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遺言書に書ける事項の法定遺言事項と付言事項|効力の違い・記載方法・注意点

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結論から言えば、遺言書に書いて法的な効力が生じるのは、民法などの法律が定めた「法定遺言事項」に限られます。財産の分け方や遺言執行者の指定などがこれに当たり、それ以外の記載は「付言事項」と呼ばれ、家族への感謝や分け方の理由を伝える意味はあっても、法的な拘束力はありません。この区別を知らないまま書くと、本人は指定したつもりでも実現されない項目が残る遺言書になりかねません。本記事では、遺言書に書ける事項を条文番号付きで一覧化し、付言事項との違い、書き方の注意点を行政書士の立場から整理します。当事務所は戸籍収集による相続人確認や遺言書の文案作成支援・遺産分割協議書作成を担い、登記は司法書士、相続税は税理士、紛争は弁護士と連携する体制で対応しています。

法定遺言事項と付言事項の違い

遺言は、民法960条により「この法律に定める方式に従わなければ、することができない」とされる厳格な法律行為です。方式だけでなく内容にもルールがあり、遺言に書くことで法的効力が発生する事項は、民法をはじめとする法律に定められたものに限定されています。これが「法定遺言事項」です。

一方、遺言書には法定遺言事項以外のことを書いても構いません。家族への感謝、財産の分け方を決めた理由、葬儀についての希望などがその例で、これらを「付言事項」と呼びます。付言事項を書いても遺言が無効になることはありませんが、相続人がその内容に従う法的な義務も生じません。つまり両者の違いは、「裁判所や登記・金融機関の手続きで強制力を持つか(法定遺言事項)、気持ちの伝達にとどまるか(付言事項)」という点にあります。

相続に関する法定遺言事項の一覧

まず、相続人や相続分に関わる事項です。いずれも条文で遺言による指定が認められています。

事項 根拠条文 内容
相続分の指定 民法902条 法定相続分と異なる割合を定める、または定めることを第三者に委託する
遺産分割方法の指定 民法908条 どの財産を誰に取得させるかを定める、または第三者に委託する
遺産分割の禁止 民法908条 相続開始の時から5年を超えない期間、分割を禁止する
特別受益の持戻し免除 民法903条3項 生前贈与を相続分の計算に含めない意思表示
推定相続人の廃除・取消し 民法893条・894条2項 虐待・重大な侮辱・著しい非行のあった推定相続人(遺留分を有する者に限り、兄弟姉妹は対象外)の相続権を失わせる(家庭裁判所の審判が必要)
相続人間の担保責任の指定 民法914条 取得した財産に欠陥があった場合の相続人同士の責任分担を変更する

実務で最も多いのは「自宅は妻に、預貯金は長男に相続させる」といった遺産分割方法の指定です。特定の財産を特定の相続人に承継させるこの形の遺言(特定財産承継遺言)は、遺産分割協議を経ずに名義変更手続きへ進める点が大きな利点です。

財産の処分に関する法定遺言事項

相続人以外の人や団体に財産を渡す場合も、遺言によることができます。

  • 遺贈(民法964条)──財産の全部または一部を、包括または特定の名義で処分できます。お世話になった人や公益団体への寄付もこの遺贈により行います。
  • 配偶者居住権の設定(民法1028条1項2号)──2020年4月1日施行の制度で、自宅の所有権を子に渡しつつ、配偶者に終身の居住権を遺贈で取得させることができます。施行日以後に作成した遺言でのみ設定できます。
  • 生命保険金受取人の変更(保険法44条1項)──遺言によって保険金受取人を変更できます。ただし同条2項により、遺言の効力発生後に相続人が保険会社へ通知しなければ対抗できないため、遺言執行者を定めて確実に通知させる設計が重要です。
  • 信託の設定(信託法3条2号)──いわゆる遺言信託で、障害のある子の生活費を信託財産から給付するなど、承継後の財産管理まで指定できます。

身分・遺言執行に関する法定遺言事項

財産以外にも、身分関係や遺言の実現方法について定められる事項があります。

  • 認知(民法781条2項)──婚姻外の子を遺言で認知できます。認知された子は相続人となるため、他の相続人に与える影響が大きい事項です。
  • 未成年後見人・未成年後見監督人の指定(民法839条・848条)──最後に親権を行う者が、自分の死後に未成年の子を監護する後見人を指定できます。
  • 祭祀主宰者の指定(民法897条1項ただし書)──墓や仏壇などの祭祀財産を承継する人を指定できます。祭祀財産は通常の相続財産と別枠で承継されます。
  • 遺言執行者の指定(民法1006条1項)──遺言の内容を実現する人を1人または数人指定し、または指定を第三者に委託できます。認知や廃除は遺言執行者がいなければ手続きできないため、これらを書く場合は指定が事実上必須です。
  • 遺言執行者の報酬の定め(民法1018条1項ただし書)──遺言で報酬額を定めておけば、家庭裁判所に報酬付与の審判を求める必要がなくなります。
  • 一般財団法人の設立(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律152条2項)──遺言で定款の内容を定め、財産を拠出して財団法人を設立できます。
  • 遺留分侵害額の負担の定め(民法1047条1項2号ただし書)──受遺者が複数いる場合の負担割合を、価額の割合と異なる形で指定できます。

付言事項に書くとよい内容と限界

付言事項に法的効力はありませんが、遺言の実現を助ける実務上の効果があります。書くとよい内容の典型は次のとおりです。

  • 財産の分け方をそのように決めた理由(介護への感謝、生前贈与とのバランスなど)
  • 家族への感謝やメッセージ
  • 遺留分侵害額請求を行使しないでほしいというお願い
  • 葬儀・納骨についての希望

