建設業法では、請負代金が一定額以上の工事には主任技術者・監理技術者を「専任」で配置する義務が課されます。専任配置義務に違反すると、建設業法上の指示処分・営業停止処分等の対象となります。本記事では、令和7年2月1日施行後の専任配置義務の基準額(原則4,500万円、建築一式工事9,000万円)、専任の考え方、令和6年12月13日施行の専任特例1号・専任特例2号、特定専門工事、複数工事の兼任ルールを実務目線で解説します。
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目次
目次
- 主任技術者・監理技術者の配置義務
- 専任配置が必要となる金額基準(令和7年2月1日改正後の4,500万円・9,000万円)
- 監理技術者が必要となる下請代金額(5,000万円・8,000万円)
- 公共性のある重要工事の範囲
- 「専任」の意味と常駐との違い
- 専任特例1号・専任特例2号による兼任
- 特定専門工事の主任技術者配置省略
- 違反時の監督処分・指名停止リスク
- 配置技術者資料の整理方法
- 業務範囲
1. 主任技術者・監理技術者の配置義務
専任配置義務は建設業法第26条第3項を根拠とします。同項は、公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で、請負代金の額が政令で定める金額以上のものについて、主任技術者又は監理技術者を工事現場ごとに専任の者としなければならないと定めています。ただし、令和6年12月13日施行の改正で新設された専任特例の要件を満たす場合は兼任が認められます。
2. 専任配置が必要となる金額基準(令和7年2月1日施行後)
建設業法施行令の改正(令和6年12月11日公布・令和7年2月1日施行)により、専任の主任技術者・監理技術者を要する請負代金額の下限は以下のとおり引き上げられました。
| 工事種別 | 令和7年2月1日以降(現行) | 令和5年1月〜令和7年1月 |
|---|---|---|
| 建築一式工事 | 請負代金 9,000万円以上 | 8,000万円以上 |
| 建築一式工事以外 | 請負代金 4,500万円以上 | 4,000万円以上 |
基準額の引上げは、近年の建設工事費の高騰を踏まえたものです。請負代金には消費税・地方消費税を含みます。なお、令和7年2月1日より前に契約した工事については、工期途中の専任・非専任の変更に際し当事者間の協議が必要となるため注意が必要です。
3. 監理技術者が必要となる下請代金額(5,000万円・8,000万円)
主任技術者・監理技術者の配置では、二つの金額基準を区別する必要があります。
- 監理技術者を配置する基準(特定建設業許可要件):元請が特定建設業者として一定額以上の下請契約を締結する場合、主任技術者に代えて監理技術者を配置する必要があります。令和7年2月1日以降の基準は、下請代金額の合計5,000万円以上、建築一式工事は8,000万円以上です(従前は4,500万円・7,000万円)。
- 主任技術者・監理技術者を専任配置する基準:上記2の請負代金額(4,500万円・9,000万円)以上。
4. 公共性のある重要工事の範囲(建設業法施行令第27条第1項)
専任義務の対象となる「公共性のある重要工事」は、施行令上、個人住宅や長屋を除くほとんどの工事が対象として整理されることが多くなっています。
- 国・地方公共団体発注の工事
- 鉄道・道路・河川・港湾・上下水道等の公共施設工事
- 共同住宅、店舗、百貨店、ホテル、工場、学校、病院、事務所ビル等、多数の者が利用する施設・工作物に関する工事
- 電気・ガス・水道・通信・運輸事業の用に供する施設の工事
※「民間工事だから対象外」「小規模店舗だから対象外」と一律に判断せず、施設の用途、利用者数、工事内容、請負代金額を確認します。個人住宅や長屋の工事は対象外と整理されます。
5. 「専任」の意味と常駐との違い
専任とは、他の工事現場に係る職務を兼務せず、常時継続的に当該建設工事現場に係る職務に従事していることをいいます。ただし、技術者の配置は、現場施工の稼働中に常時現場へ滞在していることを当然に意味するものではありません。会議、検査、休暇、合理的な一時離脱、ICT活用等の取扱いは、監理技術者制度運用マニュアルや発注者条件を確認します。
①直接的・恒常的な雇用関係:主任技術者・監理技術者は、所属建設業者との直接的かつ恒常的な雇用関係が求められます。公共工事等では、入札申込日等の時点で3か月以上の雇用関係が確認される運用があるため、健康保険証、標準報酬決定通知書、雇用保険、賃金台帳、雇用契約書等で確認します。具体的な確認基準は、公共工事・民間工事、発注者条件、入札公告により確認します。
