結論から言えば、カーシェアリングを事業として行う場合、その多くは道路運送法第80条第1項の「自家用自動車の有償貸渡し(レンタカー事業)」の許可が必要で、無人での貸渡し(無人貸渡)も要件を満たせば認められています。一方、平成18年(2006年)の法改正では、借受人を車検証上の使用者とするカーリースについて有償貸渡しの規制対象から除外されており、契約形態によって規制の当てはまり方が変わります。当事務所(行政書士法人Tree)は、車庫証明・名義変更から運送業許可まで車両まわりの許認可を扱う行政書士として、レンタカー事業許可の申請と運用ルールの整理をご支援します。利用規約の適法性など法律判断が必要な場面は弁護士、税務は税理士と連携して対応します。
目次
カーシェアリングと「道路運送法」の関係を整理する
「カーシェアリング」に法律上の定義はなく、実務では2つの類型に分かれます。事業者が自社車両を複数の会員に貸し出す「レンタカー型カーシェアリング」と、個人が自分の車を他の個人に融通する「個人間(CtoC)カーシェアリング」です。この2つは道路運送法上の位置づけが異なります。
- レンタカー型カーシェアリング:事業者が業として有償で車を貸し渡す形態。道路運送法第80条第1項の許可(自家用自動車有償貸渡業許可)の対象になります。
- 個人間カーシェアリング:多くのプラットフォームが「共同使用契約」という形式をとっており、後述のとおり有償貸渡しの許可を要しない構成をとるのが一般的です。
どちらの類型に当たるかは名称ではなく、契約の実態(誰が使用者か、実費負担か営利か等)で判断されます。
道路運送法第80条第1項|自家用自動車の有償貸渡しの原則禁止
道路運送法(昭和26年法律第183号)第80条第1項は、次のように定めています。
「自家用自動車は、国土交通大臣の許可を受けなければ、業として有償で貸し渡してはならない。ただし、その借受人が当該自家用自動車の使用者である場合は、この限りでない。」
ポイントは「業として」「有償で」「貸し渡す」の3要素です。反復継続の意思をもって対価を得て自家用自動車を他人に貸し渡す行為は、原則として国土交通大臣(実務上は地方運輸局長)の許可が必要です。ただし書きにより、借受人自身がその車の「使用者」として登録・届出される場合は許可を要しません。ただし、個人間カーシェアリングの適法性は「業として有償で貸し渡す」に当たるかという観点からも個別に判断されるため、実態によっては許可が必要になり得ます。
なお、自家用自動車で「有償運送」を行うこと(いわゆる白タク・白トラ)は、第80条の貸渡しとは別に第78条で原則禁止されています。「貸す(第80条)」と「運ぶ(第78条)」は別の規制である点に注意してください。
レンタカー事業許可(自家用自動車有償貸渡業許可)の主な要件
レンタカー型カーシェアリングを事業として行うには、営業所を管轄する地方運輸局長の許可が必要です。主な運用ルール・要件は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠条文 | 道路運送法第80条第1項 |
| ナンバー | 軽自動車は貸渡用の「わ」ナンバー、登録自動車は地域により「わ」ナンバーまたは「れ」ナンバーで登録・届出 |
| 登録免許税 | 許可取得時に9万円(全国一律) |
| 整備管理者 | 一定台数以上で選任が必要(後述) |
| 損害賠償措置 | 対人・対物・搭乗者の任意保険等への加入(後述の基準) |
| 掲示・備付け | 貸渡料金・貸渡約款の掲示、貸渡簿の整備(貸渡証の交付はレンタカー型カーシェアリングでは対面貸渡しの場合のみ) |
