結論から言えば、2026年公募の「複数者連携デジタル化・AI導入枠」は、代表事業者と参画事業者を合わせた10者以上の補助事業グループにより、商店街・サプライチェーン・観光地などの面的なデジタル化を共同で進めるための枠組みです。通常枠より補助率が引き上げられており、グループ全体における基盤導入経費と消費動向等分析経費の補助額合計は最大3,000万円です。事務費・専門家費等のその他経費は、これら2区分の補助額合計に10%と補助率3分の2を乗じた額、または200万円のいずれか低い額が上限となります。行政書士法人Treeでは、行政書士の業務範囲内で、交付申請に必要な事業計画書・各種申請書類の作成を行い、雇用関係助成金は社会保険労務士、税務は税理士と連携してご支援します。本記事では、共同申請スキームの組み立て方を実務目線で整理します。
目次
複数社連携IT導入枠(複数者連携デジタル化・AI導入枠)とは何か
複数者連携デジタル化・AI導入枠は、中小企業デジタル化・AI導入支援事業(デジタル化・AI導入補助金2026)の一類型で、2025年までの「複数社連携IT導入枠」に相当します。サプライチェーンでつながる取引先群や、商店街・商業集積地・観光地といった地域単位の事業者群が連携し、ITツールを面的に導入することで、地域や業界全体の生産性向上・DX(デジタルトランスフォーメーション)を図る取り組みを支援します。
特徴は、ITツールの導入費そのものだけでなく、複数事業者をまとめるためのコーディネート費や、外部専門家による助言への謝金まで補助対象に含む点にあります。1社ごとにバラバラに導入するのではなく、商流データや決済・受発注の基盤を共通化することで、参加事業者全体の事務効率が上がる設計です。なお、IT導入補助金は2026年公募から「デジタル化・AI導入補助金2026」へ改称され、当枠も「複数者連携デジタル化・AI導入枠」の名称で公募されています。制度の建付けは概ね継続していますが、年度ごとに公募要領が更新されるため、申請前に事務局の最新版での確認が必要です。
連携の要件(10者以上のコンソーシアム)
この枠の最大の特徴は、連携する事業者数の下限が定められている点です。公募要領では、事業に参加する中小企業・小規模事業者等が「10者以上」であることが要件とされています。10者未満では申請できないため、まず誰と組むか、どの範囲で連携するかの設計が出発点になります。
補助事業グループでは、構成員のうち1者が代表事業者となり、交付申請、実績報告、事業実施効果報告の取りまとめや事業全体の執行管理を担います。代表事業者になれるのは、公募要領に定める中小企業・小規模事業者等、法人格を有する一定の商店街団体、商工会または商工会議所です。代表事業者と参画事業者を合わせて10者以上の補助事業グループを構成する必要があります。
- サプライチェーン型:発注元と複数の取引先が、受発注・決済データを共通化
- 地域型:商店街・観光地の事業者群が、キャッシュレス決済や人流・消費動向分析を共同導入
- 業種横断型:異業種の事業者が連携し、共通の商取引データ基盤を構築
補助対象経費の3区分
補助対象経費は大きく3つの区分に分かれます。それぞれ補助率と上限が異なるため、計画段階での費目の振り分けが採択後の交付額を左右します。
| 経費区分 | 主な内容 | 補助率 |
|---|---|---|
| 基盤導入経費 | 会計・受発注・決済機能を持つソフトウェア、オプション、役務、ハードウェア | ソフトウェア50万円以下は3/4以内(小規模事業者は4/5以内)/50万円超は2/3以内、ハードウェアは1/2以内 |
| 消費動向等分析経費 | 異業種連携・地域における人流分析や商取引データシステムのソフトウェア等 | 2/3以内 |
| その他経費 | 参画事業者の取りまとめに係る事務費、外部専門家費 | 補助率2/3以内。補助上限は、基盤導入経費と消費動向等分析経費の補助額合計×10%×2/3、または200万円のいずれか低い額 |
「基盤導入経費」は、インボイス制度への対応やキャッシュレス決済の基盤づくりに相当する中核費目です。「消費動向等分析経費」は、地域の人流や消費データを分析して販促や品揃えに活かすための費目で、地域DXの中核になります。「その他経費」は、10者以上をまとめる事務局運営費や、専門家の助言に対する謝金を賄うための区分です。
補助上限額(1社あたりとグループ全体)
補助上限は、1構成員あたりの上限とグループ全体の上限の二段構えになっています。
- 基盤導入経費・消費動向等分析経費:グループ全体で合計最大3,000万円
- その他経費(事務費・専門家費等):基盤導入経費と消費動向等分析経費の補助額合計×10%×2/3、または200万円のいずれか低い額
- 1構成員当たりの補助上限:基盤導入経費のソフトウェアは1機能で50万円・2機能以上で350万円、PC・タブレット等は10万円、レジ・券売機等は20万円、消費動向等分析経費は50万円
つまり、参加事業者が多いほどグループ全体での導入規模を大きく設計できますが、1社あたりの上限と全体上限の両方を満たすよう積み上げる必要があります。費目ごとの上限・補助率は年度の公募要領で改定されることがあるため、申請時点の最新公募要領で必ず確認してください。
