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給料未払いの消滅時効|退職後の賃金請求と時効期間を解説

更新: 約15分で読めます

結論から言えば、未払い給料(賃金)の消滅時効は、2020年4月の労働基準法改正により「当分の間3年」に延長されました。改正前は2年でしたので、請求できる範囲が1年分広がった形です。退職金については従来どおり5年、残業代も賃金と同じく3年が適用されます。

「退職してしまったけれど、在職中の未払い残業代を取り戻せるのだろうか」「会社が給料を払ってくれないまま数年が経ってしまった」——こうした不安を抱える方にとって、時効の正確な知識は請求の可否を左右する最重要ポイントです。この記事では、賃金債権の時効期間・起算点から、時効を止める具体的な方法(内容証明郵便による催告など)まで、順を追って解説します。

「自分の未払い給料はまだ請求できるのか」「内容証明で催告するにはどうすればいいのか」とお悩みの方は、行政書士法人Treeにご相談ください。内容証明郵便の作成から弊社名での送付代行まで対応いたします。相談は何度でも無料・全国対応です。

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給料(賃金)の消滅時効は何年?

賃金請求権の消滅時効は、労働基準法115条に定められています。2020年4月1日の改正で、同条の消滅時効期間は「2年」から「5年」に変更されましたが、附則143条の経過措置により「当分の間は3年」とされています。

つまり、2020年4月1日以降に支払期日が到来した賃金については、支払期日から3年間は請求が可能です。2020年3月31日以前に支払期日が到来した賃金には旧法の2年が適用されますが、2026年現在では旧法の2年はすでに経過しているため、実務上ほとんどの未払い賃金は「3年」ルールで判断することになります。

将来的には5年に延長される可能性がある

現在の「3年」はあくまで経過措置です。改正法の施行から5年経過後(2025年以降)に施行状況を勘案し、必要に応じて見直しが行われる予定です。日本弁護士連合会は2025年に経過措置の速やかな撤廃を求める会長声明を公表しており、将来的に5年へ引き上げられる可能性は十分にあります。今後の動向には注意が必要です。

対象となる「賃金」の範囲

労働基準法上の「賃金」には、毎月の給料だけでなく、以下のような金銭も含まれます。

  • 基本給・各種手当(通勤手当・住宅手当・役職手当など)
  • 残業代(時間外労働・深夜労働・休日労働の割増賃金)
  • 賞与(ボーナス)
  • 休業手当(労働基準法26条)
  • 年次有給休暇中の賃金

これらはすべて「当分の間3年」の消滅時効が適用されます。ただし退職金だけは扱いが異なりますので、次のセクションで説明します。

退職金・残業代の消滅時効はどう違う?

賃金債権のなかでも、退職金(退職手当)は経過措置の適用対象外です。退職金の消滅時効は改正前から5年のままであり、2020年の改正による変更はありません。

一方、残業代(割増賃金)は通常の賃金と同じ扱いで、「当分の間3年」が適用されます。以下のテーブルで整理します。

賃金の種類 消滅時効 根拠条文 備考
基本給・手当 3年(当分の間) 労基法115条・附則143条 本則は5年。経過措置で3年
残業代(割増賃金) 3年(当分の間) 労基法115条・附則143条 基本給と同じ扱い
退職金(退職手当) 5年 労基法115条 経過措置の対象外
賞与(ボーナス) 3年(当分の間) 労基法115条・附則143条 就業規則等に支給条件の定めがある場合
休業手当 3年(当分の間) 労基法115条・附則143条 使用者の責に帰すべき休業

退職してから未払い賃金を請求するケースでは、基本給や残業代は3年、退職金は5年と覚えておくとよいでしょう。なお、退職金の支給条件が就業規則や労働契約書に明記されていない場合は、退職金請求権の有無自体が争点となることがありますので、まずは自社の退職金規程の確認が重要です。

消滅時効の起算点——いつからカウントが始まるのか

時効の「起算点(いつからカウントするか)」を誤解すると、まだ請求できる給料を諦めてしまったり、逆にすでに時効が完成しているのに気づかなかったりするリスクがあります。

