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賃貸借契約書の作成ポイント|貸主が確認すべき必須条項

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「契約書のひな形をそのまま使って大丈夫だろうか」「更新時のトラブルを防ぐにはどの条項を入れるべきか」——賃貸借契約書を作成する際、こうした不安を感じたことはないでしょうか。賃貸借契約は民法の規定に加え、建物の賃貸借には借地借家法が適用されるため、一般的な契約書よりも注意すべき条項が多くなります。賃貸借契約書で貸主が特に注意すべきポイントは、賃料改定条項・原状回復の範囲・連帯保証人の極度額・契約の更新と解除の4つです。この記事では、貸主が確認すべき必須条項と作成上の注意点を整理します。

「賃貸借契約書のひな形をそのまま使っていて問題ないか確認したい」「退去時のトラブルが多いので契約書の見直しを検討している」という方は、行政書士法人Treeにご相談ください。相談は何度でも無料・全国対応です。

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賃貸借契約の法的な枠組み

賃貸借契約は、民法第601条に「当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと(中略)を約することによって、その効力を生ずる」と規定されています。つまり、法律上は口頭の合意だけでも契約は有効に成立します。しかし、賃料の額、契約期間、退去時の原状回復の範囲といった重要な条件を書面にしておかなければ、トラブルが起きた際に当事者の認識の食い違いを解決できません。

建物の賃貸借には民法に加えて借地借家法が適用され、借主の保護が手厚くなっています。たとえば、貸主側からの解約・更新拒絶には「正当事由」が必要であり(借地借家法第28条)、この規定に反する特約は無効とされます(同法第30条)。こうした強行規定の存在を理解したうえで契約書を作成しないと、せっかく盛り込んだ条項が法的に無効と判断される場合があります。

賃貸借契約書に記載すべき必須条項は?

条項 記載内容 貸主の注意点
当事者の表示 貸主・借主の氏名(法人名)・住所 管理会社を介する場合は代理権限の明記
賃貸物件の表示 所在地・構造・面積・部屋番号等 登記情報と一致させる
使用目的 居住用・事業用等の用途制限 目的外使用を禁止する旨を明記
契約期間 開始日・終了日・更新の有無 普通借家か定期借家かで条項が異なる
賃料・共益費 月額・支払期日・支払方法 消費税の扱い(事業用の場合)
敷金 預託額・返還時期・充当条件 2020年4月施行の改正民法で敷金の定義が明文化
原状回復 通常損耗・経年変化の取扱い 借主負担の範囲を具体的に記載
禁止事項 転貸・改造・ペット飼育等 違反時の措置(催告〜解除)も定める
修繕義務 貸主・借主の修繕負担区分 小修繕(電球交換等)は借主負担が一般的
連帯保証人 保証人の氏名・住所・極度額 2020年4月施行の改正民法で極度額の記載が必須
解約条項 中途解約の予告期間 借主からの解約は1〜2ヶ月前が一般的
合意管轄 紛争時の管轄裁判所 物件所在地を管轄とするのが一般的

貸主が特に注意すべき4つの条項

賃料改定条項はどう定める?

長期の賃貸借契約では、経済情勢の変動や周辺相場の変化に応じて賃料を見直す必要が生じることがあります。借地借家法第32条は、経済事情の変動、租税等の増減、近傍類似物件の賃料との比較を理由として、当事者が賃料の増減を請求できると定めています。ただし、「一定期間は賃料を増額しない」旨の特約は有効とされています(同条第1項ただし書)。

事業用物件の場合は契約期間が長くなる傾向があるため、「○年ごとに賃料を協議により改定する」「改定の協議が調わない場合は○○鑑定士の鑑定による」といった具体的な手続きまで定めておくと、改定時の交渉がスムーズになります。

原状回復の範囲をどう定める?

退去時のトラブルで最も多いのが、原状回復の範囲をめぐる争いです。2020年4月施行の改正民法により、借主の原状回復義務について「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化」は原状回復の対象外であることが明文化されました(民法第621条)。壁紙の日焼けや家具設置による床のへこみといった通常損耗は、原則として貸主の負担になります。

借主に通常損耗を超える原状回復費用を負担させるには、契約書に具体的な負担範囲を明記し、かつ借主に十分な説明を行ったうえで合意を得る必要があります。抽象的な記載(「原状に復する」とだけ記載する等)では、通常損耗を借主に負担させる特約として認められない可能性が高い点に注意してください。

連帯保証人の極度額は必須?

