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「繁忙期だけ人手がほしいのに、通年で雇用するのは難しい」「技能実習生が帰国した後の後任が見つからない」――農業に携わる方なら、こうした悩みに心当たりがあるのではないでしょうか。高齢化と離農が進む農業分野では慢性的な労働力不足が続いており、外国人材への期待は年々高まっています。特定技能「農業」は、耕種農業と畜産農業の現場で即戦力として働ける外国人を受け入れるための在留資格です。しかも、特定技能16分野の中でも農業と漁業だけに認められている派遣形態での雇用が可能であり、繁忙期に合わせた柔軟な人材配置ができる点が大きな特徴です。この記事では、特定技能「農業」の対象業務・受入れ要件・派遣の可否・協議会加入について解説します。
結論:特定技能「農業」は耕種農業全般と畜産農業全般の2区分があり、直接雇用に加えて派遣形態での受入れも認められた数少ない分野です。受入れには農業特定技能協議会への加入が必要で、派遣の場合は派遣事業者にも固有の要件が課されます。
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目次
特定技能「農業」の制度概要
特定技能「農業」は2019年4月に創設された在留資格で、深刻な人手不足が続く農業分野に外国人材を受け入れるための制度です。所管は農林水産省で、出入国在留管理庁が在留資格の審査を担当し、農林水産省が分野別の運用方針や協議会の運営を行っています。
農業分野は2023年6月に特定技能2号の対象にも追加されました。1号は通算5年の在留が上限ですが、2号に移行すれば在留期間の更新に上限がなくなり、配偶者や子の帯同も認められます。制度の全体像は「特定技能とは?1号・2号の違いと16分野を解説」で詳しくまとめています。
農業分野が抱える人手不足
農林水産省の統計によると、基幹的農業従事者の平均年齢は68歳を超え、総数も減少が続いています。特に収穫期や田植え期などの繁忙期には短期間で大量の労働力が必要になりますが、国内だけでは十分な人材を確保できないのが現状です。こうした背景から、農業は特定技能の中でも外国人材の受入れが活発な分野の一つとなっています。
耕種農業と畜産農業――2つの業務区分
特定技能「農業」の業務区分は、耕種農業全般と畜産農業全般の2つに分かれています。それぞれの区分ごとに技能測定試験が実施されるため、どちらの業務に従事するかに応じた試験に合格する必要があります。
| 業務区分 | 主たる業務 | 関連業務の例 |
|---|---|---|
| 耕種農業全般 | 栽培管理、農産物の集出荷・選別 | 農畜産物の製造・加工、運搬、販売の作業、冬場の除雪作業 など |
| 畜産農業全般 | 飼養管理、畜産物の集出荷・選別 | 農畜産物の製造・加工、運搬、販売の作業、牧草の栽培管理 など |
重要なのは、栽培管理や飼養管理といった主たる業務を必ず含めることです。関連業務だけに従事させることは認められていません。たとえば、農産物の選別・梱包だけを延々とやらせるような運用は制度の趣旨に反します。
なお、耕種農業の試験に合格した人が畜産農業に従事することはできず、その逆も同様です。受け入れる業務内容に合った試験区分で合格していることが必要になります。
直接雇用と派遣――どちらを選ぶべき?
