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経営事項審査(経審)とは?公共工事の入札に必要な手続き

更新: 約16分で読めます

経営事項審査(経審)とは、公共工事の入札に参加するために必要な審査です。建設業許可を持つ事業者が、経営状況や技術力などを客観的に評価される仕組みで、建設業法第27条の23に根拠があります。審査の結果は「総合評定値(P点)」として数値化され、入札参加資格の等級格付けに直結します。この記事では、経審の審査項目・評価基準・手続きの流れを解説し、申請に向けて準備すべきポイントを整理します。

「経審を受けたいが、何から手をつければよいかわからない」「P点を少しでも上げたい」という方は、行政書士法人Treeにご相談ください。建設業許可申請の専門家が、経審の準備から申請代行までサポートいたします。相談は何度でも無料です。

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経営事項審査(経審)とは

経審の目的と法的根拠(建設業法第27条の23)

経営事項審査は、公共工事の発注者が建設業者の施工能力を客観的に判断するための制度です。建設業法第27条の23では、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者に対して、この審査を受けることを義務づけています。

公共工事は国民の税金で行われるため、発注者は「適切な施工能力を持つ業者」を公正に選定しなければなりません。経審は、経営規模・財務状況・技術力・社会性といった複数の観点から事業者を数値で評価し、その結果を入札参加資格の審査に反映させます。つまり、経審のスコアが高いほど、より大規模な公共工事の入札に参加できる可能性が高まる仕組みです。

経審が必要な場合・不要な場合

経審が必要になるのは、公共工事を発注者から直接請け負う(元請として受注する)場合です。具体的には、国・地方公共団体・独立行政法人・公社等が発注する建設工事の入札に参加するには、経審の結果通知書が必須となります。

一方、以下のケースでは経審は不要です。

  • 民間工事のみを請け負う場合:民間企業から受注する工事には経審の義務はありません
  • 公共工事を下請として施工する場合:元請から下請けとして受注するだけであれば、経審は不要です
  • 建設業許可を持たない事業者:経審は建設業許可を前提とするため、許可がなければそもそも申請できません

建設業許可の取得がまだの方は、まず「建設業許可とは?取得要件・申請手続き」をご確認ください。

経審の審査項目と評価基準

経審では、事業者の能力を4つの審査項目で評価し、それぞれの点数を所定の計算式に当てはめて「総合評定値(P点)」を算出します。各項目の概要は以下の通りです。

審査項目 記号 評価の内容 ウエイト
経営規模 X1・X2 完成工事高・自己資本額・利払前税引前償却前利益 X1: 0.25 / X2: 0.15
技術力 Z 技術職員数・元請完成工事高 0.25
社会性等 W 社会保険加入状況・建退共加入・法令順守 等 0.15
経営状況 Y 財務諸表に基づく8指標(純支払利息比率 等) 0.20

経営規模等評価(X1・X2)

経営規模は、事業者の「大きさ」を測る指標です。X1は完成工事高(業種別の年間売上高)に基づいて評価されます。直近2年または3年の平均値のうち有利な方を選択でき、完成工事高が大きいほど点数も高くなります。

X2は自己資本額利払前税引前償却前利益(いわゆるEBITDA的な指標)の2つから構成されます。自己資本の厚さは財務安定性を、利払前税引前償却前利益は収益力を示す指標として評価に反映されます。

技術力評価(Z)

技術力は、技術職員の人数と資格の等級、および元請完成工事高の2つの要素で評価されます。1級国家資格者(1級建築士・1級施工管理技士等)は高い配点を受け、監理技術者資格者証を保有する技術者にはさらに加点があります。

技術力の点数を高めるには、社員に資格取得を促進することが直接的な対策です。なお、審査基準日(通常は決算日)時点で常勤している技術職員のみがカウント対象となるため、審査基準日の直前に入社させた技術者が6か月を超える恒常的雇用関係を証明できない場合は対象外となります。

社会性等評価(W)

社会性等の評価は、建設業者としての社会的責任や法令遵守の姿勢を数値化するものです。主な評価項目は以下の通りです。

  • 社会保険の加入状況(雇用保険・健康保険・厚生年金保険):未加入の場合は減点(※2026年7月改正で削除予定。下記参照)
  • 建設業退職金共済制度(建退共)への加入
  • 法定外労災保険の加入
  • 営業年数:許可を受けてからの年数が長いほど加点
  • 防災活動への貢献:防災協定の締結等
  • 建設キャリアアップシステム(CCUS)への対応
  • 法令遵守の状況:営業停止処分歴がある場合は減点
  • 監査の受審状況:会計監査人の設置、経理処理の適正化

