結論から言えば、技術・人文知識・国際業務(いわゆる技人国)ビザの不許可では、「学校での専攻と職務内容の不一致」や「業務が専門性を要しないと判断された」ケースが代表的ですが、報酬、在留状況、契約関係、所属機関の実態等も審査されます。再申請に回数制限はなく、不許可理由を正確に把握して立証資料を組み直せば挽回の余地は十分にあります。出入国在留管理庁は許可・不許可の実例をガイドラインの別紙として公表しており、これを踏まえた書類設計が再申請の出発点です。本記事では、入管への申請取次を業務とする行政書士の立場から、公表事例に基づく不許可パターンと再申請の進め方を解説します。当事務所は行政書士法人として書類作成・申請取次を担い、不許可処分を訴訟で争う場面では提携弁護士と連携する体制を取っています。
目次
技人国ビザの審査枠組み――該当性と基準適合性の二段階
技人国の活動範囲は、出入国管理及び難民認定法(入管法)別表第一の二に「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務」と定められています。審査は、①業務がこの定義に当てはまるか(在留資格該当性)、②基準省令(平成2年法務省令第16号)の要件を満たすか(基準適合性)の二段階です。基準省令の主な要件は次のとおりです。
- 業務に必要な技術・知識に関連する科目を専攻して大学(短大・大学院・外国の大学を含む)を卒業、または本邦の専修学校の専門課程を修了(専門士・高度専門士)していること
- 上記の学歴がない場合は、当該業務について10年以上の実務経験があること(大学・専修学校の専門課程等で当該科目を専攻した期間を含む)
- 情報処理に関する業務に従事する場合は、法務大臣が告示で定める情報処理技術に関する試験に合格し、または資格を有していれば(基本情報技術者試験・応用情報技術者試験等。いわゆるIT告示)、学歴・実務経験は不問
- 翻訳・通訳、語学指導、広報・宣伝、海外取引業務、デザイン等の「国際業務」は3年以上の実務経験(大学卒業者が翻訳・通訳・語学指導に従事する場合は不要)
- 日本人が従事する場合と同等額以上の報酬を受けること
運用指針「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」(平成20年3月策定・最終改定令和8年4月)と許可・不許可事例は出入国在留管理庁のページで公表されています。
不許可事例① 専攻と職務内容の不一致
公表されている専攻不一致型の不許可事例には、次のようなものがあります。
- 声優学科を卒業した者が、ホテルのロビースタッフとして翻訳・通訳業務に従事するとして申請したが、専攻との関連性が認められず不許可
- イラストレーション学科を卒業した者が、店舗での翻訳・通訳を伴う衣類販売に従事するとして申請したが、実態は母国語を生かした接客であり、専攻との関連性も翻訳・通訳の実務経験もなく不許可
- 国際ビジネス学科で英語を中心に履修した者が、不動産会社の販売営業に従事するとして申請したが、不動産・営業に関する履修がごくわずかで不許可
注意すべきは、学歴により関連性の審査密度が異なる点です。大学卒業者は専攻と業務の関連性が比較的柔軟に判断される一方、専修学校卒業者(専門士)は原則として相当程度の関連性が求められます。ただし、認定専修学校専門課程修了者は関連性が比較的緩やかに判断されます。成績証明書やシラバスで「何を履修し、職務のどこで使うか」を具体的に示せるかが分かれ目です。
不許可事例② 単純労働該当(在留資格該当性なし)
もう一つの典型が、業務が反復訓練で従事可能ないわゆる単純労働と判断され、在留資格該当性が否定される類型です。
- 教育学部卒業者が弁当加工工場で箱詰め作業に従事するとして申請したが、人文科学の知識を要する業務と認められず不許可
- 栄養専門学校で食品化学等を履修した者が菓子工場で洋菓子製造を行うとして申請したが、反復訓練によって従事可能な業務として不許可
- 電気部品工場で加工・組立て・検査・梱包を行うとして申請したが、在籍する技能実習生とほぼ同一の業務であり不許可
