建設業関連

建設業の主任技術者・監理技術者の専任配置義務|4,000万円基準と兼任の例外規定

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建設業法では、請負代金が一定額以上の工事には主任技術者・監理技術者を「専任」で配置する義務が課されます。専任配置義務に違反すると、建設業法違反として営業停止処分・許可取消処分の対象となります。本記事では、専任配置義務の基準額、専任の定義、令和7年改正後の運用、複数工事の兼任ルールを実務目線で解説します。

主任技術者・監理技術者の配置と建設業コンプライアンス

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■ 専任配置義務の根拠条文

建設業法第26条第3項:「請負代金の額が政令で定める金額以上の工事のうち、公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるものに関しては、これらの工事を施工する場所ごとに、主任技術者又は監理技術者は、工事現場ごとに専任の者でなければならない」

つまり、(1)請負代金が一定額以上、(2)公共性のある重要な工事、の両方を満たす工事については、主任技術者・監理技術者を専任で配置する義務があります。

■ 専任配置の基準額(令和5年1月1日改正)

建設業法施行令第27条第1項により、専任配置義務の基準額は以下のとおり改正されました。

工事種別 令和5年1月以降 従前
建築一式工事 請負代金 8,000万円以上 7,000万円以上
建築一式工事以外 請負代金 4,000万円以上 3,500万円以上

基準額の引上げは、物価上昇・労務費高騰を反映した運用見直しによるものです。請負代金には消費税・地方消費税を含みます。

■ 「専任」の定義

「専任」とは、他の工事現場の主任技術者・監理技術者を兼ねず、当該工事現場のみに常時継続的に専念することをいいます。具体的には以下の要件を満たす必要があります。

①常時雇用関係:3か月以上の継続雇用契約があり、社会保険に加入。

②当該工事への常勤性:原則として当該工事現場に毎日勤務。短期間の現場離脱(会議・研修・休暇)は認められるが、他の工事現場の管理を兼務してはならない。

③他の工事の主任技術者・監理技術者の兼任不可:原則として1名の技術者は1つの専任工事のみを担当。例外規定(後述)に該当しない限り、複数現場の専任は不可。

■ 公共性のある重要工事(建設業法施行令第27条第2項)

専任義務の対象となる「公共性のある重要工事」は以下のとおりです。

①国・地方公共団体発注の工事
②鉄道・道路・河川・港湾・上下水道等の公共施設工事
③学校・病院・劇場・百貨店等の多数者利用施設の工事
④電気・ガス・水道・通信・運輸事業の用に供する施設の工事

個人住宅工事や小規模店舗工事は、請負代金が基準額を超えても専任義務の対象外です。

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■ 専任義務の例外規定(兼任可能なケース)

令和2年改正建設業法第26条第3項ただし書および施行令第28条で、一定の条件下では複数現場の主任技術者を1名で兼任できる場合があります。

①密接関連工事の特例:以下のすべてを満たす工事は、主任技術者1名で兼任可能(監理技術者は対象外)。
 (a) 工事現場の相互間が10km以内
 (b) 工事の対象となる工作物等に一体性または連続性がある
 (c) 同一建設業者が同一発注者から受注
 例:道路改良工事と同一区間の舗装工事

②令和2年新設・特定専門工事の特例:請負代金3,500万円未満の鉄筋工事・型枠工事のうち、下請業者の主任技術者は、元請業者の主任技術者の指導監督下で兼任可能(建設業法第26条の3)。

③監理技術者補佐の活用(令和2年新設):監理技術者は、1級技士補(または1級施工管理技士補)を補佐として配置すれば、2つの工事現場まで兼任可能(建設業法第26条第4項)。1級技士補制度は令和3年度技術検定改正で創設されました。

