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相続手続きで最も対応に困るケースの一つが、相続人の中に行方不明者がいる状況です。遺産分割協議は相続人全員の合意が必要であるため、たとえ一人でも連絡の取れない相続人がいると、手続きが完全に止まってしまいます。預貯金の解約も、遺産分割に基づく不動産の名義変更も、一切進められません。
こうしたケースには法律上の解決手段が用意されており、主に「不在者財産管理人の選任」と「失踪宣告」の2つが活用されます。どちらを選ぶかは、行方不明になってからの期間や状況によって異なります。この記事では、両制度の内容・手続きの流れ・使い分けの基準を、相続手続きの専門家の立場から解説します。
「どの手続きを選べばいい?」と迷ったときは
行方不明の相続人がいる場合、状況によって最適な対応策が異なります。戸籍の調査から遺産分割協議書の作成まで、行政書士法人Treeが一括サポートします。相談は何度でも無料・全国対応です。
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目次
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なぜ全相続人の合意が必要なのか
民法907条は、遺産の分割について「共同相続人は、いつでも、協議によって遺産の分割をすることができる」と定めています。この「協議」には、相続人全員が参加しなければなりません。一人でも欠けた状態でおこなった遺産分割協議は、法律上無効となります。
たとえば、兄弟3人のうち1人と20年以上音信不通になっている場合、残り2人だけで話し合いをまとめても、その協議書は有効に機能しません。不動産の法務局での名義変更手続きでも、金融機関の解約手続きでも、相続人全員の署名・実印・印鑑証明書が要求されるのが通常です。
では、連絡の取れない相続人がいる場合はどうすればよいのでしょうか。まず試みるべきは、戸籍の附票を使った相続人調査です。戸籍の附票には住民票の異動履歴が記載されており、現住所が判明することがあります。それでも所在が分からない場合に、以下の法的手続きが必要になります。
行方不明の相続人がいる場合の2つの対応策
所在調査を尽くしても相続人と連絡が取れない場合、法律上の手続きとして主に次の2つが用意されています。
- 不在者財産管理人の選任(民法25条)― 行方不明者に代わって遺産分割協議に参加する管理人を家庭裁判所が選任する制度。行方不明期間の長さに関わらず申し立てられる
- 失踪宣告(民法30条・31条)― 一定期間行方不明が続いた場合に、家庭裁判所が法律上の死亡を宣告する制度。宣告を受けると相続関係が確定する
この2つは「どちらが優れているか」という関係ではなく、行方不明になってからの期間や、今後の関係をどうしたいかという方針によって選択が異なります。それぞれの制度を順に見ていきます。
不在者財産管理人の選任とは(民法25条)
制度の概要
不在者財産管理人とは、行方不明の相続人に代わって財産を管理し、遺産分割協議に参加する人物を家庭裁判所が選任する制度です。民法25条に根拠があり、行方不明期間の長さに関係なく申し立てることができる点が最大の特徴です。行方不明から1年未満でも申し立て可能なため、相続手続きを早期に進めたい場合に向いています。
選任される管理人は、多くの場合、弁護士や司法書士などの専門家が就任します。管理人は行方不明者の「代理人」として遺産分割協議に加わりますが、権限には重要な制限があります。
管理人の権限と「権限外行為許可」
不在者財産管理人の権限は、民法103条(管理行為)の範囲に限られます。つまり、行方不明者の財産を「保全・維持する」行為は単独でできますが、遺産分割協議への参加や財産の処分は「権限の範囲外」に当たるため、家庭裁判所の許可(民法28条の権限外行為許可)が別途必要です。
遺産分割協議の内容について裁判所の許可を得るためには、行方不明者が法定相続分以上を取得する内容でなければ許可が下りないのが実務上の原則です。つまり、行方不明の相続人に不利な分割協議は認められません。この点を理解したうえで、遺産分割の内容を設計する必要があります。なお、実務では「帰来時弁済型」と呼ばれる方法もあり、行方不明者の法定相続分相当額を他の相続人が一旦管理し、本人が帰来した際に弁済する旨を協議書に定めるものです。利用の可否は裁判所との事前調整が必要です。