貸し渡せる車両は自家用の乗用車・貨物車などが中心です。自家用マイクロバス(乗車定員29人以下かつ車両長7m以下)を貸し渡すには他車種でのレンタカー事業について2年以上の経営実績等が必要で、乗車定員30人以上または車両長7mを超えるバスおよび霊柩車は貸渡しできません。レンタカーはあくまで「運転者を伴わない車両の貸渡し」であり、運転者付きで人を運ぶ旅客自動車運送事業(バス・タクシー)とは別物です。無許可で貸渡業を営めば道路運送法第98条により100万円以下の罰金に処せられるおそれがあります。あわせて同法第81条第1項により6か月以内の自動車の使用制限・禁止処分を受けることもあるため、開業前の許可取得は必須です。
整備管理者と損害賠償措置(保険)の基準
安全管理と利用者保護の観点から、次の体制が求められます。
- 整備管理者の選任:一つの営業所(配置事務所)で車両を一定台数以上使用する場合に選任が必要です(道路運送車両法に基づく制度)。道路運送車両法施行規則第31条の3により、乗車定員10人以下・車両総重量8トン未満のレンタカー(乗用車・軽自動車等)は10両以上、乗車定員10人以下・車両総重量8トン以上の車両は5両以上、乗車定員11人以上の車両は1両以上で整備管理者の選任義務が生じます。整備管理者は、二級・三級等の自動車整備士の資格者、または一定の実務経験+地方運輸局長の研修修了者などから選任します。
- 損害賠償措置:貸渡しにあたり、対人賠償1人あたり8,000万円以上、対物賠償1件あたり200万円以上、搭乗者傷害1人あたり500万円以上を担保する自動車保険等への加入が求められます(自賠責保険に加えて任意保険等で確保)。
これらは許可申請時の審査対象であり、事業開始後も維持すべき運用基準です。台数区分や必要書類は運輸支局により細部が異なることがあるため、申請前に管轄の地方運輸局・運輸支局の最新基準を確認してください。
無人貸渡(レンタカー型カーシェアリング)とワンウェイ方式の運用
カーシェアリングは、スマートフォンで予約し、専用駐車場で無人のまま車を受け取る「無人貸渡」が実務の中心です。従来は営業所(配置事務所)で対面により貸渡手続を行うのが基本でしたが、ITの活用等により貸渡状況や車両の状態を的確に把握できると認められるレンタカー型カーシェアリングでは、無人の路外駐車場を配置事務所とすることが認められています。
さらに国土交通省は、いわゆる「ワンウェイ方式」(借りた場所と異なる駐車場に返却できる乗り捨て型)について、平成26年(2014年)3月27日に取扱いを公表し、同年9月1日から運用を開始しました。これにより、必ずしも配置事務所に返却されない形態でも、ITで車両の状況を的確に把握できることを前提に、無人の路外駐車場を配置事務所とし、これを道路運送車両法第7条の「使用の本拠の位置」とできると明確化されました。電気自動車の充電拠点の拡大や短時間・短区間利用の選択肢拡充につながる緩和と位置づけられています。
無人貸渡・ワンウェイ方式はいずれも「ITによる的確な把握」が前提です。予約・本人確認・貸渡記録・車両状態の管理といった仕組みを備えることが求められるため、運用設計とあわせて許可・変更の手続を整えることが実務上のポイントです。
個人間(CtoC)カーシェアリングと共同使用
個人が自分の車を他人に貸すサービスの多くは、「有償貸渡し」ではなく「共同使用契約」という形式をとっています。これは、平成18年(2006年)の道路運送法改正で自動車の共同使用に関する許可制が廃止された経緯を背景とします。共同使用契約という名称や実費分担だけでは許可が不要になるものではなく、借受人が車検証上の使用者として登録または届出されているか、貸渡しの実態があるかなどを個別に判断する必要があります。
もっとも、実態が「実費のシェア」を超えて営利目的の反復的な貸渡しと評価される場合には、第80条第1項の「業として有償で貸し渡す」に該当し、許可が必要となり得ます。適法な共同使用として成立しているかは利用規約・契約条項の設計に依存する法律判断であり、この部分は弁護士の領域です。行政書士は許可の要否や運送業許可の手続面を整理し、法律解釈が必要な部分は弁護士と連携します。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、レンタカー事業許可(自家用自動車有償貸渡業許可)の申請支援、「わ」ナンバーの登録手続、整備管理者・損害賠償措置など要件充足のチェック、無人貸渡・ワンウェイ方式を見据えた配置事務所の整理まで、車両・運送分野の許認可をワンストップでお手伝いします。車庫証明・名義変更などの登録手続や、一般貨物・貸切バス・タクシー・介護タクシー・福祉有償運送等の運送業許可もお任せください。
