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結論から言えば、パワハラで加害者を刑事告訴するには、「暴行罪」「脅迫罪」「強要罪」のいずれかの構成要件に該当する具体的な行為を特定し、その事実を告訴状に正確に記載することが不可欠です。「パワハラ」という言葉自体は刑事罰の対象となる罪名ではなく、個々の行為が刑法上のどの犯罪に当たるかを見極める必要があります。
告訴状は、被害を受けた事実と犯罪の構成要件を結びつける法的文書です。感情的な訴えや経緯の羅列では受理されにくく、構成要件に沿った事実の記載が求められます。本記事では、告訴状作成の専門家の視点から、パワハラに適用される主要3罪の要件と、告訴状の具体的な書き方を解説します。
告訴状の書き方でお困りですか?
パワハラ被害の告訴状は、どの罪名を選ぶか・どの事実を記載するかで受理率が大きく変わります。告訴状の書類作成は行政書士が対応できる業務です。法的判断や捜査機関との交渉が必要になった段階で弁護士と連携する体制も整えています。一人で抱え込まず、まず専門家にご相談ください。
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目次
パワハラと刑法の関係|どの罪が適用されるか
「パワハラ」は、労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)において定義される概念ですが、同法は事業主に対して相談窓口の設置や再発防止などの「措置義務」を課するものであり、加害者個人への刑事罰は定められていません。パワハラ行為を刑事告訴するためには、個々の行為が刑法上の犯罪に該当するかどうかを個別に判断する必要があります。
パワハラとして典型的に問題となる行為のうち、刑事告訴の場面で代表的に検討されやすいのは以下の3罪です。もっとも、事案によっては傷害罪、名誉毀損罪、侮辱罪等が問題となることもあります。
| 罪名 | 該当するパワハラ行為の例 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 暴行罪(刑法208条) | 胸倉をつかむ、物を投げつける、肩や頭を叩く(傷害なし) | 2年以下の拘禁刑・30万円以下の罰金・拘留または科料 |
| 脅迫罪(刑法222条) | 「クビにする」「家族に危害を加える」等の害悪告知 | 2年以下の拘禁刑・30万円以下の罰金 |
| 強要罪(刑法223条) | 脅迫または暴行を用いて義務のない行為を強制する(退職届を書かせる等) | 3年以下の拘禁刑 |
暴行が傷害(治療を要するけが)に至った場合は傷害罪(刑法204条、法定刑:15年以下の拘禁刑・50万円以下の罰金)が成立します。また、「バカ」「使えない」「存在が邪魔だ」などの侮辱的発言を公然と繰り返すパワハラ行為は、侮辱罪(刑法231条)の適用も検討されます。2022年の刑法改正(2025年6月施行)により侮辱罪は「1年以下の拘禁刑・30万円以下の罰金・拘留または科料」に厳罰化されており、公然と人格を否定する発言が繰り返される事案では告訴の選択肢の一つとなります。身体的暴力が含まれる事案の詳細は「傷害罪の告訴状の書き方|暴行罪との違いと証拠の集め方」で解説しています。
各罪の構成要件|告訴状の「犯罪事実」欄に記載すべき核心
告訴状で最も重要なのは「犯罪事実」欄の記載です。構成要件とは、ある行為が特定の犯罪として成立するために必要な要素の集まりです。構成要件に対応した事実が記載されていなければ、受理後の捜査が進みにくくなります。
暴行罪の構成要件(刑法208条)
暴行罪の要件は「人に対して暴行を加えること」です。「暴行」とは、人の身体に対する不法な有形力の行使を指します。傷害が生じなかった場合に適用される点が特徴で、傷害が生じた場合は傷害罪が成立します。
直接身体を触れる行為だけでなく、状況・態様によっては物の投擲や著しく威迫的な行為が暴行に該当する場合もありますが、どの程度の行為が「暴行」に当たるかは個別の事情を踏まえた評価が必要です。
記載すべき事実の核心:
- 行為の日時・場所(「令和○年○月○日○時頃、○○株式会社○階会議室において」)
- 被告訴人の具体的行為(「右手で告訴人の左肩を強く叩いた」等)
- 傷害が生じていない旨(暴行罪を選択する場合)
脅迫罪の構成要件(刑法222条)
脅迫罪の要件は「生命・身体・自由・名誉・財産に対し害を加える旨の告知(害悪の告知)」です。相手方を畏怖させるに足りる程度の害悪を通知することが必要で、単なる叱責や感情的な言動は脅迫罪の要件を満たさない場合が多いです。
職場でよく問題となる「クビにするぞ」「評価を最低にしてやる」といった言動は、財産・名誉に対する害悪の告知に当たり得ます。一方、漠然とした不快な発言であっても、その内容・状況によっては要件を満たさないと判断されることがあります。
記載すべき事実の核心:
- 発言の日時・場所・状況(二者面談か、他の社員がいたか等)
- 具体的な発言内容(できる限り一字一句正確に、録音や記録から引用)
- その言動が「○○への害悪の告知」に当たること
- 告知の相手方(本人の財産・自由・名誉等、または親族)
強要罪の構成要件(刑法223条)