2020年4月施行の改正民法により、個人が賃貸借契約の連帯保証人になる場合、保証の限度額(極度額)を契約書に明記することが義務づけられました(民法第465条の2)。極度額の記載がない保証契約は無効となるため、連帯保証人を立てる場合は必ず極度額を定めてください。極度額の目安として、賃料の1〜2年分(12〜24ヶ月分)程度とする例が多く見られます。

法人が保証人となる場合は極度額の定めは不要ですが、個人保証の場合はこの規定を見落とすと保証契約そのものが無効になるため、貸主にとって大きなリスクとなります。

普通借家と定期借家の違い

建物の賃貸借契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があり、更新の仕組みが大きく異なります。

比較項目 普通借家契約 定期借家契約
更新 原則として自動更新(法定更新) 更新なし(期間満了で終了)
貸主からの解約 正当事由が必要 期間満了で終了(1年以上の契約では期間満了の1年〜6か月前までに終了通知が必要/借地借家法第38条第6項)
契約書の形式 口頭でも成立 書面が必要(公正証書でなくても可)
事前説明 不要 更新がない旨の書面による事前説明が必要
賃料減額請求権 行使可能 借賃改定特約があれば借地借家法第32条の適用が排除され得る(借地借家法第38条第9項)

定期借家契約は貸主にとって期間満了で確実に契約を終了できるメリットがありますが、成立要件として「書面による契約」(公正証書でなくても可)と「契約の更新がない旨の書面による事前説明」が必要です(借地借家法第38条)。なお、この事前説明の書面は契約書とは別の書面で交付する必要があり、契約書中に記載するだけでは要件を満たしません(最判平成24年9月13日)。事前説明を怠った場合、定期借家としての効力が認められず、普通借家契約と扱われるおそれがあるため注意が必要です。

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賃貸借契約書の収入印紙

賃貸借契約書と収入印紙の関係は、対象物件が土地か建物かで大きく異なります。

  • 土地の賃貸借契約書: 印紙税法上の第1号文書(土地の賃借権の設定に関する契約書)に該当し、契約金額に応じた収入印紙の貼付が必要です
  • 建物の賃貸借契約書: 印紙税法上の課税文書に該当しないため、原則として収入印紙は不要です。ただし、建設協力金や権利金など返還を予定しない金銭の授受に関する取り決めが含まれる場合は、第1号文書として課税される可能性があります
  • 電子契約の場合: 土地・建物を問わず、電子契約であれば印紙税は課されません

建物の賃貸借契約書に印紙が不要であることは意外に知られておらず、誤って印紙を貼ってしまうケースもあります。不要な印紙を貼った場合は、税務署に「印紙税過誤納確認申請書」を提出することで還付を受けることが可能です。

賃貸借契約でよくあるトラブルと予防策

賃貸借契約は長期間にわたることが多く、契約期間中にさまざまなトラブルが発生する可能性があります。以下は契約書の段階で予防できるものです。

  • 退去時の原状回復費用の争い: 入居前の物件の状態を写真・チェックリストで記録し、契約書の別紙として添付する。通常損耗と借主負担の範囲を具体的に列挙する
  • 敷金返還のトラブル: 敷金からの充当項目と返還時期(退去後○ヶ月以内等)を契約書に明記する。2020年4月施行の改正民法第622条の2により、敷金は「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」に返還義務が生じると明文化された
  • 無断転貸: 転貸禁止条項を設け、違反時の解除手続きを定める。民法第612条は貸主に無断転貸を理由とする解除権を認めていますが、判例上は背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には解除が認められないこともあります(最判昭和28年9月25日)
  • 造作買取請求: 借主が貸主の同意を得て取り付けた造作(エアコン等)について、退去時に時価での買取りを請求される場合がある(借地借家法第33条)。造作買取請求権を排除する特約は有効なため、契約書に明記しておくと安心

よくある質問

Q. 賃貸借契約書は貸主と借主のどちらが作成しますか?

一般的には貸主側(または貸主が委託する管理会社・不動産仲介業者)が契約書案を作成します。法律上はどちらが作成しても構いませんが、貸主の立場で有利な条項設計をしたい場合は、貸主側で専門家に依頼して作成することをおすすめします。

Q. 定期借家契約は途中で解約できますか?

原則として、定期借家契約は期間中の中途解約はできません。ただし、居住用建物で床面積200平方メートル未満の場合は、借主がやむを得ない事情(転勤・療養・介護等)により使用が困難になったときに限り、解約の申入れが認められています(借地借家法第38条第7項)。貸主側からの中途解約は、契約書に特段の定めがない限り認められません。

Q. 連帯保証人を立てずに保証会社を利用する場合、契約書にはどう書きますか?

保証会社を利用する場合は、契約書に保証会社名・保証の範囲・保証料の負担者を明記します。保証会社は法人であるため極度額の記載は不要です。近年は保証会社の利用が増加しており、個人保証人を求めない契約も一般的になっています。

Q. 賃貸借契約を更新する際に新たな契約書は必要ですか?

普通借家契約の場合、合意更新であれば更新契約書を作成するのが望ましいです。法定更新(当事者が何も手続きをしないまま期間が満了した場合)の場合は、従前と同一条件(ただし期間の定めなし)で契約が更新されるため、必ずしも新たな書面は不要ですが、賃料や条件を変更する場合は書面を残すべきです。

まとめ

賃貸借契約書の作成では、民法の一般規定だけでなく借地借家法の強行規定を踏まえた条項設計が求められます。賃料改定条項・原状回復の具体的な範囲・連帯保証人の極度額・普通借家と定期借家の区別は、貸主にとってリスクを左右する重要なポイントです。ひな形の契約書をそのまま使うのではなく、物件の種類(居住用・事業用)や個別の事情に合わせて条項を調整することが、将来のトラブル防止につながります。

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※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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