- ホテルのフロント(予約管理・通訳)として採用されたが、過去に同様の理由で採用された外国人が研修予定を大幅に超えて配膳・客室清掃に従事し続けていたことが判明し不許可
一方で、現場業務がすべて否定されるわけではありません。日本人社員と同様のキャリアステッププランに基づく採用当初の実務研修は許可された事例があります。研修の期間・内容・修了後の配属を書面で明確にできるかが鍵です。
見落とされがちな不許可理由――報酬・在留状況・所属機関
専攻や職務内容に問題がなくても、次の理由で不許可となった事例が公表されています。
- 報酬要件違反:同時採用の日本人新卒が月額18万円であるのに申請人は月額13万5千円とされ、同等額以上と認められず不許可
- 在留状況不良:留学中に1年以上継続して月200時間以上のアルバイトを行い、資格外活動許可の範囲を大きく超えていたことが判明し不許可
- 所属機関の実態:会計事務所で会計事務に従事するとの申請だったが、所在地には料理店しかなく、事務所の実態が認められず不許可
- 出席率:専門学校の出席率が70%で、欠席期間中に資格外活動に従事していたことが判明し不許可
在留状況(アルバイト時間・出席率等)は書類を整え直しても事実自体は変えられないため、再申請では経緯の説明と改善の立証を含めた慎重な設計が必要です。
不許可になったら――理由の聴取と方針決定
不許可(在留資格認定証明書の場合は不交付)の通知書には概括的な理由しか書かれていません。まず行うべきは、申請先の地方出入国在留管理局に出頭して不許可理由の説明を受けることです。説明の機会は原則1回であり、審査官が問題視した点を聞き漏らすと再申請の方向を誤ります。申請取次行政書士が同席することもできます。
再申請に待機期間はありませんが、同じ書類の出し直しでは結論は変わりません。①事実誤認なら反証資料を添えて速やかに再申請、②立証不足なら資料を補強、③業務内容自体に該当性がなければ職務の再設計や他の在留資格の検討、と理由に応じて対応が分かれます。在留期限までに変更申請をしていれば、特例期間(入管法第20条第6項。処分時または在留期間満了日から2か月を経過する日のいずれか早い時まで)中は適法に在留できますが、不許可後は出国準備を案内されるのが通例で、対応を急ぐ必要があります。
再申請の対策と2025〜2026年の制度変更
再申請で許可を得るための実務上のポイントは次のとおりです。
- 雇用理由書・業務内容説明書で、職務を「誰に対して・何を・どの知識を用いて」行うのか具体的に記載する
- 成績証明書・シラバスで履修内容と職務の対応関係を示す(専門学校卒は特に重要)
- キャリアステッププラン・組織図・研修計画で、現場業務が研修の一環にとどまることを示す
- 決算書類・オフィス写真等で所属機関の実態と業務量を裏付ける
- 賃金規程や同僚日本人の待遇と比較し、報酬の同等性を説明する
制度変更にも注意が必要です。令和8年(2026年)4月15日以降の申請では、ガイドライン改定により、所属機関がカテゴリー3・4に該当し、かつ主に言語能力を用いて対人業務等(翻訳・通訳、ホテルのフロント等)に従事する場合には、所属機関の代表者に関する申告書の提出に加え、対象業務では使用する言語についてCEFR・B2相当以上の能力を証する資料が求められることが明確化されました。日本語については、JLPT・N2以上、BJTビジネス日本語能力テスト400点以上のほか、本邦の大学卒業または本邦の高等専門学校・専修学校の専門課程・専攻科の修了、我が国の義務教育修了かつ高等学校卒業、中長期在留者として20年以上の在留のいずれかに該当すれば、CEFR・B2相当の能力を有するものとみなされます。同じ改定では、カテゴリー3・4の所属機関について「所属機関の代表者に関する申告書」の提出が新たに求められるほか、特定技能・技能実習制度で人権侵害等により受入れ停止となった機関(派遣先等機関を含む)は、その停止期間中は技人国でも新たな受入れが原則認められないことが明記されました。