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死後認知と相続|民法第787条但書(父の死亡の日から3年)・嫡出でない子の相続権・民法第910条価額支払請求(最判平成28年2月26日)

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死後認知(民法第787条但書)は、原則として父又は母の死亡の日から3年以内に子(またはその直系卑属・法定代理人)から検察官を被告として提起する認知請求の訴えにより、亡父との父子関係を法的に確定する制度です。認知が認められると、子は嫡出でない子として相続人の地位を取得し、相続分は嫡出子と同等です(平成25年9月4日最高裁大法廷違憲決定・同年改正)。既に遺産分割が完了している場合は、民法第910条により価額支払請求が可能です。本記事では、死後認知の要件・手続・嫡出でない子の相続権・民法第910条価額支払請求の判例(最判平成28年2月26日・最判令和元年8月27日)・行政書士の業務範囲を整理します。

本記事の結論:

  • 死後認知の出訴期間は「父又は母の死亡の日から3年」が原則(民法第787条但書)。子が死亡を知らなかったとしても原則3年で経過する点に注意。
  • 被告は検察官(人事訴訟法第44条)。父が死亡しているため、父に代わって国家を代表する検察官が被告。
  • 認容判決により出生時に遡及して父子関係が確定(民法第784条)。認知判決確定後は戸籍法第63条に基づく裁判による認知届を行う。
  • 嫡出でない子の相続分は平成25年法律第94号(平成25年12月11日公布・施行)により嫡出子と同等。
  • 既に遺産分割が完了している場合、認知された子は民法第910条に基づき価額支払請求が可能。価額算定基準時は「価額の支払を請求した時」(最判平成28年2月26日)。相続債務は控除しない(最判令和元年8月27日)。
  • 当事務所は裁判による認知届の補助・遺産分割協議書作成・相続関係説明図の整備を担当します。

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死後認知は原則「父の死亡の日から3年以内」。認知後は相続人となる

死後認知は、父の生前認知がないまま父が死亡した場合に、子・その直系卑属・法定代理人が、検察官を被告として認知の訴えを提起し、法律上の父子関係を確定させる手続です。民法第787条但書は、原則として父又は母の死亡の日から3年を経過したときは認知の訴えを提起できないと定めています。この3年は客観的基準であり、子が父の死亡を知らなかったとしても原則として死亡日から3年で経過します。例外的に、父の死亡が客観的に明らかでなかった等のやむを得ない事情がある場合に限り、起算点が後ろにずれることがあります(最判昭和57年3月19日)が、要件は厳格に解されています。認知判決が確定すると、認知の効力は出生時に遡及し、子は嫡出でない子として相続人の地位を取得します。既に遺産分割が完了している場合は、民法第910条により価額支払請求を検討します。

根拠法令(2026年5月時点)

  • 民法第779条(認知)・第781条(認知の方式)・第782条(成年の子の認知)・第783条(胎児または死亡した子の認知)・第784条(認知の効力:出生時に遡る)
  • 民法第787条(認知の訴え):本文「子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる」・但書「ただし、父又は母の死亡の日から3年を経過したときは、この限りでない」
  • 民法第900条(法定相続分):嫡出でない子の相続分は嫡出子と同等(平成25年法律第94号により旧第4号但書前段の差別規定削除、平成25年12月11日公布・施行、平成25年9月5日以降に開始した相続に適用)
  • 民法第910条(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)
  • 民法第896条(相続の効力・包括的承継)・第898条(共同相続の効力)・第909条(遺産分割の遡及効)
  • 人事訴訟法第44条(認知の訴えの当事者:父・母が死亡した場合は検察官を被告とする)
  • 家事事件手続法(人事訴訟前の家事調停)
  • 戸籍法第63条(裁判による認知届:判決確定の日から10日以内)
  • 最判平成28年2月26日(民集70巻2号195頁):民法第910条の価額算定基準時は「価額の支払を請求した時」
  • 最判令和元年8月27日:民法第910条に基づき支払われる「価額」は相続開始時の積極財産の価額(相続債務は控除しない)
  • 最判昭和57年3月19日:死後認知の出訴期間の例外的起算点
  • 最高裁大法廷平成25年9月4日決定(旧民法第900条第4号但書前段の嫡出でない子の相続分差別を違憲・無効と判断)
  • 相続税法第32条(更正の請求の特則)・国税通則法第23条第2項(後発的事由による更正の請求)
  • 司法書士法第3条第1項第1号(登記申請代理)・第4号(裁判所提出書類の作成)・第6号(認定司法書士の簡裁訴訟代理)
  • 弁護士法第3条(紛争代理・調停代理)・第72条(非弁行為の禁止)
  • 税理士法第2条(税務代理)
  • 行政書士法第1条の2第1項(権利義務・事実証明書類の作成)

