結論から言えば、高層ビル・水中構造物・橋梁といった「特殊解体」を請け負う場合でも、建設業法上の許可業種は原則として「解体工事業」一本ですが、現場ごとに労働安全衛生法に基づく作業主任者の選任や潜水士免許など、許可とは別系統の資格・配置義務が重なって発生する点が見落とされがちです。当事務所は行政書士として、建設業許可申請・解体工事業登録などの書類作成と提出代行を専門にしており、許可要件の整理と申請をお手伝いします。なお労働安全衛生法上の選任・配置や安全衛生管理そのものは事業者の責任で行うものであり、税務は税理士、労務紛争は弁護士・社会保険労務士と、必要に応じて各士業と連携してご案内します。
目次
「特殊解体」も建設業法上は原則「解体工事業」
建設業の許可業種は、平成26年6月4日公布の建設業法改正により「解体工事業」が新設され、29業種となりました。施行日は平成28年6月1日です。これにより、工作物の解体を行う工事は、それまで含まれていた「とび・土工・コンクリート工事業」から分離され、原則として「解体工事業」の許可で施工することになりました。
ここで重要なのは、高層ビル・橋梁・水中構造物のいずれの解体であっても、建設業法上の許可業種としては基本的に「解体工事業」に区分される点です。「特殊解体」という独立した許可業種が別途あるわけではありません。1件の請負金額が500万円(税込)以上の解体工事を営むには、この解体工事業の許可が必要です。
ただし、解体する目的物がもともとどの専門工事で造られたものか、また工事全体を総合的な企画・指導・調整のもとで請け負うのかによって区分が変わる場合があります。国土交通省の「業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方」では、それぞれの専門工事で建設される目的物のみを解体する場合はその専門工事に該当し、総合的な企画・指導・調整のもとに土木工作物や建築物を解体する工事は、それぞれ「土木一式工事」又は「建築一式工事」に該当するとされています。契約内容に応じた業種の見極めが欠かせません。
解体工事業の許可要件と技術者資格
解体工事業の許可を受けるには、建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力(経営業務の管理責任者等の設置・適正な社会保険加入)、営業所ごとの営業所技術者等(一般建設業では営業所技術者、特定建設業では特定営業所技術者)、誠実性、財産的基礎等の許可要件を満たし、欠格要件に該当しないことが必要です。営業所技術者等として認められる主な国家資格等には、次のものがあります。
- 1級土木施工管理技士、又は2級土木施工管理技士(種別は土木に限定)
- 1級建築施工管理技士、又は2級建築施工管理技士(種別は建築又は躯体)
- 技術士(建設部門又は総合技術監理部門(建設))。当面の間、登録解体工事講習の受講又は合格後1年以上の解体工事実務経験が必要
- 登録解体工事試験の合格者(解体工事施工技士試験の合格者を含む)
- とび技能士(1級、又は2級合格後に解体工事に関し3年以上の実務経験を有する者)
- 解体工事に関する所定の実務経験を有する者 等
なお、1級・2級土木施工管理技士及び1級・2級建築施工管理技士の平成27年度までの合格者は、登録解体工事講習の受講又は合格後1年以上の解体工事実務経験が必要です。
かつては、とび・土工工事業の技術者を解体工事業の技術者とみなす経過措置がありましたが、この経過措置は令和3年6月30日をもって終了しています。現在は、解体工事業の営業所技術者等は上記のような解体に対応した資格・経験で備える必要があります。誰を営業所技術者等とするかは保有資格と実務経験の内容によって変わるため、慎重な確認が必要です。
高層(高所)解体に伴う作業主任者の選任
高層ビルなど高さのある建築物の解体では、建設業許可とは別に、労働安全衛生法に基づく作業主任者の選任義務が現場で発生します。代表的なものは次のとおりです。
- コンクリート造の工作物の解体等作業主任者:高さ5メートル以上のコンクリート造の工作物の解体・破壊の作業を行う場合、技能講習修了者の中から選任し、作業を直接指揮させる必要があります。
- 建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者:建築物の骨組み又は塔であって金属製の部材で構成され、高さが5メートル以上のものの組立て・解体・変更の作業を行う場合に選任が必要です。
