相続関連

嫁・婿に相続権はある?介護した親族が請求できる特別寄与料と期限

更新: 約9分で読めます

結論から言えば、亡くなった方の長男の妻(嫁)や長女の夫(婿)は、原則として相続人ではないため遺産そのものを相続する権利はありません。しかし、無償で被相続人の介護や家業の手伝いに尽くしてきた場合には、令和元年7月1日に施行された民法1050条の「特別寄与料」を相続人へ金銭請求できる可能性があります。行政書士法人Treeでは、戸籍収集による法定相続人の確定や、当事者間で合意がまとまった場合の遺産分割協議書・合意書作成を職域として担います。請求額の交渉が紛糾する場合は弁護士、相続税の申告は税理士、不動産の名義変更は司法書士と連携し、ワンストップでご相談に対応します。本記事では、嫁・婿の相続権の有無と、特別寄与料の請求実務を整理します。

嫁・婿に相続権はあるのか

民法では、相続人になれる人の範囲が法律で定められています(法定相続人)。配偶者は常に相続人となり(民法890条)、それ以外は、子などの直系卑属(第1順位)、直系尊属(第2順位)、兄弟姉妹(第3順位)の順で相続人となります(民法887条・889条)。

ここで重要なのは、「長男の妻」や「長女の夫」、すなわち嫁・婿はこのいずれにも含まれないという点です。婚姻によって配偶者の親と親族関係(姻族)にはなりますが、相続人ではありません。したがって、たとえ長男の妻が義父母を長年介護していても、遺言や養子縁組がない限り、遺産を当然に相続することはできません。

従来、嫁などの貢献を相続人である夫の寄与分に反映する取扱いが認められる場合がありましたが、嫁自身が自己の権利として相続人に金銭を請求できる一般的な制度はありませんでした。特に夫が被相続人より先に亡くなっていた場合など、貢献を適切に評価できない問題に対応するために設けられたのが、特別寄与料の制度です。

特別寄与料とは(民法1050条・令和元年7月1日施行)

特別寄与料とは、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人を除く)が、相続の開始後、相続人に対してその寄与に応じた額の金銭の支払を請求できる制度です(民法1050条1項)。

この制度は、平成30年(2018年)の相続法改正で新設され、令和元年(2019年)7月1日に施行されました。施行日以後に開始した相続(被相続人が亡くなった日が令和元年7月1日以降のもの)について適用されます。それより前に開始した相続には適用されない点に注意が必要です。

相続人本人の貢献を評価する「寄与分」(民法904条の2)が相続人にしか認められないのに対し、特別寄与料は相続人ではない親族の貢献を別枠で評価する制度です。

比較項目 寄与分(民法904条の2) 特別寄与料(民法1050条)
対象者 相続人のみ 相続人以外の親族(6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族)
請求の相手方 他の相続人(遺産分割の中で主張) 各相続人
期間制限 特になし(遺産分割手続の中で主張) 相続開始および相続人を知った時から6か月、または相続開始から1年
手続 遺産分割協議・調停・審判 当事者間協議、調わなければ家庭裁判所への処分請求

誰が請求できるのか(特別寄与者の範囲)

特別寄与料を請求できるのは「特別寄与者」と呼ばれ、次の要件を満たす必要があります。

  • 被相続人の親族であること。具体的には、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族(民法725条)の範囲です。ただし、相続人、相続を放棄した者、相続欠格に該当する者、廃除によって相続権を失った者は除かれます(民法1050条1項かっこ書)。
  • 無償で労務を提供したこと。療養看護のほか、家業の手伝いなどの労務提供が対象です。報酬や対価を受け取っていた場合は「無償」とはいえません。
  • その結果、被相続人の財産が維持または増加したこと。たとえば、本来であれば外部のヘルパーや施設に支払うべきだった費用の支出を免れた、といった財産的効果が必要です。単なる精神的な支えや同居だけでは足りないとされています。
  • 「特別の」寄与であること。通常の親族間で期待される程度を超える、貢献の程度が顕著であることが求められます。

長男の妻(嫁)や長女の夫(婿)は、被相続人にとって姻族にあたり、相続人ではないため、典型的にこの特別寄与者になり得る立場です。一方、内縁関係(事実婚)のパートナーは法律上の親族に該当しないため、現行制度では特別寄与料を請求できません。

特別寄与料の請求手続と期限|知った時から6か月・相続開始から1年

特別寄与料は、まず当事者である特別寄与者と相続人との協議(話し合い)によって金額を定めるのが原則です。相続人が複数いる場合は、それぞれの相続人に対して請求します。

協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、特別寄与者は家庭裁判所に対し、協議に代わる処分を請求することができます(民法1050条2項)。これは調停・審判の申立てによって行います。

ここで最も注意すべきが期間制限です。家庭裁判所への請求は、特別寄与者が相続の開始および相続人を知った時から6か月を経過したとき、または相続開始の時から1年を経過したときは、することができません(民法1050条2項ただし書)。寄与分(相続人の協議)に比べてきわめて短い期間で権利が消滅するため、請求を考えている方は早期の対応が不可欠です。

相続人が複数いる場合の負担割合

家庭裁判所は、寄与の時期、方法および程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定めます(民法1050条3項)。また、特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時に有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができません(同条4項)。