1. 死後認知の意義

認知は、嫡出でない子について、生物学上の父が法律上の父子関係を任意に発生させる行為です(民法第779条)。父が生前に認知しないまま死亡した場合、子は父との父子関係が法律上確定しないため、相続権・親族関係上の地位が認められません。

これを救済するため、民法第787条但書は、父の死亡の日から3年以内であれば、子・その直系卑属・法定代理人が認知請求の訴えを提起できる制度を設けています。被告は検察官(人事訴訟法第44条)です(父が死亡しているため)。

2. 死後認知の要件

2-1. 主体(原告)

  • 子(認知を求める本人)
  • 子の直系卑属(子が死亡している場合は孫・ひ孫等)
  • これらの者の法定代理人(子が未成年の場合は親権者または未成年後見人)

2-2. 被告

検察官(人事訴訟法第44条)。父又は母が死亡している場合、認知の訴えは検察官を被告として提起します。

2-3. 出訴期間(民法第787条但書)

父又は母の死亡の日から3年以内に提起する必要があります。この3年は除斥期間と解されており、時効のような中断(更新)・停止(完成猶予)の制度はなく、延長も認められません。

起算点は原則として「父の死亡の日」(客観的基準)です。子が父の死亡を知らなかったとしても、原則として死亡日から3年で出訴期間が経過します。

ただし、最判昭和57年3月19日は、父の死亡の日から3年以内に認知の訴えを提起しなかったことがやむを得ず、かつ訴えを提起しても目的を達し得なかった等の特段の事情がある場合に限り、出訴期間を「父の死亡が客観的に明らかになった時」から起算するとしています。これは例外的な救済であり、要件は厳格に解されているため、父の死亡を知った段階で速やかに対応することが重要です。

2-4. 父子関係の証明

父子関係の存在は、原告(子側)が立証責任を負います。主な立証方法は以下のとおりです。

  • DNA鑑定(最も確実な立証方法)
  • 父の親族(兄弟姉妹・両親)とのDNA鑑定(亡父との直接鑑定が困難な場合の代替)
  • 父・母・関係者の陳述書、手紙、写真、メール
  • 母の妊娠時期と父との関係の証明
  • 父による生前の任意的扶養・養育費支払等の事実

DNA鑑定費用は、鑑定機関、鑑定対象者数、私的鑑定か裁判上の鑑定か、父本人の検体があるか、父の親族との親族鑑定かにより大きく異なります。10〜20万円程度は一つの目安にとどめ、実際の費用・証拠価値は弁護士・鑑定機関に確認します。

3. 死後認知の手続

3-1. 管轄裁判所

認知の訴えは家庭裁判所の人事訴訟として扱われます。具体的な管轄は、人事訴訟法の規定、原告の住所、被告が検察官となること、調停前置の手続との関係により確認します。実際の申立先・提訴先は、家庭裁判所または専門家に確認します。

3-2. 調停前置

認知の訴えは、人事に関する訴えとして原則として調停前置(家事事件手続法第257条)の対象となります。ただし、父の死亡後の死後認知では、被告が検察官となるため、通常の当事者間の合意により認知が成立する場面とは異なります。実務上は、家庭裁判所での調停前置を経たうえで、人事訴訟として父子関係の有無を審理する流れになります。