これらは事業者が選任・配置するもので、行政書士が代わりに行えるものではありません。当事務所がお手伝いできるのは、こうした体制を前提とした建設業許可・登録の申請書類作成です。また、高さ31メートルを超える建築物又は工作物(橋梁を除く。)の解体・破壊等は、労働安全衛生法・労働安全衛生規則上の計画届の対象となる場合があります。計画届や安全衛生管理は事業者の責任で、必要に応じて社会保険労務士等の専門家や所轄労働基準監督署へ確認してください。なお、石綿(アスベスト)を含む建材の解体では大気汚染防止法・石綿障害予防規則等に基づく事前調査・届出が別途必要になるため、所管の最新運用をあわせてご確認ください。
水中解体と潜水業務(潜水士免許)
橋脚基礎、護岸、取水施設など水中・水際の構造物の解体では、潜水作業が伴うことがあります。潜水業務については、労働安全衛生法に基づく高気圧作業安全衛生規則により、事業者は潜水士免許を受けた者でなければ潜水業務に就かせてはならないとされています。
潜水士免許は、減圧症などの高気圧障害を防ぐための知識を担保する国家資格で、その取得・配置は事業者の責任で整える必要があります。建設業許可上は、水中解体も原則として解体工事業(目的物の性質により異なる区分となる場合もあります)に整理されますが、現場では潜水士の確保が前提になります。区分の判断に迷う場合は、契約内容を踏まえて所管行政庁にご確認ください。
橋梁解体と橋架設等作業主任者
橋梁の撤去・解体は、上部構造の落下や倒壊のリスクが大きく、橋の素材や作業の種類によって選任すべき作業主任者が異なります。注意したいのは、鋼橋(金属製)では「架設・解体・変更」が対象に含まれるのに対し、コンクリート橋架設等作業主任者の対象は「架設・変更」であり解体は含まれない点です。コンクリート橋の解体は、次表のとおり別系統の作業主任者で対応します。
| 作業主任者の種類 | 主な対象作業 |
|---|---|
| 鋼橋架設等作業主任者(技能講習修了者) | 金属製の上部構造で高さ5メートル以上、又は支間30メートル以上の部分の架設・解体・変更 |
| コンクリート橋架設等作業主任者(技能講習修了者) | コンクリート造の上部構造で高さ5メートル以上、又は支間30メートル以上の部分の架設・変更(解体は含まない) |
| コンクリート造の工作物の解体等作業主任者(技能講習修了者) | 高さ5メートル以上のコンクリート造の工作物の解体・破壊(コンクリート橋の解体等) |
橋梁解体は、道路・河川の管理者との調整、通行止めや仮設の計画など、解体工事業許可以外の協議・許認可が絡むことも多い分野です。さらに、最大支間50メートル以上の橋梁の建設等(建設・改造・解体・破壊)、又は一定場所で行われる最大支間30メートル以上50メートル未満の橋梁上部構造の建設等は、労働安全衛生法・労働安全衛生規則上の計画届の対象となる場合があります。建設業許可・解体工事業登録の取得自体は、こうした個別協議や安全衛生関係手続とは別の手続きであり、当事務所では許可・登録の取得部分を担当します。
建設業許可がない場合の「解体工事業登録」を確認
建設業法上、1件500万円(税込)未満の解体工事のみを請け負う場合は、建設業法上の許可は原則不要です。ただし、「土木工事業」「建築工事業」又は「解体工事業」に係る建設業許可を持たずに解体工事を営む場合は、建設リサイクル法に基づく「解体工事業登録」が必要です(工事を行う区域を管轄する都道府県知事ごとに登録します)。登録には、分別解体や安全管理、再資源化の指導・監督を行う「技術管理者」の選任が求められ、所定の資格や実務経験(学歴に応じた年数、又は実務経験のみの場合は相当年数、国土交通大臣登録講習による短縮制度あり)が要件となります。
「土木工事業」「建築工事業」又は「解体工事業」の建設業許可を取得していれば、別途の解体工事業登録は原則不要です。一方で、請負金額が500万円以上の解体工事(建築一式工事に該当する解体工事を含む建設工事では1,500万円以上等)を行う場合は、建設業法に基づく許可の要否を別途確認する必要があります。高層・水中・橋梁の特殊解体は500万円(税込)以上となることが多く建設業許可が前提になりますが、小規模工事も行う場合は登録の要否を整理しておくと安全です。