申立に必要な主な書類
- 申立書(所定の書式)
- 不在者(行方不明者)の戸籍謄本・戸籍の附票
- 財産管理人候補者の住民票または戸籍附票
- 不在の事実を証する資料(申立人の陳述書など)
- 不在者の財産に関する資料(不動産の登記事項証明書、預金通帳写しなど)
- 収入印紙800円・予納郵便切手
なお、家庭裁判所への申立書の作成代理は弁護士・司法書士の業務です。行政書士は、申立に先立つ戸籍収集・相続人調査・財産目録の整理など、申立準備の段階をサポートします。
この点について詳しくは「相続手続きの流れ」もあわせてご参照ください。
失踪宣告とは(民法30条・31条)
制度の概要
失踪宣告は、行方不明が一定期間継続した場合に、家庭裁判所が法律上の死亡を宣告する制度です(民法30条)。宣告を受けると、行方不明者は法律上「死亡したもの」とみなされ、相続関係が確定します。不在者財産管理人を介す必要がなく、通常の相続手続きと同様に遺産分割協議を進められるようになります。
2種類の失踪宣告
失踪宣告には、行方不明の経緯によって2種類があります。
| 種類 | 要件(行方不明期間) | 死亡とみなされる時点 |
|---|---|---|
| 普通失踪 | 不在(生死不明)が7年以上継続 | 7年の期間が満了した時 |
| 特別失踪(危難失踪) | 戦争・船舶沈没・震災などの危難が去った後1年以上 | 危難が去った時 |
相続手続きで問題になるほとんどのケースは普通失踪に該当します。「7年以上の行方不明」という要件が満たされない場合、失踪宣告は申し立てられません。この点が、不在者財産管理人と大きく異なります。
失踪宣告後の注意点
失踪宣告を受けた後に行方不明者が生きていたことが判明した場合、家庭裁判所に失踪宣告の取り消しを申し立てることができます(民法32条)。ただし、取り消し前に当事者双方が善意で(失踪宣告の取消原因を知らずに)おこなった法律行為は、有効のまま維持されます(民法32条1項後段)。また、遺産を取得した相続人は、現に利益を受けている限度で返還義務を負います。
失踪宣告は相続税の申告にも影響します。死亡時期が確定するため、相続税の申告期限の計算起点も変わります。税務面の取り扱いについては、税理士にご確認ください。
不在者財産管理人選任 vs 失踪宣告 比較
2つの制度の主な違いを整理します。どちらを選ぶかは、行方不明期間・今後の関係・手続きのスピード感などを総合して判断します。
| 比較項目 | 不在者財産管理人の選任 | 失踪宣告 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 民法25条 | 民法30条・31条 |
| 行方不明期間の要件 | なし(1年未満でも可) | 普通失踪は7年以上(特別失踪は1年以上) |
| 申立先 | 不在者の従来の住所地の家庭裁判所 | 不在者の従来の住所地の家庭裁判所 |
| 手続き期間の目安 | 2〜3か月程度 | 6か月〜1年程度(公示催告期間を含む) |
| 行方不明者の法的地位 | 生存したまま(管理人が代理) | 法律上「死亡」とみなされる |
| 分割内容の制約 | 行方不明者が法定相続分以上を取得する必要あり | 通常の相続と同様に自由に分割可能 |
| 生存が判明した場合 | 管理人の任務が終了し、不在者本人が関与できる | 失踪宣告の取り消しが必要(現存利益の返還義務あり) |
| 主なデメリット | 管理人への報酬が発生(月額1万〜5万円程度が目安。家庭裁判所が決定し不在者の財産から支出。予納金20万〜100万円程度が必要な場合あり) | 7年の期間要件を満たすまで申し立てできない |
| 向いているケース | 行方不明期間が短い・なるべく早く手続きを進めたい | 7年以上行方不明・完全に相続関係を確定させたい |
「どちらの手続きを選ぶべきか判断できない」場合はご相談ください
不在者財産管理人と失踪宣告のどちらが適切かは、行方不明期間・財産状況・他の相続人の希望などを踏まえて総合的に判断する必要があります。行政書士法人Treeでは、状況のヒアリングから戸籍収集・相続人調査・遺産分割協議書の作成まで一括して対応します。
