離婚関連

離婚公正証書の送達証明書|取得方法・手続・費用・よくある質問を解説

更新: 約9分で読めます

結論から言えば、離婚公正証書で養育費や慰謝料の支払いが滞ったときに給与や預貯金を差し押さえる「強制執行」を申し立てるには、執行文の付された公正証書正本に加えて、相手方に公正証書が届いていることを示す「送達証明書」が必ず必要です。これは民事執行法第29条が、債務名義(公正証書)の正本または謄本が相手方に送達されていることを強制執行開始の要件としているためです。行政書士法人Treeは、離婚協議書・公正証書の原案作成と、合意事項を強制執行につなげやすい形で整理するご支援を行います。なお、調停・裁判・支払督促や差押え申立ての代理は弁護士、不動産登記は司法書士、年金分割の請求手続は年金事務所と、それぞれの専門領域に応じて連携しながら進めます。

送達証明書とは何か

送達証明書とは、公証人が作成した公正証書の正本または謄本が、強制執行の相手方(債務者)に法律の定める方法で「送達」されたことを証明する書面です。送達とは、公証人から債務者に対し公正証書正本等を送り届け、その内容を知る機会を与える手続をいいます。この送達が済んでいる事実を公証人が証明したものが送達証明書です。

離婚公正証書の場合、養育費・慰謝料・財産分与などの金銭の支払いを約束し、かつ「強制執行認諾文言(債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述)」が入っていることが前提となります。この認諾文言がない公正証書では、それ自体を根拠に強制執行を申し立てることはできません。

なぜ送達証明書が強制執行に必須なのか

強制執行の根拠となる条文は、民事執行法に置かれています。同法第25条は、強制執行は原則として「執行文の付された債務名義の正本」に基づいて実施すると定めています。また、同法第22条第5号では、金銭の一定額の支払などを目的とする請求について、公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されたものが債務名義になるとされています。つまり、債務名義となるのは強制執行認諾文言を備えた公正証書に限定されます。

そのうえで同法第29条は、強制執行は、債務名義の正本もしくは謄本(またはこれに係る電磁的記録)が、あらかじめ、または同時に債務者に送達されたときに限り開始できると定めています。執行文が付与された場合には、その執行文の謄本等もあわせて送達しなければなりません。つまり、相手方に「あなたに対して強制執行ができる書面が届いている」という事実が証明されて初めて、裁判所は差押え手続を開始できる仕組みになっています。送達証明書は、この送達済みの事実を裁判所に対して示すための書面です。

強制執行に必要な「3点セット」

離婚公正証書で強制執行を申し立てる前提として、公証役場で準備する重要書類は、実務上「執行3点セット」と呼ばれます。実際の債権差押命令申立てでは、申立書、当事者目録・請求債権目録・差押債権目録、必要に応じた資格証明書や住民票等も別途必要になります。

書類 内容 取得先
① 公正証書正本 強制執行認諾文言付きの離婚公正証書の正本 作成した公証役場
② 執行文 その公正証書で強制執行ができることを公証人が証明した書面(正本末尾に付される) 作成した公証役場
③ 送達証明書 公正証書正本等が相手方に送達されたことの証明書 作成した公証役場

いずれも、その公正証書を作成した公証役場で取得します。①〜③がそろうことで、地方裁判所で債権差押命令の申立てを検討するための前提書類が整います。実際の申立書類の作成・提出については、裁判所または弁護士・司法書士等の専門家に確認してください。

送達の2つの方法(交付送達と郵便送達)

送達には、大きく分けて2つの方法があります。状況によってどちらを使うかが変わるため、公正証書を作る段階から意識しておくと後の手続がスムーズです。

  • 交付送達:公正証書を作成する際に、債務者本人(相手方)が公証役場に出頭している場合に、債権者側の送達申立てに基づき、その場で公証人が公正証書謄本等を直接手渡す方法です。作成当日にこの手続まで済ませれば、後日あらためて郵便送達を申し立てる必要がなく、送達証明書も取得しやすくなります。
  • 郵便による送達(特別送達):作成時に相手方への交付送達をしていない場合などに、債権者の申立てにより、公証人が相手方の住所へ郵便で公正証書謄本等を送付する方法です。相手方への到達が確認できれば送達完了となり、送達証明書の交付を受けられます。

