重要事項説明書(35条書面)で確認する内容は、宅地か建物か、売買・交換か貸借か、区分所有建物か、既存住宅かによって異なります。ある取引の必須項目を、そのまま別の取引へ当てはめないことが大切です。
本記事では、2026年11月5日に確認した宅地建物取引業法・施行令・施行規則と国土交通省の現行資料に基づき、一般的な宅地・建物の取引の主な法定項目を整理します。2026年4月に追加されたマンション管理に関する事項も反映しています。個別取引では法定項目の細目、法令の適用条件、物件ごとの重要な事実を照合してください。信託受益権の売買等は別の規定も確認します。
目次
重要事項説明書とは|誰に・いつ・誰が説明する?
宅建業法35条は、宅建業者に対し、取引で宅地・建物を取得し、又は借りようとする者に、契約が成立するまでに重要事項を記載した書面を交付し、宅地建物取引士(宅建士)に説明させることを求めています。賃貸は宅建業者による媒介・代理の取引等を扱うもので、自ら貸主として貸す行為自体は宅建業の定義に含まれません。すべての直接賃貸に35条の義務が一律にかかるわけではなく、定期借家等の別法の説明義務は別に確認します。
- 説明者:宅建士が行います。専任の宅建士でなければならない、という制度ではありません。
- 時期:契約成立前。相手が書面を確認し、内容を理解できるように進めます。
- 宅建士証:説明の際に提示します。
- 記名:紙の35条書面には宅建士が記名します。電子提供では所定の代替措置を講じます。
相手方等が宅建業者である場合は、35条6項により説明を省略する取扱いがありますが、書面交付と宅建士の記名は必要です。相手が宅建士資格を持っているというだけで、宅建業者相手の例外になるわけではありません(宅建業法2条・35条)。
法定の説明・記名と、調査・資料収集・入力等の作成補助は分けて考えます。補助者が作業する場合も、宅建業者の調査・確認の責任や宅建士による法定事務がなくなるわけではありません。
まず確認する主な項目|適用条件を併せて見る
| 項目 | 内容と適用上の注意 |
|---|---|
| 登記上の権利 | 登記された権利の種類・内容、登記名義人又は表題部所有者の氏名・名称 |
| 法令による制限 | 物件・契約類型に応じ、施行令で定める法令制限の概要。売買と建物賃貸に同じ法令一覧を一律適用しない |
| 私道の負担 | 私道に関する負担。建物の貸借は、この法定項目の対象から除かれる |
| ライフライン | 飲用水・電気・ガスの供給と排水施設の整備状況。未整備なら整備の見通しや特別負担等 |
| 代金等以外の金銭 | 代金・交換差金・借賃以外に授受する金銭の額と目的。手付金・敷金等を確認 |
| 解除・違約金等 | 契約解除、損害賠償額の予定、違約金に関する事項 |
| 支払金・預り金 | 法令上の対象金を業者が受領する場合、保全措置を講ずるかどうか、講ずる場合はその概要。保全実施を全件に義務付けるという意味とは区別 |
記載の細目や条件は、施行規則、施行令と、国交省の現行様式例(2026年4月1日以降・PDF)で、取引の種類に応じて確認できます。35条の列挙事項のほか、35条の2の供託所等の説明や、個別の重要な事実に関する義務も確認します。
物件の状態・災害情報に応じて追加する事項
| 対象 | 確認・説明する主な事項 |
|---|---|
| 工事完了前の宅地・建物 | 完了時の形状・構造等。宅地の接道や建物の主要構造・内外装・設備等について所定事項と、必要な図面を確認 |
| 災害の指定区域 | 造成宅地防災区域、土砂災害警戒区域、津波災害警戒区域に該当する場合はその旨。水害地図の項目とは分けて確認 |
| 水害地図 | 水防法に基づき市町村長が提供する図面に物件の位置が表示される場合、その図面上の所在地。洪水・内水・高潮等の該当図面を確認 |
| 建物の石綿調査 | 石綿使用の有無の調査結果が記録されている場合、その内容。宅地のみの取引の共通項目とはしない |
| 建物の耐震診断 | 一定の建物が所定の機関・建築士等による診断を受けている場合、その内容。1981年6月1日以後に新築工事へ着手した建物は、この項目の対象から除かれる |
調査・診断の記録の確認と説明を、新たな石綿調査・耐震診断をすべての取引で行う義務と混同しないでください。災害区域外や図面が未作成であることも、被害が生じない保証ではありません。
売買・交換等で確認する金銭・保証の事項
- 手付金等の保全:宅建業者が自ら売主となるなど、法41条・41条の2の対象となる取引で、手付金等を受領するときの保全措置の概要。
- 融資あっせん:代金・交換差金についての金銭貸借のあっせん内容と、融資が成立しないときの措置。