■ 違反時のペナルティ

専任配置義務違反は以下のペナルティが課されます。

①営業停止処分(建設業法第28条第3項):違反工事の種類・規模に応じて、当該営業所単位で1か月〜1年の営業停止。

②指示処分(建設業法第28条第1項):是正措置の指示。

③許可取消処分(建設業法第29条第1項):違反を繰り返す場合または営業停止処分を受けても改善しない場合。

④罰則(建設業法第50条):3か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(個人)、両罰規定で法人にも罰金。

⑤公共工事の指名停止:自治体・国の指名停止規定により、最長1年程度の入札参加排除。

■ 令和7年改正の動向

令和7年6月施行の建設業法改正(第三次担い手3法)により、以下の運用見直しが進行中です。

①ICT活用による「遠隔監督」の運用拡大:常時オンサイト勤務でなくとも、ICTツール(カメラ・センサ・ドローン)で遠隔監督できる場合の専任要件緩和ガイドライン。

②監理技術者補佐の対象拡大:2級技士補も一定要件下で監理技術者補佐として配置可能とする方向。

③適切な工期確保の元請責任明文化:工期不足による技術者酷使を防ぐため、元請の工期設定責任が法定化。

これらの改正は段階施行のため、令和7年度〜令和9年度にかけて運用通達が出される予定です。

■ 配置技術者名簿の整備

建設業者は以下の名簿を備え付ける必要があります(建設業法施行規則第14条の2)。

①配置技術者名簿:当該技術者の氏名・資格・経験年数・専任/非専任の区別・配置工事の一覧。

②工事台帳:当該工事の請負代金・専任配置の有無・配置技術者の氏名・実勤務記録。

③帳簿備付期間:完成後10年間。発注者・行政庁の閲覧請求に応じる必要があります。

■ 行政書士法人Treeの対応範囲

当事務所は建設業許可申請・更新・変更届・経審申請に伴う配置技術者の証明書類整備、配置技術者名簿の作成補助、建設業法コンプライアンスチェックを行います。社会保険加入手続については提携社労士、税務については提携税理士をご紹介します。

■ よくある質問

Q1:請負代金4,500万円の公立学校改修工事ですが、専任配置は必要ですか?
A1:必要です。建築一式工事以外で4,000万円以上、かつ公共性のある工事のため専任義務対象です。

Q2:1km離れた2つの民間オフィスビル工事(同一発注者)の主任技術者を兼任できますか?
A2:原則できません。密接関連工事の特例は「工作物等の一体性・連続性」が必要で、独立した2棟は対象外です。

Q3:1級技士補がいれば監理技術者は何現場まで兼任できますか?
A3:1名の技士補補佐につき2つの現場まで兼任可能です(建設業法26条4項)。

■ まとめ

主任技術者・監理技術者の専任配置義務は、建設業法第26条第3項を根拠とする重要なコンプライアンス事項です。令和5年1月改正により基準額が引き上げられ、建築一式工事は8,000万円以上、その他工事は4,000万円以上、かつ公共性のある重要工事が対象となります。

「専任」とは他の工事の主任技術者・監理技術者を兼ねず、当該現場のみに常時継続的に専念することを意味します。例外として、密接関連工事(10km以内・一体性連続性あり)の兼任、特定専門工事の下請技術者兼任、1級技士補補佐による監理技術者の2現場兼任が認められています。

違反時は営業停止処分・許可取消処分・公共工事の指名停止・拘禁刑または罰金という重い処分が課されます。配置技術者名簿と工事台帳の備付け(10年間保存)を徹底し、社会保険加入状況も含めた専任性を継続的に証明できる体制が不可欠です。

令和7年6月改正では、ICT活用による遠隔監督の運用拡大、監理技術者補佐の対象拡大、適切な工期確保の元請責任明文化など、運用見直しが進行中です。当事務所では配置技術者名簿整備から建設業法コンプライアンスチェックまで幅広くサポートしています。建設業の現場体制に不安がある事業者様は、ぜひ一度ご相談ください。

※ 本記事は執筆時点(2026年5月)の法令・運用に基づき作成しています。建設業法・施行令・施行規則は改正頻度が高いため、適用時点で国土交通省の最新情報をご確認ください。

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