3-3. 訴え提起の流れ

  1. 事前調査(父の戸籍・関係者の確認・証拠収集)
  2. DNA鑑定(可能であれば事前に実施)
  3. 家庭裁判所への家事調停申立て(家事事件手続法第257条の調停前置)
  4. 調停不成立後に人事訴訟へ移行
  5. 口頭弁論・証拠調べ(DNA鑑定の実施)
  6. 判決
  7. 判決確定(控訴期間2週間)

3-4. 認容判決の効力(民法第784条)

認知の効力は出生の時にさかのぼって生じる(民法第784条本文)。ただし、第三者が既に取得した権利を害することはできない(同条但書)。

3-5. 裁判による認知届(戸籍法第63条)

認容判決が確定した場合、訴えを提起した者は、戸籍法第63条に基づき、裁判確定の日から10日以内に、裁判の謄本を添付して認知の届出を行います。認知の事実は父・子の戸籍に反映されますが、認知によって子が当然に父の戸籍に入籍するわけではありません。子の氏・戸籍の変動には、別途入籍届や氏の変更等が問題となる場合があるため、市区町村・専門家に確認します。なお、これは戸籍法第113条等の戸籍訂正手続(戸籍記載の誤りを正す手続)とは区別される、戸籍法第63条に基づく「裁判による認知届」です。

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4. 嫡出でない子の相続分(平成25年改正)

4-1. 改正前の差別規定

改正前の民法第900条第4号但書前段は、「嫡出でない子の相続分は、嫡出子の相続分の2分の1とする」と規定していました。

4-2. 平成25年9月4日最高裁大法廷違憲決定

最高裁大法廷は、この差別規定について「遅くとも平成13年7月当時において、立法府の合理的裁量権を超え、憲法第14条第1項に違反する」と違憲・無効と判断しました(平成25年9月4日最高裁大法廷決定)。

4-3. 平成25年改正民法

同判決を受けて、平成25年法律第94号(平成25年12月11日公布・同日施行)により、旧民法第900条第4号但書前段の「嫡出でない子の相続分は嫡出子の相続分の2分の1とする」差別規定が削除されました。以後、嫡出でない子の相続分は嫡出子と同等となっています。

4-4. 経過措置

改正は平成25年9月5日以降に開始した相続について適用されます(同改正法附則第2項)。平成13年7月1日から平成25年9月4日までに開始した相続については、確定的に法律関係が形成されていない限り、改正後の規定が適用される取扱いです。

5. 死後認知前の遺産分割への影響(民法第910条)

5-1. 民法第910条の規定

民法第910条:「相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。」

5-2. 価額支払請求の制度趣旨

遺産分割の遡及効(民法第909条)の例外として、既に遺産分割が完了している場合に、認知された子が他の共同相続人に対して現物返還ではなく価額の支払を請求できる制度です。これは、既に遺産分割を信じて取引した第三者の地位の保護と、認知された子の権利保護のバランスを図るものです。

5-3. 価額支払請求の手続

  • 認知された子(または直系卑属)から他の共同相続人に対する請求
  • 請求額:認知された子の相続分相当の価額(価額支払請求時の遺産評価額により計算、最判平成28年2月26日)
  • 請求権の消滅時効については民法第910条に明文規定がなく、判例・学説上も議論があります(権利行使が可能となった時期、認知判決確定時等の解釈)。個別事案では弁護士確認が必要です
  • 当事者間で合意できない場合は民事訴訟(弁護士業務、訴額140万円以下の簡裁訴訟代理は認定司法書士・司法書士法第3条第1項第6号も可)

5-4. 価額算定基準時の判例(最判平成28年2月26日)

最判平成28年2月26日(民集70巻2号195頁)は、民法第910条に基づく価額算定の基準時を「価額の支払を請求した時」(請求時点の遺産評価額)と判示しています。遺産分割時から請求時までに不動産価格等が変動した場合、請求時の価額が適用されます。

5-5. 価額算定の基礎(最判令和元年8月27日)