特定技能「農業」の最大の特徴は、直接雇用だけでなく派遣形態でも外国人を受け入れられることです。16分野の中で派遣が認められているのは農業と漁業の2分野だけです。これは、農業に季節による繁閑の差が大きいという事情があるためです。
直接雇用の場合
農業者が外国人と直接、雇用契約を結ぶ形態です。通年で作業がある経営体に向いています。直接雇用の場合、受入企業(農業者)は過去5年以内に労働者を6ヶ月以上雇用した経験があることが要件の一つとなっています。
派遣の場合
労働者派遣事業者が外国人を雇用し、農業者のもとに派遣する形態です。繁忙期だけ人手が必要な経営体にとって、通年での雇用負担を避けながら外国人材を活用できるメリットがあります。
ただし、派遣事業者には通常の労働者派遣業の許可に加えて、以下のいずれかに該当することが求められます。
- 農業又は農業に関連する業務を行っている者であること
- 地方公共団体又は農業協同組合等が資本金の過半数を出資していること
- 業務執行に実質的に関与していると認められる者が地方公共団体の職員又は農業関連業者であること
- 上記のいずれかに準じるものとして法務大臣が農林水産大臣と協議の上で適当と認めた者であること
一般的な人材派遣会社が自由に参入できるわけではなく、農業に関わりのある事業者であることが条件となっています。農業協同組合(JA)やJAグループの人材派遣部門、自治体が関与する農業公社などが典型的な派遣元です。
| 比較項目 | 直接雇用 | 派遣 |
|---|---|---|
| 雇用主 | 農業者本人 | 派遣事業者 |
| 適した経営形態 | 通年で作業がある経営体 | 繁忙期のみ人手が必要な経営体 |
| 支援計画の責任 | 農業者(または委託先の登録支援機関) | 派遣事業者 |
| 受入企業の雇用実績要件 | 過去5年以内に6ヶ月以上の雇用実績 | 派遣先には不要(派遣元に要件あり) |
| 複数の農家で勤務 | 原則不可 | 可能(派遣先を変更) |
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農業特定技能協議会への加入は必須?
農業分野で特定技能外国人を受け入れる事業者は、農業特定技能協議会の構成員になる義務があります。この協議会は農林水産省が設置しており、全国を9つの地域ブロックに分けて運営されています。
加入手続きは農林水産省のウェブサイトからオンラインで行います。審査は通常2週間程度で完了し、メールで加入通知が届きます。入会金・年会費は不要です。
加入義務があるのは受入企業(農業者)のほか、派遣形態の場合は派遣事業者も加入が必要です。また、登録支援機関も協議会への加入が求められています。
技能測定試験の内容と日本語試験
農業技能測定試験
農業分野の技能測定試験は、「耕種農業全般」と「畜産農業全般」の2区分に分かれています。試験は出入国在留管理庁の農業分野ページに記載のとおり、CBT方式(コンピューター・ベースド・テスティング)で実施されています。
| 試験区分 | 出題内容 | 合格基準 |
|---|---|---|
| 耕種農業全般 | 耕種農業に関する知識(土壌管理・栽培・収穫等)および安全衛生 | 正答率65%以上 |
| 畜産農業全般 | 畜産農業に関する知識(飼養管理・繁殖・畜産物処理等)および安全衛生 | 正答率65%以上 |
試験は国内および海外(フィリピン・インドネシア・ベトナム・カンボジア・ネパール・ミャンマー・タイ等)で実施されています。受験料は国によって異なりますが、国内では1回あたり8,000円程度です。
なお、農業分野には対応する技能実習の職種が多数あり、「耕種農業」(施設園芸、畑作・野菜、果樹)や「畜産農業」(養豚、養鶏、酪農)の技能実習2号を良好に修了した方は、技能測定試験と日本語試験が免除されます。技能実習から特定技能への移行については「特定技能と技能実習の違いとは?8つの比較項目を解説」も参考にしてください。
日本語能力の要件
以下のいずれかに合格する必要があります。技能実習2号を良好に修了した方は免除されます。
- 日本語能力試験(JLPT)N4以上
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)の合格
受入企業が満たす要件と届出
農業分野で特定技能外国人を受け入れる企業(農業者)は、以下の共通要件を満たす必要があります。
- 日本人と同等以上の報酬を支払うこと
- 社会保険・労働保険に適切に加入していること
- 過去5年以内に入管法違反や労働関係法令違反がないこと
- 支援計画を策定し適切に実施すること(登録支援機関への委託も可)
