全財産を他の相続人に渡すと書かれていた…自分には何ももらえないの?」――そんな不安を感じている方もいるのではないでしょうか。実は、一定の範囲の相続人には遺留分という最低限の取り分が法律で保障されています。たとえ遺言で「すべての財産を特定の人に渡す」と指定されていても、遺留分を下回る相続しか受けられない場合には、侵害された分を金銭で取り戻す遺留分侵害額請求が可能です。ただし、この請求には時効があるため注意が必要です。この記事では、遺留分の基本的な仕組みから割合の計算方法、請求手続きの流れ、時効の期限までを解説します。

「自分の遺留分がいくらなのかわからない」「どうやって請求すればいいのか知りたい」という方は、行政書士法人Treeにご相談ください。相続財産の調査から遺産分割協議書の作成まで、相続手続きの専門家がサポートします。相談は何度でも無料です。

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遺留分とは?最低限保障される相続の権利

遺留分の定義と法的根拠(民法1042条)

遺留分とは、被相続人(亡くなった方)の財産のうち、一定の相続人に対して法律上保障される最低限の取り分のことです。根拠となるのは民法第1042条で、被相続人の財産処分の自由と相続人の生活保障のバランスを図る制度として位置づけられています。

日本の民法では、被相続人は遺言によって自分の財産を自由に処分できるのが原則です。しかし、この自由を無制限に認めてしまうと、残された配偶者や子どもが生活基盤を失うおそれがあります。遺留分はそのような事態を防ぐための「歯止め」として機能しています。遺留分を侵害する内容の遺言であっても遺言自体は無効にはなりませんが、遺留分権利者は侵害された額に相当する金銭の支払いを請求できます。

遺留分が認められる相続人の範囲

遺留分が認められるのは、すべての相続人ではありません。遺留分を有するのは以下の相続人に限られます。

  • 配偶者
  • (代襲相続人を含む)
  • 直系尊属(父母・祖父母)

一方、兄弟姉妹には遺留分がありません(民法第1042条第1項)。これは兄弟姉妹が被相続人の生活保障の中核を担う関係にないと法的に評価されているためです。したがって、遺言で「兄弟姉妹には一切相続させない」と定めた場合、兄弟姉妹は遺留分侵害額請求をすることができません。この点を誤解している方は少なくないため、ご自身がどの範囲の相続人に当たるかを最初に確認しておくことが重要です。

遺留分の割合|相続人ごとの計算方法

遺留分の割合一覧【表】

遺留分の総体的割合(全体の遺留分)は、相続人の構成によって異なります。

相続人の構成 全体の遺留分 各相続人の遺留分(個別的遺留分)
配偶者のみ 1/2 配偶者: 1/2
配偶者+子1人 1/2 配偶者: 1/4、子: 1/4
配偶者+子2人 1/2 配偶者: 1/4、子: 各1/8
配偶者+子3人 1/2 配偶者: 1/4、子: 各1/12
子のみ(1人) 1/2 子: 1/2
子のみ(2人) 1/2 子: 各1/4
配偶者+直系尊属 1/2 配偶者: 1/3、直系尊属: 1/6
直系尊属のみ 1/3 父母: 各1/6
兄弟姉妹のみ なし 遺留分なし

個別的遺留分は、「全体の遺留分 × 法定相続分」で計算します。たとえば、配偶者+子2人の場合、配偶者の法定相続分は1/2ですから、遺留分は「1/2 × 1/2 = 1/4」となります。子はそれぞれ法定相続分が1/4(子2人で1/2を均等分割)ですので、遺留分は「1/2 × 1/4 = 1/8」です。

遺留分の計算例(具体的なケース)

遺留分の金額を具体的に計算してみましょう。以下の想定で考えます。

【ケース】遺産総額3,000万円/相続人は配偶者+子2人(長男・次男)

