結論から言えば、補助金で取得した機械や建物を「処分制限期間内」に売却・廃棄・別用途へ転用する場合、原則として事前に交付元(各省各庁の長・補助金事務局)へ財産処分承認申請を行い、承認を受けなければなりません。承認を得ずに勝手に処分すると、交付決定の取消しや国庫納付、悪質な場合は罰則の対象になり得ます。これは「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(昭和30年法律第179号、以下「適正化法」)第22条および同法第7条に基づき交付決定に付される条件(各補助金の交付規程)に基づく義務です。なお、適正化法第22条が明文で禁じるのは目的外使用・譲渡・交換・貸付・担保提供であり、取壊しや廃棄は各制度の交付規程等で承認対象とされています。当事務所は行政書士として、承認申請書をはじめとする官公署提出書類の作成・提出代行を担い、国庫納付額の税務処理は税理士、雇用関係の論点は社会保険労務士と連携しながら、手続全体を整理してご支援します。
目次
財産処分の承認が必要となる根拠(適正化法第22条)
適正化法第22条は、「補助事業者等は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。ただし、政令で定める場合は、この限りでない。」と定めています。
つまり、補助金を使って取得した一定の財産は、あなたの所有物であっても、交付元の承認なしには自由に処分できません。ここでいう「処分」には、売却(有償譲渡)だけでなく、無償譲渡、交換、貸付、担保設定、他用途への転用、取壊し、廃棄までが幅広く含まれます。「捨てるだけだから問題ない」という思い込みが、後日の返還トラブルにつながりやすい点に注意が必要です。承認権者は法律上「各省各庁の長」ですが、中小企業向け補助金の実務では、交付規程に基づき各補助金の事務局が申請窓口となるのが通常です。
処分制限の対象財産と「処分制限期間」
承認が必要となるのは「処分制限財産」に該当するものです。多くの補助金の公募要領・手引きでは、補助対象経費で取得・効用増加した取得単価50万円(税抜)以上の建物、機械・器具、備品その他の財産が対象とされています(金額基準は補助金ごとに公募要領で確認が必要です)。
「処分制限期間」は、財産の種類ごとに定められた期間で、多くの制度では「減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)」に定める耐用年数を準用して設定されます。実務上のイメージは次のとおりです。
| 財産の種類(例) | 処分制限期間の目安 |
|---|---|
| 鉄骨鉄筋コンクリート造の事務所用建物 | 50年(耐用年数省令 別表第一の準用) |
| 金属製の機械装置・器具備品 | おおむね数年〜十数年 |
| ソフトウェア等 | 制度・区分により設定 |
具体的な年数は、税務申告上の実際の使用年数ではなく上記省令の法定耐用年数を基準に定められ、各制度の公募要領・交付規程に明記されています(詳細はe-Gov法令検索や制度の公式ページで確認できます)。処分制限期間が経過した後であれば、原則として承認申請は不要になりますが、この期間内は厳格な管理が求められます。
財産処分承認申請の手続の流れ
実務では、処分の実行前に承認を得ることが大前提です。事業再構築補助金など多くの制度で共通する流れは、おおむね次の5段階です。
- (1) 申請:財産処分承認申請書(制度により様式第12-1など)に、処分理由・対象財産・残存簿価・処分方法・見積書等を添えて提出。事業再構築補助金では「事業化状況報告システム」からオンラインで登録し、書面の押印・郵送は不要です
- (2) 承認:事務局・省庁の審査を経て、承認通知(同様式第12-2など)を受領
- (3) 処分:承認内容の範囲で、売却・廃棄・転用等を実行
- (4) 報告:処分完了後、実績を報告
- (5) 納付:必要な国庫納付額を納付(事業再構築補助金では、納付通知から30日以内に一括納付)
ここで最も重要なのは、(1)〜(2)を(3)の前に済ませることです。承認前に処分を実行してしまうと、事後承認が認められず、適正化法第17条に基づく交付決定の取消しに至る場合があります。
国庫納付額はどう決まるか
財産処分に伴い、補助金の一部または全部に相当する額の国庫納付(返還)を求められることがあります。国庫納付額の算定方法は、各補助金の交付規程および財産処分承認基準に基づくもので、省庁・制度により異なります。以下は一部制度で採用される例であり、対象制度の基準を必ず確認してください。
- 有償譲渡・有償貸付:譲渡額(貸付額)に補助率を乗じた額
- 無償譲渡・転用・交換・取壊し・廃棄:残存簿価相当額に補助率を乗じた額
廃棄時の国庫納付額は、残存簿価、時価評価額、補助率、処分理由などを用いて算定されることがあり、その方式は制度ごとに異なります。対象補助金の交付規程・財産処分承認基準により確認してください。なお、災害・火災など補助事業者の責めに帰すことができない事由で使用できなくなった場合は、事業再構築補助金では様式第12-4の財産処分報告を提出することで承認を受けたものとみなされ、保険金等の収入がなければ納付が生じない取扱いがあります。一方、単なる老朽化・故障による廃棄は通常の財産処分として扱われ、残存簿価相当額を基礎に納付額が算定されるのが原則です。金額の算定や税務上の処理は税理士の領域も関わるため、返還が生じ得るケースでは早めに専門家へご相談ください。
売却・廃棄・目的外使用それぞれの注意点
売却(有償譲渡):売買契約の締結時期や条件によっては、承認手続との関係が問題となることがあります。契約締結前に事務局へ相談し、承認が必要となる時点を確認してください。譲渡先の選定段階で承認手続を組み込むのが安全です。