技人国の申請すべてが一律にこの言語要件の対象となるわけではありませんが、留学生を「通訳要員」として採用する形の申請は従来より厳格に審査されます。また、2025年4月1日の手数料改定により、在留資格変更許可・在留期間更新許可の手数料は窓口6,000円・オンライン5,500円(改定前4,000円)となっています。さらに2026年7月3日、出入国在留管理庁は在留期間に応じて手数料を1万円〜7万5,000円(永住許可は20万円)へ引き上げる政令案を公表し、パブリックコメントを経て2026年10月の施行を目指す方針を示しています。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、申請取次行政書士が技人国ビザの新規取得(在留資格認定証明書交付申請)・変更・更新の書類作成から入管への取次まで一貫して対応します。不許可となった案件は、不許可理由の聴取への同席、公表事例と照らした原因分析、立証資料の再構築まで含めて再申請を設計します。料金の目安は、在留資格認定・変更のスタンダードプランが89,800円(税込)、在留期間更新のスタンダードプランが33,000円(税込)です(案件の内容により異なります)。また、当事務所にご依頼いただいた申請が不許可となった場合は、無料で再申請を行う保証を設けています。ご相談は何度でも無料です。詳細は就労ビザサポートのご案内をご覧ください。
在留資格の申請でお困りの方へ。行政書士法人Treeでは、申請取次行政書士が要件の確認・必要書類の作成・出入国在留管理局への申請取次までを一括してサポートします。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
技人国ビザの不許可は、①専攻と職務の関連性不足、②単純労働該当、③報酬・在留状況・所属機関の実態といった周辺要件の問題に大別されます。出入国在留管理庁が公表する許可・不許可事例は再申請の設計図として有用であり、不許可理由の聴取で得た情報と突き合わせて立証を組み直せば、再申請での挽回は十分可能です。言語要件の追加など運用の改定も続いているため、最新の公式情報に基づいて準備してください。
技人国ビザの不許可・再申請に関するよくある質問
Q:不許可になった後、再申請までに待機期間はありますか?
A:法律上の待機期間や回数制限はなく、準備が整い次第いつでも再申請できます。ただし、不許可理由を解消しないまま出し直しても同じ結論になるため、理由の聴取と原因分析が実務上の前提です。
Q:不許可の理由は詳しく教えてもらえますか?
A:通知書には概括的な記載しかありませんが、地方出入国在留管理局に出頭すれば審査官から説明を受けられます。説明の機会は原則1回とされるため、質問事項を整理し、申請取次行政書士の同席のもとで臨むことをおすすめします。
Q:専門学校卒だと大学卒より不利になりますか?
A:専修学校卒業者(専門士・高度専門士)は原則として、専攻科目と職務内容の関連性が大学卒業者より厳密に審査されます。ただし、認定専修学校専門課程修了者は関連性が比較的緩やかに判断されます。履修科目と職務の対応関係を成績証明書やシラバスで具体的に立証できれば、許可を得ることは十分可能です。
Q:入社当初に店舗や工場での研修があると不許可になりますか?
A:日本人社員と同様のキャリアステッププランに基づく採用当初の実務研修であれば許容された事例があります。逆に、研修名目で長期間、配膳・清掃・製造ラインなどに従事させる計画は不許可事例として公表されています。
Q:在留期限が近いのに変更申請が不許可になりました。どうすればよいですか?
A:期限までに申請していれば特例期間(入管法第20条第6項)により審査中は適法に在留できますが、不許可後は出国準備のための在留資格への変更を案内されるのが通例です。期限内に再度の変更申請を行える場合もあるため、速やかに専門家へ相談してください。処分を訴訟で争う場合は弁護士の職域となります。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