社会保険への加入はW評点における重要な審査項目として、未加入の場合は減点対象となってきました。なお、2020年10月以降、社会保険の加入は建設業許可・更新の要件として義務化されています。許可更新の周期(5年)を経た2026年7月1日施行の改正では、許可段階で社会保険加入が担保されることから、経審のW評点における社会保険関連項目(W1-1〜W1-3)は削除される予定です。同改正では、「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の加点項目追加やCCUS関連の配点見直しも予定されています。

経営状況分析(Y)

経営状況分析は、財務諸表をもとに事業者の財務健全性を評価する項目です。この分析は許可行政庁ではなく、国土交通大臣の登録を受けた経営状況分析機関が行います。

分析に用いられる指標は以下の8つです。

指標 分類 内容
純支払利息比率 負債抵抗力 支払利息の負担度合い
負債回転期間 負債抵抗力 負債の返済にかかる期間
総資本売上総利益率 収益性・効率性 総資本に対する利益率
売上高経常利益率 収益性・効率性 売上に対する経常利益の割合
自己資本対固定資産比率 財務健全性 固定資産に対する自己資本の充実度
自己資本比率 財務健全性 総資本に占める自己資本の割合
営業キャッシュフロー 絶対的力量 本業から得られるキャッシュの量
利益剰余金 絶対的力量 過去の利益の蓄積額

経営状況分析の結果はY点として通知されます。財務内容の改善には時間がかかりますが、不要な借入金の返済や未回収の売掛金の整理といった取り組みが点数向上に寄与します。分析機関への申請に先立ち、決算変更届の提出を済ませておく必要がある点にも注意してください。

総合評定値(P点)の計算式

各審査項目の点数を以下の計算式に当てはめて算出されるのが総合評定値(P点)です。

P = 0.25 × X1 + 0.15 × X2 + 0.20 × Y + 0.25 × Z + 0.15 × W

この計算式からわかる通り、X1(完成工事高)とZ(技術力)がそれぞれ25%ずつ、Y(経営状況)が20%、X2(自己資本・利益額)とW(社会性)がそれぞれ15%のウエイトを占めています。短期間でP点を引き上げたい場合は、Z(技術力)の向上が比較的取り組みやすい項目です。資格保有者の採用や社員の資格取得支援を進めることで、着実に点数を積み上げられます。

経審の手続きの流れ

経審を受けるには、事前の準備を含めて5つのステップを順番に進める必要があります。申請から結果通知までは通常1か月前後を要するため、入札参加資格の申請時期から逆算してスケジュールを立てることが重要です。

Step 1: 決算変更届の提出

経審を受けるための前提条件として、審査基準日(直前の決算日)までの決算変更届が許可行政庁に提出済みであることが求められます。決算変更届は事業年度終了後4か月以内が提出期限ですが、経審の申請を見据えて早めに準備しておくことをおすすめします。

決算変更届の作成方法については「決算変更届の書き方と提出期限」で詳しく解説しています。

Step 2: 経営状況分析の申請

決算変更届の提出後、国土交通大臣の登録を受けた経営状況分析機関に分析を申請します。分析機関は複数あり、手数料や処理スピードに多少の違いがあります。申請には以下の書類が必要です。

  • 経営状況分析申請書
  • 建設業法に基づく財務諸表(直近1期分または3期分)
  • 建設業許可通知書の写し
  • 税務申告書の写し(確認用)

分析機関は申請書類を受理後、8つの経営指標を算出してY点(経営状況分析結果通知書)を交付します。処理期間は分析機関によって異なりますが、概ね数日から2週間程度です。

Step 3: 経営事項審査の申請

経営状況分析結果通知書(Y点)を受領したら、許可行政庁(知事許可は都道府県、大臣許可は地方整備局)に経審の申請を行います。申請に必要な主な書類は以下の通りです。

書類 備考
経営規模等評価申請書・総合評定値請求書 業種ごとに申請
工事種類別完成工事高・元請完成工事高 直近2年または3年の実績
技術職員名簿 資格証の写しを添付
その他の審査項目(社会性等) 社会保険加入証明書等
経営状況分析結果通知書 Y点の原本
建設業許可通知書の写し
消費税確定申告書の写し 税抜処理の確認用