車庫証明は5,500円(税込)〜、名義変更は7,000円(税込)〜を目安に承っており、個人・法人の別や地域・申請内容により変動します。レンタカー事業許可などの運送業許可も事案により異なりますのでお見積りいたします。車両・運送分野の許認可はこちらのページをご覧ください。法律判断が必要な事項は弁護士、税務は税理士と連携して対応します。ご相談は何度でも無料です。
車庫証明・名義変更などの自動車手続でお困りではありませんか。行政書士法人Treeでは、書類の作成から警察署・運輸支局への提出代行まで対応します。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
カーシェアリングは、事業者が車両を貸すレンタカー型と、個人が車を融通する共同使用型で規制の当てはまり方が異なります。レンタカー型は道路運送法第80条第1項の許可が必要で、登録免許税9万円、整備管理者、損害賠償措置(対人8,000万円以上・対物200万円以上・搭乗者500万円以上)といった要件があります。無人貸渡やワンウェイ方式は、ITによる的確な把握を前提に、無人の路外駐車場を配置事務所とする運用が認められています。共同使用型は実態が営利的な貸渡しに及べば許可が必要になり得ます。開業前に類型を見極め、管轄運輸局の最新基準で要件を確認することが安全です。
カーシェアリングと道路運送法に関するよくある質問
Q:カーシェアリングを始めるには必ずレンタカー許可が必要ですか。
A:事業者が自社の車両を業として有償で貸し渡す「レンタカー型カーシェアリング」であれば、道路運送法第80条第1項の許可(自家用自動車有償貸渡業許可)が必要です。一方、個人間で実費を共同負担する「共同使用契約」型は許可を要しない構成が一般的ですが、実態が営利的な有償貸渡しに当たれば許可が必要になります。類型の判断が難しい場合はご相談ください。
Q:無人での貸渡し(スマホ予約・専用駐車場での受渡し)は認められますか。
A:ITの活用等により貸渡状況や車両の状態を的確に把握できると認められるレンタカー型カーシェアリングについては、無人の路外駐車場を配置事務所とする無人貸渡が認められています。予約・本人確認・貸渡記録・車両管理の仕組みを備えていることが前提です。
Q:借りた場所と違う駐車場に返す「乗り捨て(ワンウェイ)」はできますか。
A:国土交通省が平成26年(2014年)3月27日に取扱いを公表し、同年9月1日から運用が始まっています。ITで車両の状況を的確に把握できることを前提に、無人の路外駐車場を配置事務所とし、これを道路運送車両法第7条の「使用の本拠の位置」とすることが認められています。
Q:レンタカー事業に必要な保険の基準はどのくらいですか。
A:一般に、対人賠償1人あたり8,000万円以上、対物賠償1件あたり200万円以上、搭乗者傷害1人あたり500万円以上を担保する自動車保険等への加入が求められます。自賠責保険に加え、任意保険等で確保します。細部は管轄の地方運輸局・運輸支局の基準をご確認ください。
Q:許可を取らずにレンタカー事業を行うとどうなりますか。
A:道路運送法第80条第1項に違反して無許可で有償貸渡業を営んだ場合、同法第98条により100万円以下の罰金に処せられるおそれがあります。あわせて同法第81条第1項により6か月以内の自動車の使用制限・禁止処分を受けることもあります。開業前に必ず許可を取得してください。要件の確認や申請手続について当事務所がお手伝いします。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