被相続人が遺言で「全財産を長男に相続させる」と定めていた場合、配偶者と次男の遺留分は以下のとおりです。

  • 配偶者の遺留分: 3,000万円 × 1/4 = 750万円
  • 次男の遺留分: 3,000万円 × 1/8 = 375万円

この場合、配偶者は長男に対して750万円、次男は375万円の遺留分侵害額請求をすることができます。なお、遺産総額の算定にあたっては、相続開始時の財産に加え、被相続人が生前に行った一定の贈与(原則として相続開始前1年以内の贈与、相続人への婚姻・養子縁組のためまたは生計の資本としてされた贈与は10年以内)も加算される点に留意が必要です(民法第1043条・第1044条)。実際の計算では、債務の控除なども関わるため、正確な金額は専門家と一緒に確認されることをおすすめします。

遺産分割全体の流れについては「相続手続きの流れと期限一覧」の記事もあわせてご確認ください。

遺留分侵害額請求の手続きの流れ

2019年7月施行の民法改正により、旧「遺留分減殺請求」は「遺留分侵害額請求」に変わりました。従来は現物返還が原則でしたが、改正後は金銭の支払いを請求する権利として一本化されています。これにより、たとえば不動産を持分で分割する複雑さが解消され、金銭での解決が明確になりました。

Step 1: 遺留分の侵害を確認する

まずは相続財産の全体像を把握し、自分の遺留分が侵害されているかどうかを確認します。具体的には以下の作業を行います。

  • 遺言書の内容を確認する:公正証書遺言の場合は公証役場に問い合わせ、自筆証書遺言の場合は家庭裁判所の検認手続きを経てから内容を確認します
  • 相続財産を調査する:不動産(法務局で登記事項証明書を取得)、預貯金(金融機関への残高照会)、有価証券、生命保険などの財産を洗い出します
  • 生前贈与の有無を確認する:被相続人が生前に特定の相続人に贈与していた場合、その金額も遺留分の算定基礎に含まれるため確認が必要です
  • 遺留分の金額を計算する:前述の割合表をもとに、自分の遺留分額を算出します

Step 2: 内容証明郵便で請求する

遺留分が侵害されていることが確認できたら、遺留分侵害額請求の意思表示を行います。法律上、請求の方法に特定の書式は定められていませんが、内容証明郵便で送付するのが実務上の原則です。その理由は、請求した事実と日付を証拠として残す必要があるためです。時効との関係で「いつ請求したか」が争点になるケースが少なくないため、口頭や普通郵便ではなく内容証明郵便を利用してください。

内容証明郵便には、以下の事項を記載します。

  • 差出人の氏名・住所(遺留分権利者)
  • 相手方の氏名・住所
  • 被相続人の氏名・死亡日
  • 遺留分を侵害している具体的な内容(遺言の内容等)
  • 遺留分侵害額請求の意思表示
  • 請求する金額(判明している場合)

Step 3: 相手方と協議する

内容証明郵便を送付した後、相手方と当事者間の協議(話し合い)を行います。遺留分侵害額請求はあくまで金銭の支払いを求めるものですから、支払金額・支払方法・支払時期について合意を目指します。

協議がまとまった場合は、合意内容を書面化しておくことが重要です。遺留分に関する合意書を作成し、双方が署名・押印することで、後のトラブルを防ぐことができます。合意内容に不動産の名義変更や預貯金の分割が含まれる場合は、遺産分割協議書として整備しておくと手続きがスムーズです。

Step 4: 調停・訴訟に進む場合

当事者間の協議で合意に至らない場合は、家庭裁判所遺留分侵害額の請求調停を申し立てることができます。家事調停では、調停委員が間に入って話し合いを進めるため、当事者だけでは感情的になりがちな相続問題でも冷静な協議が期待できます。

調停でも合意に至らない場合は、訴訟(遺留分侵害額請求訴訟)に進むことになります。訴訟の第一審は、請求額が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所の管轄となります。訴訟では裁判官が遺留分の侵害額を確定し、判決として支払いを命じます。訴訟に発展する場合は弁護士への相談が必要になりますが、調停までの段階であれば行政書士が内容証明の作成や相続財産の調査をサポートできます。