- 契約不適合を担保する責任の履行措置:種類・品質に関する契約不適合を担保する責任について、保証保険契約等の所定措置を講ずるか、講ずる場合の概要。責任の内容自体や契約条項とは分けて確認。
- 新築住宅の性能評価:所定の住宅性能評価を受けた新築住宅である場合、その旨。
法35条2項の割賦販売に該当する場合は、現金販売価格、割賦販売価格、引渡しまでに支払う金額、賦払金の額・時期・方法も説明事項です。同項の割賦販売は、引渡し後1年以上にわたり、かつ2回以上に分けて代金の全部又は一部を受け取る条件の販売を指します。
賃貸の記載事項|建物と宅地の違い
貸借では、契約期間・更新、用途等の利用制限、敷金等の契約終了時の精算、管理委託先等を確認します。建物では台所・浴室・便所等の設備の整備状況も対象です。定期借家や終身建物賃貸借等に該当する場合は、その旨も確認します。
宅地の貸借にも契約期間・更新・利用制限・精算・管理委託等の項目があり、所定の定期借地権を設定する旨や、契約終了時の土地上の建物取壊しを定める場合の内容も確認します。建物賃貸の設備欄を、そのまま土地賃貸へ当てはめるものではありません。
定期借家等では、35条の重要事項説明と、借地借家法等による別の契約前説明・方式要件を分けて確認してください。35条書面への記載だけで、すべての別法の要件を満たすと考えないようにしましょう。
区分所有建物|売買等と建物賃貸は同じ一覧ではない
施行規則16条の2は、建物貸借以外の契約では同条1~10号、建物貸借では3号・8号を対象としています。マンションだから以下の全項目が借主向けの法定追加事項になる、という意味ではありません。
| 号 | 主な内容 |
|---|---|
| 1 | 敷地に関する権利の種類・内容 |
| 2 | 共用部分に関する規約の定めがある場合、その内容(案を含む) |
| 3 | 専有部分の用途・利用制限の規約がある場合、その内容 |
| 4 | 特定者だけに建物・敷地の一部の使用を認める規約がある場合、その内容 |
| 5 | 特定者だけに維持修繕費・管理費等を減免する規約がある場合、その内容 |
| 6 | 計画的維持修繕費の積立てに関する規約がある場合、その内容と積立済みの額 |
| 7 | 所有者が負担する通常の管理費用の額 |
| 8 | 管理が委託されている場合、委託先の氏名・名称と住所等 |
| 9 | 2026年4月追加:管理組合から委託を受けて管理事務を行うマンション管理業者が、当該建物等の管理者等である場合、その旨 |
| 10 | 維持修繕の実施状況の記録がある場合、その内容 |
9号は、単に管理会社へ管理業務を委託しているというだけの項目ではなく、その管理業者が管理者等でもある場合の説明です。建物貸借で同条により説明するのは、専有部分の利用制限と管理委託先の項目です。他の賃貸項目や、その取引で重要な事実は別に確認します(2026年改正の解釈・運用資料・PDF)。
既存住宅|調査結果と書類の保存状況を分ける
| 項目 | 対象・内容 |
|---|---|
| 所定の建物状況調査の有無・結果の概要 | 既存住宅の売買・交換だけでなく貸借も対象。説明時点で調査実施から原則1年未経過、RC造・SRC造の法定共同住宅等は2年未経過の調査を確認 |
| 設計図書・点検記録等の保存状況 | 住宅の売買・交換が対象。省令で定める建築・維持保全に関する書類が保存されているかを説明。住宅賃貸へ同じ義務を一律に広げない |
RC・SRC造の法定共同住宅等の2年の扱いは2024年4月からのものです。構造がRC造なら、店舗・事務所もすべて2年となるわけではありません。また、一般にインスペクションと呼ばれる調査がすべて法定の建物状況調査に当たるわけでもありません。
建物状況調査そのものを、すべての既存住宅取引で必ず実施する義務ではありません。所定の調査の有無・期間・結果と、保存図書を確認します。保存状況の説明を、存在しない全図書を新たに作成・取得する義務と混同しないでください(国交省の建物状況調査Q&A・PDF)。
35条書面と37条書面の違い
| 項目 | 35条書面 | 37条書面 |
|---|---|---|
| 時期 | 契約成立までの間に交付・説明 | 契約成立後、遅滞なく交付 |
| 主な相手 | 取得・賃借しようとする側。業者相手の説明省略は別途確認 | 自ら当事者・代理・媒介の関係に応じた相手や各契約当事者 |
| 宅建士の説明 | 原則必要 | 37条に基づく宅建士の説明義務はない |
| 宅建士証 | 説明の際に提示 | 37条による提示義務はない |
| 記名 | 宅建士の記名が必要。電子提供は所定措置 | 宅建士の記名が必要。電子提供は所定措置 |
