公開日:2026年5月5日|最終更新日:2026年5月6日
「認知症になったら誰が財産を管理してくれるのか」「亡くなった後の葬儀や行政手続は誰に頼めばよいのか」——おひとり様や子のいないご夫婦、頼れる親族が遠方にいる方にとって、判断能力低下から死後までを切れ目なくカバーする仕組みづくりは大きな課題です。本記事では、行政書士業務として対応可能な契約書原案作成・公証役場との事前調整を念頭に、「任意後見契約」と「死後事務委任契約」を中心として、両者を連携させることで生前から死後まで一貫した対応が可能になる総合プランを解説します。なお、任意後見監督人選任申立てなど家庭裁判所への手続は、司法書士・弁護士の業務範囲となります。
本記事の結論:
- 判断能力低下に備える「任意後見契約(公正証書)」と、死亡後の事務処理を託す「死後事務委任契約」を組み合わせることで、認知症発症から死後手続までを切れ目なく設計できます。
- さらに「見守り契約」「財産管理委任契約」「遺言公正証書」を加えた5点セットが、おひとり様の終活における理想形です。
- 任意後見契約は必ず公正証書で締結し、公証人の嘱託により東京法務局に登記されます。任意後見人としての事務が開始するのは、本人の判断能力低下後に家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点です(任意後見契約に関する法律第3条・第4条)。
- 死後事務委任契約の有効性は、最高裁平成4年9月22日判決により、民法653条を任意規定と解する立場から認められています。
- 当所は契約書原案作成・公証役場調整を業務範囲とし、家庭裁判所への申立書類作成・代理は司法書士・弁護士、信託登記は司法書士、税務は税理士に連携します。
任意後見契約・死後事務委任契約の事前準備サポート
- 任意後見契約書 原案作成:27,500円(税込)
- 任意後見契約 公正証書化サポート:62,780円(税込)
- 死後事務委任契約 原案作成:29,800円(税込)
- 財産管理委任契約 原案作成:27,500円(税込)
- 見守り契約 原案作成:22,000円(税込)
- 遺言公正証書 原案作成・公証役場同行:62,780円(税込)
※ 公正証書作成の公証人手数料(2025年10月1日改正:算定不能13,000円・50万円以下3,000円ほか)は別途必要です。
目次
1. 根拠法令と業務範囲
- 任意後見契約に関する法律第3条:任意後見契約は法務省令で定める様式の公正証書によって締結しなければならない
- 同法第4条:任意後見契約が登記されている場合において、精神上の障害により本人の事理を弁識する能力が不十分な状況にあるとき、家庭裁判所は本人・配偶者・四親等内の親族・任意後見受任者の請求により、任意後見監督人を選任する
- 同法第5条:任意後見受任者・任意後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、任意後見監督人となることができない
- 民法第643条以下:委任契約(死後事務委任契約・財産管理委任契約の根拠)
- 民法第653条1号:委任は委任者又は受任者の死亡により終了する。最判平成4年9月22日判決(金融法務事情1358号55頁)により同条は任意規定と解され、当事者の合意により死亡後の事務を委任する契約も有効と認められる
- 司法書士法第3条1項4号:裁判所又は検察庁に提出する書類の作成は司法書士の業務範囲(任意後見監督人選任申立書類等。弁護士も対応可能)
- 弁護士法第72条:法律事件に関する代理・交渉は弁護士業務
- 税理士法第2条:税務相談・税務代理・税務書類作成は税理士の独占業務
当事務所(行政書士)が対応できるのは、任意後見契約書・死後事務委任契約書・財産管理委任契約書・見守り契約書・遺言公正証書の原案作成および公証役場との事前調整・同行です。家庭裁判所への申立書類の作成代理(業として他人の申立書類を作成する場合)は司法書士・弁護士の業務範囲となります。
2. 任意後見契約とは——法定後見との違い
2-1. 任意後見契約の概要
任意後見契約は、本人がまだ十分な判断能力を有しているうちに、将来判断能力が低下した場合に備えて、自ら選んだ受任者(任意後見人)に財産管理や身上監護に関する事務を委託しておく契約です。法定後見(後見・保佐・補助)が「判断能力が既に低下した後に家庭裁判所が後見人を選任する制度」であるのに対し、任意後見は本人が元気なうちに後見人と内容を自分で決められる点が最大の特徴です。
2-2. 必ず公正証書で締結
