産業廃棄物処理施設の焼却炉を更新したい、破砕機の能力を上げたい――そのとき必要な手続は原則として「変更許可」か「軽微変更届」のいずれかです(ただし、設備を同一のものに交換するだけで法15条2項4号〜7号の事項に変更が生じない場合は、環境省通知により変更手続自体が不要とされています)。結論から言えば、処理する産業廃棄物の種類・処理能力・位置や構造等の設置計画・維持管理計画を変えるときは都道府県知事の変更許可(廃棄物の処理及び清掃に関する法律15条の2の6第1項)が原則で、処理能力10%未満の増強など環境省令の枠に収まる「軽微な変更」に限り、事後の届出で足ります。区別を誤ると5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金という重い罰則の対象になり得ます。本記事では、両者の線引きを条文に沿って行政書士が整理します。当事務所は建設業許可や産業廃棄物関係の書類作成・提出代行を業務とし、税務は税理士、刑事・係争対応は弁護士と連携して進めます。
目次
変更許可制度の全体像──廃棄物処理法15条の2の6
産業廃棄物処理施設のうち、廃棄物処理法施行令7条に列挙された施設は、設置の際に都道府県知事の許可が必要です(廃棄物処理法15条1項)。1日あたりの処理能力が5トンを超えるがれき類・木くずの破砕施設(令7条8号の2)、1日10立方メートル超の汚泥の脱水施設、一定規模以上の焼却施設、最終処分場などが対象で、建設業では、自社ヤードにがれき類の破砕プラントを置く場合が典型例です。
設置後にこの施設へ手を加える場合、法15条の2の6第1項は、設置許可申請書に記載した次の事項(法15条2項4号〜7号)を変更するときは、あらためて知事の許可を受けなければならないと定めています。
- 処理する産業廃棄物の種類(4号)
- 処理能力(最終処分場では埋立地の面積・埋立容量)(5号)
- 施設の位置、構造等の設置に関する計画(6号)
- 維持管理に関する計画(7号)
ただし同項ただし書により、その変更が「環境省令で定める軽微な変更」であるときは許可不要となり、代わりに事後の届出(軽微変更等届出)に切り替わります。判断の出発点は、許可申請書のどの記載事項が動くのかを特定することです。
軽微変更届で足りる「軽微な変更」の範囲──廃棄物処理法施行規則12条の8基準(処理能力10%ルール)
廃棄物処理法施行規則12条の8は、次の各号の「いずれにも該当しない変更」を軽微な変更と定義しています。裏返せば、1つでも該当すれば変更許可が必要です。
| 号 | 変更許可が必要となる変更 |
|---|---|
| 1号 | 処理能力が10%以上増大するに至る変更 |
| 2号 | 施設の位置・処理方式の変更(規則11条2項1号・2号の事項) |
| 3号 | 構造・設備の変更のうち、施設の種類ごとに定められた主要設備に係るもの、または生活環境への負荷を増大させる数値変化を伴うもの |
| 4号 | 排ガス・排水の排出方法または量の増大に係る変更 |
| 5号 | 維持管理計画の変更(環境影響が減る方向の数値変更や測定頻度を高くするだけの変更を除く) |
3号の「主要設備」は施設の種類ごとに規則で列挙されており、焼却施設は燃焼室、破砕施設は破砕機、汚泥の脱水施設は脱水機、廃石綿等の溶融施設は溶融炉・破砕設備、最終処分場は擁壁・えん堤・遮水層などが該当します。施設の心臓部に触れる工事は、処理能力が変わらなくても変更許可の対象になり得るということです。
処理能力の基準値にも注意が必要です。規則12条の8第1号は、10%の比較対象を「申請書に記載した処理能力(変更許可を受けたときは変更後のもの)」としています。軽微変更を小刻みに繰り返しても、直近に許可を受けた能力との比較で累計10%以上に達すれば変更許可が必要になる建付けであり、1回あたり10%未満なら何度でも届出で済むわけではありません。
変更許可の手続──生活環境影響調査から使用前検査まで
変更許可の申請は、変更の内容・理由、着工予定日等を記載した様式第22号の申請書によります(規則12条の9)。手続の骨格は設置許可とほぼ同じで、法15条の2の6第2項が設置許可の規定を広く準用しています。
- 生活環境影響調査書の添付(法15条3項の準用):変更が周辺地域の生活環境に及ぼす影響の調査結果を添付します。