毎月の給料の起算点

毎月の給料(賃金)の消滅時効は、各給料日の翌日からカウントが始まります。民法の「初日不算入の原則」が適用されるためです。

たとえば、毎月25日が給料日の場合、2023年4月25日に支払われるべきだった給料の消滅時効は、翌日の4月26日から起算して3年後の2026年4月25日に完成します。つまり、給料の時効は「月単位で順番に完成していく」ことになり、古い月の分から順にタイムリミットが到来します。

退職金の起算点

退職金の消滅時効は、退職金の支給日(就業規則等で定められた支払日)の翌日から起算して5年です。退職金規程に「退職日から1か月以内に支給する」と定められている場合は、その1か月後の翌日が起算点となります。

残業代の起算点

残業代(割増賃金)は、本来支払われるべき給料日(毎月の賃金支払日)の翌日が起算点です。「残業した日」ではなく「本来支払われるべきだった日」から起算される点に注意が必要です。

賃金の種類 起算点 具体例(給料日が毎月25日の場合)
毎月の給料 各給料日の翌日 2023年4月25日分 → 2026年4月25日に時効完成
残業代 本来の支払日の翌日 2023年3月分残業代(4月25日払い)→ 2026年4月25日に時効完成
退職金 退職金支給日の翌日 退職金支給日が2023年5月31日 → 2028年5月31日に時効完成

賃金未払いが数か月分にわたる場合、最も古い月の時効が先に完成します。請求を検討している方は、一番古い未払い分の給料日を確認し、3年が経過していないかをまず確認することをお勧めします。

時効を止めるにはどうすればよい?

「もうすぐ3年が経ってしまう」という場合でも、法律上の手段を使えば時効の完成を食い止めることが可能です。2020年の民法改正で用語が変わり、従来の「時効の中断・停止」は「時効の更新・完成猶予」という概念に整理されました(民法147条〜152条)。

催告(内容証明郵便)——6か月間の完成猶予

最も手軽で実務上よく利用されるのが、「催告」による時効の完成猶予です(民法150条)。会社に対して「未払い賃金を支払ってください」と書面で請求することで、催告の時点から6か月間、時効の完成が猶予されます。

催告は口頭でも有効ですが、証拠として残すために内容証明郵便で行うのが鉄則です。内容証明郵便であれば、「いつ・誰が・誰に・どのような内容を送ったか」を郵便局が証明してくれるため、後日のトラブルを避けられます。

ただし、催告による完成猶予は一度きりです。催告で得た6か月の猶予期間内に、裁判上の請求など確定的な手段をとらなければ、時効は完成してしまいます。催告はあくまで「時間稼ぎ」であり、この間に次の手を打つ必要があります。

裁判上の請求——時効の完成猶予+更新

訴訟の提起、労働審判の申立て、支払督促の申立てなどの裁判上の請求は、手続きが終了するまで時効の完成が猶予されます(民法147条1項)。さらに、確定判決や和解などで権利が確定すれば、そこから新たに時効がリセット(更新)されます。裁判上の請求後の更新後の時効期間は10年です(民法169条)。

債務の承認——会社が認めればリセットされる

会社側が未払い賃金の存在を認めた場合(「確かに支払いが遅れています」など)、その時点で時効が更新されます(民法152条)。未払い賃金の一部を支払った場合も「承認」にあたり得ます。

労働基準監督署への申告

労働基準監督署に未払い賃金について申告すること自体は、法律上は時効の完成猶予・更新の事由にはあたりません。しかし、監督署が会社に対して是正勧告を出し、会社が支払い義務を認めた場合には「承認」として時効が更新される場合があります。また、監督署の指導によって会社側が自主的に未払い分を支払うケースもあるため、有効な手段の一つです。

