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偽計業務妨害罪の告訴状の書き方|威力業務妨害との違い・記載例を解説

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「虚偽の通報や嫌がらせ電話で会社の営業が妨害された」「SNSに嘘の情報を流されて客が来なくなった」——このようなケースは偽計業務妨害罪(刑法233条)に該当する可能性があります。偽計業務妨害罪は威力業務妨害罪(刑法234条)と構成要件が似ていますが、「偽計」と「威力」の違いによって適用される条文が異なります。この記事では、偽計業務妨害罪の構成要件・威力業務妨害罪との違い・告訴状の記載例を解説します。

結論として、偽計業務妨害罪は「偽計を用いて他人の業務を妨害した」場合に成立し、3年以下の拘禁刑(2025年6月施行の刑法改正による一本化)または50万円以下の罰金が科されます。「偽計」とは人の錯誤・不知を利用する欺瞞的手段や謀略を指し、虚偽通報・嘘の情報拡散・営業を装った嫌がらせ電話等がこれに該当します。

「偽の通報や虚偽情報で業務妨害被害を受けているが告訴状の書き方が分からない」とお悩みの方は、行政書士法人Treeにご相談ください。告訴状の構成要件整理から証拠整備まで、専門家がサポートします。相談は何度でも無料・全国対応です。

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偽計業務妨害罪の構成要件

条文(刑法233条)

刑法233条は、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する」と規定しています(2025年6月施行の刑法改正で「懲役」は「拘禁刑」に一本化)。

構成要件の分析

要件 内容
行為態様 虚偽の風説の流布、または偽計を用いること
結果 他人の信用毀損、または業務妨害
故意 行為と結果の認識・認容

「偽計」の意味

「偽計」とは、人を欺罔し、または人の錯誤・不知を利用する欺瞞的手段や謀略をいうとされます。具体的事例として、他人のキャッシュカード暗証番号を盗撮する目的でATMを長時間占拠した行為が偽計業務妨害罪に該当するとされた判例(最決平成19年7月2日)があります。具体例は以下のとおりです。

  • 虚偽の予約を多数入れて電話回線を占有させる
  • 存在しない商品の注文を連続して発注する
  • 他人名義で虚偽の苦情電話をかけ続ける
  • SNSで事実無根の誹謗中傷を拡散する
  • 爆発物設置等の虚偽通報で営業を停止させる

「虚偽の風説の流布」の意味

「虚偽の風説の流布」とは、客観的事実に反する内容の噂を、不特定または多数の人に知れわたるような態様で伝達する行為をいいます(大判大正5年12月18日)。SNSでの拡散、口コミでの噂話、インターネット掲示板への書込みなどが典型です。

信用毀損罪(刑法233条前段)との関係

刑法233条は、前段に信用毀損罪(虚偽の風説の流布・偽計により「人の信用を毀損」した場合)、後段に偽計業務妨害罪(同手段により「人の業務を妨害」した場合)を規定しています。

  • 信用毀損罪: 被害者の経済的信用(支払能力・支払意思、商品の品質に対する社会的信頼等)を低下させた場合(最判平成15年3月11日)
  • 偽計業務妨害罪: 被害者の業務(営業活動・職業活動)を妨害した場合

両罪は観念的競合として同時に成立することもあります。例えば「A社は粉飾決算をしている」と虚偽の情報をSNSで拡散し、A社の営業に実害が出た場合は、信用毀損罪と偽計業務妨害罪の両方に該当します。告訴時に両罪を明記しておくと捜査機関の判断が適切に行えます。

電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2)との違い

コンピューター・電磁的記録を対象とした業務妨害については、刑法234条の2に「電子計算機損壊等業務妨害罪」が規定されており、通常の業務妨害罪より重い法定刑(5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)が科されます。