共同申請スキームを組む実務の流れ
共同申請は単独申請より関係者が多く、書類と合意形成の難度が上がります。実務上は次の順序で進めるのが堅実です。
- 連携の目的と範囲を定義し、10者以上の参加事業者を確定する
- 代表者(取りまとめ役)を決め、各構成員の役割分担と費用負担を整理する
- IT導入支援事業者を選び、導入するITツールを事務局登録済みのものから確定する
- 事業計画や各構成員の申請情報、最新版の交付申請マニュアルで指定された添付書類をそろえ、代表事業者がGビズIDプライムを用いて電子申請する
- 交付決定後に発注・契約・支払を行い、事業実績報告・効果報告を提出する
注意したいのは、交付決定前に行ったITツールの発注・契約・支払等に係る経費は、原則として補助対象外になる点です。採択の見込みだけで先に契約すると、その経費について補助を受けられなくなるため、必ず交付決定後に事業を開始してください。また、代表事業者にはGビズIDプライムが必要で、アカウント発行には一定の期間を要するため早めの準備が欠かせません。雇用関係助成金は社会保険労務士、税務処理は税理士と、それぞれの職域の専門家との連携を前提に進めます。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、複数者連携デジタル化・AI導入枠の共同申請について、行政書士法その他の関係法令に基づき、官公署に提出する事業計画書・各種申請書類の作成をご支援します。令和7年法律第65号による改正行政書士法は2026年1月1日に施行され、行政書士でない者による有償の行政書士業務について、名目を問わず業務制限の対象となる趣旨などが明確化されました。10者以上の構成員に関する申請情報の整理、代表事業者と各構成員の役割・費用負担の文書化、公募要領との整合確認まで、行政書士の業務範囲内で書類作成を行います。
雇用関係助成金は社会保険労務士、税務・会計処理は税理士など、各士業の職域に応じて連携してご対応します。当事務所の補助金申請サポートは、着手金0円・成果報酬型で、不採択の場合はご負担いただきません。成果報酬率は補助金の種類・申請内容により異なるため、料金や進め方は個別にご案内します。詳しくは補助金申請サポートのご案内をご覧ください。ご相談は何度でも無料です。
補助金の申請でお困りの方へ。行政書士法人Treeでは、公募要領の確認から事業計画書・申請書類の作成、交付決定後の各種手続までサポートします。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
複数者連携デジタル化・AI導入枠は、代表事業者と参画事業者を合わせた10者以上の補助事業グループが、商流・地域のデジタル化を面的に進めるための枠組みです。グループ全体における基盤導入経費と消費動向等分析経費の補助額合計は最大3,000万円です。その他経費は、これら2区分の補助額合計×10%×2/3、または200万円のいずれか低い額が上限となり、取りまとめに係る事務費や外部専門家費が対象になります。10者以上の体制構築、経費区分の整理、交付決定前の事業着手の回避、代表事業者によるGビズIDプライムの準備が重要です。申請時には必ず事務局の最新公募要領と交付申請マニュアルを確認してください。
複数者連携デジタル化・AI導入枠の要件・補助上限・申請に関するよくある質問
Q:連携できる事業者は何者からですか。
A:公募要領上、事業に参加する中小企業・小規模事業者等が10者以上であることが要件です。9者以下では申請できないため、参加事業者の確保が最初の検討事項になります。
Q:1社あたりいくらまで補助されますか。
A:1構成員当たりの補助上限は、基盤導入経費のソフトウェアが会計・受発注・決済のうち1機能で50万円・2機能以上で350万円、PC・タブレット等が10万円、レジ・券売機等が20万円、消費動向等分析経費が50万円です。ソフトウェアは、補助額50万円以下の部分と50万円を超え350万円以下の部分で補助率および機能要件が異なります。あわせて、グループ全体では基盤導入経費と消費動向等分析経費の補助額合計が最大3,000万円となります。
Q:コーディネート費や専門家への謝金も補助対象になりますか。
A:「その他経費」として、参画事業者の取りまとめに係る事務費や外部専門家費が補助対象です。補助率は2/3以内で、補助上限は、基盤導入経費と消費動向等分析経費の補助額合計×10%×2/3、または200万円のいずれか低い額です。
Q:IT導入補助金の名称が変わったと聞きました。制度は使えますか。
A:2026年公募からIT導入補助金は「デジタル化・AI導入補助金2026」へ改称され、当枠も「複数者連携デジタル化・AI導入枠」として公募されています。制度の枠組みは概ね継続していますが、補助率や上限は年度の公募要領で更新され得るため、申請時点の最新要領をご確認ください。
Q:採択前にITツールを契約しても大丈夫ですか。
A:交付決定前に行ったITツールの発注・契約・支払等に係る経費は、原則として補助対象外です。その経費について補助を受けられなくなるため、必ず交付決定後に契約・発注等を行ってください。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