強要罪は、①脅迫または暴行を手段として、②相手に義務のないことを行わせるか、権利の行使を妨害することが要件です。脅迫・暴行にとどまらず「強制」という結果が加わる点で脅迫罪より重い罪とされており、法定刑も3年以下の拘禁刑と重くなっています。
職場での典型例としては、「辞表を書かなければ社内で不利な扱いをする」と言って退職届を書かせる行為、「断ったら評価を下げる」と告げて義務外の業務を強制する行為などが挙げられます。ただし、強要罪の成立には脅迫・暴行と強制行為との因果関係が必要であり、状況の立証が重要になります。
記載すべき事実の核心:
- 脅迫または暴行の具体的内容(手段)
- 被告訴人が相手に「させた」行為(義務のない行為)の内容
- 脅迫・暴行と強制行為との因果関係(「被告訴人の上記脅迫により、告訴人は○○を余儀なくされた」等)
告訴状の書き方|基本構成と犯罪事実の記載例
告訴状には法定の書式はありませんが、捜査機関が受理しやすい構成を守ることで、その後の捜査につながりやすくなります。
告訴状の基本構成
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 宛先 | 「○○警察署長殿」または「○○地方検察庁 検察官殿」 |
| 告訴状のタイトル | 「告訴状」 |
| 告訴人 | 住所・氏名・生年月日・連絡先 |
| 被告訴人 | 住所・氏名・生年月日・職業(不明な場合は勤務先・役職等で特定) |
| 告訴の趣旨 | 「被告訴人の下記の行為は○○罪に該当するため、厳重なる処罰を求め告訴します」 |
| 犯罪事実 | 日時・場所・具体的行為を構成要件に沿って記載(最重要) |
| 告訴に至った経緯 | 背景事情・経緯を時系列で補足(犯罪事実とは別に整理) |
| 証拠書類の表示 | 添付する証拠(録音データ、診断書、メール等)の一覧 |
| 年月日・署名押印 | 作成日・告訴人の署名捺印 |
犯罪事実の記載例①(脅迫罪の場合)
以下は、上司による脅迫行為を告訴する場合の「犯罪事実」欄の記載例です(架空の事実です)。
【犯罪事実】
被告訴人は、告訴人が勤務する○○株式会社における直属の上司であるが、令和○年○月○日午後6時頃、同社○階会議室において、告訴人に対し、「お前の評価を最低にして、社内の誰もお前を守らないようにしてやる」「次の査定でクビにすることなんて俺には簡単だ。家族が路頭に迷っても知らないぞ」などと申し向け、もって告訴人の財産および自由に対し害を加える旨告知して告訴人を脅迫したものである。
記載のポイントは、①日時・場所の特定、②発言内容をできる限り原文に近い形で引用、③その発言がどの構成要件(「財産および自由に対する害悪の告知」)に当たるかを明示することです。
犯罪事実の記載例②(強要罪の場合)
【犯罪事実】
被告訴人は、令和○年○月○日午後3時頃、○○株式会社○階会議室において、告訴人に対し、「今すぐ辞表を書かなければ、過去の些細なミスを全部社内に公表する」などと申し向けて脅迫し、よって告訴人に退職届を作成させたものである。退職届の作成は告訴人に法的義務のない行為であり、被告訴人は上記脅迫により告訴人をして退職届を作成させたものである。
脅迫罪・恐喝罪の告訴状作成に関する詳細は「脅迫罪・恐喝罪の告訴状の書き方|該当する言動と記載例」もあわせてご覧ください。
告訴状の作成、一人で進めるのが不安な方へ
どの罪名を検討するか、事実をどう整理して書面化するかは、告訴状作成の重要なポイントです。録音・LINE・診断書・メモなどの資料をもとに、行政書士法人Treeが告訴状案の作成と事実整理をサポートします。
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告訴状に添付する疎明資料|証拠の収集と整理
告訴状本体の記載だけでなく、証拠(疎明資料)の添付は非常に重要です。適式な告訴は受理されるべきものですが、実務上は事実の特定や証拠の整理が不十分だと補足説明や補正を求められることがあります。証拠が揃っているほど、捜査機関に事案の具体性が伝わりやすくなります。
| 証拠の種類 | 内容・収集上の注意 |
|---|---|
| 録音データ | 被害を受けた場面をボイスレコーダー等で記録。日時・場所が判別できるよう整理する |
| 被害メモ・日記 | 被害の都度、日付・発言内容・状況を記録。作成日が確認できるものが望ましい |
| メール・チャット履歴 | 脅迫的内容のメールやSNSメッセージのスクリーンショット・プリントアウト |
| 目撃者の陳述書 | 同席していた同僚等の陳述書(任意)。署名・押印があると信頼性が高まる |
| 診断書 | 精神科・心療内科等の診断書(適応障害・うつ病等)。暴行により傷害が生じた場合は整形外科等の診断書も |
証拠の収集・保全は早期に行うことが重要です。時間の経過とともに録音データの消失、目撃者の記憶の薄れ、メッセージの削除などが起こり得ます。被害を受けた時点からできる限り記録を残す習慣をつけることが、告訴状の説得力を高めます。
パワハラ事案で告訴を検討する際の法的手続き全体の流れについては「犯罪被害者のための法的手続き完全ガイド|告訴から賠償まで」もあわせてご参照ください。
よくある質問
Q0. 告訴状と被害届はどう違いますか?
