契約書

贈与契約書の書き方|不動産・金銭の贈与で必要な記載事項

更新: 約14分で読めます

結論から言えば、贈与契約書は「作成しなくても贈与自体は有効」ですが、「作成しないと税務上のリスクが大きくなる」書面です。民法第549条は、贈与は当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することで成立すると規定しており、口頭でも契約は有効に成立します。しかし、書面によらない贈与は各当事者がいつでも解除できるとされ(民法第550条)、さらに税務調査で「贈与の事実があったのか」「名義預金ではないか」と指摘されるリスクがあります。贈与契約書には、贈与者・受贈者の情報、贈与財産の特定、贈与の時期と方法を正確に記載することが重要です。この記事では、不動産・金銭それぞれの贈与契約書の書き方と記載事項を解説します。

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贈与契約書はなぜ必要か

書面によらない贈与は解除できる

民法第550条は「書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない」と定めています。つまり、口頭だけの贈与の約束は、まだ履行されていない部分について、贈与者・受贈者のどちらからでも一方的に撤回できます。「あげると言ったのに撤回された」というトラブルを防ぐためにも、贈与契約書を書面で作成しておくことが有効です。

なお、「履行の終わった部分」とは、動産であれば引渡し、不動産であれば引渡しまたは所有権移転登記のいずれかがなされた状態を指します。不動産の贈与で登記も引渡しも済んでいない段階では、贈与者が一方的に解除できる状態にあるため、受贈者の立場を守るためにも書面化が重要です。

税務上の証拠としての役割

贈与契約書が特に重要になるのは、相続税の調査場面です。親から子への金銭の移動について、税務署が「贈与ではなく名義預金(実質的には親の財産)ではないか」と認定した場合、相続財産に加算されて相続税の対象となります。贈与契約書は、贈与の合意が確かに存在したことを客観的に証明する資料です。毎年の暦年贈与を行う場合は、年ごとに贈与契約書を作成しておくことで、「定期贈与」(最初から総額を約束していた一括贈与)と認定されるリスクも軽減できます。

贈与契約書に記載すべき事項は?

記載事項 金銭贈与の場合 不動産贈与の場合
贈与者の情報 住所・氏名 住所・氏名
受贈者の情報 住所・氏名 住所・氏名
贈与財産の特定 金額(「金○○円」と正確に記載) 土地: 所在・地番・地目・地積
建物: 所在・家屋番号・種類・構造・床面積
贈与の時期 振込日または引渡日 所有権移転登記の申請日
贈与の方法 銀行振込(口座情報を記載) 所有権移転登記による
契約日 契約書の作成年月日 契約書の作成年月日
署名・押印 贈与者・受贈者の双方 贈与者・受贈者の双方(実印が望ましい)
収入印紙 不要 200円(契約金額の記載がない場合)

贈与契約書に記載する数字は概数ではなく正確な数値を使います。金銭であれば「2,050,000円」、不動産の地積であれば「103.67平方メートル」のように、端数まで正確に記載してください。

金銭の贈与契約書はどう書く?

記載例

金銭の贈与契約書は比較的シンプルです。以下の項目を漏れなく記載します。

  • 表題: 「贈与契約書」と明記
  • 前文: 「贈与者○○(以下「甲」という)と受贈者○○(以下「乙」という)は、以下のとおり贈与契約を締結する。」
  • 第1条(贈与の合意): 「甲は、乙に対し、金○○円を贈与し、乙はこれを受諾した。」
  • 第2条(履行方法): 「甲は、○年○月○日までに、前条の金員を乙の指定する下記口座に振り込む方法により引き渡す。」(銀行名・支店名・口座番号・口座名義を記載)
  • 第3条(費用負担): 「振込手数料は甲の負担とする。」
  • 契約日・署名押印欄: 契約書の作成年月日と贈与者・受贈者双方の住所・氏名・押印