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手続きの流れ
不在者財産管理人選任の手続き(ステップ形式)
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Step 1: 戸籍・住所の調査
戸籍の附票を取得し、行方不明者の最後の住所・転居先を確認します。郵送や直接訪問での接触を試みた記録も残しておくと、申立書の疎明資料になります。 -
Step 2: 申立書類の準備
家庭裁判所への申立書・申立人の戸籍謄本・不在者の戸籍附票・財産目録などを揃えます。申立書の作成は弁護士・司法書士が対応します。行政書士は戸籍収集・財産目録の整理をサポートします。 -
Step 3: 家庭裁判所への申立
不在者の従来の住所地(最後の住所地)を管轄する家庭裁判所に申し立てます。収入印紙800円・予納郵便切手が必要です。 -
Step 4: 家庭裁判所による審査・選任
裁判所が申立内容を審査し、管理人(弁護士・司法書士などの専門家)を選任します。申立から選任まで2〜3か月が目安です。 -
Step 5: 権限外行為許可の申立(遺産分割参加のため)
管理人が遺産分割協議に参加するために、別途「権限外行為許可」の申立が必要です。分割内容の案を添えて裁判所に許可を求めます。 -
Step 6: 遺産分割協議・協議書の作成
許可を得た管理人が参加して遺産分割協議を実施します。合意内容を遺産分割協議書に取りまとめます。
失踪宣告の手続き(ステップ形式)
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Step 1: 要件の確認
普通失踪の場合、行方不明(生死不明)が7年以上継続していることが必要です。戸籍・住民票上での最終確認日や、家族・知人への聞き取り記録をまとめます。 -
Step 2: 申立書類の準備
失踪者の戸籍謄本・戸籍附票、申立人と失踪者の関係を示す書類、失踪の経緯に関する資料などを準備します。 -
Step 3: 家庭裁判所への申立
失踪者の従来の住所地の家庭裁判所に申し立てます。申立人は、失踪者の配偶者・相続人・財産管理人など法律上の利害関係人です。 -
Step 4: 公示催告(3か月以上)
裁判所が官報に公示し、失踪者や情報を持つ人からの申し出を3か月以上待ちます。この期間が手続きの長期化の主な原因です。 -
Step 5: 失踪宣告の審判
公示催告期間内に申し出がなければ、裁判所が失踪宣告の審判を下します。 -
Step 6: 市区町村への届出・相続手続きの開始
審判確定日から10日以内に(戸籍法94条・63条1項準用)、市区町村に届出をおこない、通常の相続手続き(相続人調査・遺産分割協議など)を進めます。
なお、遺産分割協議がまとまらない場合や、そもそも協議に応じない相続人がいる場合は、遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てる方法もあります。
よくある質問(6問)
Q1. 相続人が行方不明で、遺産を法定相続分どおりに分ければ全員の同意なしに手続きできますか?
法定相続分どおりの相続でも、預貯金の解約や不動産の登記変更には相続人全員の関与が必要です。法定相続分での単純な「共有状態」にするだけであれば一部の手続きは進む場合もありますが、実際の財産の整理・換価のためには全員の合意が求められます。行方不明の相続人がいる以上、不在者財産管理人か失踪宣告のいずれかの手続きを経ることが現実的な解決策です。
Q2. 行方不明になってから3年しか経っていません。失踪宣告は申し立てられますか?
普通失踪の場合、生死不明が7年以上継続していることが要件です(民法30条1項)。3年では申し立てできません。この場合は不在者財産管理人の選任を申し立てる方法が現実的です。行方不明の原因が船舶事故・震災などの「危難」に該当する場合は、危難が去った後1年で特別失踪(危難失踪)の申し立てができます。
Q3. 不在者財産管理人が選任された後、遺産分割協議でどこまで自由に決めることができますか?
