契約書

建設工事請負契約書の書き方|必須16項目と注意点を行政書士が解説

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建設工事請負契約書に必ず書かなければならない事項は、建設業法第19条第1項で16項目が明確に定められています。この16項目を一つでも欠くと建設業法違反となるため、契約書作成では法定記載事項の正確な理解が大前提です。

さらに、令和6年12月13日施行の建設業法改正により、「工事を施工しない日又は時間帯の定め」および「価格等の変動に基づく請負代金の変更額の算定方法」が法定記載事項として新たに追加されました。既存のひな形をそのまま流用している場合は、改正に対応した見直しが必要です。

本記事では、契約書作成の専門家である行政書士の視点から、建設工事請負契約書の書き方と実務上の注意点を整理します。

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建設工事請負契約書とは――なぜ書面が必要か

建設業法第19条第1項は、建設工事の請負契約の当事者に対して、工事内容や請負代金など一定の事項を書面に記載し、署名または記名押印のうえ相互に交付することを義務付けています。口頭の約束だけでは契約締結とみなされず、後から「言った・言わない」のトラブルになりやすいため、書面による確認が制度の根幹に据えられています。

建設工事は工期が長く、工事途中での設計変更・追加工事・天災による工期延長など、さまざまな事態が生じます。こうした場面で当初の合意内容を証明できるのが契約書の役割です。もし法定記載事項を欠いた契約書を締結していた場合、建設業法違反として指導・処分の対象になる可能性があるほか、トラブル発生時に不利な立場に置かれるリスクもあります。

なお、建設業法の改正により、書面に代えて電磁的方法(電子契約)による締結も認められています。電子契約を利用する場合は、相手方の承諾取得と技術的基準(改変確認が可能な形式等)への適合が条件となります。

建設業法第19条の法定記載事項16項目

令和6年12月13日施行の改正後における建設業法第19条第1項の法定記載事項は、以下の16項目です。改正で新設・変更された項目には注記を付けています。

記載事項 備考
第1号 工事内容 工事の名称・場所・種類・規模・仕様等を明記
第2号 請負代金の額 消費税の扱いを明示することが望ましい
第3号 工事着手の時期及び工事完成の時期 具体的な年月日で記載する
第4号 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容 令和6年12月改正で追加。担い手確保・休日確保の観点から新設
第5号 前払金・出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法 前払金を設定する場合は必須
第6号 設計変更・工事着手延期・工事中止の申出があった場合における工期変更・請負代金変更・損害の負担及び算定方法に関する定め 変更時のルールを明確化
第7号 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及び算定方法に関する定め 台風・地震等の想定
第8号 価格等の変動又は変更に基づく工事内容の変更又は請負代金の額の変更及びその額の算定方法に関する定め 令和6年12月改正で「算定方法」が追加。物価高騰局面での対応を想定
第9号 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め 隣地への損害等を想定
第10号 注文者が資材を提供し又は建設機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め 支給品がある場合は必須
第11号 注文者が工事完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期 竣工検査・引渡しのスケジュール
第12号 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法 竣工後の精算払いのルール
第13号 工事目的物が契約内容に適合しない場合の担保責任又は保証保険等の措置に関する定め 旧「瑕疵担保責任」→民法改正で「契約不適合責任」に変更
第14号 各当事者の履行の遅滞その他債務不履行の場合における遅延利息・違約金その他の損害金 工期遅延・代金未払い等のペナルティ
第15号 契約に関する紛争の解決方法 調停・仲裁・裁判の選択
第16号 その他国土交通省令で定める事項 建設業法施行規則に基づく追加事項

法令の正式条文はe-Gov法令検索(建設業法)で確認できます。また、国土交通省では建設業法に基づく標準的な契約書のひな形として「建設工事標準請負契約約款」を公表しています。民間工事・公共工事・下請工事の種別ごとに様式が用意されており、法定記載事項を漏れなく盛り込んだ基本フォーマットとして活用できます。

実務で注意が必要なのは、第13号の「契約不適合責任」です。2020年の民法改正により旧来の「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へと変わり、責任の発生要件や買主(注文者)が行使できる権利の内容が大きく変わりました。古いひな形をそのまま使っていると民法との整合性が取れない記載になっている場合があります。この点については、契約不適合責任条項の書き方と注意点も参考にしてください。

建設工事請負契約書の作成手順(ステップ形式)

以下に、実際の契約書作成の流れをステップ形式で整理します。公共工事と民間工事で一部手順が異なりますが、基本的な流れは共通です。

Step 1: 使用するひな形を選定する

国土交通省が公表している「建設工事標準請負契約約款」から、工事の種類に合ったひな形を選びます。

  • 公共工事標準請負契約約款: 国・地方公共団体が発注する工事向け
  • 民間建設工事標準請負契約約款(甲): 民間発注・元請向け
  • 民間建設工事標準請負契約約款(乙): 民間発注・小規模工事向け
  • 建設工事標準下請契約約款: 下請工事向け

