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「後見制度支援信託」「後見制度支援預金」という言葉を見聞きして、「通常の成年後見とは何が違うのか」と疑問を感じた方もいるのではないでしょうか。いずれも、成年後見人が管理する本人の財産を安全に保全するための仕組みであり、家庭裁判所の指示に基づいて利用されます。
後見制度支援信託とは、被後見人の財産のうち日常的に使わないまとまった金銭を信託銀行等に信託し、家庭裁判所の指示書がなければ払い戻しや解約ができないようにする制度です。同様の機能を銀行預金で実現するものが後見制度支援預金です。この記事では、両制度の仕組み・違い・手続きの流れ・メリットと注意点を整理して解説します。
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目次
後見制度支援信託とは?制度の概要
後見制度支援信託は、成年後見制度(法定後見の「後見」類型)および未成年後見において、本人の財産を適切に保護するために設けられた仕組みです。日常的な生活費に充てる金銭は後見人が管理する預貯金口座に残し、それ以外のまとまった金銭を信託銀行等に信託します。
信託された財産は、家庭裁判所が発行する「指示書」がなければ払い戻し・解約・金額変更ができません。つまり、後見人が単独の判断で大きな金額を引き出すことができない構造になっており、後見人による不正な財産流出を防止する役割を果たしています。
この制度の根拠は信託法および家事事件手続法にあり、最高裁判所と信託協会が連携して2012年に運用が開始されました。利用できるのは法定後見の「後見」類型に限られ、「保佐」「補助」では利用できません。
後見制度支援預金とは?支援信託との違い
後見制度支援預金は、後見制度支援信託と同じ目的を持ちながら、信託銀行ではなく一般の金融機関(銀行・信用金庫等)の預金口座を利用する仕組みです。支援信託が信託契約を締結するのに対し、支援預金は特別な預金口座を開設する形で利用します。
| 比較項目 | 後見制度支援信託 | 後見制度支援預金 |
|---|---|---|
| 利用する金融機関 | 信託銀行等(三井住友信託銀行・みずほ信託銀行等) | 一般の銀行・信金・信組等 |
| 契約形態 | 信託契約 | 預金契約(専用口座) |
| 預入の最低金額 | 金融機関により異なる(概ね1,000万円以上が目安) | 比較的少額から利用可能 |
| 家裁の指示書 | 払戻し・解約に必要 | 払戻しに必要 |
| 対象類型 | 後見・未成年後見 | 後見・未成年後見 |
| 利用手数料 | 金融機関の信託報酬(年数千円程度) | 口座維持手数料(無料の場合もあり) |
| 元本保証 | 元本補てん特約付き信託のため実質的に元本保証 | 預金保険制度の対象(1,000万円まで) |
| 利用開始時の費用 | 専門家報酬が発生する場合あり | 一般に信託より低コスト |
後見制度支援預金は、支援信託に比べて取扱金融機関が多く、地域の信用金庫や信用組合でも利用できるため、身近な金融機関で手続きを完結できるメリットがあります。一方、信託の方が預入金額が大きい場合の保全性に優れるとされるケースもあり、本人の財産状況に応じた選択が必要です。
後見制度支援信託・支援預金の手続きの流れ
Step 1:家庭裁判所による利用検討の指示
成年後見が開始された後、家庭裁判所が本人の財産状況を確認し、支援信託または支援預金の利用が適当と判断した場合に、後見人(または別途選任された専門職後見人)に対して利用の検討を指示します。一般的には、本人の流動資産が一定額以上(目安として500万円〜1,000万円程度以上)の場合に検討対象となることが多いとされています。
Step 2:専門職後見人の選任(必要な場合)
親族後見人が選任されている場合、支援信託・支援預金の利用にあたり、家庭裁判所が弁護士や司法書士等の専門職後見人を追加で選任することがあります。専門職後見人が信託・預金の設定手続きを主導し、設定完了後に辞任するのが一般的な流れです。
Step 3:信託契約の締結または専用口座の開設
家庭裁判所の指示書に基づき、信託銀行等との信託契約の締結(支援信託の場合)、または金融機関での専用口座の開設(支援預金の場合)を行います。日常的な生活費として後見人が管理する預貯金口座に残す金額と、信託・預金に回す金額は家庭裁判所の指示に基づいて決定します。
Step 4:定期交付金の設定と運用開始
日常の生活費等について、信託財産または支援預金から後見人の管理口座へ定期的に一定額を送金(定期交付)する設定を行います。入院費用や施設の入所費用など臨時の出費が必要な場合は、都度家庭裁判所に指示書の発行を申請し、払い戻しを受ける手続きとなります。
