結論から言えば、育成就労制度は2027年4月1日に施行されます。入国後講習が必須で、その時間数はA1相当の日本語能力試験への合格状況によって異なります。入国前6か月以内に所定時間の入国前講習を受講した場合は、入国後講習を短縮できます。A1相当の試験に合格していない場合は、入国後講習において認定日本語教育機関の「就労」課程によるA1相当講習を100時間以上履修する必要があります。行政書士は育成就労計画の認定申請や在留資格手続を職域として支援する立場から、本記事では入国前講習と入国後講習の関係、及び日本語能力要件の仕組みを整理します。なお人材紹介・送出機関とのマッチングは当グループの株式会社TreeGlobalPartners(許可13-ユ-317879)の領域であり、本記事はビザ・受入支援の観点からの解説です。
目次
育成就労制度と入国前講習の位置づけ
育成就労制度は、技能実習制度を発展的に解消して創設される新しい受入れ制度です。根拠法は「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第60号)で、2024年(令和6年)6月21日に公布されました。施行日は2025年9月26日の閣議決定により2027年(令和9年)4月1日とされています。
制度の目的は、技能実習の「技能移転による国際貢献」から、人手不足分野における「人材の育成・確保」へと転換されます。原則3年間の就労を通じて、より技能水準の高い在留資格「特定技能1号」に移行できる水準まで育成することを目指す設計です。制度上は入国後講習が必須であり、A1相当の日本語能力試験に合格していない場合は入国後講習の時間数が増え、この期間に日本語を集中的に学びます。ただし、入国前6か月以内に所定時間の入国前講習を受講した場合には、その入国後講習の必要時間を短縮できます。
育成就労の入国前講習は必須?入国後講習を短縮できる要件
入国前講習は、育成就労外国人が本邦外で受講する事前講習です。入国前6か月以内に所定時間の課程を受講している場合には、入国後講習の必要時間を短縮できます。実施機関、講師の要件、科目、実施時間数などが認定基準に適合する必要があるため、育成就労計画の申請前に最新の省令、運用要領および申請様式を確認することが重要です。
入国前講習で学ぶ科目は、おおむね次の4つに整理されています。
- 日本語……現場や日常生活で必要になる基本的な読み書き・会話
- 日本での生活一般に関する知識……交通ルール、ごみ出しのルール、公共機関の利用方法など
- 法的保護に必要な情報……出入国関係法令・労働関係法令、賃金未払い等のトラブル時の相談・対応方法
- 技能等の修得に資する知識……職場規律、作業の基礎、安全衛生・健康管理など
これらは入国後講習で扱われる主要科目です。入国前講習を入国後講習の時間短縮に用いる場合には、対象となる課程の科目、内容、講師および時間数が制度上の基準に適合していることを確認する必要があります。
入国前講習160時間・110時間と入国後講習の短縮ルール
講習の時間数は、就労開始時に日本語能力(A1相当)を取得しているかどうかで変わります。A1相当とは日本語能力試験(JLPT)のN5程度が一つの目安とされています。代表的な区分は次のとおりです。
| 区分 | 入国後講習の原則時間 | 入国前講習を受講した場合 |
|---|---|---|
| A1相当の日本語能力試験に合格していない場合 | 320時間以上 | 入国前6か月以内に160時間以上の課程を受講していれば、入国後講習は160時間以上に短縮 |
| A1相当の日本語能力試験に合格している場合 | 220時間以上 | 入国前6か月以内に110時間以上の課程を受講していれば、入国後講習は110時間以上に短縮 |
入国後講習を短縮するには、入国前6か月以内に、A1相当の試験に合格していない場合は160時間以上、合格している場合は110時間以上の入国前講習を受講している必要があります。所定時間を超える入国前講習を行っても、その超過分が入国後講習の時間に追加で算入されるわけではありません。申請にあたっては、最新の省令、運用要領および申請様式をご確認ください。
入国後講習で学ぶ「法的保護に必要な情報」
入国後講習の4科目のうち、外国人本人を守るために特に重視されているのが法的保護に必要な情報に関する科目です。出入国または労働に関する法令違反を知ったときの対応方法その他の法的保護に必要な情報について学ぶもので、入国後講習では8時間以上の実施が求められています。
この科目は、専門的な知識を有する者(監理支援を受ける形態では外部の者)が講義することとされており、会社の内輪だけで済ませることはできません。賃金未払いやハラスメントなどのトラブルに遭ったときに、どの行政機関に相談すればよいか、転籍の仕組みはどうなっているか、といった「自分を守るための知識」を母国にいる段階から身につけることが狙いです。
就労開始時の日本語能力要件と認定日本語教育機関
育成就労では、技能実習にはなかった就労開始時の日本語能力要件が設けられます。試験その他の評価方法により、日本での生活と従事業務に必要な日本語能力を一定程度有していることが証明されている場合には、これを満たしたものとして扱われます。