これらのひな形は、法定16項目を網羅したうえで、工事の特性に応じた標準的な条項が盛り込まれています。国土交通省のウェブサイトから無料でダウンロードできます。

Step 2: 工事内容・当事者情報を記載する

契約書の冒頭には、当事者(注文者・請負人)の正式な名称・住所・印鑑を明記します。工事内容の欄では、工事名称・施工場所・工事の種類と規模・仕様書の添付の有無を漏れなく記載します。「○○新築工事一式」のような曖昧な記載では、後から工事範囲の解釈をめぐってトラブルが生じやすいため、設計図書・仕様書を添付したうえで「別紙図面及び仕様書のとおり」と明示するのが実務上の定石です。

Step 3: 請負代金・支払条件を記載する

請負代金の金額は、税込・税抜のいずれかを明確にして記載します。消費税の扱いを曖昧にしたまま締結すると、後日の精算で認識の齟齬が生じることがあります。また、前払金を設定する場合はその金額・支払時期・方法、出来形払いを設定する場合はその割合と時期を第5号に従って明記します。工事完成後の精算払いについては、竣工検査完了後○日以内といった具体的な期日を第12号として記載します。

Step 4: 工期・施工しない日の定めを記載する

工事着手日と完成予定日を年月日で明記します(第3号)。あわせて、令和6年12月の改正で追加された第4号として、「工事を施工しない日又は時間帯の定め」を記載します。たとえば「毎週日曜日は原則として施工しない」「騒音規制区域のため、○時から○時の間は作業を行わない」などを明記することで、近隣への影響対策や工事従事者の休日確保を契約上も担保できます。

Step 5: 変更・リスク対応条項を記載する

工事途中の設計変更・工事中止・天災対応については、第6号・第7号の定めが重要です。特に問題になりやすいのは「誰が費用負担をするか」「工期は何日延長できるか」の算定ルールです。「協議のうえ定める」という定めだけでは実際の協議で紛争になるリスクがあるため、可能な限り算定方式(工期延長日数の計算根拠、損害金の算定割合など)を具体的に定めておくことが望まれます。同様に、第8号の「物価変動に基づく請負代金の変更額の算定方法」も、令和6年12月改正で明示が義務化されました。近年の建設資材の価格高騰を踏まえ、スライド条項の組み込みを検討する実務が広がっています。

Step 6: 検査・引渡し・紛争解決条項を記載する

竣工検査の方法・期間・合否の判定基準、引渡しの手続きを第11号として記載します。検査に合格しない場合の補修期間も定めておくと安心です。第13号の契約不適合責任については、責任期間(民法上は権利行使の期間制限として引渡しから1年以内の通知が必要)と、補修・損害賠償・代金減額の範囲を明示します。最後に、第15号として紛争解決手段(任意の話合い→建設工事紛争審査会の調停・仲裁→裁判)を定めておくことで、万一のトラブル時の対処方針が明確になります。

Step 7: 署名・記名押印・書面の相互交付

契約書が完成したら、当事者双方が署名または記名押印のうえ、それぞれ1部ずつを保持します。建設業法は書面の「相互交付」を義務付けており、請負人だけが保持し注文者に渡さない(またはその逆)状態は法令違反となります。電子契約で締結する場合は、事前に相手方の書面または電子的な承諾を得ること、および改変可能性を検証できる技術的要件を満たすシステムを利用することが求められます。

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印紙税:建設工事請負契約書の税額

建設工事請負契約書は印紙税法上の「請負に関する契約書(第2号文書)」に該当し、請負代金の金額に応じた収入印紙を貼付する必要があります。なお、建設工事請負契約書には、2027年3月31日までの軽減措置が適用されており、通常の税額より低い税率が適用されています。

請負代金の金額 軽減後の印紙税額(2027年3月31日まで)
100万円超 200万円以下 200円
200万円超 300万円以下 500円
300万円超 500万円以下 1,000円
500万円超 1,000万円以下 5,000円
1,000万円超 5,000万円以下 10,000円
5,000万円超 1億円以下 30,000円
1億円超 5億円以下 60,000円
5億円超 10億円以下 160,000円
10億円超 50億円以下 320,000円
50億円超 480,000円

電子契約の形式で締結した場合、課税文書(紙の書面)が作成されないため、印紙税は課税されません。印紙税についての詳細は、契約書の印紙税|課税文書の種類と税額一覧もあわせてご覧ください。

作成時のよくある誤りと注意点

建設工事請負契約書の作成で実務的に問題になりやすい点を整理します。

誤り①: 工事内容が「一式」で終わっている

「○○工事一式」だけでは、工事の範囲や品質の基準が不明確です。設計図書・仕様書・材料の種別・グレード等を添付し、「別紙図面及び仕様書記載のとおり」と明示するのが基本です。追加工事が生じた場合の対応もあらかじめ条項に含めておくと、後日の費用負担をめぐるトラブルを防げます。