廃棄・取壊し:「壊すだけ」でも承認対象です。故障・老朽化による廃棄でも、写真・修理見積・耐用状況などの疎明資料を整えて申請します。
目的外使用(転用):所有者は変わらなくても、補助目的と異なる用途に使えば転用に該当します。事業縮小・業態転換の際に見落とされやすい類型です。
その他:金融機関への担保設定(抵当権設定)も処分制限の対象です。資金調達のため補助対象財産に担保を設定する場合も、事前承認の要否を確認してください。
承認を受けずに処分した場合のリスク
無断処分の主なリスクは、まず行政上の措置です。承認を受けない財産処分は適正化法第22条違反にあたり、これは第17条第1項の「法令違反」等に該当するため、交付決定の全部または一部が取り消され得ます。取消しに伴い、既受領額の返還(第18条)を命じられ、返還命令の内容によっては年10.95%の加算金(第19条)が生じることもあります。
刑事罰については整理が必要です。適正化法第30条の罰則(3年以下の拘禁刑若しくは50万円以下の罰金、又は併科)は、第11条に違反して補助金等を他の用途へ使用した者を対象とするもので、財産処分制限を定める第22条違反そのものを直接処罰する規定ではありません。もっとも、承認を得ない目的外使用(転用)が実質的に「補助金等の他の用途への使用」と評価される場合には、この第30条が問題になり得ます。また、偽りその他不正の手段による交付を受けていた場合は、より重い第29条(5年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金)の対象です。これらの罰則には両罰規定(第32条)があり、法人の代表者等が業務に関して違反すれば法人にも罰金刑が科されます(なお2025年6月1日施行の刑法改正により、従来の「懲役」は「拘禁刑」に一本化されています)。「知らなかった」では済まされないため、処分を検討し始めた段階での確認が肝心です。
当事務所のサポート
行政書士は、官公署に提出する許認可・補助金関係書類の作成および提出代行を業務とする国家資格者です(補助金申請書類の作成は行政書士の業務。2026年1月1日施行の改正行政書士法でも位置づけが明確化されています)。行政書士法人Treeでは、財産処分承認申請書および添付資料(処分理由書、財産管理台帳、見積書の整理等)の作成・提出をお手伝いし、事務局とのやり取りを整理します。国庫納付に伴う税務処理は税理士、雇用関係助成金に関わる論点は社会保険労務士、登記が絡む譲渡は司法書士と連携し、越権のない範囲で全体を伴走します。
料金や進め方は案件ごとに個別にご案内しております。財産処分承認申請のご依頼については、補助金サポートのご案内をご覧のうえ、個別にお問い合わせください。ご相談は何度でも無料です。
補助金の申請でお困りの方へ。行政書士法人Treeでは、公募要領の確認から事業計画書・申請書類の作成、交付決定後の各種手続までサポートします。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
補助金で取得した財産を処分制限期間内に売却・廃棄・転用・担保設定する場合は、適正化法第22条に基づき、原則として事前の財産処分承認申請が必要です。承認前の処分は、交付決定の取消し(第17条)・返還(第18条)・加算金(第19条)といった行政上のリスクを伴い、目的外使用や不正受給に及べば刑事罰(第30条・第29条)にもつながり得ます。対象財産(取得単価50万円税抜以上が目安)・処分制限期間(法定耐用年数を準用)・国庫納付額の算定は制度ごとに公募要領で確認し、迷ったら処分を実行する前に専門家へ相談することが、最も確実なリスク回避策です。
財産処分承認申請に関するよくある質問
Q:処分制限期間が過ぎていれば、承認申請は不要ですか。
A:多くの制度では、処分制限期間の経過後は財産処分の承認申請が不要になります。ただし収益納付など別の報告義務が残る場合があるため、対象制度の公募要領・交付規程で必ず確認してください。
Q:故障して使えなくなった機械を廃棄する場合も承認が必要ですか。
A:はい、原則として必要です。故障・老朽化による廃棄でも処分制限財産に該当すれば承認対象となります。修理見積や故障状況の写真など、廃棄がやむを得ないことを示す資料を添えて事前に申請します。
Q:承認を受ける前に売買契約を結んでしまいました。どうなりますか。
A:承認前の処分は原則認められず、交付決定の取消しや返還を求められるおそれがあります。事後承認が可能かは事案により異なるため、速やかに事務局へ相談し、事実関係を整理したうえで対応を検討する必要があります。
Q:財産処分をすると、必ず補助金を返還しなければならないのですか。
A:必ずしも全額返還ではありません。国庫納付額は、譲渡額、残存簿価、時価評価額、収益、補助率などを基に、対象制度の財産処分承認基準に従って算定されます。災害・火災など自らの責めに帰すことができない事由による場合は、報告のみで承認を受けたものとみなされ、保険金等の収入がなければ納付が生じない取扱いがありますが、単なる老朽化・故障による廃棄は通常どおり残存簿価相当額を基礎に算定されます。
Q:書類作成は行政書士に依頼できますか。税金の相談もお願いできますか。
A:財産処分承認申請書など官公署提出書類の作成・提出代行は行政書士の業務としてお引き受けできます。一方、国庫納付額の税務処理や申告は税理士の業務となるため、当事務所では税理士等と連携してご案内します。財産処分は処分実行前のご相談が重要です。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