A1相当の日本語能力の試験に合格していない場合には、入国後講習において、認定日本語教育機関の「就労」課程によるA1相当講習を100時間以上履修する必要があります。A1相当の試験に合格している場合は、このA1相当講習の受講は不要です。施行後当分の間は、一定の要件を満たす登録日本語教員による講習をA1相当講習として扱う経過措置も設けられています。
送出機関の規制と費用負担
母国での入国前講習や日本語学習は、多くの場合、送出機関を通じて行われます。育成就労制度では、送出国政府との二国間取決め(MOC)を作成し、原則としてMOC作成国からのみ受入れを行うこととし、悪質な送出機関の排除を図ることとされています。
また、外国人が送出機関に支払う費用についても上限が設けられ、あっせん、出国手続支援、事前研修などについて外国人が送出機関に支払う費用の総額は、就労開始時の所定内賃金月額の2か月分を超えてはならないこととされています。送出しに係る費用については、送出機関、育成就労実施者および監理支援機関の間で適切に分担し、外国人本人やその親族などから上限を超える費用を徴収しない体制を整える必要があります。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、育成就労・特定技能をはじめとする就労系在留資格について、育成就労計画の認定申請の準備、在留資格認定証明書交付申請・各種変更申請、必要書類の整備や入管への申請・照会対応までを職域の範囲で一貫してサポートします。入国前講習による入国後講習の短縮要件や、日本語能力に応じた講習内容、受入れ体制の整備についてもご相談いただけます。
登録支援・ビザに関する手続は、案件ごとの内容により個別にお見積りをご案内しています。登録支援機関に義務的支援を委託する場合の内容・費用は、受入企業様の状況に応じて個別にお見積りいたします。なお、母国の人材とのマッチングや人材紹介は、当グループの株式会社TreeGlobalPartners(有料職業紹介事業許可13-ユ-317879)が担当し、ビザ・受入支援は行政書士法人Treeが担当する体制です。詳しくは就労ビザ・外国人雇用サポートをご覧ください。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
育成就労制度は2027年4月1日に施行されます。入国後講習は、A1相当の日本語能力試験に合格していない場合は原則320時間以上、合格している場合は原則220時間以上です。ただし、入国前6か月以内に所定の入国前講習を受講していれば、それぞれ160時間以上または110時間以上に短縮できます。法的保護に必要な情報に関する科目は入国後講習で8時間以上必要です。また、A1相当の試験に合格していない場合は、入国後講習において認定日本語教育機関等によるA1相当講習を100時間以上履修します。受入れを検討する際は、最新の省令、運用要領および申請様式をご確認ください。
育成就労の入国前講習に関するよくある質問
Q:入国前講習は誰がどこで行うのですか。
A:入国前講習は、育成就労外国人が本邦外で受講する講習です。入国後講習の時間短縮に用いるためには、入国前6か月以内に所定時間の課程を受講し、科目、講師、実施機関、時間数などが制度上の基準に適合している必要があります。
Q:日本語のA1相当・N5に合格していないと育成就労で来日できないのですか。
A:A1相当の日本語能力試験に合格していなくても、直ちに育成就労で来日できないわけではありません。その場合は、入国後講習において認定日本語教育機関の「就労」課程によるA1相当講習を100時間以上履修する必要があります。A1相当の試験に合格している場合は、この講習が不要となり、入国後講習の原則時間も220時間以上となります。
Q:法的保護に関する科目では何を学ぶのですか。
A:入国後講習では、出入国または労働に関する法令違反を知ったときの対応方法その他の法的保護に必要な情報を学びます。この科目は8時間以上実施し、専門的な知識を有する者が講義する必要があります。監理型育成就労の場合は、監理支援機関および育成就労実施者の外部の者が講義します。
Q:技能実習制度と比べて、母国での準備はどう変わりますか。
A:育成就労では、A1相当の試験への合格状況に応じて入国後講習の時間数や日本語講習の内容が変わります。また、入国前6か月以内に所定時間の入国前講習を受講した場合は、入国後講習を短縮できます。入国前講習が全員に一律に義務付けられるのではなく、入国後講習と組み合わせて制度化されている点を正確に理解する必要があります。
Q:入国前講習や日本語学習の費用は誰が負担しますか。
A:育成就労では、あっせん、出国手続支援、事前研修などについて外国人本人が送出機関に支払う費用の総額は、就労開始時の所定内賃金月額の2か月分を超えてはなりません。送出しに係る費用は送出機関、育成就労実施者および監理支援機関の間で適切に分担し、外国人本人やその親族などから上限を超える費用を徴収しない体制を整える必要があります。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