誤り②: 変更・追加工事を口頭で処理している

工事途中の変更・追加は、必ず書面(変更契約書または工事変更指示書)で記録することが重要です。建設業法は、契約後の変更についても書面化を求めています。「社長の口頭指示で追加した工事代金を請求したら支払いを拒否された」といった紛争の多くは、書面が存在しないために立証困難な状態に陥るパターンです。

誤り③: 令和6年12月改正前のひな形をそのまま使っている

改正前のひな形では、第4号(施工しない日の定め)と第8号の算定方法が含まれていない場合があります。国土交通省の標準請負契約約款も令和7年12月改正版が公表されており、最新の様式を確認することが必要です。また、自社で独自に作成した契約書については、弁護士または行政書士によるリーガルチェックを受けることを推奨します。

誤り④: 契約不適合責任の定めが旧法の「瑕疵担保責任」のまま

2020年4月施行の改正民法により、「瑕疵担保責任」という概念は廃止され「契約不適合責任」に移行しました。旧法時代のひな形には「瑕疵担保責任として○年間保証する」という条項が残っている場合があります。改正民法下での「契約不適合責任」は権利行使の方法・期間・内容が変わっているため、現行法に合わせた条項への更新が必要です。契約不適合責任条項の書き方で詳しく解説しています。

この点について詳しくは、契約書のリーガルチェック|確認すべき10のポイントもご参照ください。

よくある質問

Q1. 工事金額が500万円未満の小規模工事でも建設工事請負契約書は必要ですか?

建設業法第19条の書面交付義務は、工事金額の大小にかかわらず、建設工事の請負契約すべてに適用されます。ただし、建設業の許可が不要な軽微な工事(建築工事で請負代金1,500万円未満の工事など)についても、建設業者であれば同じく書面による契約締結が求められます。工事の規模に関係なく、口頭だけの約束は法的リスクを伴います。

Q2. 電子契約で建設工事請負契約書を締結できますか?

はい、できます。建設業法第19条第3項により、一定の技術的基準を満たす電磁的方法(電子契約)による締結が認められています。具体的には、①相手方の承諾を書面または電磁的方法で得ること、②電子データが改変されていないことを確認できるシステムを使用すること、の2点が必要です。電子契約の場合は課税文書が作成されないため、印紙税の負担も生じません。

Q3. 建設工事標準請負契約約款(ひな形)をそのまま使えばよいですか?

国土交通省が公表している標準請負契約約款は、法定16項目を網羅した信頼性の高い基本フォーマットです。ただし、実際の工事では「資材の支給条件」「特殊な検査方法」「近隣対応のルール」など、個別の事情に応じた条項の追加・修正が必要になる場合があります。ひな形はあくまでスタート地点であり、工事の内容や発注者・受注者の関係性に応じて適切に調整することが重要です。

Q4. 建設業許可を持っていない業者(軽微な工事を行う業者)との契約書も同じ様式でよいですか?

建設業許可の有無にかかわらず、建設業法第19条の書面義務は建設工事の請負契約全般に適用されます。ただし、許可業者(建設業者)に課される義務と、許可不要の事業者に対する適用の範囲は条文上で異なります。許可業者が相手方の場合には、標準請負契約約款を参考にした詳細な契約書を交わすことを強くお勧めします。建設業許可制度の概要については、建設業許可とは?要件・種類・申請の流れを解説もご覧ください。

Q5. 工事完成後に追加工事が発生した場合、別途契約書が必要ですか?

はい、追加工事・変更工事が発生した場合には、変更契約書または追加工事請負契約書を新たに作成する必要があります。建設業法は当初の契約変更についても書面化を求めており、口頭での変更合意のみでは法令上の問題が生じるほか、後日の代金請求でトラブルになるリスクがあります。変更内容・追加金額・変更後の工期を明確にした書面を作成し、双方で署名押印したうえで1部ずつ保持してください。

まとめ

建設工事請負契約書の作成において、最も重要なのは建設業法第19条が定める16項目の法定記載事項を漏れなく盛り込むことです。令和6年12月改正で追加された「施工しない日の定め(第4号)」と「価格変動に基づく変更額の算定方法(第8号)」への対応も、今後の契約書作成では必須となります。

実務上の落とし穴として多いのは、①工事内容の記載が曖昧、②変更・追加工事の書面化を省略、③旧法の瑕疵担保責任条項が残ったまま、④改正前のひな形をそのまま流用している、の4点です。国土交通省が公表する標準請負契約約款を基礎とし、個別工事の実態に合わせた条項を追加・修正したうえで、専門家によるリーガルチェックを受けることをお勧めします。

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※ 2026年4月時点の建設業法・民法に基づく解説です。契約内容は個別の工事内容により異なります。具体的な契約書作成は専門家にご相談ください。

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