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会社の取締役や役員が自己の利益を図って会社に損害を与えた場合、背任罪(刑法第247条)または特別背任罪(会社法第960条)として刑事告訴の対象になり得ます。「役員が会社の資金を私的に流用していた」「取引先と共謀して不当な条件で契約を結んでいた」——こうした事案では、民事上の損害賠償請求と並行して、刑事告訴による法的責任の追及を検討することが重要です。ただし、背任罪は構成要件の立証が複雑であり、告訴状の記載内容が不十分だと受理に至らないケースも少なくありません。本記事では、告訴状作成の専門家である行政書士が、背任罪と特別背任罪の違い、告訴状に記載すべき事項、証拠の整理方法を解説します。
「役員の不正行為について告訴を検討しているが、何をどう書けばいいかわからない」という方は、行政書士法人Treeにご相談ください。告訴状作成の専門家が、事案の整理から告訴状の完成までサポートいたします。相談は何度でも無料・全国対応です。
目次
背任罪とは?構成要件と特別背任罪との違い
背任罪(刑法第247条)の構成要件
背任罪は、刑法第247条に規定されています。「他人のためにその事務を処理する者」が、自己もしくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えた場合に成立します。
背任罪の成立には、以下の4つの要件がすべて揃う必要があります。
| 要件 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 1. 他人の事務処理者 | 他人のために事務を処理する地位にあること | 会社の役員、支配人、財産管理を任された従業員等 |
| 2. 図利加害目的 | 自己・第三者の利益を図る目的、又は本人に損害を加える目的 | リベートの受領、親族企業への利益供与等 |
| 3. 任務違背行為 | 任務に背く行為をしたこと | 不当に安い価格での売却、無担保での融資決定等 |
| 4. 財産上の損害 | 本人に財産上の損害が発生したこと | 会社に具体的な金銭的損失が生じた事実 |
法定刑は5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。なお、背任罪は非親告罪であるため告訴がなくても捜査は可能ですが、告訴を行うことで捜査機関に被害事実を正式に申告し、捜査の端緒とすることができます。
特別背任罪(会社法第960条)との違い
会社の取締役・監査役・執行役などの一定の役職者が背任行為を行った場合には、刑法の背任罪ではなく、会社法第960条の特別背任罪が適用されます。特別背任罪は背任罪の特別規定であり、法定刑が10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、又はこれの併科と大幅に重くなっています。
| 比較項目 | 背任罪(刑法第247条) | 特別背任罪(会社法第960条) |
|---|---|---|
| 主体 | 他人の事務処理者(広い範囲) | 取締役・監査役・執行役・会計参与等 |
| 法定刑 | 5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 | 10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金(併科あり) |
| 親告罪/非親告罪 | 非親告罪 | 非親告罪 |
| 構成要件 | 図利加害目的+任務違背+財産上の損害 | 同左(主体が限定される点が異なる) |
告訴状を作成する際には、被告訴人が会社法上の役員に該当するかどうかを確認し、該当する場合は特別背任罪として罪名を記載するのが適切です。
背任罪と横領罪の区別
背任罪と混同されやすいのが業務上横領罪(刑法第253条)です。両者の違いは、行為の性質にあります。
- 横領罪: 委託された他人の財物を自分のものにする行為(例: 預かった金銭の着服)
- 背任罪: 委託された事務処理において任務に背く判断・行為をする(例: 不当な契約締結、不正融資)
金銭の直接的な着服であれば横領罪、財産管理上の判断や行為で損害を与えた場合は背任罪が適用されるのが一般的です。実務上、両者の区別が微妙なケースも存在し、どちらの罪名で告訴すべきか判断に迷う場合は、事案の内容を整理したうえで専門家に相談することをおすすめします。
横領罪の告訴状の書き方については「横領罪の告訴状の書き方」で詳しく解説しています。
背任罪の告訴状に記載すべき事項
告訴状の基本的な構成は他の犯罪と共通していますが、背任罪は構成要件が複雑であるため、4つの要件それぞれに対応する事実を明確に記載することが受理のポイントです。
告訴状の構成と記載項目
| 記載項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 告訴人の情報 | 会社名・代表者名・住所・連絡先(法人が告訴する場合は代表者による告訴) |
| 被告訴人の情報 | 氏名・住所・役職名(会社との関係を明記) |
| 告訴の趣旨 | 「被告訴人の下記行為は背任罪(刑法第247条)/特別背任罪(会社法第960条)に該当するので、処罰を求めます」 |
| 犯罪事実 | ①事務処理者としての地位、②図利加害目的、③具体的な任務違背行為、④財産上の損害額とその根拠 |
| 告訴に至った経緯 | 不正行為の発覚の経緯、社内調査の結果等 |
| 立証資料一覧 | 証拠書類の目録(添付書類リスト) |
犯罪事実の記載で押さえるべきポイント