典型例は、業務用コンピュータの破壊、虚偽データの入力による誤作動発生、DDoS攻撃によるサーバーダウンの発生等です。単純なSNS投稿や電話での偽計は偽計業務妨害罪ですが、コンピュータシステム自体への攻撃は電子計算機損壊等業務妨害罪となる点に注意が必要です。

偽計業務妨害罪と威力業務妨害罪の違い

刑法234条(威力業務妨害罪)は「威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による」と規定され、独自の法定刑は規定せず刑法233条の法定刑(3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)を準用する構造となっています。そのため両罪の法定刑は同一です。

項目 偽計業務妨害罪(刑法233条) 威力業務妨害罪(刑法234条)
手段 偽計(欺瞞・謀略)・虚偽風説の流布 威力(人の意思を制圧する勢力)
手段の特徴 非公然・隠密的・不可視的 公然・誇示的・可視的
典型例 虚偽通報、嘘の情報拡散、虚偽注文 店内で大声を出す、物を破壊する、暴行
法定刑 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 同左(刑法234条は233条を準用)

両罪の違いは手段の性質です。暴力・脅迫的で公然と行われる強度の手段は「威力」、欺瞞的で隠密的に行われる手段は「偽計」と整理できます。

偽計業務妨害罪の告訴状記載事項

告訴と被害届の違い

「告訴」と「被害届」は混同されがちですが、法的意味は大きく異なります。

項目 告訴 被害届
法的性質 処罰意思表示を含む(刑事訴訟法230条) 被害事実の報告のみ
捜査機関の対応義務 受理時に速やかに検察へ送致する義務(刑訴242条) 捜査義務なし
結果通知 処分結果の通知あり(刑訴260条) 通知なし

告訴のほうが捜査機関の動きを促す効果が強く、業務妨害事案で本格的な刑事処分を求める場合は告訴が適切です。

告訴の管轄

告訴状の提出先は、以下のいずれも可能です。

  • 被害発生地を管轄する警察署
  • 被告訴人(加害者)の住所地を管轄する警察署
  • 告訴人(被害者)の住所地を管轄する警察署
  • 検察庁(検事正宛て、ただし実務上は警察経由を求められることが多い)

告訴状の基本構成

  1. 宛先(管轄警察署長または検察庁検事正)
  2. 告訴人の氏名・住所・連絡先(法人の場合は代表者も)
  3. 被告訴人の氏名・住所(判明している範囲)
  4. 告訴の趣旨
  5. 告訴事実(犯行日時・場所・行為態様・被害状況)
  6. 証拠の表示
  7. 作成年月日と告訴人の署名押印

告訴事実の記載例

告訴事実は、「告訴人の属性」「被告訴人の行為の具体的態様」「偽計該当性の根拠」「業務妨害の結果・損害」「刑法233条の構成要件への当てはめ」の5要素を漏れなく記載することが重要です。以下に飲食店への虚偽予約を例とした記載例を示します。

第1 告訴人の身分・営業の状況

告訴人は、〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号において、飲食店「〇〇(店舗名)」(以下「本件店舗」という。)を経営する者であり、本件店舗は、営業時間を毎日午前11時から午後10時まで(ラストオーダー午後9時)とし、全席予約制のディナーコース(客単価約8,000円、1日平均来客数約40名)を主たる営業形態としている。予約の受付は、本件店舗代表電話(〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇)、自社ウェブサイト、及び予約プラットフォーム「〇〇」を通じて行っている。

第2 被告訴人の行為

被告訴人は、令和〇年〇月〇日から同年〇月〇日までの間、別紙「虚偽予約一覧表」記載のとおり、告訴人の本件店舗に対し、実際には来店する意思がないにもかかわらず、あたかも真実の予約であるかのように装い、以下の態様で延べ〇〇回にわたり虚偽の予約電話をかけた。