- 保証金の徴収や違約金契約を行わないこと
直接雇用の場合、上記に加えて過去5年以内に6ヶ月以上の労働者雇用実績が必要です。
届出については、2025年4月の制度改正により従来の四半期ごとの届出から年1回の定期届出に変更されました。届出負担は大幅に軽減されていますが、届出の怠りは罰則の対象となるため、期限管理は引き続き重要です。
農業分野で特定技能を活用する際の注意点
業務区分をまたぐ就労はできない
耕種農業の試験に合格した外国人が畜産農業の業務に従事すること(その逆も同様)は認められません。たとえば、果樹農家で働いていた外国人が転職して養鶏場で働くためには、畜産農業の技能測定試験に改めて合格する必要があります。
派遣先の地理的範囲に制限がある
派遣形態で受け入れる場合、派遣先の範囲は派遣元が外国人の適切な雇用管理(苦情対応を含む)を行える範囲に限られます。「同日中に苦情処理ができる範囲」が目安とされており、常識的に到達が困難な遠隔地への派遣は認められません。
関連業務の割合に注意
農畜産物の製造・加工、運搬、販売などの関連業務は主たる業務(栽培管理・飼養管理)に付随して行うものであり、関連業務が主たる業務を上回る時間配分にならないよう注意が必要です。食品加工工場での作業が中心になるような場合は、特定技能「飲食料品製造業」の在留資格の方が適している可能性があります。
よくある質問
Q1. 技能実習「農業」を修了した外国人は試験免除で特定技能に移行できますか?
はい。耕種農業(施設園芸・畑作野菜・果樹)または畜産農業(養豚・養鶏・酪農)の技能実習2号を良好に修了した方は、技能測定試験と日本語試験の両方が免除され、特定技能1号「農業」に移行できます。ただし、耕種の技能実習を修了した方が畜産の特定技能に移行する場合など、区分が異なるときは別途試験への合格が必要です。
Q2. 農業の特定技能外国人に除雪作業をさせてもよいですか?
冬場の除雪作業は農業の「関連業務」として認められています。ただし、除雪作業だけに従事させることは不可です。あくまで主たる業務(栽培管理・飼養管理)の付随業務として、農閑期の関連作業として行う形であれば問題ありません。
Q3. 個人農家でも特定技能外国人を受け入れられますか?
法人格の有無は受入れの要件ではありません。個人農家でも特定技能外国人を直接雇用で受け入れることが可能です。ただし、過去5年以内に6ヶ月以上の労働者雇用実績があること、社会保険・労働保険に適切に加入していることなどの要件を満たす必要があります。
Q4. 農業の派遣で、複数の農家を掛け持ちすることは可能ですか?
可能です。派遣形態の大きなメリットの一つが、複数の農家を派遣先として労働力を配分できることです。たとえば、Aさんの果樹園で収穫期に3ヶ月、Bさんの水田で田植え期に2ヶ月といった働き方ができます。これにより繁忙期の人手不足を効率的に解消できます。
まとめ
特定技能「農業」は、耕種農業と畜産農業の現場で即戦力となる外国人材を受け入れる制度であり、派遣形態も活用できる柔軟性の高い分野です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業務区分 | 耕種農業全般 / 畜産農業全般(区分をまたぐ就労不可) |
| 雇用形態 | 直接雇用 + 派遣(農業関連の派遣事業者のみ) |
| 協議会 | 農業特定技能協議会への加入必須(入会金・年会費無料) |
| 試験免除 | 農業分野の技能実習2号修了者は試験免除で移行可能 |
| 2号対象 | 2023年6月に2号対象に追加済み |
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| サービス | 料金(税抜) |
|---|---|
| 在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請 | 50,000円〜 |
| 在留期間更新許可申請 | 25,000円〜 |
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※ 本記事の内容は2026年3月時点の入管法令に基づきます。制度・手数料・様式は変更される場合があります。最新情報は出入国在留管理庁でご確認ください。
※ 記事の内容には細心の注意を払っておりますが、万が一誤りがございましたらご指摘いただけますと幸いです。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではございません。具体的なケースについては専門家へのご相談をおすすめいたします。