なお、解体工事業登録とは別に、建設リサイクル法の対象建設工事に該当する場合は、工事着手7日前までの計画届出が必要です。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、解体工事業を含む建設業許可の新規取得・業種追加・更新、および建設リサイクル法に基づく解体工事業登録について、要件確認から申請書類の作成・提出代行までを承っています。特殊解体に取り組む事業者様には、契約内容に応じた業種区分の整理や、営業所技術者等・技術管理者の資格要件の確認をお手伝いします。
料金(税込)は次のとおりです。建設業許可(知事・新規)110,000円、業種追加55,000円、更新55,000円です(いずれも税込。登録免許税・証紙代等の実費は別途)。詳しくは建設業許可サポートのご案内ページをご覧ください。なお、労働安全衛生法上の作業主任者の選任・配置、潜水士など現場の安全衛生管理そのものは事業者様の責任で行っていただくもので、行政書士の職域には含まれません。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
高層・水中・橋梁の特殊解体は、建設業法上は原則「解体工事業」を中心に検討しますが、専門工事のみの解体や総合的な企画・指導・調整を伴う解体では、専門工事・土木一式工事・建築一式工事に区分される場合もあります。500万円(税込)未満の解体工事のみを行う場合でも、「土木工事業」「建築工事業」又は「解体工事業」の建設業許可がなければ、建設リサイクル法上の解体工事業登録を確認する必要があります。一方で現場では、コンクリート造の工作物の解体等作業主任者や潜水士、高さ31メートルを超える建築物・一定規模以上の橋梁の計画届など、許可とは別系統の資格・配置義務・届出が重なります。許可・登録の取得は当事務所が、安全衛生上の選任・届出は事業者様が役割を分担して進めるのが基本です。許可業種の見極めに迷ったら、契約内容を踏まえて早めにご相談ください。
特殊解体の許可に関するよくある質問
Q:高層ビルや橋梁を解体する場合、「特殊解体業」という専用の許可が必要ですか。
A:いいえ。建設業法に「特殊解体業」という独立した許可業種はありません。高層・水中・橋梁の解体も、建設業法上は原則として「解体工事業」(1件500万円・税込以上)に区分されます。ただし現場では、労働安全衛生法に基づく作業主任者の選任など、許可とは別の配置義務が発生します。
Q:とび・土工工事業の許可を持っていれば、そのまま解体工事を請け負えますか。
A:とび・土工工事業の技術者を解体工事業の技術者とみなす経過措置は令和3年6月30日で終了しました。現在は、500万円(税込)以上の解体工事を行うには、解体工事業の許可と、解体に対応した営業所技術者等の配置が必要です。
Q:水中の構造物を解体するのに、潜水に関する許可は別に取りますか。
A:潜水そのものに建設業許可とは別の「許可」が必要なわけではありませんが、潜水業務に就く作業員は、高気圧作業安全衛生規則に基づき潜水士免許を受けている必要があります。これは事業者が確保・管理すべき労働安全衛生上の要件で、行政書士が代行できるものではありません。
Q:橋梁解体で必要になる作業主任者は何ですか。
A:金属製(鋼橋等)の上部構造で高さ5メートル以上又は支間30メートル以上の部分の架設・解体・変更は「鋼橋架設等作業主任者」を選任します。コンクリート橋架設等作業主任者の対象は架設・変更であり解体は含まれないため、コンクリート橋の解体は「コンクリート造の工作物の解体等作業主任者」を選任すべき場合が一般的です。いずれも事業者の選任義務です。
Q:500万円(税込)未満の解体工事しか行いませんが、何か手続きは要りますか。
A:建設業法上の許可は原則不要ですが、「土木工事業」「建築工事業」又は「解体工事業」に係る建設業許可を持たずに解体工事を営む場合は、建設リサイクル法に基づく解体工事業登録が必要で、技術管理者の選任が求められます。工事を行う区域ごとに都道府県知事への登録が必要となるため、対応エリアに応じた整理が大切です。また、建設リサイクル法の対象建設工事に該当する場合は、登録とは別に工事着手7日前までの計画届出も確認が必要です。当事務所で登録申請の書類作成・提出代行を承ります。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