手段 効果 時効への影響 備考
内容証明郵便で催告 完成猶予(6か月) 一時的に時効を止める 1回のみ有効。行政書士が作成・送付代行可能
訴訟提起・労働審判 完成猶予+更新 権利確定でリセット(10年) 弁護士に依頼するのが一般的
支払督促の申立て 完成猶予+更新 権利確定でリセット 裁判所の書記官による手続き
会社側の債務承認 更新 承認時点でリセット 一部弁済・書面での認諾など
労基署への申告 直接の法的効果なし 間接的に承認を引き出す可能性 是正勧告により自主支払いに至るケースあり

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内容証明郵便で未払い賃金を催告する方法

前のセクションで触れたとおり、催告は内容証明郵便で行うのが実務上の基本です。ここでは催告書に記載すべき項目と送付の流れを確認します。

催告書に記載すべき内容

未払い賃金の催告書(請求書)には、少なくとも以下の事項を明記します。

  1. 差出人の氏名・住所(請求する労働者本人の情報)
  2. 受取人の名称・住所(会社名・代表者名・本店所在地)
  3. 雇用関係の事実(在職期間・職種など)
  4. 未払い賃金の具体的内容(対象期間・金額・種類——基本給、残業代、退職金など)
  5. 支払いの催告(「○年○月○日までに下記口座に振り込むよう請求する」など具体的な期限と方法)
  6. 応じない場合の対応(「期限までにお支払いいただけない場合は法的措置を検討せざるを得ません」など)
  7. 日付・署名

金額については、未払い賃金の総額をできるだけ正確に算出して記載することが望ましいですが、正確な計算が難しい場合は「少なくとも金○○円以上」という形でも催告として有効です。正確な金額の算出が困難なときに催告そのものを先延ばしにすると時効が完成してしまうリスクがあるため、まずは催告で時効を止め、詳細な計算は後から行うという段取りも実務では珍しくありません。

内容証明郵便の送り方

内容証明郵便は、郵便局の窓口またはe内容証明(インターネット)で差し出すことができます。

  • 窓口差出:同じ内容の文書を3通用意(差出人控え・受取人送付分・郵便局保管分)。1枚あたり26行以内・1行20字以内(縦書き)の書式制限あり
  • e内容証明:日本郵便のWebサービスで24時間差出可能。Word形式でアップロードし、書式制限も緩和される

いずれの場合も配達証明を付けて送ることを強くお勧めします。配達証明があれば「相手に届いた日付」が証明されるため、催告の到達時点を客観的に立証できます。

内容証明郵便の書き方について、さらに詳しくは「時効援用の内容証明郵便の書き方|テンプレート付きで解説」で解説しています。時効援用の文脈で書かれた記事ですが、内容証明の基本的な書式や送り方は催告書でも共通です。

会社側から「時効だ」と言われたときの対処法

未払い賃金を請求した際に、会社側が「もう時効だから支払い義務はない」と主張してくることがあります。この場合、安易に諦める必要はありません。以下の点を確認しましょう。

本当に時効が完成しているか

まずは起算点と経過期間を正確に計算します。前述のとおり、賃金の消滅時効は各給料日の翌日から起算されます。会社側の主張する「時効完成日」が誤っている場合や、一部の月分はまだ時効が完成していないケースは実務上珍しくありません。

時効の更新事由がなかったか

時効期間中に会社側が未払い賃金の存在を認める発言・書面を出していた場合や、一部を支払っていた場合は、「承認」による時効の更新が生じている可能性があります。メールや社内文書で「支払いが遅れており申し訳ない」といった記録が残っていないか確認してみてください。

時効の援用が権利濫用にならないか

判例上、信義則に反する時効の援用は権利濫用として認められない場合があります(民法1条2項・3項)。たとえば、会社側が「後で必ず払う」と言い続けて請求を控えさせておきながら、3年経ったところで「時効だ」と主張するような場合です。こうした事情がある場合は、弁護士に相談して法的対応を検討することをお勧めします。

よくある不備・失敗——未払い賃金の請求で気をつけたいポイント

未払い賃金の請求で見落としがちな注意点を整理します。制度を正しく理解していても、手続き上の不備で請求が認められないケースがあるため注意が必要です。

催告後6か月以内に法的措置をとらない

内容証明で催告しただけで安心してしまい、6か月の猶予期間を過ぎてしまうのは最も多い失敗パターンです。催告はあくまで「一時停止」であり、猶予期間内に訴訟・労働審判・支払督促などの手続きを起こす必要があります。