また、最判令和元年8月27日は、民法第910条に基づき支払われる「価額」は相続開始時の積極財産の価額であり、相続債務(消極財産)は控除しないと判示しています。相続債務については価額支払請求とは別に承継され、他の共同相続人が既に弁済している場合は求償の問題として処理されます。

実際の請求額計算は、遺産内容、債務、特別受益、寄与分、遺留分、時効等が絡むため、弁護士・税理士と確認します。

6. 相続税申告との関係

死後認知により法定相続人が増減した場合、相続税申告に影響します。

  • 相続税の基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)。認知により法定相続人が増えれば基礎控除が増加
  • 既申告者の更正の請求・修正申告:相続税法第32条(更正の請求の特則)・国税通則法第23条第2項(後発的事由による更正の請求)に基づく対応が必要となる場合あり
  • 相続税の申告期限:原則として相続開始があったことを知った日の翌日から10か月以内。死後認知により後から相続人となった者や、既に申告済みの共同相続人については、更正の請求・修正申告・期限後申告の要否と期限を個別に確認
  • 価額支払請求金の税務上の取扱いも税理士確認が必須

7. 業務範囲の整理

行政書士の業務範囲(行政書士法第1条の2第1項:権利義務・事実証明書類の作成)

  • 死後認知判決確定後の遺産分割協議書の作成
  • 相続関係説明図の作成
  • 相続手続・専門家相談の前提としての事実関係整理メモの作成(父母の関係、出生時期、生前の扶養・交流、戸籍・資料の所在等)
  • 裁判による認知届(戸籍法第63条)の補助
  • 父・子・関係者の戸籍収集(本人委任または職務上請求により、相続手続・相続関係説明図作成・遺産分割協議書作成に必要な範囲で)

※死後認知の訴えに提出する訴状、調停申立書、準備書面、証拠説明書、法的主張を含む書面は、司法書士または弁護士の業務範囲を確認します。死後認知訴訟の証拠収集のみを目的とする第三者戸籍の取得、親族DNA鑑定のための所在調査等は、請求権限・個人情報・弁護士業務との関係を慎重に確認します。

業務範囲外(連携先専門家)

  • 死後認知の訴え・調停の代理(弁護士法第3条、弁護士業務)
  • 家庭裁判所提出書類(訴状・調停申立書・準備書面)の作成(司法書士法第3条第1項第4号、司法書士業務)
  • DNA鑑定の実施(DNA鑑定機関)
  • 相続登記(司法書士法第3条第1項第1号、司法書士業務)
  • 相続税申告・更正の請求・修正申告(税理士法第2条、税理士業務)
  • 民法第910条の価額支払請求の交渉・訴訟代理(弁護士法第3条、弁護士業務。請求額が140万円以下で簡易裁判所の管轄に属する事件は認定司法書士・司法書士法第3条第1項第6号も可ですが、相続関係・遺産評価・複雑な法的争点を含む場合は弁護士確認が安全)

FAQ|よくあるご質問

Q1. 死後認知の期間が過ぎたらどうしますか?
A. 父の死亡の日から3年を経過すると、死後認知の訴えは原則として提起できなくなります(民法第787条但書)。起算点は原則として「父の死亡の日」(客観的基準)であり、子が父の死亡を知らなかったとしても原則3年で経過します。例外的に、父の死亡が客観的に明らかでなかった等のやむを得ない事情がある場合に限り、起算点が「父の死亡が客観的に明らかになった時」にずれることがあります(最判昭和57年3月19日)が、要件は厳格です。この3年は除斥期間と解され延長は認められないため、父の死亡を知った段階で早期の対応が極めて重要です。期間経過後は認知請求の手段が事実上失われ、相続人としての地位の確定が困難となります。

Q2. DNA鑑定の費用は?
A. DNA鑑定費用は、鑑定機関、鑑定対象者数、私的鑑定か裁判上の鑑定か、父本人の検体があるか、父の親族との親族鑑定かにより大きく異なります。10〜20万円程度は一つの目安にとどめ、実際の費用・証拠価値は弁護士・鑑定機関に確認します。死亡した父との直接鑑定が困難な場合は、父の親族(兄弟・両親)との鑑定で代替するケースもあります。