②専任性:他の工事現場に係る職務との兼務を原則として禁止。専任特例の要件を満たす場合は兼任が認められます(後述)。
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6. 専任特例1号・専任特例2号による兼任(令和6年12月13日施行・施行済み)
令和6年12月13日施行の改正建設業法により、情報通信機器の活用等を要件として主任技術者・監理技術者が複数現場を兼任できる「専任特例」制度が新設されました。
①専任特例1号
主な要件は次のとおりで、すべてを満たす必要があります。
- 請負金額が1億円(建築一式工事は2億円)未満
- 兼任する工事現場が2工事現場以下
- 工事現場間が1日で巡回可能で移動時間が概ね2時間以内
- 下請次数が3次まで
- 現場に連絡員を配置する等の必要な措置
- 情報通信機器等のICT措置による現場状況確認、発注者への説明等
ICT措置等は専任特例1号の要件の一つとして整理されます。単にカメラ、スマートフォン、ドローン等を使用しているだけで兼任が認められるわけではなく、上記すべての要件を満たす必要があります。
②専任特例2号(監理技術者補佐の活用)
監理技術者の職務を補佐する者として、政令で定める監理技術者補佐を各工事現場に専任で配置する場合、監理技術者は2以下の工事現場を兼任できる場合があります。監理技術者補佐には1級施工管理技士補等の資格要件があり、工事業種・指定建設業該当性・資格区分を確認します。
※専任特例1号と専任特例2号を同一技術者が同時に併用することはできない点にも注意が必要です。
7. 特定専門工事の主任技術者配置省略(建設業法第26条の3)
型枠工事又は鉄筋工事で、元請・上位下請が当該特定専門工事について主任技術者を配置し、一定の指導監督体制・書面合意等の要件を満たす場合、下位下請の主任技術者配置を省略できる場合があります。令和7年2月1日以降、特定専門工事の対象となる下請代金額の上限は4,500万円に見直されています(従前4,000万円→4,500万円)。
8. 違反時の監督処分・指名停止リスク
専任配置義務違反は以下のリスクが課されます。
- 指示処分・営業停止処分:主任技術者・監理技術者の不設置、専任義務違反、施工体制台帳の不備等がある場合、建設業法第28条に基づく指示処分又は営業停止処分の対象となる可能性があります。営業停止の範囲・期間は、違反内容、故意・過失、工事規模、発注者への影響、過去の処分歴等により監督処分基準に基づき判断されます。
- 許可取消処分(建設業法第29条):違反を繰り返す場合または営業停止処分を受けても改善しない場合。
- 公共工事の指名停止:自治体・国の指名停止規定により、入札参加排除のリスク。
- 罰則:専任配置義務違反に関連して、虚偽の届出・虚偽記載、標識・帳簿義務違反、無許可営業、監督処分違反等がある場合には、建設業法上の罰則や両罰規定が問題となることがあります。主任技術者・監理技術者の配置違反については、まず監督処分・指名停止・発注者対応のリスクとして整理し、具体的な罰条は違反態様ごとに最新の建設業法で確認します。
9. 配置技術者資料の整理方法
建設業者は、建設業法上の帳簿・営業に関する図書・施工体制台帳等を適切に備え付け、保存する必要があります。配置技術者については、法定帳簿そのものとして「配置技術者名簿」という名称が一律に定められているわけではありませんが、実務上、以下を一覧管理しておくことが重要です。
- 技術者の氏名、資格、実務経験、雇用関係、専任・非専任、配置工事、兼任状況、資格者証・講習修了の有無等
- 工事ごとの請負契約書、注文書・請書、下請契約額、施工体制台帳、施工体系図、配置技術者の氏名・資格・雇用確認資料、監理技術者資格者証、監理技術者講習修了、兼任特例の確認資料、発注者への説明資料
※保存期間は、建設業法上の帳簿、営業に関する図書、施工体制台帳、入札・契約書類、発注者条件により異なるため、資料種類ごとに確認します。
10. 業務範囲の整理
行政書士の業務範囲(行政書士業務・第1条の3第1項第1号)
- 建設業許可申請、更新、変更届、経営事項審査、入札参加資格申請等に関連する書類作成・提出代理
- 配置技術者の資格・実務経験・雇用関係資料、監理技術者資格者証、監理技術者講習修了証、施工体制台帳・施工体系図に反映する基礎資料の整理
業務範囲外(連携先専門家)
- 労務管理、社会保険手続(社会保険労務士業務)
- 安全衛生管理、現場の施工管理そのもの、技術判断(技術士・建築士・施工管理技士)
- 発注者との紛争対応、行政争訟・取消訴訟(弁護士業務)
- 税務(税理士業務)
FAQ|よくあるご質問
Q1. 請負代金4,500万円の公立学校改修工事ですが、専任配置は必要ですか?