管理人が遺産分割協議に参加するには、家庭裁判所の「権限外行為許可」が必要です。この許可の条件として、行方不明の相続人が法定相続分以上を取得する内容でなければなりません。行方不明者に不利な条件(法定相続分未満の取得など)の協議内容は、裁判所の許可を得られない可能性が高いため、設計段階からこの制約を前提に考える必要があります。
Q4. 行方不明の相続人が後日見つかった場合、失踪宣告に基づいて進めた手続きはどうなりますか?
失踪宣告の取り消し(民法32条)を家庭裁判所に申し立てることができます。ただし、取り消し前に善意でおこなった行為(遺産分割・不動産売却など)は原則として有効です。遺産を受け取った相続人は「現存利益の限度」で返還義務を負いますが、すでに費消した財産については返還不要とされるケースもあります。また、失踪宣告によって再婚した配偶者の婚姻関係など、複雑な問題が生じる場合もあるため、生存判明後は速やかに弁護士にご相談ください。
Q5. 行政書士に頼めることと、弁護士・司法書士に頼むべきことはどう違いますか?
行政書士は、戸籍の収集・相続人調査・遺産目録の作成・遺産分割協議書の作成を担当できます。一方、家庭裁判所への申立書(不在者財産管理人選任・失踪宣告)の作成代理は弁護士・司法書士の業務です(弁護士法72条・司法書士法3条)。行政書士は申立前の準備段階(戸籍収集・財産調査・資料整理)と、申立後の遺産分割協議書作成の両方をサポートし、家裁申立については連携する弁護士・司法書士をご紹介します。
Q6. 共有不動産で所在不明の共有者がいる場合、不在者財産管理人以外の方法はありますか?
令和5年4月1日施行の民法改正により、「所在等不明共有者の持分取得・譲渡」制度(民法262条の2・262条の3)が新設されました。裁判所の決定により、所在不明の共有者の持分を他の共有者が取得したり、第三者に譲渡したりできます。ただし、遺産共有(相続で生じた共有状態)の場合は相続開始から10年を経過していることが要件です(民法262条の2第3項)。直近の相続では利用できないため、10年以上前の相続で共有状態が放置されているケースに限り有力な選択肢となります。
まとめ
相続人が行方不明の場合、まずは戸籍の附票を使った所在調査を試みることが出発点です。それでも連絡が取れない場合には、次の2つの法的手続きを検討します。
- 不在者財産管理人の選任(民法25条): 行方不明期間に関係なく申し立て可能。管理人が行方不明者に代わって遺産分割協議に参加するが、行方不明者が法定相続分以上を取得する内容である必要あり
- 失踪宣告(民法30条・31条): 普通失踪では7年以上の行方不明が要件。宣告後は通常の相続手続きと同様に進められるが、手続き期間は6か月〜1年と長め
どちらを選ぶかは、行方不明期間・財産の内容・他の相続人の状況などを踏まえて判断します。いずれの場合も、家庭裁判所への申立書作成は弁護士・司法書士が担い、戸籍収集・相続人調査・遺産分割協議書の作成は行政書士がサポートします。
この記事で解説した手続きは、いずれも専門的な知識と書類準備が必要です。「どこから手をつければいいか分からない」という場合も、まずはご相談ください。現在の状況をヒアリングしたうえで、必要な手順を整理してご提案します。
相続手続きは行政書士法人Treeにお任せください
行方不明の相続人がいる場合の遺産分割手続きも、戸籍収集・相続人調査から協議書作成まで一括でサポートします。
| サービス | 料金 |
|---|---|
| 遺産分割サポート(戸籍収集・協議書作成) | 39,800円(税抜)〜 |
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※ 2026年4月時点の民法・相続税法に基づく一般的な解説です。税額の計算は税理士、訴訟については弁護士にご相談ください。