- 告示・縦覧(法15条4項の準用):焼却施設・最終処分場・廃石綿等の溶融施設など施行令7条の2に定める施設は、申請内容が告示され、申請書類が1か月間公衆の縦覧に供されます。
- 意見聴取(法15条5項・6項の準用):関係市町村長の意見を聴くほか、利害関係者は縦覧期間満了日の翌日から2週間以内に生活環境保全上の意見書を提出できます。専門的知識を有する者の意見聴取(法15条の2第3項の準用)も行われます。
- 使用前検査(法15条の2第5項の準用):許可を受けても、知事の検査で計画に適合すると認められた後でなければ、変更後の施設を使用できません。
縦覧対象施設では申請から許可・検査完了まで数か月単位の期間を見込む必要があり、申請手数料は都道府県の条例で定められています。工事スケジュールから逆算した早めの事前協議が欠かせません。
軽微変更等の届出──様式第23号による事後届出
軽微な変更で足りる場合は、法15条の2の6第3項で準用される法9条3項に基づき、変更をしたときにその旨を都道府県知事に届け出ます。届出書は様式第23号で、設置計画の変更なら変更後の計画書と設計計算書、維持管理計画の変更なら変更後の計画書を添付します(規則12条の10の2)。準用元の条文は届出時期を「遅滞なく」と定めるにとどまりますが、多くの自治体も「変更後、遅滞なく(速やかに)」提出するよう案内しています。なお「変更の日から10日以内(登記事項証明書を添付すべき場合は30日以内)」という期限は、施設の届出ではなく産業廃棄物処理業(収集運搬業・処分業)の変更届出に適用されるもので、混同しないよう注意が必要です。いずれにせよ事後の届出であり、期限の数え方は所管自治体の手引きで必ず確認してください。
軽微な変更そのもの以外にも、次の事項に変更があったときは同じ届出が必要です(法15条2項1号、規則12条の10)。
- 氏名・名称・住所、法人の代表者
- 焼却施設の焼却灰等の処分方法、脱水・中和施設等の汚泥等の処分方法
- 最終処分場の埋立処分の計画・災害防止のための計画
- 産業廃棄物の搬入・搬出の時間および方法
- 着工予定年月日・使用開始予定年月日
- 役員、発行済株式総数の5%以上の株主・出資者、政令で定める使用人
施設の廃止・休止・再開も届出事項です。役員変更のような会社側の動きが施設側の届出義務に直結する点は見落とされがちで、変更情報を集約する社内体制が求められます。
処理業の許可とは別制度である点にも注意
施設の設置・変更許可(法15条・15条の2の6)と、処分業・収集運搬業の許可(法14条)およびその事業範囲の変更許可(法14条の2第1項)は、別の制度です。他社の廃棄物を受け入れて処分するには施設の許可と処分業の許可の両方が必要で、施設に変更を加えれば業の許可側の手続が連動する場合があります。逆に、建設業者が自社の建設廃棄物を自ら処理する自己処理の場合、処分業の許可は不要でも、施設が施行令7条に該当すれば設置許可・変更許可・軽微変更届の制度はそのまま適用されます。どちらの制度の手続かを取り違えると、必要な手続が丸ごと抜け落ちるおそれがあります。
無許可で変更した場合の罰則と許可取消し──5年以下の拘禁刑・1,000万円以下の罰金
変更許可が必要な変更を許可なく行った場合、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科の対象です(法25条1項10号。刑法等改正により2025年6月1日から懲役刑は拘禁刑に改められています)。不正の手段で変更許可を受けた場合も同じ法定刑で(同項11号)、この場合は施設の設置許可自体を知事が取り消さなければならない取消事由になります(法15条の3第1項3号)。
また、使用前検査を受けずに変更後の施設を使用すると6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(法29条2号)、軽微変更等の届出をせず、または虚偽の届出をすると30万円以下の罰金(法30条2号)が定められています。「届出で済むだろう」という自己判断は禁物で、迷う場合は着工前に都道府県の廃棄物担当部局へ事前協議を行うのが実務の定石です。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeは、建設業者様の許認可手続を書類作成・提出代行の面から支援しています。建設業許可は税込500万円以上の建設工事(建築一式工事は税込1,500万円以上、または延べ面積150㎡以上の木造住宅工事)を請け負う場合に必要で、解体工事の受注拡大や自社破砕施設の保有を検討する場面では、解体工事業登録や産業廃棄物関係の手続と並行して整理すべき論点が少なくありません。産業廃棄物処理施設の変更が軽微変更に当たるかの整理や、所管自治体の最新運用の確認、事前協議資料の作成も含めて、工事計画に沿った段取りをご提案します。あわせて、一括下請負の禁止(建設業法22条)に抵触する施工体制になっていないかの確認も欠かしません。