相手方が転居して住所がわからない、郵便を受け取らない、宛先不明で戻ってくる、といったケースでは送達が完了せず、最終的に「公示送達」など別の手続が必要になることがあります。こうした手続や差押え申立て自体は弁護士の業務領域となるため、状況に応じて弁護士と連携してご案内します。

送達証明書の取得方法と手続の流れ

送達証明書を含む3点セットは、原則として次の流れで取得します。

  • 1. 公証役場へ連絡・予約:公正証書を作成した公証役場に、強制執行のための執行文付与・送達の手続をしたい旨を連絡します。
  • 2. 執行文付与の申立て:執行文付与申立書、強制執行認諾文言付の公正証書正本、本人確認資料(運転免許証・マイナンバーカード等)を用意して申し立てます。郵送で申し立てる場合は返信用のレターパック等が必要になることがあります。
  • 3. 送達の申立て:交付送達が済んでいない場合は、公正証書正本または謄本を相手方へ送達するよう申し立てます。郵便送達の場合は相手方への到達を待ちます。
  • 4. 送達証明書の交付:送達が完了したら、送達証明書の交付を受けます。執行文・送達証明書がそろえば、3点セットが完成します。

必要書類や持参物の細かな取扱いは公証役場ごとに運用が異なる場合があるため、事前に該当の公証役場へ確認することをおすすめします。なお、養育費のように支払期日が将来到来するものについては、すでに支払期日が過ぎた分を対象に手続を進めるのが基本です。

公証役場でかかる手数料の目安

執行文付与・送達・送達証明にかかる公証人の手数料は、公証人手数料令で定められています。同令は令和7年政令第263号により改正され、令和7年(2025年)10月1日から改正後の額が適用されています。執行手続に関係する主な手数料は次のとおりです。

手続 手数料
執行文の付与 2,000円(事実到来執行文・承継執行文等はさらに2,000円加算)
正本・謄本の送達 1,600円
送達証明 300円

このほか、正本・謄本の交付(用紙1枚につき所定額)や郵便費用が別途かかる場合があります。これらは公証人に支払う手数料であり、その後に地方裁判所へ差押えを申し立てる際の収入印紙代・郵便切手代などは別に必要です。金額は改正や運用により変わるため、手続前に公証役場および裁判所でご確認ください。

離婚公正証書を「強制執行できる形」で作るには

送達証明書はあくまで「すでにできあがった公正証書」を執行に使うための書類です。実際にいざというときに差押えまで進めるかどうかは、公正証書そのものの作り方で決まります。具体的には、以下のような点が重要になります。

  • 強制執行認諾文言が確実に入っていること
  • 養育費・慰謝料・財産分与など、支払うべき金額・支払時期・支払方法が明確に特定されていること
  • 相手方の住所・氏名が正確に記載され、後の送達に支障が出ないこと

これらが曖昧だと、いざ強制執行の段階で「金額が特定できない」「送達先がわからない」といった理由でつまずくおそれがあります。当事務所では、後の執行を見据えて合意内容を整理し、公証役場での公正証書作成につなげるお手伝いをしています。

2026年(令和8年)4月1日に施行済みの改正民法により、共同親権の導入や、これまで「面会交流」と呼ばれてきた取り決めの「親子交流」への呼称変更など、離婚に関する制度が見直されています。離婚時年金分割についても、令和8年4月1日以降に離婚等をした場合は請求期限が原則5年以内となり、同日前に離婚等をした場合は従前どおり原則2年以内です。公正証書に盛り込む条項を検討する際は、こうした最新の制度もふまえて整理します。