任意後見契約に関する法律第3条により、任意後見契約は法務省令で定める様式の公正証書によって締結する必要があります。公証人が本人の意思能力・契約内容を確認することで、後日の紛争を防ぎ、登記によって受任者の権限を公示できる仕組みになっています。ただし、任意後見人としての事務が開始するのは、本人の判断能力が不十分となり、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した後です。
3. 任意後見契約の3類型
3-1. 将来型
契約締結時点では本人の判断能力に問題がなく、将来判断能力が低下した時点で家庭裁判所が任意後見監督人を選任して効力を発生させるタイプです。最もスタンダードな形ですが、契約締結から発効までの「空白期間」が長期化するため、後述の見守り契約をセットにすることが多いです。
3-2. 即効型
契約締結直後に任意後見監督人選任を申し立て、すぐに効力を発生させるタイプです。判断能力が低下し始めているが、まだ契約締結能力は残っている方が利用します。意思能力の有無の判断が微妙になりやすく、慎重な判断が求められます。
3-3. 移行型
判断能力があるうちは「財産管理委任契約」に基づいて受任者が財産管理を行い、判断能力が低下した時点で「任意後見契約」に切り替えるタイプです。身体機能の低下と認知機能の低下が別々のタイミングで進む現実に即した実用的な形態で、おひとり様の終活設計では移行型が選ばれるケースが多くなっています。
4. 任意後見契約発効までの流れ
- 受任者の選定・契約内容の決定:家族・親族・行政書士等の士業・社会福祉協議会・NPO法人など、信頼できる受任者を選びます
- 原案作成:本人の希望(医療同意の方針、介護施設選び、財産処分の制限等)を反映した契約原案を作成
- 公証役場での公正証書作成:公証人が本人の意思を確認し、公正証書として作成
- 任意後見契約の登記:公証人の嘱託により、任意後見契約が東京法務局(後見登録課)に登記される(全国の任意後見・成年後見の登記事務は東京法務局が一元管理)
- 判断能力低下後、任意後見監督人選任の申立て:本人・配偶者・四親等内の親族・任意後見受任者が家庭裁判所に申立て(書類作成は司法書士・弁護士の業務範囲)。本人以外の者が請求する場合は、本人が意思表示できない場合を除き、本人の同意が必要
- 監督人選任により契約効力発生:任意後見人として正式に活動開始
5. 死後事務委任契約とは|おひとり様の葬儀・行政手続・解約対応
5-1. 必要となる場面
本人が亡くなった後には、相続人が当然には対応できない・対応してくれない事務が多数発生します。おひとり様や疎遠な親族しかいない方は、生前のうちに信頼できる受任者と死後事務委任契約を締結しておくことで、これらの手続を確実に履行してもらうことができます。
5-2. 委任できる主な事務
- 葬儀・火葬・納骨・永代供養に関する事務
- 死亡届・火葬許可申請等の行政手続に関する支援・関係者との連絡調整(届出人となれる者は戸籍法等により定められるため、自治体への確認が必要)
- 医療費・介護施設利用料の精算
- 公共料金・通信契約・サブスクリプションの解約
- 賃貸住宅の明渡し・室内残置物の処分
- SNSアカウント・デジタル遺品の整理
- 関係者への死亡通知
- ペットの引渡し
※ 遺産分割や債務の最終的な清算、相続人への分配等は遺言執行者または相続人の権限・責任に属する範囲です。
6. 任意後見と死後事務委任を「連携」させる意義
任意後見契約は委任契約の性質を持つため、本人(委任者)の死亡により終了します(民法第653条1号)。一方で、死後事務委任契約は生前に締結しておき、本人の死亡後に葬儀・行政手続・各種解約等の事務を受任者が行うよう設計する契約です。両者を同一の受任者(または連携の取れた受任者)に委託することで、判断能力低下の時点から、看取り、葬儀、行政手続、デジタル遺品整理に至るまで一貫した対応が可能になります。
受任者が分かれていると、財産情報・契約関係の引継ぎが煩雑になり、亡くなった直後に重要な手続が止まってしまうリスクがあります。連携設計を最初から組み込むことで、本人の意思を死後まで実現する仕組みが完成します。
7. 終活5点セット|見守り・財産管理・任意後見・死後事務委任・遺言の連携設計
| 契約・書面 | カバーする時期 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 見守り契約 | 契約締結〜判断能力低下まで | 定期的な面談・連絡で異変を早期発見 |