背任罪の告訴状で最も重要なのが「犯罪事実」の記載です。以下の4点を具体的かつ明確に記述する必要があります。
1. 事務処理者としての地位: 被告訴人がどのような立場で会社の事務を処理していたかを明記します。「○○株式会社の取締役として、同社の資金管理および取引先との契約締結に関する業務を担っていた」のように、具体的な職務範囲を記載します。
2. 図利加害目的: 被告訴人が自己または第三者の利益を図る目的で行為に及んだことを示す事実を記載します。「自己が代表を務める別会社に利益を供与する目的で」など、目的が推認できる具体的な事情を挙げます。
3. 任務違背行為の具体的内容: いつ・どこで・どのような行為を行ったかを、日時・場所・金額・相手方を特定して記載します。「令和○年○月○日、取引先A社との間で、市場相場の半額である○○万円で○○を売却する契約を締結した」のように具体的に記述します。
4. 財産上の損害: 会社が被った具体的な損害額とその算出根拠を記載します。損害額は市場価格との差額や、本来得られるべきであった利益など、客観的に算定できる形で示すことが求められます。
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背任罪の告訴に必要な証拠
背任罪は構成要件の立証が難しい犯罪類型の一つです。告訴状に添付する証拠は、できる限り客観的な資料を揃えることが受理率を高めるポイントとなります。
有効な証拠の例
| 構成要件 | 有効な証拠 |
|---|---|
| 事務処理者の地位 | 登記事項証明書、取締役就任の議事録、雇用契約書、組織図等 |
| 図利加害目的 | 被告訴人と利益供与先との関係を示す資料(法人登記、親族関係、メール等) |
| 任務違背行為 | 問題の契約書、稟議書、取締役会議事録、メール・チャットの記録、帳簿類 |
| 財産上の損害 | 市場価格の調査資料、会計帳簿、財務諸表、損害額の算定書等 |
証拠収集にあたっては、社内調査の段階で関係書類を散逸させないことが重要です。被告訴人がデータの削除や書類の持ち出しを行う可能性がある場合は、発覚時点で速やかに関連資料を保全してください。
証拠の集め方の全般については「告訴状に必要な証拠の集め方」で解説しています。
よくある質問
Q. 背任罪と横領罪は同時に告訴できますか?
一つの行為が背任罪と横領罪のどちらに該当するかは事案の性質によって決まりますが、行為が複数にわたる場合はそれぞれの行為について適切な罪名で告訴することが可能です。たとえば、不正な契約締結(背任罪)と会社資金の着服(横領罪)が同時に行われていたケースでは、両方の罪名を併記して告訴することも考えられます。罪名の判断に迷う場合は専門家にご相談ください。
Q. 背任罪の告訴に時効はありますか?
背任罪(刑法第247条)の公訴時効は5年です。特別背任罪(会社法第960条)の公訴時効は7年です。時効は犯罪行為が終わった時点から進行します。不正行為の発覚が遅れるケースも多いため、発覚した時点で速やかに告訴の準備を進めることが重要です。
Q. 会社ではなく個人が被害者でも背任罪で告訴できますか?
背任罪は「他人のために事務を処理する者」が対象であるため、個人の財産管理を委託された者の不正行為に対しても適用される場合があります。たとえば、成年後見人が被後見人の財産を不当に処分したケースなどが該当し得ます。ただし、こうしたケースでは別の罪名(横領罪等)の方が適切な場合もあるため、事案に応じた罪名の検討が必要です。
Q. 告訴と民事訴訟は並行して進められますか?
並行して進めることが可能です。刑事告訴と民事訴訟は別個の手続きであり、同時に進行させることに法律上の制約はありません。背任行為による損害の回復には民事上の損害賠償請求が必要であり、刑事告訴と併せて対応するケースも多く見られます。民事訴訟については弁護士にご相談ください。
まとめ
背任罪の告訴は、構成要件の立証が複雑であるため、犯罪事実の記載と証拠の整理が特に重要です。
- 背任罪(刑法第247条): 他人の事務処理者が図利加害目的で任務に背き財産上の損害を与えた場合に成立。法定刑は5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
- 特別背任罪(会社法第960条): 取締役等の役員が主体の場合に適用。法定刑は10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金
- 告訴状のポイント: 4つの構成要件(事務処理者の地位・図利加害目的・任務違背行為・財産上の損害)をそれぞれ具体的に記載する
- 証拠の保全: 社内調査の段階で契約書・帳簿・メール等の客観的資料を散逸させないよう速やかに確保する
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| サービス | 料金 |
|---|---|
| 告訴状作成 | 34,800円(税抜)〜 |
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※ 記事の内容には細心の注意を払っておりますが、万が一誤りがございましたらご指摘いただけますと幸いです。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではございません。具体的なケースについては専門家へのご相談をおすすめいたします。
※ 2026年4月時点の刑事訴訟法に基づく解説です。告訴・告発の受理判断は捜査機関の裁量による部分があります。具体的な事案は弁護士にもご相談ください。