A. 被害届は「犯罪被害の事実を警察に申告する書類」であり、加害者の処罰を求める意思は必須ではありません。受理されやすい反面、捜査の開始・継続は捜査機関の判断に委ねられます。一方、告訴状は「被害者が加害者の刑事処罰を求める意思を明示した書類」であり、検察官は告訴のあった事件について不起訴処分にしたときは速やかにその旨を告訴人に通知する義務があります(刑事訴訟法260条)。パワハラを確実に刑事手続きに乗せたい場合は、被害届だけでなく告訴状の提出を検討することが重要です。
Q1. パワハラで告訴状を出す場合、警察と検察のどちらに提出すればよいですか?
A. 法律上、告訴は検察官または司法警察員に対して行うことができ(刑事訴訟法241条)、警察署と検察庁のいずれに提出しても可能です。実務上は、事件発生地(行為が行われた場所)を管轄する警察署に提出することが一般的ですが、事案によっては地方検察庁への提出も検討されます。提出先の選定は個別の事情・事案の性質によって異なるため、弁護士にご相談ください。
Q2. パワハラの告訴状の作成は行政書士に依頼できますか?
A. 告訴状という書類の作成・起案は行政書士が対応できる業務です。ただし、提出先の選定・捜査機関との交渉・「どの罪が成立するか」という法律相談は弁護士の業務範囲となります。行政書士は構成要件に沿った事実の整理・記載形式の整備・疎明資料のリストアップをサポートします。
Q3. 告訴状が受理されない場合はどうすればよいですか?
A. 告訴は、要件を満たした内容であれば受理されるべき手続ですが、実務上は事実の特定や証拠の整理が不十分な場合に、その場で受理に至らず補足説明や補正を求められることがあります。そのため、一度持ち帰り対応となっても、告訴状の内容を見直して証拠を補充し、再提出することが考えられます。刑事訴訟法上、告訴は口頭または書面でできると定められています(刑事訴訟法241条)。捜査機関が告訴を受理した場合、受理書が交付されるのが実務上の運用です。その後の刑事手続きの進行については弁護士にご相談ください。
Q4. パワハラで脅迫罪・強要罪として告訴するのに公訴時効はありますか?
A. 脅迫罪・強要罪・暴行罪の公訴時効はいずれも3年です(刑事訴訟法250条2項6号)。時効は犯罪行為が終了した時点から進行します。被害を受けてからできるだけ早期に証拠を保全し、告訴状の準備を進めることが重要です。なお、傷害罪の公訴時効は10年(同法250条2項3号)です。
まとめ
パワハラで刑事告訴を検討する際のポイントをまとめます。
- 「パワハラ」という概念そのものは刑事罰の対象ではなく、個々の行為が暴行罪・脅迫罪・強要罪等に当たるかを判断する必要がある
- 告訴状の「犯罪事実」欄には、各罪の構成要件に対応した具体的な事実(日時・場所・行為内容)を記載する
- 録音データ・被害メモ・診断書等の疎明資料の添付が受理の可能性を高める
- 告訴状の作成は行政書士に依頼できるが、法的判断やその後の刑事手続きについては弁護士の領域である
告訴状作成のことなら行政書士法人Treeにご相談ください
告訴状作成の専門家として、パワハラ事案に対応した書類作成をサポートします。まずは現在の状況をお聞かせください。
| サービス | 料金 |
|---|---|
| 告訴状作成サポート | 34,800円〜(税込) |
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詳しくは告訴状作成サービスページ(34,800円〜)をご確認ください。
※ 2026年4月時点の刑事訴訟法に基づく解説です。詳しくは検察庁の公式サイトもご参照ください。告訴・告発の受理判断は捜査機関の裁量による部分があります。具体的な事案は弁護士にもご相談ください。