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遺留分侵害額請求の時効と期限

遺留分侵害額請求には、2つの期限が設けられています。いずれか一方でも過ぎると、請求権は消滅しますので十分にご注意ください。

期限の種類 期間 起算点
消滅時効 1年 相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時
除斥期間 10年 相続開始の時(被相続人の死亡日)

特に注意が必要なのは1年の消滅時効です。相続手続きに追われているうちに1年はあっという間に経過してしまいます。遺留分が侵害されていると気づいた時点で、まずは内容証明郵便による意思表示だけでも行い、1年の消滅時効が完成する前に権利を行使しておくことが実務上のセオリーです。遺留分侵害額請求権は形成権であるため、相手方に意思表示が到達した時点で権利の行使が完了し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求権(金銭債権)が発生します。この金銭債権には、権利を行使できることを知った時から5年の消滅時効(民法第166条第1項第1号)が別途適用されます。なお、2020年4月施行の民法改正により、時効の「中断」は「更新」に、「停止」は「完成猶予」に用語が整理されています。

また、相続の開始から10年を経過すると、遺留分の侵害を知っていたかどうかにかかわらず請求権は消滅します。この除斥期間は、当事者の認識とは無関係に進行するため、長期間相続手続きを放置している場合にも注意が必要です。

相続放棄にも3か月の期限がありますので、相続に関する期限全体を把握しておきたい方は「相続放棄の手続きと期限」の記事もご参照ください。

よくある質問

Q. 遺留分を放棄することはできますか?

はい、可能です。相続開始前(被相続人の生存中)に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可が必要です(民法第1049条)。これは、相続人が不当な圧力で遺留分を放棄させられるのを防ぐための規定です。一方、相続開始後は家庭裁判所の許可は不要で、遺留分権利者の意思表示だけで放棄できます。ただし、遺留分の放棄は相続放棄とは異なり、相続人としての地位は失いません。

Q. 遺留分侵害額請求は誰に対して行いますか?

遺留分侵害額請求は、遺留分を侵害している受遺者(遺言で財産を受け取った人)受贈者(生前贈与を受けた人)に対して行います。受遺者と受贈者の両方がいる場合は、まず受遺者に対して請求し、それでも不足する場合に受贈者に対して請求するのが原則です(民法第1047条)。

Q. 遺留分侵害額請求をすると相続税に影響しますか?

遺留分侵害額請求によって金銭の支払いを受けた場合、その金額に応じて相続税の計算に影響します。遺留分侵害額に相当する金銭を受け取った側は相続税の課税対象となり、支払った側はその分を控除できる場合があります。具体的な相続税の計算は税理士にご確認ください。

Q. 2019年の民法改正で何が変わりましたか?

2019年7月1日施行の改正民法で、旧「遺留分減殺請求」は「遺留分侵害額請求」に変更されました。最大の変更点は、請求の効果が現物返還から金銭請求に一本化された点です。改正前は、遺留分減殺請求によって遺贈・贈与の効力が失われ、財産が共有状態になることで不動産の処分が困難になるなどの問題がありました。改正後は、金銭の支払いを求める形に統一されたため、請求を受けた側は金銭で清算すればよく、紛争の解決がシンプルになっています。

まとめ

  • 遺留分は、配偶者・子・直系尊属に保障される最低限の相続の権利(兄弟姉妹には遺留分なし)
  • 遺留分の割合は相続人の構成によって異なり、「全体の遺留分 × 法定相続分」で計算する
  • 遺留分侵害額請求は内容証明郵便で意思表示し、協議→調停→訴訟の順で進める
  • 消滅時効は1年(知った時から)、除斥期間は10年(相続開始から)と短いため、早めの対応が不可欠
  • 2019年の民法改正により、現物返還ではなく金銭での請求に一本化されている

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