当事務所のサポート

行政書士法人Treeでは、離婚協議書・公正証書の原案作成と事実整理を中心にご支援します。具体的には、当事者間で合意済みの養育費・慰謝料・財産分与などの内容をヒアリングし、強制執行を見据えて金額・期日・支払方法が明確になるよう条項化し、公証役場での公正証書作成に向けた原案づくりまでを担当します。慰謝料・財産分与の具体額算定、増減額の助言、相手方との交渉代理は行いません。

一方で、調停・裁判・相手方との交渉や慰謝料請求の代理、差押えなど強制執行の申立て代理は弁護士、不動産の名義変更(登記)は司法書士、年金分割の請求手続は年金事務所と、それぞれの専門家・窓口と連携しながら進めます。裁判所へ提出する調停申立書などの作成は行政書士の業務外です。役割を明確にしたうえで、必要に応じて適切な専門家へおつなぎします。

料金は、ミニマムプラン21,780円、スタンダードプラン27,500円、公正証書作成サポートプラン32,780円(いずれも税込)です。お急ぎの場合の超特急お急ぎサービスは+5,000円(税込)、代理人作成サポートは1名追加につき+15,000円(税込)で承ります。詳しくは離婚協議書・離婚公正証書サポートのページをご覧ください。ご相談は何度でも無料です。

まとめ

離婚公正証書に基づいて養育費や慰謝料の不払いに強制執行で対応するには、強制執行認諾文言付きの公正証書正本・執行文・送達証明書という「3点セット」が必要です。送達証明書は、公正証書が相手方に届いている事実を証明する書類で、民事執行法第29条が定める強制執行開始の前提となります。送達には交付送達と郵便送達があり、いずれも公正証書を作成した公証役場で手続をします。いざというときに確実に執行できるよう、公正証書を作る段階から強制執行を見据えて条項を整えておくことが大切です。当事務所は原案作成と事実整理の面から、弁護士・司法書士等と連携してお手伝いします。

離婚公正証書の送達証明書に関するよくある質問

Q:送達証明書はどこで取得できますか。

A:送達証明書は、その公正証書を作成した公証役場で取得します。執行文付与・送達の申立てを行い、相手方への送達が完了した後に送達証明書の交付を受ける流れです。他の公証役場では取得できないため、作成した公証役場へお問い合わせください。

Q:公正証書を作るときに相手と一緒に公証役場へ行きました。その場合も送達は必要ですか。

A:作成時に相手方本人が公証役場に出頭している場合は、所定の送達申立てに基づき、その場で公証人が公正証書謄本等を相手方に直接手渡す「交付送達」を行うことができます。この手続まで作成日に済ませていれば、後日あらためて郵便送達を申し立てる必要がなく、送達証明書もスムーズに取得できます。

Q:相手が引っ越して住所がわからない場合はどうなりますか。

A:郵便送達は相手方の住所へ送付するため、宛先不明だと送達が完了しません。住民票等で住所を調査したうえで送達を試み、それでも届かない場合は公示送達など別の手続が必要になることがあります。これらの判断や差押え申立ては弁護士の業務領域となるため、状況に応じて弁護士と連携してご案内します。

Q:強制執行認諾文言が入っていない公正証書でも送達証明書を取れば強制執行できますか。

A:できません。強制執行は強制執行認諾文言付きの公正証書(債務名義)を前提とします。認諾文言がない場合は、その公正証書だけを根拠に差押えを申し立てることはできず、別途、裁判等の手続が必要になります。条項の内容については、公正証書作成前にご相談ください。

Q:執行文・送達・送達証明にかかる費用はいくらですか。

A:令和7年10月1日改正後の公証人手数料では、執行文の付与が2,000円、正本・謄本の送達が1,600円、送達証明が300円です。このほか用紙代・郵便費用や、裁判所へ差押えを申し立てる際の印紙・切手代が別途必要です。金額は改正や運用で変わるため、手続前に公証役場と裁判所でご確認ください。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。

行政書士法人Tree