  1. 被告訴人は、「〇〇(氏名を詐称)」「××社の接待のため」等と称し、本件店舗代表電話に予約を申し入れた。
  2. 予約人数は1組あたり6名から10名(客単価8,000円換算で1組あたり4万8,000円〜8万円相当)であり、その多くが本件店舗の繁忙時間帯(金曜日・土曜日の午後7時以降)に集中していた。
  3. 告訴人は、いずれの予約についても、本件店舗の座席・食材・人員を確保し、コース料理の仕込みを行って来客に備えた。
  4. しかし、被告訴人は予約の指定時刻になっても本件店舗に現れず、予約時に告げた連絡先に架電しても応答せず、連絡が一切取れない状態を繰り返した(いわゆる「無断キャンセル」)。
  5. 被告訴人は、上記のような虚偽予約を、2か月足らずの期間に延べ〇〇回、のべ〇〇〇名分にわたり反復継続した。

第3 偽計に該当する事実

被告訴人の上記行為は、実際には来店する意思が全くないにもかかわらず、あたかも来店するかのように装って告訴人を錯誤に陥れ、座席・食材・人員を無駄に確保させたものである。詐称した氏名・連絡先を用いている点、虚偽予約を繰り返している点、繁忙時間帯を狙って予約を行っている点などに照らせば、被告訴人は告訴人を欺罔する故意を有していたことが明らかであり、刑法233条にいう「偽計」に該当する。

第4 業務妨害の結果

告訴人は、被告訴人の上記行為により、以下の損害を被った。

  1. 虚偽予約分の座席拘束により、真実の来店希望客を断らざるを得ず、機会損失として少なくとも金〇〇〇万円相当の売上を失った。
  2. 予約人数に合わせて仕入れた食材のうち、使用できず廃棄せざるを得なくなったもの合計金〇〇万円相当。
  3. 予約対応・事実確認・来客確認のために追加発生した従業員の人件費として金〇〇万円相当。
  4. 度重なる虚偽予約により、本件店舗の予約受付体制の見直し・SNS等を通じた営業形態の変更の検討を余儀なくされ、通常の営業業務の遂行に多大な支障が生じた。

第5 刑法233条該当性

以上のとおり、被告訴人の一連の行為は、虚偽の予約という欺瞞的手段を用いて告訴人を錯誤に陥れ(偽計)、告訴人の飲食店経営という営業業務の遂行を現に妨害したものであり、刑法233条後段の偽計業務妨害罪の構成要件を充足する。なお、被告訴人の行為は故意性・計画性・継続性のいずれにおいても悪質性が高く、厳重な処罰を求める。

第6 結語

よって、告訴人は、被告訴人の上記行為について、刑法233条の偽計業務妨害罪に該当するものとして告訴し、厳重な処罰を求める。

※ 上記はあくまで記載例です。個別事案では、虚偽通報・SNS誹謗中傷・虚偽苦情電話・嫌がらせ注文等、手口ごとに告訴事実の構成も変わるため、専門家への相談をお勧めします。

告訴に必要な証拠

客観的証拠

  • 電話の録音データ、通話履歴
  • 虚偽予約・虚偽注文の記録(予約台帳・注文書)
  • SNS投稿のスクリーンショット・IPアドレス情報
  • 監視カメラの映像(来店しなかった虚偽予約の場面等)
  • 営業損失を裏付ける帳簿・売上データ

人的証拠

  • 店員・従業員の目撃証言・被害状況報告書
  • 被害時の状況を記録した業務日誌

偽計業務妨害罪の公訴時効

偽計業務妨害罪の公訴時効は3年です(刑事訴訟法250条2項第5号。長期5年未満の拘禁刑若しくは罰金に当たる罪の公訴時効として規定)。業務妨害罪の法定刑の上限が「3年以下の拘禁刑」(=長期5年未満の拘禁刑)であるため、同号の「長期5年未満の拘禁刑若しくは罰金に当たる罪については3年」が適用されます。告訴権の時効ではなく公訴時効のため、被害から3年経過すると刑事責任追及は困難になります。証拠保全と早期告訴が重要です。