金銭贈与の場合、契約書に収入印紙を貼る必要はありません。認印でも法的に問題ありませんが、税務調査を見据えると、本人確認の確実性が高まる実印の使用が望ましいとされています。また、銀行振込で贈与を履行することで、入金の記録が金融機関に残り、贈与の事実を客観的に証明しやすくなります。

暦年贈与で毎年作成する場合の注意点

年間110万円以下の贈与であれば原則として贈与税の申告は不要です(暦年課税の基礎控除)。毎年の暦年贈与を行う際は、以下の点に注意してください。

  • 毎年その都度、新たな贈与契約書を作成する: 初年度に「10年間にわたり毎年110万円を贈与する」と定めると、1,100万円の定期贈与(連年贈与)と認定され、初年度に全額に対する贈与税が課される可能性がある
  • 毎年ごとに独立した贈与の合意と履行を明確にする: 金額や時期を機械的に固定すると定期贈与と疑われやすくなる場合がある。ただし、本質は各年の贈与が独立した契約であることを示すことにある
  • 受贈者名義の口座は受贈者本人が管理する: 通帳・印鑑を贈与者が管理していると名義預金と認定される

不動産の贈与契約書はどう書く?

不動産の特定方法

不動産を贈与する場合は、贈与の対象となる不動産を登記事項証明書(登記簿謄本)の記載に基づいて正確に特定する必要があります。土地であれば「所在・地番・地目・地積」、建物であれば「所在・家屋番号・種類・構造・床面積」を一字一句間違えずに転記します。

不動産贈与に特有の記載事項

金銭贈与の契約書に加えて、不動産贈与では以下の条項が必要です。

  • 所有権移転登記: 「甲は、○年○月○日までに、本物件について乙への所有権移転登記手続きを行う」——登記手続きの時期を明確にする
  • 登記費用の負担: 所有権移転登記にかかる登録免許税・司法書士報酬を誰が負担するかを明記する(受贈者負担が一般的)
  • 公租公課の負担: 固定資産税・都市計画税の負担を贈与日を基準にどう分担するかを定める
  • 担保権等の負担: 物件に抵当権等の担保権がある場合は、贈与前に抹消する旨を記載する

不動産の所有権移転登記は司法書士の業務範囲です。行政書士は贈与契約書の作成を担当し、登記手続きについては司法書士に依頼する流れになります。不動産贈与の契約書は印紙税法別表第一の第1号文書に該当し、収入印紙の貼付が必要です。一般に契約金額の記載がないものは200円ですが、記載内容によっては金額記載のある文書として扱われる場合があります。負担付贈与の場合は負担の金額に応じた印紙税額となる点に注意してください。

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贈与契約書の作成でよくある不備

贈与契約書を作成したにもかかわらず、税務上の問題が生じるケースには共通するパターンがあります。作成時に以下の点を確認してください。

  • 贈与財産の特定が不十分: 「私の土地を贈与する」のような曖昧な記載では、対象物が複数ある場合に特定できない。登記簿の表示を正確に転記する
  • 契約日と履行日が一致していない: 契約書の日付と実際の振込日・登記日が大きく乖離していると、贈与の真実性を疑われる原因になる
  • 未成年者の受贈者への対応: 負担のない贈与は「単に権利を得る行為」として民法第5条第1項ただし書により法定代理人の同意が不要となる場合がありますが、実務上は親権者が関与して契約書に署名・押印する運用が安全です。なお、贈与者と親権者が同一人物の場合は利益相反に注意が必要です
  • 連年贈与との混同: 複数年にわたる贈与計画を1通の契約書にまとめると、定期贈与と認定される。年ごとに別々の契約書を作成する
  • 贈与者・受贈者以外の者が作成: 税理士や家族が本人に無断で契約書を作成し、本人の意思が確認できない状態では贈与の効力が否定される可能性がある

贈与税の基本的な仕組み

贈与契約書を作成する際には、贈与税の課税ルールも理解しておく必要があります。贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの課税方式があります。