証拠を残さずに口頭で交渉する

会社との交渉を口頭だけで行い、記録を残していないと、後日「そんな話はしていない」と否定されるリスクがあります。交渉の経緯はメール・書面で残し、特に重要な請求は内容証明郵便を利用することが重要です。

タイムカード・給与明細を退職時に確保していない

未払い賃金を立証するには、勤務時間や支給額の記録が不可欠です。退職前にタイムカードのコピー・給与明細・労働契約書・就業規則をできる限り手元に残しておくことが、後の請求をスムーズにします。退職後に会社が記録を開示しない場合は、厚生労働省「確かめよう労働条件」などの相談窓口も活用できます。

行政書士と弁護士の役割を混同する

行政書士は内容証明郵便の作成・送付代行が可能ですが、訴訟の代理や会社との交渉代理はできません(弁護士法72条)。催告後に裁判手続きが必要になった場合は弁護士に依頼する必要があります。また、労働基準監督署への代理申告は社会保険労務士の業務範囲です。それぞれの専門家の役割を正しく理解し、状況に応じて適切な専門家を選ぶことが大切です。

よくある質問

Q. 退職後でも未払い給料を請求できますか?

請求できます。賃金請求権の消滅時効は各給料日の翌日から進行するため、退職したかどうかは時効の成否に影響しません。退職後であっても、消滅時効が完成していない分の未払い賃金は請求可能です。

Q. 2020年3月以前の未払い賃金の時効はどうなりますか?

2020年3月31日以前に支払期日が到来した賃金には旧法(時効2年)が適用されます。2026年現在、旧法の2年はすでに経過しているため、特別な事情(時効の更新事由など)がない限り、2020年3月以前の未払い賃金を請求するのは難しい状況です。

Q. 残業代の未払いがある場合、付加金も請求できますか?

裁判所は、未払い割増賃金と同額の付加金の支払いを会社に命じることができます(労働基準法114条)。ただし、付加金の請求は裁判所への請求が必要で、行政書士が対応できる範囲ではありません。付加金の請求権の除斥期間も「当分の間3年」とされています。

Q. 給料未払いで刑事告訴はできますか?

賃金の未払いは労働基準法24条(賃金全額払いの原則)違反であり、労働基準法120条に基づき30万円以下の罰金が科される可能性があります。悪質なケースでは刑事告訴を検討することもできます。詳しくは「賃金未払いの刑事告訴|告訴状の書き方と手続きを解説」で解説しています。

Q. 内容証明郵便の費用はどのくらいですか?

郵便局窓口から差し出す場合、基本料金110円(定形郵便)+内容証明加算480円+一般書留480円=1,070円が最低費用です。さらに配達証明を付ける場合は+350円で合計1,420円程度となります。2枚以上になる場合は1枚増えるごとに290円が加算されます。行政書士に作成を依頼する場合は、別途作成費用がかかります。

まとめ

未払い給料(賃金)の消滅時効について、重要なポイントを整理します。

  • 賃金の消滅時効は「当分の間3年」(労基法115条・附則143条)。退職金は5年、残業代は賃金と同じ3年
  • 起算点は各給料日の翌日。古い月から順に時効が完成していく
  • 時効を止めるには内容証明郵便による催告(6か月の完成猶予)が最も手軽。ただし猶予期間内に法的措置が必要
  • 退職後でも消滅時効が完成していない分は請求可能
  • 将来的には時効期間が5年に延長される可能性があり、今後の法改正に注意

未払い賃金の請求では、時間が経つほど古い月の分から時効が完成していきます。「もしかしたら請求できるかもしれない」と思ったら、早めに行動を起こすことが何より重要です。

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※ 2026年4月時点の民法・労働基準法に基づく解説です。個別の債務状況や雇用条件により対応が異なる場合があります。具体的な時効成否の判断や訴訟手続きについては、弁護士・社会保険労務士にもご相談ください。

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