| 財産管理委任契約 | 身体機能低下〜判断能力低下まで | 入院中・外出困難時の預金管理・支払代行 |
| 任意後見契約(移行型) | 判断能力低下〜死亡まで | 財産管理・身上監護を法的に保護 |
| 死後事務委任契約 | 死亡時〜諸手続完了まで | 葬儀・行政手続・デジタル遺品整理等 |
| 遺言公正証書 | 死亡時〜遺言執行・相続手続完了まで | 財産の承継先指定・遺言執行者指定 |
5点セットを同時に整備することで、判断能力に問題が生じた瞬間から相続手続完了までの全期間がカバーされます。特におひとり様・子のいないご夫婦・親族が遠方の方には、この総合プランが推奨されます。
8. 家族信託と任意後見の違い|民事信託との比較・併用
家族信託は、信頼できる家族に財産の管理処分権を信託する仕組みで、認知症対策として近年注目されています。任意後見との主な違いは以下の通りです。
| 項目 | 任意後見契約 | 家族信託 |
|---|---|---|
| 対象 | 財産管理+身上監護 | 財産管理のみ(身上監護不可) |
| 監督 | 任意後見監督人(家裁選任) | 受益者・信託監督人 |
| 柔軟性 | 法律で枠あり | 契約で自由設計 |
| 不動産売却 | 代理権目録の内容・任意後見監督人の監督のもと慎重に判断 | 信託契約の定めに基づき受託者が対応可能 |
| 死後の財産承継 | 不可(遺言等で別途設計が必要) | 可能(信託で設計。ただし遺留分・税務・帰属権利者等の検討が必要) |
身上監護(介護施設入所契約、医療・介護に関する希望の伝達や契約手続等)は信託ではカバーできないため、財産管理は家族信託・身上監護は任意後見というように併用するケースもあります。なお、任意後見人に医療行為の同意権が当然に認められるわけではありません。信託の登記や信託契約の登記関連手続は司法書士業務です。
9. 受任者選定の留意点
- 親族:信頼関係は厚いが、高齢化・先立つリスク、相続トラブルの当事者になる可能性
- 行政書士・司法書士・弁護士等の専門職:継続性・専門性が高い反面、報酬負担あり
- 士業法人:個人士業より長期継続性を確保しやすい場合があるが、担当者変更・廃業時の引継ぎ・利益相反対応などの体制確認が必要
- 社会福祉協議会・NPO法人:地域に根差した支援が受けられるが、対応範囲に制限あり
- 身元保証会社:高額契約・前払金トラブル事例があるため契約内容を慎重に確認
受任者は本人より長く活動できる「組織」を一部に組み込むことが安心につながります。専門職・法人を受任者にする場合は、受任範囲、利益相反時の対応、預託金管理、担当者変更時の引継ぎ体制を契約書で明確にすることが重要です。当事務所が受任者となるかどうかは、事案ごとに個別判断となります。
10. 報酬・費用の目安
10-1. 任意後見人の報酬
任意後見人の報酬は、原則として任意後見契約の中で本人と受任者が自由に取り決めます。月額1〜3万円程度が一般的ですが、財産規模・身上監護の負担に応じて設定します。任意後見監督人の報酬は家庭裁判所が決定します(月額1〜3万円程度)。
10-2. 死後事務委任契約の費用
死後事務の実費(葬儀費用・施設精算費用・解約手数料等)に加え、受任者報酬として30万円〜100万円程度を生前に預託金として預ける形が一般的です。預託金の管理方法(受任者個人財産との分別管理、信託口口座、第三者管理、管理状況を示す書面化等)は契約締結時に必ず確認しましょう。
10-3. 公証人手数料(2025年10月1日改正後)
- 任意後見契約:算定不能として原則13,000円(改正前11,000円)
- 死後事務委任契約・財産管理委任契約・見守り契約:契約内容や報酬額等により公証人手数料が算定されるため、公証役場での確認が必要
- 50万円以下の法律行為:3,000円
- 正本・謄本交付料、任意後見契約の登記嘱託関係費用 等
11. 行政書士法人Treeの料金
| サービス | 料金(税込) |
|---|---|
| 任意後見契約書 原案作成 | 27,500円 |
| 任意後見契約 公正証書化サポート(公証役場同行含む) | 62,780円 |
| 死後事務委任契約 原案作成 | 29,800円 |
| 財産管理委任契約 原案作成 | 27,500円 |
| 見守り契約 原案作成 | 22,000円 |
| 遺言公正証書 原案作成・公証役場同行 | 62,780円 |
| 終活5点セット(パッケージ・初回相談無料) | 個別見積 |
※ 公証人手数料・登記嘱託手数料は別途実費。
FAQ
Q1. 任意後見契約と法定後見はどちらを選ぶべきですか?