工事種別により異なります。建築一式工事以外で、公共性のある重要な建設工事に該当する場合は、令和7年2月1日以降の基準額4,500万円以上に該当するため専任義務の対象となります。一方、建築一式工事として請け負う場合は、基準額が9,000万円以上であるため、4,500万円では金額基準を満たしません。
Q2. 1km離れた2つの民間オフィスビル工事(同一発注者)の主任技術者を兼任できますか?
令和6年12月13日施行後は、専任特例1号の要件を満たすかを確認します。単に距離が1km以内、同一発注者というだけでは足りず、請負金額が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)であること、ICT措置、連絡体制、施工体制、現場間移動時間(概ね2時間以内)、発注者への説明等の要件を満たす必要があります。旧来の密接関連工事の考え方だけで判断しないよう注意します。
Q3. 監理技術者補佐を置けば監理技術者は何現場まで兼任できますか?
専任特例2号では、各工事現場に監理技術者補佐を専任で配置することを前提に、監理技術者が兼任できる工事現場数は2以下とされています。補佐1名で2現場をまとめて補佐できるという意味ではありません。補佐の資格要件(1級施工管理技士補等)、工事業種、発注者条件も確認します。
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まとめ
主任技術者・監理技術者の専任配置義務は、建設業法第26条第3項を根拠とする重要なコンプライアンス事項です。令和7年2月1日施行の建設業法施行令改正により基準額が引き上げられ、現行では建築一式工事は9,000万円以上、その他工事は4,500万円以上、かつ公共性のある重要工事が対象となります。あわせて、監理技術者を配置する特定建設業許可の下請代金額の下限も5,000万円・8,000万円に引き上げられています。
「専任」とは他の工事現場の職務との兼務をせず、当該現場のみに常時継続的に従事することを意味し、現場への常駐そのものを当然に意味するものではありません。直接的・恒常的な雇用関係(公共工事等では3か月以上の雇用確認運用あり)も求められます。
令和6年12月13日施行の改正建設業法により、情報通信機器の活用等を要件とする専任特例1号(請負金額1億円・建築一式2億円未満、2現場以下、移動時間概ね2時間以内、連絡員配置等)と、監理技術者補佐を各現場に専任配置する専任特例2号(2現場まで兼任)が導入されており、これらは既施行の現行制度です。同一技術者が両特例を同時併用することはできません。特定専門工事の主任技術者配置省略特例の下請代金額上限も4,500万円に見直されています。
違反時は指示処分・営業停止処分(建設業法第28条)・許可取消処分(第29条)・公共工事の指名停止等のリスクがあります。配置技術者の管理資料(氏名・資格・雇用関係・専任非専任・配置工事・兼任状況・資格者証等)と施工体制台帳・施工体系図の整備、資料種類ごとの適切な保存期間管理が不可欠です。
当事務所では、建設業許可申請・更新・変更届・経営事項審査・入札参加資格申請等に関連する配置技術者の証明書類整備、施工体制資料の整理を行政書士業務範囲(行政書士業務・第1条の3第1項第1号)で対応します。労務管理・社会保険手続は社会保険労務士、技術判断・現場の施工管理は技術士・建築士・施工管理技士、紛争対応は弁護士、税務は税理士の業務範囲として連携します。建設業の現場体制に不安がある事業者様は、ぜひ一度ご相談ください。
※ 本記事は執筆時点(2026年5月)の法令・運用に基づき作成しています。建設業法・施行令・施行規則は改正頻度が高いため、適用時点で国土交通省の最新情報をご確認ください。