後見制度支援信託・支援預金の詳細な手続きについては法務省の成年後見制度に関するページでも説明されています。
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利用するメリットと注意点
メリット
- 財産の不正流出を防止:家庭裁判所の指示書がなければ大きな金額を動かせないため、後見人による不正な引き出しを防げます
- 後見人の管理負担を軽減:大きな金額の管理を金融機関に任せることで、後見人(特に親族後見人)の心理的・実務的な負担が軽減されます
- 家庭裁判所の監督が及ぶ:指示書の発行を通じて、裁判所が財産の流れを把握・管理できるため、透明性が確保されます
- 元本が保全される:支援信託は元本補てん特約付き、支援預金は預金保険の対象であり、元本の安全性が確保されています
注意点
- 臨時の出費に時間がかかる:まとまった金額が急に必要になった場合、家庭裁判所に指示書の発行を申請する手続きが必要であり、即日の対応は難しい場合があります
- 専門職後見人の報酬が発生する場合がある:支援信託・支援預金の設定にあたって専門職後見人が選任された場合、その報酬(本人の財産から支払い)が発生します
- 利用できるのは「後見」類型のみ:保佐・補助の場合は利用できません。また、任意後見では対象外です
- すべての財産が対象ではない:不動産や有価証券は信託・預金の対象外であり、金銭(預貯金)のみが対象です
よくある誤解として「後見制度支援信託を利用すると後見人が不要になる」という認識がありますが、これは誤りです。支援信託・支援預金はあくまで財産保全の仕組みであり、後見人の選任と日常の身上監護・事務処理は別途必要です。
判断能力が十分なうちであれば、法定後見ではなく任意後見契約で将来に備えることも選択肢の一つです。任意後見では自分の信頼できる人を後見人として指名でき、代理権の範囲も自分で決められます。両制度の違いは法定後見と任意後見の違いで詳しく解説しています。
よくある質問
Q. 後見制度支援信託・支援預金はどのような場合に利用されますか?
成年後見(法定後見の「後見」類型)が開始された本人の流動資産が一定額以上あり、家庭裁判所が財産保全の必要性が高いと判断した場合に利用が検討されます。親族後見人が選任されたケースで利用されることが多く、後見人による不正な財産流出を制度的に防止することが目的です。
Q. 支援信託と支援預金のどちらを選べばよいですか?
どちらの制度を利用するかは家庭裁判所の指示に基づいて決定されるため、後見人や家族が自由に選べるわけではありません。ただし、財産の額・地域の金融機関の取扱状況・手数料などを考慮して裁判所が判断します。支援預金は取扱金融機関が多く少額からでも利用しやすい傾向にあります。
Q. 後見制度支援信託を利用すると信託財産はどのように運用されますか?
後見制度支援信託は元本補てん特約付きの金銭信託であり、積極的な運用を目的としていません。本人の財産を安全に保全することが主目的であるため、運用による高い利回りは期待できませんが、元本が減るリスクもありません。
Q. 任意後見契約でも支援信託・支援預金を利用できますか?
利用できません。後見制度支援信託・支援預金は、家庭裁判所の監督下にある法定後見(後見類型)および未成年後見でのみ利用可能な制度です。任意後見の場合は、任意後見契約の内容に基づいて後見人が財産管理を行い、任意後見監督人がその監督を行う仕組みとなっています。
まとめ
- 後見制度支援信託・支援預金は、法定後見における本人の財産を安全に保全する仕組み
- 家庭裁判所の指示書がなければ払い戻し・解約ができず、後見人の不正防止に機能する
- 支援信託は信託銀行、支援預金は一般の銀行・信金等で利用でき、それぞれ特徴が異なる
- 判断能力が十分なうちは、任意後見契約で自分の意思に基づく備えを検討することも有効
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|---|---|
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※ 2026年4月時点の民法・信託法・家事事件手続法に基づく解説です。個別の事案では弁護士への相談もご検討ください。
※ 記事の内容には細心の注意を払っておりますが、万が一誤りがございましたらご指摘いただけますと幸いです。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではございません。具体的なケースについては専門家へのご相談をおすすめいたします。