判断能力があるうちに自分で受任者と内容を決めたい方は任意後見契約、既に判断能力が低下している方は法定後見を家庭裁判所に申し立てる流れになります。法定後見申立ての書類作成は司法書士業務です。
Q2. 任意後見契約は必ず公正証書でなければなりませんか?
はい。任意後見契約に関する法律第3条により、任意後見契約は法務省令で定める様式の公正証書によって締結する必要があります。公正証書で作成しなければ、任意後見契約としての効力を生じません。公証人の嘱託による東京法務局への登記も行われます。
Q3. 移行型と将来型はどう違いますか?
将来型は判断能力低下時点で初めて受任者が動き始めるのに対し、移行型は契約締結直後から財産管理委任契約に基づいて支援を開始し、判断能力が低下した時点で任意後見契約に切り替わる形です。
Q4. 任意後見監督人とは何ですか?
任意後見人が適切に職務を行っているかを監督する立場の者で、家庭裁判所が選任します。監督人の選任申立てによって任意後見契約の効力が発生します。
Q5. 任意後見人に親族を指定できますか?
可能です。子・きょうだい・甥姪等を受任者にすることもできます。ただし、親族間の利益相反や本人より先に亡くなるリスクを考慮し、複数受任者の指定や予備受任者の設定を検討することをお勧めします。
Q6. 死後事務委任契約は遺言と何が違いますか?
遺言は、主に財産の承継先や遺言執行者の指定など、法律上遺言で定められる事項を記載する書面です。葬儀方法や各種解約等の希望を遺言に書いても法的拘束力が限定的なため、死後事務委任契約で葬儀・行政手続・解約等の事実行為を別途委託します。両者は併用が原則です。
Q7. 認知症と診断された後でも任意後見契約は結べますか?
契約締結時点で本人に意思能力(契約内容を理解する能力)が残っていれば可能です(即効型)。ただし、公証人による意思確認がより慎重になります。判断が難しいケースでは法定後見の利用を検討します。
Q8. 死後事務委任契約の預託金はどう管理されますか?
受任者個人の口座とは分離した信託口口座での管理、または公証役場の事実実験公正証書による保管証明等が一般的です。契約時に管理方法・使途範囲・残金返還先を明確に定めることが重要です。
Q9. 家族信託と任意後見はどちらを優先すべきですか?
不動産の柔軟な管理・処分や家族による財産管理を重視するなら家族信託、介護施設入所契約や福祉サービス利用契約などの身上監護まで含めるなら任意後見の検討が必要です。なお、任意後見人に医療行為の同意権が当然に認められるわけではないため、医療・延命治療に関する希望は事前指示書等で別途明確にしておくことが重要です。実務では併用も見られます。信託登記は司法書士業務です。
Q10. 任意後見人は医療行為に同意できますか?
現行法上、医療同意権は本人固有の権利とされ、任意後見人に当然には認められていません。延命治療の方針等は事前指示書(リビング・ウィル)で明示しておくことが推奨されます。
Q11. 任意後見契約の費用は誰が負担しますか?
原則として本人の財産から支払います。契約原案作成料・公証人手数料は契約締結時に、任意後見人報酬は契約発効後に本人財産から支払う設計が一般的です。
Q12. 行政書士法人Treeに依頼できる範囲はどこまでですか?
任意後見契約書・死後事務委任契約書・財産管理委任契約書・見守り契約書・遺言公正証書の原案作成と公証役場との事前調整・同行までです。任意後見監督人選任申立て・法定後見申立ての家庭裁判所書類作成は司法書士、相続税申告は税理士、紛争解決は弁護士の業務範囲となります。
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まとめ
判断能力低下に備える任意後見契約と、死亡後の事務処理を託す死後事務委任契約は、それぞれ単体でも有効ですが、連携させることで生前から死後までの一貫した安心設計が可能になります。さらに見守り契約・財産管理委任契約・遺言公正証書を加えた終活5点セットで、おひとり様や頼れる親族のいない方の不安を大きく軽減できます。任意後見契約は必ず公正証書で作成する必要があり、死後事務委任契約も公正証書化することで信頼性が高まります。当事務所では原案作成から公証役場同行までの事前準備サポートを承ります。家庭裁判所への申立て・税務申告・紛争解決はそれぞれ司法書士・税理士・弁護士の業務範囲となるため、提携専門家と連携してワンチームでお応えします。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。