建設業許可の当事務所報酬は、知事許可の新規申請が税込110,000円、業種追加・更新が各税込55,000円です(いずれも税込・別途実費)。産業廃棄物処理施設の変更許可・軽微変更届に関する料金は、手続内容や所管自治体により異なるため、個別にお問い合わせください。建設業許可の詳細は建設業許可サポートのご案内をご覧ください。ご相談は何度でも無料です。
建設業許可の取得・更新でお困りではありませんか。行政書士法人Treeでは、要件の確認から申請書類の作成・提出代行、決算変更届や各種変更届まで対応します。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
産業廃棄物処理施設の変更手続は、①法15条2項4号〜7号の事項(廃棄物の種類・処理能力・設置計画・維持管理計画)が動くかを特定し、②動く場合でも施行規則12条の8基準(処理能力10%以上の増大、位置・処理方式、主要設備、排ガス・排水の増大、維持管理計画の緩和)のいずれにも該当しなければ、軽微変更として様式第23号の届出で足りる、という順序で判断します。変更許可となれば生活環境影響調査・縦覧・使用前検査を伴う設置許可並みの手続となり、無許可変更には5年以下の拘禁刑等の罰則と許可取消しのリスクが待っています。線引きに迷ったら、着工前の事前協議と専門家への確認を徹底してください。判断に迷う変更計画がある場合は、着工前に行政書士法人Treeへお問い合わせください。
産業廃棄物処理施設の変更許可・軽微変更届に関するよくある質問
Q:処理能力を10%未満だけ増やす場合は、必ず届出で済みますか。
A:いいえ。施行規則12条の8は「各号のいずれにも該当しない変更」を軽微としており、10%未満の能力増でも、燃焼室や破砕機といった主要設備の変更、排ガス・排水の排出方法や量の増大を伴えば変更許可が必要です。増加率だけで判断せず、変更の手段まで確認してください。
Q:軽微変更届の提出期限はいつまでですか。
A:準用元の法9条3項は届出時期を「遅滞なく」と定めるにとどまり、具体的な日数は法律には書かれていません。自治体の案内も「変更後、遅滞なく(速やかに)」届け出るよう求めるのが一般的です。「変更の日から10日以内(登記事項証明書を添付すべき場合は30日以内)」という期限は産業廃棄物処理業(収集運搬業・処分業)の変更届出のもので、施設の軽微変更等届出とは別制度ですので混同しないでください。事後の届出とはいえ、怠れば30万円以下の罰金の対象になり得ますので、所管自治体の運用する期限を必ず確認してください。
Q:変更許可の申請でも告示・縦覧の手続がありますか。
A:あります。焼却施設、最終処分場、廃石綿等の溶融施設など施行令7条の2に定める施設の変更許可では、法15条4項〜6項が準用され、告示・1か月間の縦覧、関係市町村長への意見聴取、利害関係者の意見書提出(縦覧期間満了日の翌日から2週間以内)の手続を経ます。
Q:変更許可が下りればすぐに施設を使えますか。
A:使えません。法15条の2の6第2項で準用される法15条の2第5項により、都道府県知事の使用前検査を受け、変更後の計画に適合すると認められた後でなければ使用できません。検査前に使用すると6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です(法29条2号)。
Q:自社の建設廃棄物だけを破砕する施設でも変更許可の対象ですか。
A:対象です。1日あたりの処理能力が5トンを超えるがれき類・木くずの破砕施設は施行令7条の設置許可対象施設であり、自己処理のため処分業の許可が不要な場合でも、施設の設置許可・変更許可・軽微変更届の規律はそのまま適用されます。破砕機の入替えや能力増強の前に、手続の要否を所管自治体に確認してください。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