申請手数料は、1業種の場合11,000円で、業種が1つ増えるごとに2,500円が加算されます(例: 3業種の場合は16,000円)。

Step 4: 結果通知書の受領

許可行政庁が審査を行い、経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書が交付されます。審査期間は都道府県によって異なりますが、申請から概ね2週間〜1か月程度が目安です。通知書には業種ごとのP点が記載されており、この点数が入札参加資格の格付けに使用されます。

なお、経審の結果(P点を含む)は一般財団法人建設業情報管理センター(CIIC)を通じて一般に公開されます。誰でも閲覧可能であるため、取引先や金融機関がスコアを確認するケースもあります。

Step 5: 入札参加資格申請

経審の結果通知書を受領したら、公共工事の発注者(国・都道府県・市区町村等)に入札参加資格申請(指名願い)を行います。発注者ごとに受付時期や申請方法が異なるため、事前にスケジュールを確認しておく必要があります。

入札参加資格は、経審のP点と発注者独自の主観的事項(工事成績・地域要件等)を組み合わせて等級(A・B・C等)が格付けされます。格付けに応じて参加できる工事の規模が決まるため、P点の向上は直接的に受注機会の拡大につながります。

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経審の有効期間と注意点

経審の結果通知書には有効期間があります。有効期間は審査基準日から1年7か月です。審査基準日とは、原則として直前の事業年度の終了日(決算日)を指します。たとえば3月決算の場合、2025年3月31日を審査基準日として受けた経審の結果は、2026年10月31日まで有効です。

公共工事を継続的に受注するためには、この有効期間が切れる前に次の経審を受けておかなければなりません。有効期間に「空白」が生じると、その間は公共工事の入札に参加できなくなります。毎年の決算後に速やかに決算変更届を提出し、経営状況分析→経審の申請というサイクルを回していくことが重要です。

実務上見落としがちなのは、決算変更届の提出が遅れると経審の申請も後ろ倒しになり、結果として有効期間に空白が生じるケースです。決算確定後はできるだけ早く届出と分析申請の手続きを進めましょう。

また、審査基準日以降に技術職員の退職や社会保険の未加入が発覚した場合でも、経審の結果はあくまで審査基準日時点の状態で評価されます。ただし、虚偽の申請が判明した場合は結果の取消しや許可の取消しにもつながるため、正確な情報に基づいて申請することが大前提です。

よくある質問

Q. 経審の申請にかかる費用はどのくらいですか?

経審の申請手数料は、1業種で11,000円、1業種追加ごとに2,500円です。これに加えて、経営状況分析機関への手数料が別途必要で、分析機関によって異なりますが概ね9,000円〜14,000円程度です。行政書士に申請代行を依頼する場合は別途報酬が発生しますが、書類の作成負担や記載ミスのリスクを考慮すると、専門家への依頼を検討する価値があります。

Q. 経審を受けなくても公共工事は受けられますか?

原則として受けられません。建設業法第27条の23により、公共工事を元請として受注する建設業者には経審の受審が義務づけられています。ただし、災害時の応急工事など緊急やむを得ない事情があるものとして国土交通大臣が指定する建設工事は例外とされています。下請として公共工事に携わる場合は経審不要ですが、通常の入札で元請として参加するには有効な経審結果が必要です。

Q. 個人事業主でも経審を受けられますか?

受けられます。経審は法人・個人を問わず、建設業許可を取得している事業者であれば申請可能です。ただし、個人事業主の場合は技術職員が事業主本人のみとなるケースが多く、技術力(Z点)の評価が限られる傾向があります。建設業許可の取得要件については「建設業許可の5つの要件」をご参照ください。

Q. P点を上げるために短期間でできることはありますか?

短期間で効果が出やすいのは、W点(社会性等)の改善です。建退共制度への加入・法定外労災保険の加入・建設キャリアアップシステム(CCUS)への対応など、手続きを進めるだけで加点される項目があります。また、技術職員が資格取得すればZ点も向上します。一方、完成工事高(X1)や財務状況(Y)の改善には時間を要するため、中長期的な視点での取り組みが必要です。

まとめ

経営事項審査(経審)は、公共工事の入札参加に不可欠な審査制度です。経営規模・技術力・社会性・財務状況の4つの観点から事業者を評価し、総合評定値(P点)として数値化されます。

  • P点の計算式: P = 0.25×X1 + 0.15×X2 + 0.20×Y + 0.25×Z + 0.15×W
  • 有効期間は審査基準日から1年7か月。空白を作らないよう毎年申請が必要
  • 手続きの流れ: 決算変更届 → 経営状況分析 → 経審申請 → 結果通知 → 入札参加資格申請

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