比較項目 暦年課税 相続時精算課税
基礎控除 年間110万円 年間110万円(2024年1月1日施行の改正で新設)+累計2,500万円の特別控除
税率 10%〜55%(累進課税) 一律20%(特別控除2,500万円超過分)
対象者 制限なし 60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫
相続時の扱い 相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算(※7年への延長は2024年1月1日以後の贈与から段階的に適用。完全に7年となるのは2031年以後の相続開始分から。3年超〜7年以内の贈与は合計額から100万円を控除可) 贈与財産を相続財産に加算(年110万円の基礎控除内の贈与は加算不要)し、納付済み贈与税を控除
届出 不要 選択届出書の提出が必要(撤回不可)

贈与税の申告・納付が必要な場合は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに税務署に申告書を提出します。贈与税の計算や申告については税理士に相談してください。行政書士の業務範囲は贈与契約書の作成であり、税務相談・税務申告は税理士の業務です。

よくある質問

Q. 贈与契約書がないと贈与は無効になりますか?

贈与契約書がなくても贈与自体は法的に有効です。民法第549条により、贈与は口頭の合意でも成立します。ただし、書面によらない贈与は履行前であれば当事者が自由に解除でき(民法第550条)、税務調査で贈与の事実を証明することも困難になります。法的安定性と税務リスクの両面から、贈与契約書の作成を強くおすすめします。

Q. 贈与契約書に収入印紙は必要ですか?

金銭の贈与契約書には収入印紙は不要です。不動産の贈与契約書には収入印紙が必要です。一般に契約金額の記載がないものは200円ですが、記載内容により異なる場合があります。ただし、負担付贈与(受贈者が一定の債務を引き受ける贈与)の場合は、負担の金額に応じた印紙税額となります。

Q. 年間110万円以下の贈与でも契約書は必要ですか?

暦年課税の基礎控除(110万円)以下の贈与であれば、贈与税の申告義務はありません。しかし、贈与契約書は作成すべきです。契約書がなければ、後に税務調査で「名義預金ではないか」と指摘されるリスクがあります。特に親子間の贈与では、契約書の作成が贈与の実態を示す重要な証拠になります。

Q. 未成年の子どもに贈与する場合はどうすればよいですか?

負担のない贈与は民法第5条ただし書により法定代理人の同意が不要となる場合がありますが、実務上は親権者が受贈者に代わって贈与契約書に署名・押印する運用が一般的です。贈与者と法定代理人が同一人物(父親が子どもに贈与する場合等)のときは、利益相反行為に該当する可能性があるため、もう一方の親権者が代理するか、家庭裁判所で特別代理人の選任を受ける必要があります。

Q. 贈与契約書は公正証書にすべきですか?

法律上、贈与契約書を公正証書にする義務はありません。ただし、公正証書にすることで、文書の真正が公証人によって証明され、原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんのリスクがなくなります。高額な贈与や不動産の贈与では、公正証書化を検討する価値があります。

まとめ

贈与契約書は、贈与の法的安定性を確保し、税務上のリスクを軽減するために不可欠な書面です。金銭贈与では贈与者・受贈者・金額・振込先を正確に記載し、不動産贈与では登記簿の表示を正確に転記して目的物を特定します。暦年贈与を毎年行う場合は、年ごとに個別の契約書を作成することが定期贈与と認定されないための基本対策です。贈与の意思・履行方法・時期を客観的に証明できる契約書を作成しておくことが、将来のトラブル防止につながります。

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※ 2026年4月時点の民法・相続税法に基づく解説です。贈与税の計算・申告については税理士にご相談ください。不動産の所有権移転登記については司法書士にご依頼ください。

※ 記事の内容には細心の注意を払っておりますが、万が一誤りがございましたらご指摘いただけますと幸いです。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではございません。具体的なケースについては専門家へのご相談をおすすめいたします。


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