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「亡くなった親に借金があったことを初めて知った」「相続した覚えのない債務の請求書が届いた」——ご家族を亡くされた悲しみのなかで、思いがけず借金の問題に直面する方は決して少なくありません。故人の債務は相続によって相続人に承継されますが、その債務がすでに消滅時効の期間を過ぎている場合には、時効援用によって支払義務をなくせる可能性があります。
ここで押さえておきたいのは、相続人は被相続人(故人)の時効援用権も相続するという点です。故人が生前に時効援用をしていなくても、相続人が代わって援用の意思表示を行うことができます。
「故人の借金に時効援用が使えるのか確認したい」「相続放棄の期限が迫っているが判断がつかない」——そうしたご不安をお持ちの方は、行政書士法人Treeまでお気軽にご相談ください。内容証明作成の専門家が状況を整理し、対応方法をご提案します。相談は何度でも無料です。
目次
故人の借金は相続でどうなるか
相続が発生すると、故人の財産だけでなく債務も原則として相続人に承継されます。まずは相続と債務の基本的な関係を理解しておきましょう。
相続人が引き継ぐもの
民法第896条により、相続人は被相続人の「一切の権利義務」を承継します。プラスの財産(預金・不動産など)だけでなく、マイナスの財産(借金・未払金・保証債務など)も相続の対象です。相続人が複数いる場合、債務は法定相続分に応じて各相続人に分割承継されるのが原則です(最高裁昭和34年6月19日判決)。
故人の債務への対応は3つの選択肢がある
| 選択肢 | 内容 | 期限 |
|---|---|---|
| 単純承認 | プラス・マイナスの財産を全て承継 | なし(原則) |
| 限定承認 | プラスの財産の範囲内で債務を弁済 | 相続を知った日から3か月以内 |
| 相続放棄 | 一切の財産・債務を放棄 | 相続を知った日から3か月以内 |
相続放棄と限定承認は家庭裁判所への申述が必要で、期限は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」です(民法第915条第1項)。この3か月を「熟慮期間」と呼びます。熟慮期間を過ぎると原則として単純承認したものとみなされ、故人の債務を全額引き継ぐことになります。
相続放棄の手続きについては裁判所の相続放棄案内ページで詳しく解説されています。
相続した借金に時効援用は使えるか
相続人は被相続人の時効援用権を承継する
消滅時効の援用権は「一身専属権」ではないため、相続の対象になります。つまり、被相続人が生前に時効援用をしていなくても、相続人が被相続人の立場を引き継いで時効の援用をすることが可能です。
時効の起算点や期間は被相続人の債務を基準に判断されます。被相続人の最終返済日から時効期間が経過していれば、相続人は内容証明郵便で時効援用の意思表示をすることで、相続した債務の支払義務を消滅させることができます。
時効期間の計算方法
相続した債務の時効期間は、債権者の種類と債務の発生時期によって異なります。
| 債権の種類 | 時効期間 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 2020年4月1日以降に発生した債権 | 権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年(いずれか早い方) | 民法第166条第1項第1号・第2号 |
| 2020年3月31日以前に発生した商事債権 | 5年(旧商法第522条) | 改正前商法 |
| 2020年3月31日以前に発生した一般債権 | 10年(旧民法第167条第1項) | 改正前民法 |
| 確定判決が出ている債権 | 判決確定日の翌日から10年 | 民法第169条第1項 |
貸金業者やクレジットカード会社からの借入は、多くの場合「商行為によって生じた債権」に該当するため、2020年3月31日以前の旧法下でも時効期間は5年です。
相続放棄と時効援用の使い分け
故人の借金への対応として、相続放棄と時効援用はどちらも支払義務を免れる手段ですが、それぞれメリット・デメリットがあります。状況に応じた使い分けが重要です。
相続放棄を選ぶべきケース
故人にめぼしいプラスの財産がなく、債務の総額が大きい場合は相続放棄が適しています。相続放棄をすれば、債務だけでなく財産も含めて一切の相続を放棄するため、借金の問題から完全に解放されます。ただし、相続を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要がある点に注意してください。
時効援用を選ぶべきケース
故人にプラスの財産(自宅不動産・預金など)がある場合、相続放棄をするとそれらの財産も失ってしまいます。債務が時効を迎えている可能性がある場合は、相続を承認したうえで時効援用をすることで、プラスの財産を引き継ぎつつ債務の支払義務を消滅させることが可能です。
| 比較項目 | 相続放棄 | 時効援用 |