Q3. 認知判決後、既に分割された遺産はどうなりますか?
A. 既に分割された遺産を取り戻すことはできず、民法第910条に基づき、認知された子は他の共同相続人に対し「相続分相当の価額の支払」を請求できます(現物返還ではない)。価額算定の基準時は最判平成28年2月26日により価額支払請求時の遺産評価額とされており、不動産価格等が変動した場合、請求時の価額が適用されます。なお、価額算定の基礎は相続開始時の積極財産の価額で、相続債務は控除しません(最判令和元年8月27日)。実際の請求額計算は、遺産内容、債務、特別受益、寄与分、遺留分、時効等が絡むため、弁護士・税理士と確認します。

Q4. 嫡出でない子の相続分は嫡出子と同じですか?
A. 同じです。平成25年9月4日最高裁大法廷違憲決定および平成25年法律第94号(平成25年12月11日公布・施行)により、旧民法第900条第4号但書前段の「嫡出でない子の相続分は嫡出子の2分の1」とする差別規定が削除されました。改正後は嫡出でない子の相続分も嫡出子と同等です。平成25年9月5日以降に開始した相続に適用されます。

Q5. 死後認知の訴えは家事調停を先に行うのですか?
A. はい。認知の訴えは家事事件手続法第257条の調停前置主義の対象で、原則として家事調停を経てから訴訟に移行します。ただし、被告が検察官の死後認知の場合、調停では当事者間の合意による解決が困難なため、調停不成立後に人事訴訟(家庭裁判所の管轄)として審理されます。

Q6. 認知判決後、子は父の戸籍に入籍しますか?
A. 認知によって子が当然に父の戸籍に入籍するわけではありません。認容判決が確定した場合、訴えを提起した者は、戸籍法第63条に基づき、裁判確定の日から10日以内に、裁判の謄本を添付して認知の届出を行います。認知の事実は父・子の戸籍に反映されますが、子の氏・戸籍の変動には、別途入籍届や氏の変更等が問題となる場合があるため、市区町村・専門家に確認します。

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まとめ

死後認知は、父の生前認知がないまま父が死亡した場合に、子・その直系卑属・法定代理人が、検察官を被告(人事訴訟法第44条)として認知の訴えを提起し、法律上の父子関係を確定させる手続です。民法第787条但書の出訴期間は原則「父又は母の死亡の日から3年」(客観的基準)であり、子が父の死亡を知らなかったとしても原則3年で経過します。例外的に最判昭和57年3月19日のやむを得ない事情がある場合に起算点が後ろにずれることがありますが、要件は厳格です。

認容判決が確定すると、認知の効力は出生時に遡及して父子関係が確定し(民法第784条本文)、子は嫡出でない子として相続人の地位を取得します。認知判決確定後は戸籍法第63条に基づく裁判による認知届を10日以内に行います。認知により子が当然に父の戸籍に入籍するわけではない点に注意が必要です。父子関係の立証はDNA鑑定が確実ですが、費用は鑑定条件により大きく異なります。

平成25年9月4日最高裁大法廷違憲決定および平成25年法律第94号(平成25年12月11日公布・施行)により、嫡出でない子の相続分は嫡出子と同等となりました。平成25年9月5日以降に開始した相続に適用されます。

死後認知前に既に他の共同相続人が遺産分割を完了していた場合、認知された子は民法第910条に基づき相続分相当の価額の支払を請求できます(現物返還ではなく)。価額算定基準時は「価額の支払を請求した時」(最判平成28年2月26日民集70巻2号195頁)、価額算定の基礎は相続開始時の積極財産の価額で相続債務は控除しない(最判令和元年8月27日)と判示されています。請求権の消滅時効については明文規定がなく判例・学説上議論があるため、個別事案では弁護士確認が必要です。相続税申告にも影響するため、相続税法第32条・国税通則法第23条第2項に基づく対応が必要となる場合があり、税理士確認が必須です。

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※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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