育成就労(いくせいしゅうろう)から特定技能1号へ移行するには、原則として「①育成就労での就労(原則3年)」「②技能試験への合格」「③日本語能力A2相当以上の水準確認(試験合格、当分の間は相当講習受講も可)」という要件を満たす必要があります。育成就労制度は技能実習制度を発展的に解消して創設された新制度で、令和9年(2027年)4月1日に施行されます。技能実習2号の「良好修了」とは異なり、育成就労の修了者は原則として技能・日本語の水準確認が移行の要件となる点が大きな違いです。本記事では、出入国在留管理庁の公表資料に基づき、行政書士の立場から移行要件と申請実務のポイントを正確に解説します。
目次
育成就労制度はいつから?特定技能1号との関係と経過措置
育成就労制度は、人手不足分野において外国人材を「就労を通じて育成・確保」することを目的とした制度です。令和6年(2024年)6月21日に関連法(出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律)が公布され、令和9年(2027年)4月1日から施行されます。技能実習制度はこの新制度へ発展的に解消されますが、施行後しばらくは経過措置として両制度が並行して運用される見込みです。
育成就労の在留期間は原則3年で、この3年間で特定技能1号の水準に必要な「技能」と「日本語能力」を段階的に身につけることが制度設計の中心に据えられています。つまり育成就労は、最初から特定技能1号への移行を見据えた「橋渡し」の在留資格と位置づけられています。
育成就労から特定技能1号へ移行する要件|技能実習との違い・試験免除の有無
育成就労から特定技能1号への移行要件は、大きく次の3つに整理できます。いずれも出入国在留管理庁が公表する「育成就労制度Q&A」等で示されている考え方に基づくものです。
- 要件1:育成就労での就労(原則3年) ― 原則として3年間の就労を通じた人材育成を経ること。
- 要件2:技能試験への合格 ― 技能検定3級または特定技能1号評価試験などの技能試験に合格すること。
- 要件3:日本語能力A2相当以上の水準確認 ― 日本語教育の参照枠A2相当(JLPT N4相当以上)の日本語能力試験に合格すること。なお、当分の間は相当講習の受講も可とされています。
技能実習2号を「良好に修了」した方が試験免除で特定技能1号へ移行できたのとは異なり、育成就労の修了者は原則として技能試験への合格と、日本語能力A2相当以上の水準確認が移行の要件となります。日本語要件については、当分の間は相当講習の受講も可とされています。この点は受入れを検討する事業者・本人とも、早い段階で理解しておくことが重要です。
要件1:育成就労での就労(原則3年)
育成就労は、原則3年間の就労を通じた人材育成を行う在留資格です。特定技能1号へ移行するには、この育成就労を一定期間継続していることが前提となります。
育成就労期間中は、技能と日本語能力を段階的に高めていく「キャリアパス」が設計されています。具体的には、就労開始前までに日本語能力A1相当以上の試験合格、またはこれに相当する日本語講習の受講が求められます。そのうえで、育成就労期間中にA2相当以上の試験合格を目指すための講習機会を確保し、最終的に特定技能1号水準の技能と日本語能力に到達することが想定されています。講習時間や方法は、試験合格の有無、入国前講習の実施状況、分野ごとの上乗せ基準等によって変わるため、最新の省令・分野別運用方針を確認する必要があります。
なお、育成就労には本人の意向による「転籍(てんせき)」の仕組みも設けられています。本人意向の転籍には、分野ごとに定める一定水準の技能・日本語能力を修得していること、転籍制限期間(分野ごとに1年以上2年以下)を超えていること、転籍先が優良な育成就労実施者であること、監理支援機関・外国人育成就労機構・ハローワーク等以外の民間の職業紹介事業者を介していないこと等の要件があります。転籍があっても、転籍前の期間は通算され、試験合格という移行要件自体は変わりませんので、移行を見据えた計画的な準備が大切です。
要件2:技能試験(技能検定3級・特定技能1号評価試験)
技能面では、技能検定3級や特定技能1号評価試験などの技能試験への合格が必要です。どの試験で水準を確認するかは、分野ごとの分野別運用方針等で定められます。分野別の技能試験・日本語試験の具体的な内容や免除条件の詳細は特定技能の技能試験ガイドの記事もあわせてご覧ください。
制度の段階設計では、就労開始からおおむね1年経過時点で技能検定基礎級(またはこれに相当する試験)、3年経過時点で技能検定3級(または分野別の技能評価試験)の合格をめざす流れが想定されています。基礎級の段階で着実に合格しておくことが、3年目の3級・移行へとつながります。
注意したいのは、合格しておくべき試験が「移行先の特定技能の分野・業務」と整合している必要がある点です。従事している育成就労の職種・分野と、移行を希望する特定技能の分野・業務区分が対応しているかを、事前に分野別運用方針で確認しておくことをおすすめします。
要件3:日本語能力(A2相当・JLPT N4相当)