|---|---|---|
| プラスの財産 | 放棄(引き継げない) | 引き継げる |
| 期限 | 相続を知ってから3か月以内 | 期限なし(時効完成後いつでも可) |
| 手続き | 家庭裁判所への申述 | 内容証明郵便の送付 |
| 他の債務への影響 | 全ての債務を放棄 | 援用した債務のみ消滅 |
| リスク | 期限徒過のリスク | 時効不成立のリスク |
なお、相続放棄の熟慮期間(3か月)は家庭裁判所への申立てにより延長が認められる場合がありますが、延長が保証されるわけではありません。借金の存在が判明した時点で速やかに判断を進めることが大切です。
相続した借金の時効援用で注意すべきポイント
相続人の行為による時効更新に注意
相続人が故人の債務について、債権者に「払います」と伝えたり、一部でも返済したりすると、債務承認として時効が更新されてしまう可能性があります。故人宛ての催告書が届いた場合、内容を確認する前に債権者に連絡することは避けてください。
相続人が複数いる場合の対応
相続人が複数いる場合、各相続人は法定相続分に応じた債務のみを負担します。時効援用もそれぞれの相続人が独立して行う必要があります。ある相続人が時効援用をしても、他の相続人の分まで自動的に時効が援用されるわけではありません。
「知らなかった」借金が後から発覚するケース
相続発生時には認識していなかった借金が、数か月後や数年後に催告書の形で発覚することがあります。この場合でも、熟慮期間の起算点は「相続の開始があったことを知った時」であり、借金の存在を知った時ではないのが原則です。ただし、判例上、相続財産の全体像を認識できなかったことに相当の理由がある場合には、起算点が後ろにずれると解される余地もあります(最高裁昭和59年4月27日判決)。
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よくある質問
Q. 故人の借金が時効かどうかはどうやって確認しますか?
故人の最終返済日を確認する必要があります。CIC・JICC・KSC(全国銀行個人信用情報センター)に相続人として信用情報の開示請求を行うことで、最終入金日や債権者情報を確認できます。KSCは銀行・信用金庫等の借入情報を保有しています。開示請求には故人の死亡の事実がわかる戸籍謄本と、自身が相続人であることを示す書類が必要です。催告書に記載された「約定弁済期日」や「最終入金日」も手がかりになりますが、正確な確認にはCIC・JICC情報が有用です。
Q. 相続放棄の期限(3か月)が過ぎてしまったのですが、時効援用はできますか?
はい、相続放棄の熟慮期間が過ぎても時効援用は可能です。熟慮期間の経過により単純承認したものとみなされますが、承継した債務の消滅時効が完成していれば、相続人は時効援用の意思表示をすることで支払義務を消滅させることができます。時効援用には相続放棄のような期限はなく、時効完成後であればいつでも行えます。
Q. 相続人が複数いる場合、一人が時効援用すれば全員分の効力がありますか?
いいえ、時効援用は各相続人がそれぞれ独立して行う必要があります。一人の相続人が時効を援用しても、他の相続人の負担部分には効果が及びません。相続人全員の債務を消滅させるには、全員がそれぞれ時効援用の意思表示をする必要があります。
Q. 故人が生前に債務を承認していた場合、相続人は時効援用できませんか?
故人が生前に債務承認をしていた場合、その時点で時効が更新(リセット)されています。更新後の時効起算点から再度5年(または10年)が経過していなければ、時効は完成しておらず援用できません。ただし、債務承認から再度時効期間が経過している場合には、相続人は改めて時効援用を行うことが可能です。
Q. 時効援用と相続放棄を同時にすることはできますか?
制度の性質上、両方を同時に行うことはできません。相続放棄をすると「初めから相続人ではなかった」とみなされるため(民法第939条)、相続した債務に対して時効援用をする立場がなくなります。逆に、時効援用は相続を承認していることが前提になります。どちらが有利かは故人の財産・債務の状況によって異なるため、専門家に相談して判断することをお勧めします。
まとめ
- 故人の借金は原則として相続人に承継される(民法第896条)
- 相続人は被相続人の時効援用権も相続し、独立して時効を援用できる
- プラスの財産を引き継ぎたい場合は、相続放棄より時効援用のほうが有利な場合がある
- 相続放棄の熟慮期間(3か月)を過ぎても時効援用は可能
- 債権者に安易に連絡・返済すると債務承認で時効が更新されるおそれあり
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|---|---|
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※ 2026年4月時点の民法・民事訴訟法に基づく解説です。個別の債務状況により対応が異なります。具体的な時効成否の判断は専門家にご相談ください。