相続人が複数いる場合、各相続人は、特別寄与料の額に、民法900条から902条までの規定により算定した各自の相続分を乗じた額を負担します(民法1050条5項)。たとえば、相続人が子3人で法定相続分が各3分の1のとき、特別寄与料が90万円と定まれば、各相続人が30万円ずつ負担する計算になります。

特別寄与料と相続税(税理士の領域)

特別寄与料を受け取った特別寄与者は、税務上、被相続人から特別寄与料に相当する金額の遺贈を受けたものとみなされ、相続税の課税対象となります(相続税法4条2項)。また、特別寄与者が被相続人の配偶者または一親等の血族以外の者である場合は、原則として相続税額の2割加算の対象になります(相続税法18条)。嫁・婿は一親等の姻族であり一親等の血族には当たらないため、通常は2割加算の対象となります。具体的な取扱いは続柄や資産取得状況により異なるため、税理士へご確認ください。

相続税の申告が必要な場合、特別寄与者は、特別寄与料の額が確定したことを知った日の翌日から10か月以内に申告・納税を行う必要があります。一方、特別寄与料を支払った相続人側は、その支払額を自分の相続財産から控除して計算します。具体的な税額計算や申告は税理士の業務となりますので、金額が定まった段階で税理士へご相談ください。当事務所では適切な専門家をご紹介します。

当事務所のサポート

行政書士法人Treeでは、相続手続の入口となる戸籍謄本の収集と法定相続人の確定、相続関係説明図の作成、当事者間で合意が成立した場合の遺産分割協議書・合意書の作成をサポートします。嫁・婿の立場で寄与の事実をどう整理すればよいか、誰が相続人かを正確に把握したいといった段階のご相談にも対応します。

料金(いずれも税込)は、遺産分割協議書作成のミニマムプラン43,780円、必要書類の収集まで含むスタンダードプラン87,780円、戸籍収集から協議書作成まで一括してお任せいただける丸投げプラン217,800円をご用意しています。詳しくは遺産分割サポートのご案内をご覧ください。

なお、特別寄与料の金額の交渉や、協議が調わず家庭裁判所での調停・審判に発展する場合の代理は弁護士の業務、相続税の申告は税理士の業務、不動産の名義変更(相続登記)は司法書士の業務です。相続登記は令和6年(2024年)4月1日から義務化されており、原則として取得を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象となります。当事務所はこれらの専門家と連携し、窓口を一本化してご案内します。ご相談は何度でも無料です。

まとめ

嫁・婿は相続人ではないため遺産そのものを相続する権利はありませんが、無償で被相続人の介護や家業に尽くし、財産の維持・増加に特別の貢献をした場合には、民法1050条の特別寄与料を相続人へ請求できる可能性があります。家庭裁判所への申立てには「相続開始および相続人を知った時から6か月、または相続開始から1年」という短い期間制限があるため、早期の対応が重要です。受け取った特別寄与料は相続税の課税対象となり、嫁・婿など被相続人の配偶者または一親等の血族以外の者には、原則として相続税額の2割加算が適用される点も押さえておきましょう。まずは法定相続人の確定と事実関係の整理から、当事務所にご相談ください。

特別寄与料に関するよくある質問

Q:長男の妻が義母を10年間介護しました。義母が亡くなった場合、遺産を相続できますか。

A:長男の妻は相続人ではないため、遺産そのものを相続することはできません。ただし、無償で療養看護に努め、義母の財産の維持・増加に特別の貢献があった場合には、民法1050条の特別寄与料を相続人(夫やその兄弟姉妹など)に対して金銭で請求できる可能性があります。なお、義母と養子縁組をしていた場合や、遺言で遺贈を受けていた場合は別途相続・取得が可能です。

Q:特別寄与料はいつまでに請求しなければなりませんか。

A:当事者間の協議で定めるのが原則ですが、協議が調わない場合に家庭裁判所へ請求できるのは、特別寄与者が相続の開始および相続人を知った時から6か月、または相続開始の時から1年を経過するまでです(民法1050条2項ただし書)。いずれか早い方で権利が消滅するため、早めの対応をおすすめします。

Q:内縁の妻(事実婚のパートナー)も特別寄与料を請求できますか。

A:請求できません。特別寄与料を請求できるのは被相続人の「親族」に限られます(民法1050条1項)。婚姻届を出していない内縁関係のパートナーは法律上の親族に該当しないため、現行制度では対象外です。財産を遺したい場合は、遺言などの生前対策をご検討ください。

Q:特別寄与料を受け取ると税金はかかりますか。

A:受け取った特別寄与料は、被相続人から遺贈を受けたものとみなされ、相続税の課税対象となります(相続税法4条2項)。特別寄与者が被相続人の配偶者または一親等の血族以外の者である場合は、原則として相続税額の2割加算の対象です(相続税法18条)。嫁・婿は通常、この2割加算の対象となります。申告が必要な場合は、額が確定したことを知った日の翌日から10か月以内に申告します。具体的な計算や適用関係は税理士へご相談ください。

Q:特別寄与料に上限はありますか。相続人が複数いる場合は誰に請求しますか。

A:特別寄与料の額は、被相続人が相続開始時に有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額が上限です(民法1050条4項)。相続人が複数いる場合は各相続人に対して請求し、各相続人は法定相続分(民法900条〜902条)に応じた割合で負担します(同条5項)。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。

行政書士法人Tree