特に相続分に差をつける遺言では、理由を付言で丁寧に説明しておくことで、相続人の感情的な対立を和らげ、遺留分をめぐる紛争の予防につながることがあります。ただし、あくまでお願いにとどまり、遺留分侵害額請求権(民法1046条)そのものを付言で奪うことはできません。また、本文の記載と矛盾する内容を付言に書くと解釈をめぐる争いの火種になるため避けるべきです。

記載のポイント──方式違反は遺言全体を無効にする

どれほど内容が適切でも、方式を欠く遺言は無効です(民法960条)。自筆証書遺言は、全文・日付・氏名を自書し押印することが要件です(民法968条1項)。2019年1月13日施行の改正で、添付する財産目録に限りパソコン作成や通帳コピー等が認められましたが、その場合は目録の毎葉に署名押印が必要です(同条2項)。

また、2020年7月10日から法務局の自筆証書遺言書保管制度が始まっており、1通につき収入印紙3,900円で原本を預けられます。保管制度を利用した遺言書は家庭裁判所の検認(民法1004条)が不要となり、紛失・改ざんの危険も避けられます。財産の書き方は、不動産なら登記事項証明書の記載どおりに、預貯金なら金融機関名・支店名・口座番号まで特定するのが原則です。相続人には「相続させる」、相続人以外には「遺贈する」と書き分けることも、その後の手続きを円滑にするポイントです。

当事務所のサポート

行政書士法人Treeでは、戸籍の収集による法定相続人の確認、相続関係の整理、遺言がない場合・遺言に記載のない財産がある場合の遺産分割協議書の作成を承っています。遺言書に書かれていない財産が後から見つかったケースでは、その財産について相続人全員の遺産分割協議が必要になるため、戸籍調査から協議書作成までを一括してお手伝いします。なお、不動産の名義変更(相続登記)は2024年4月1日から義務化されており、取得を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象となります。登記申請は連携する司法書士、相続税の申告は税理士、相続人間に争いがある場合は弁護士へ、それぞれ適切におつなぎします。

遺産分割協議書作成の料金は、ミニマムプラン43,780円(税込)、戸籍収集を含むスタンダードプラン87,780円(税込)、手続き全体をお任せいただく丸投げプラン217,800円(税込)です。詳細は遺産分割協議書作成サポートのご案内をご覧ください。ご相談は何度でも無料です。

相続手続でお困りの方へ。行政書士法人Treeでは、戸籍の収集による相続人調査から遺産分割協議書の作成までをサポートします。書類作成に関するご相談は何度でも無料です。※相続登記は司法書士、相続税申告は税理士、相続放棄など家庭裁判所へ提出する書類の作成は司法書士・弁護士の業務であり、当法人では取り扱いません。

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まとめ

遺言書に書いて法的効力が生じるのは、相続分の指定(民法902条)や遺産分割方法の指定(民法908条)、遺贈(民法964条)、遺言執行者の指定(民法1006条)など、法律で定められた法定遺言事項に限られます。感謝や理由の説明は付言事項として書けますが、拘束力はありません。方式違反があれば遺言全体が無効になるため、財産の特定方法や「相続させる」「遺贈する」の書き分けまで含めて、作成前に専門家の確認を受けることをおすすめします。

遺言書に書ける事項に関するよくある質問

Q:葬儀の方法やお墓の希望を遺言書に書いたら守ってもらえますか?

A:墓や仏壇を承継する祭祀主宰者の指定(民法897条1項ただし書)は法定遺言事項として効力がありますが、葬儀の方式や規模の希望は付言事項にとどまり、法的な拘束力はありません。生前に家族へ直接伝えておくことも併用してください。

Q:ペットの世話を遺言で頼むことはできますか?

A:ペット自体に財産を残すことはできませんが、世話をしてくれる人に財産を遺贈し、その負担としてペットの飼育を義務付ける負担付遺贈(民法1002条)を使う方法があります。受遺者が義務を果たさない場合に備え、遺言執行者を指定しておくと安心です。

Q:エンディングノートに分け方を書けば遺言の代わりになりますか?

A:なりません。民法の方式(自書・日付・氏名・押印など)を満たさない書面は、内容が法定遺言事項であっても遺言としての効力を持ちません。エンディングノートは付言事項に近い位置付けと考え、効力を持たせたい内容は方式を満たした遺言書に書いてください。

Q:一度書いた遺言書の内容を変えたくなったらどうすればよいですか?

A:遺言者はいつでも、遺言の方式に従って遺言の全部または一部を撤回できます(民法1022条)。前の遺言と抵触する内容の遺言を新たに作れば、抵触する部分は後の遺言が優先します(民法1023条1項)。前の遺言も抵触しない部分では効力を保つため、書き直す際は前の遺言を撤回する旨を明記するか、原本を破棄しておくと安全です。

Q:遺言書に書かれていない財産が見つかった場合はどうなりますか?

A:記載のない財産は、相続人全員の遺産分割協議で取得者を決める必要があります。これを避けるため、実務では「本遺言に記載のないその余の財産は〇〇に相続させる」という包括条項を最後に入れるのが一般的です。協議が必要になった場合の協議書作成は行政書士がサポートできます。

Q:遺言書に書いても効力がないこと(遺言ではできないこと)は何ですか?

A:寄与分の指定(民法904条の2により相続人間の協議または家庭裁判所の審判で決まります)、相続人に相続放棄を強制すること、遺留分侵害額請求権を奪うこと、婚姻・離婚・養子縁組といった身分行為の強制などは、遺言に書いても法的効力は生じません。希望として付言事項に記すことはできますが、拘束力はありません。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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