告訴状作成のプロに相談

警察署は「告訴の受理は義務」とされていますが、実務上は不受理となるケースが少なくありません。不受理の主な理由は、①構成要件該当事実の記載不十分、②証拠不足、③民事事件と判断される、④警察の人的リソース不足などです。

行政書士法人Treeでは、告訴状の作成・証拠整理から不受理となった場合の対応までサポートしています。

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民事責任の追及

偽計業務妨害による売上減少や信用低下は、民事上の不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求の対象にもなります。慰謝料・営業損害・対応にかかった人件費等を、刑事告訴と並行して請求することが実務上多く行われます。

よくある質問

Q. 一度だけの虚偽電話でも偽計業務妨害罪になりますか?

一度の行為でも、営業妨害の結果が具体的に生じていれば犯罪成立の可能性があります。ただし、実務上は継続的・反復的な行為のほうが立件されやすい傾向があります。一度だけの電話については民事責任の追及が中心となるケースが多いです。

Q. 匿名のSNS投稿による業務妨害は犯人を特定できますか?

可能です。2022年10月1日施行の改正プロバイダ責任制限法(正式名称「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」)により、発信者情報開示命令事件手続が新設されました。従来の2段階手続(SNS事業者→プロバイダ)が1段階の非訟手続に統合され、より迅速な開示が可能になっています。ただし開示請求は弁護士による正式な手続きが必要な場合が多く、開示までに数か月を要することもあります。

なお、刑事告訴を並行して行うと、警察による捜査機関の権限で発信者特定が進むこともあるため、早期の告訴と民事開示請求の並行が実務上は効果的です。

Q. 偽計業務妨害罪の量刑相場は?

初犯・被害軽微の事案では不起訴または罰金(20〜40万円程度)で処理されることが多い一方、以下のような要素がある場合は執行猶予付き判決または実刑となる可能性もあります。

  • 計画性・継続性が高い
  • 被害額・営業損失が大きい(数百万円〜)
  • 社会的影響が大きい(大規模爆破予告・不特定多数への影響)
  • 同種前科がある
  • 被害者との示談が成立していない

社会的影響が大きい業務妨害事案(大規模爆破予告・虚偽通報等)では実刑判決となる傾向が強まっています。

Q. 偽計業務妨害罪は親告罪ですか?

偽計業務妨害罪は非親告罪です。告訴がなくても警察・検察は独自に捜査できますが、被害者からの告訴により捜査が進展しやすくなります。

Q. 逸失利益はどの程度認められますか?

因果関係が明確に立証できれば、虚偽行為の期間中の売上減少分対応コストが損害として認められます。過去の売上平均との差額、広告費増加分などが算定の基準となります。

Q. 業務妨害罪で逮捕される可能性はありますか?

悪質性・継続性が認められる場合、逮捕・起訴に至るケースがあります。ニュースで見る「爆破予告」「嫌がらせ電話」「虚偽通報」等はいずれも偽計業務妨害罪・威力業務妨害罪で逮捕・起訴される典型例です。

まとめ

  • 偽計業務妨害罪は刑法233条に定める犯罪で、偽計・虚偽風説による業務妨害
  • 法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
  • 威力業務妨害罪との違いは手段の性質(欺瞞か威迫か)
  • 告訴状には虚偽行為の具体的な態様と業務妨害の結果を明記
  • 公訴時効は3年(刑事訴訟法250条2項第5号)のため、速やかな告訴と証拠保全が重要
  • 民事上の損害賠償請求も並行して検討

威力業務妨害罪については関連記事「威力業務妨害罪の告訴状の書き方」、名誉毀損・侮辱による信用毀損は「名誉毀損・侮辱罪の告訴状の書き方」をご参照ください。

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※ 本記事の内容は2026年4月時点の刑法・刑事訴訟法に基づく一般的な解説であり、個別の法的助言ではありません。民事損害賠償・訴訟対応は弁護士にご相談ください。

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