例えば宅建業者が売買を媒介した場合、37条書面は売主・買主の双方へ交付します。35条の取得側への説明と、37条の交付先を同じに考えないようにしてください。「37条に宅建士による説明義務がない」とは、契約内容の確認や他法・契約上の説明等まで不要になる、という意味ではありません。
電子交付とIT重説は、開始時期も実施条件も別
IT重説の本格運用は、賃貸が2017年10月1日、売買が2021年3月30日からです。一方、35条・37条書面等の承諾付き電子提供と、法定の宅建士押印義務の廃止は2022年5月18日からです。記名まで不要になったわけではなく、契約当事者自身の署名等の扱いとも区別します。
- 電子交付:提供方法・ファイル形式等を事前に示し、対象書面・受領者について記録できる方法で承諾を取得。出力可能で改変の有無を確認できる措置等も必要です。
- IT重説:双方向の映像・音声、記名等をした書面と添付資料の事前交付、説明開始前の資料・通信状況の確認、宅建士証の画面提示と視認確認等を行います。支障が出たら中断し、解消後に再開します。
紙の書面を先に送ってIT重説をする方法や、電子交付した書面を対面で説明する方法もあります。画面共有だけや、ダウンロードされていないリンクを送るだけで、書面を交付したことになるとは限りません。相手が利用できる環境・意向を確認し、現行マニュアルに沿って進めます(国交省の実施マニュアル・PDF、FAQ・PDF)。
よくある質問
Q. 重要事項説明書は誰が説明しますか?
原則として宅建士が契約成立前に書面を交付して説明し、説明時に宅建士証を提示します。専任の宅建士である必要はありません。相手方等が宅建業者の場合は説明を省略する取扱いがありますが、書面交付と宅建士の記名は必要です。
Q. 35条書面と37条書面はどう違いますか?
35条書面は取得・賃借する側への契約前の重要事項説明、37条書面は成立した契約内容を書面にして交付する制度です。37条は成立後遅滞なく、取引関係に応じた相手・各当事者へ交付し、宅建士が記名します。37条に宅建士の説明義務がないことを、他の説明や確認も不要という意味にしないでください。
Q. 重要事項説明書に押印は必要ですか。電子書面でもよいですか?
2022年5月18日から法定の宅建士押印は不要となりましたが、記名等は必要です。受領者の事前承諾と所定の提供方法・出力や改変確認等の条件を満たせば電子提供ができます。IT重説は別の仕組みで、双方向通信・資料事前交付・宅建士証提示等の条件も確認します。
Q. 中古住宅なら必ず建物状況調査を行うのですか?
すべての既存住宅取引で調査自体を実施する義務ではありません。所定の調査の有無、対象期間内の結果の概要等を確認します。調査結果の説明は賃貸も対象ですが、設計図書等の保存状況は住宅の売買・交換を対象とするなど、項目ごとに範囲が異なります。
Q. 行政書士に重要事項説明書の作成を依頼できますか?
法定の重要事項説明・記名は宅建士が行います。調査や入力等の作成補助を依頼する場合も、宅建業者の内容確認・責任と宅建士の法定事務を置き換えるものではなく、具体的な依頼範囲と他法の制限を確認します。Treeの本記事の相談窓口は、宅建業免許の取得・更新や開業手続きの案内です。個別物件の不明点は取引担当の宅建業者・宅建士へ、紛争は弁護士等へ相談してください。
まとめと、宅建業免許・開業の相談先
35条書面は、取引・物件の類型に応じて項目を選び、契約成立前に交付・説明するものです。区分所有の売買等と賃貸、既存住宅の調査結果と図書保存、電子交付とIT重説をそれぞれ分けて確認してください。2026年追加事項も含む現行法令・様式と、物件の調査資料を照合することが大切です。
宅建業免許の取得・更新・開業準備を相談できます
行政書士法人Treeでは、事務所・人員等の要件確認、免許申請書類の作成・提出、開業に関する手続きを支援します。重要事項説明の代行を申し込む窓口とは区別し、免許申請・開業についてご相談ください。相談は何度でも無料・全国オンライン対応です。
| 手続き | 報酬 |
|---|---|
| 知事免許の新規申請 | 66,000円 |
| 大臣免許の新規申請 | 121,000円 |
| 会社設立+知事免許 | 132,000円 |
| 免許更新・変更届出 | 各33,000円 |
行政庁へ納める費用、会社設立の法定費用、保証協会への費用等の実費は別に確認します。依頼内容と総額は契約前にご案内します。手続き別の料金・サービスを見る
根拠・参考資料
法令・公式資料・掲載料金の確認日:2026年11月5日。
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