日本語面では、原則として日本語教育の参照枠A2相当以上の日本語能力試験への合格が必要です。これは一般に日本語能力試験(JLPT)N4相当以上とされ、JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)等のA2相当の試験も対象となります。なお、当分の間は相当講習の受講も可とされており、分野によってはより高い水準が求められる場合があります。
育成就労では、就労開始前にA1相当(JLPT N5相当)、1年以内にA1相当の試験受験、最終的にA2相当(N4相当)と、段階的に日本語力を引き上げていく設計です。N4は「基本的な日本語を理解することができる」水準とされ、現場での指示理解や生活面の自立に必要な力に対応します。
仮に育成就労の修了時点で技能試験または日本語試験に合格できなかった場合でも、再受験のために最長1年の範囲内で一定の在留継続を認める方針とされています。ただしこれは無条件の延長ではなく、計画的な学習・受験が前提です。
特定技能1号への移行手続きの流れと実務上の注意
3要件を満たした後は、在留資格を「特定技能1号」へ変更する手続き(在留資格変更許可申請)を行います。実務上は、以下のような準備が必要になります。
- 技能試験・日本語試験の合格証明など、要件充足を示す資料の準備
- 特定技能雇用契約・1号特定技能外国人支援計画の作成
- 受入れ機関(特定技能所属機関)としての基準適合の確認
- 分野ごとの上乗せ基準・協議会加入等の確認
特定技能1号では、登録支援機関への委託または自社による支援体制の整備が求められ、定期面談など継続的な支援義務が伴います。育成就労の段階から「どの分野の特定技能へ移行するか」を見据え、職種・試験・契約内容を整合させておくことが、スムーズな移行の鍵となります。当事務所では、こうした在留資格変更申請の書類作成・入管への申請取次から、移行後の特定技能の支援体制の整備まで、行政書士の立場で一貫してサポートいたします。なお、社会保険・税務に関するご相談は提携の税理士・社会保険労務士と連携して対応いたします。
関連して、技能実習・留学から特定技能への切替えについては特定技能への在留資格変更手続きの記事、育成就労の在留期間の設計については育成就労制度の在留期間設計の記事もあわせてご覧ください。
料金・ご相談について
育成就労から特定技能1号への移行(在留資格変更)や、移行後の支援体制の整備でお困りの事業者・ご本人は、ぜひ行政書士法人Treeにご相談ください。特定技能1号の認定・変更申請は100,000円(税込)、更新申請は50,000円(税込)、移行後の月次支援料金は10,780円/月(税込)でご案内しています。制度の理解から書類準備、申請、移行後の運用まで、わかりやすく伴走いたします。特定技能サポートの詳細・お問い合わせはこちら。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
育成就労(令和9年4月1日施行)から特定技能1号への移行には、①育成就労での就労(原則3年)、②技能試験(技能検定3級・特定技能1号評価試験)への合格、③日本語能力(A2相当・JLPT N4相当)への合格という3要件を満たす必要があります。技能実習2号の良好修了とは異なり、育成就労修了者は原則として試験合格が要件となる点に注意が必要です。修了時に試験へ合格できなかった場合も、最長1年の範囲で再受験のための在留継続を認める方針とされています。移行を見据えて、職種・分野・試験を早期に整合させた計画的な準備を進めましょう。
育成就労から特定技能1号への移行に関するよくある質問
Q:育成就労は何年で特定技能1号に移行できますか。
A:育成就労は原則3年間の就労を通じた人材育成を行う在留資格で、この3年を経て技能試験・日本語試験に合格すれば特定技能1号への移行が可能になります。具体的な就労期間の取扱いは分野別運用方針等で定められます。
Q:技能実習のように試験免除で移行できますか。
A:技能実習2号の「良好修了」者は試験免除で特定技能1号へ移行できましたが、育成就労の修了者は原則として技能試験と日本語試験の合格が移行の要件となります。育成就労期間中の段階的な合格をめざすことが重要です。
Q:日本語はどのレベルが必要ですか。
A:原則として、日本語教育の参照枠A2相当、一般にJLPT N4相当以上の日本語能力試験への合格が必要です。JFT-BasicなどA2相当の試験も対象となります。なお、当分の間は相当講習の受講も可とされており、分野によってはより高い水準が求められる場合があります。就労開始前はA1相当(N5相当)から段階的に引き上げる設計です。
Q:試験に合格できなかった場合はどうなりますか。
A:育成就労の修了時点で技能試験または日本語試験に不合格でも、再受験のために最長1年の範囲内で一定の在留継続を認める方針とされています。計画的な学習・受験が前提となります。
Q:育成就労中に転籍した場合、移行要件は変わりますか。
A:本人意向の転籍には、一定水準の技能・日本語能力の修得、転籍制限期間(分野ごとに1年以上2年以下)の経過、転籍先が優良な実施者であること等の要件がありますが、転籍があっても転籍前の期間は通算され、試験合格という移行要件自体は変わりません。移行を見据えた計画的な準備が大切です。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。