結論から言えば、解体工事業の経営事項審査(経審)で評点を伸ばす近道は、「解体工事業の技術者を正しく数えること(Z評点)」「W評点の社会性加点を取りこぼさないこと」「決算前から元請完成工事高と財務を意識すること」の三点に集約されます。経審の総合評定値Pは P=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W という決まった計算式で出るため、自社のどの数値に伸びしろがあるかは事前に試算できます。とりわけ解体工事業は、平成28年の業種新設に伴う技術者要件の経過措置(令和3年6月30日終了)の影響で、技術者の資格区分を誤って申請しているケースが少なくありません。当事務所は行政書士として建設業許可・経審の書類作成と提出代行を担います。技術者要件の適否判断や税務・労務の最終確認は、所管行政庁・税理士・社会保険労務士と連携して進めるのが安全です。
目次
経審とは何か——解体工事業でも避けて通れない理由
経営事項審査(経審)は、国・地方公共団体などが発注する公共工事を元請として直接請け負おうとする建設業者が、必ず受けなければならない客観的事項の審査です(建設業法第27条の23)。解体工事業も建設業許可の29業種の一つであり、公共の解体工事を元請で受注したい場合は経審の受審が前提になります。
審査結果は「審査基準日(原則として直前の決算日)」から1年7か月のあいだ有効です。入札参加資格を切れ目なく維持するには毎年継続して受審する必要があり、1日でも有効期間が切れるとその間は公共工事を元請受注できません。決算後のスケジュール管理が重要です。
なお、500万円(税込)以上の解体工事を請け負うには、そもそも建設業許可(解体工事業)が必要です。建設リサイクル法に基づく「解体工事業者の登録」とは別制度ですのでご注意ください。
総合評定値(P点)の計算式と内訳
経審の最終的な点数である総合評定値Pは、国土交通省が定める次の式で算出されます。
P = 0.25 X1 + 0.15 X2 + 0.20 Y + 0.25 Z + 0.15 W
| 評点 | 内容 | P点への係数 |
|---|---|---|
| X1 | 経営規模(業種別の年間平均完成工事高) | 0.25 |
| X2 | 経営規模(自己資本額・利払前税引前償却前利益) | 0.15 |
| Y | 経営状況(財務分析) | 0.20 |
| Z | 技術力(技術職員数・元請完成工事高) | 0.25 |
| W | その他の審査項目(社会性等) | 0.15 |
係数を見ると、ZとX1がともに0.25で最も大きく、評点アップの効果が高いことが分かります。解体工事業ではX1(解体の完成工事高)とZ(解体の技術者数・元請高)を着実に積み上げることが、Pを押し上げる王道です。
Z評点を伸ばす——解体工事業の技術者を正しく数える
技術力を示すZ評点は、技術職員数の点数(Z1)と元請完成工事高の点数(Z2)から、Z=Z1×0.8+Z2×0.2 で構成されます。なかでもウエイトの大きいZ1は、技術職員ひとりひとりを資格区分に応じて次のように点数化して合計します。
- 1級技術者で監理技術者資格者証の交付を受け、監理技術者講習を受講している者:6点
- 1級技術者(上記以外):5点
- 監理技術者補佐に該当する者(主任技術者要件を満たす1級技士補など):4点
- 登録基幹技能者または国土交通大臣が認定した能力評価基準でレベル4と判定された建設技能者(1級技術者を除く):3点
- 2級技術者または国土交通大臣が認定した能力評価基準でレベル3と判定された建設技能者:2点
- その他の技術者:1点
解体工事業で問題になりやすいのが、「とび・土工工事業」の技術者を解体工事業の技術者とみなす経過措置です。この経過措置は令和3年6月30日をもって終了しました。令和3年7月1日以降、対象の技術者が引き続き解体工事業の営業所技術者等(旧・専任技術者)・監理技術者・主任技術者として扱われ、経審のZ評点でも解体の技術者としてカウントされるには、原則として「登録解体工事講習の修了」または「解体工事に関する1年以上の実務経験」のいずれかが必要です(国土交通省)。
解体工事業の技術者として認められる主な資格には、1級・2級の土木施工管理技士、1級・2級の建築施工管理技士(一定の区分)、技術士(建設部門等)、登録解体工事試験合格者(解体工事施工技士)などがあります。1人を6点・5点で計上できれば、その他技術者(1点)の何倍もの効果になります。資格者証や監理技術者講習修了証の保有状況を棚卸しし、点数の高い区分で正しく申請することが評点アップの第一歩です。
X1・Yを伸ばす——完成工事高と財務の整え方
X1は業種ごとの年間平均完成工事高を点数化したもので、2年平均か3年平均かを選べます。兼業(解体工事業以外)の売上を解体の完成工事高に混ぜることはできないため、工事経歴書・財務諸表の段階で業種ごとに正確に切り分けることが大切です。Yは経営状況分析に基づき、借入の圧縮・自己資本の充実・利益の確保がそのまま点数に反映されます。いずれも決算が締まると数字を動かせないため、決算期を迎える前からの準備が欠かせません。
W評点(社会性等)の加点を取りこぼさない
W評点は企業の社会性を評価する項目の集合体で、取り組み次第で確実に積み上げられる「実は狙い目」の領域です。主な加点項目は次のとおりです。
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用状況(令和5年8月14日以降を審査基準日とする申請で加点対象。令和8年7月1日以降の申請では配点が見直しされ、すべての公共工事で措置を講じた場合は5点、民間を含む全工事で講じた場合は10点となります)
- 建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度(「職人いきいき宣言」)の宣言の有無(令和8年7月1日以降の申請で加点対象・5点。審査基準日が宣言日以降であり、宣言書と誓約書が提出されていることが要件です)
- 建設業退職金共済制度・退職一時金制度・企業年金制度の導入
- 法定外労働災害補償(上乗せ労災)への加入
- 若年技術職員・新規若年技術職員の育成および確保の状況
- 営業年数、防災協定の締結、法令遵守の状況、ISO登録の有無
- 建設機械の保有状況(解体現場で使うバックホウ等が対象。令和8年7月1日以降の申請では不整地運搬車・アスファルト・フィニッシャが加点対象機種に追加)
- えるぼし・くるみん・ユースエール等のワーク・ライフ・バランス認定の取得
解体工事業と相性が良いのは、自社保有のバックホウ等を建設機械として計上する加点と、技能者をCCUS(建設キャリアアップシステム)に登録して就業履歴を蓄積する加点です。何を申請に反映できるかを事前に確認しておくことをおすすめします。
受審の流れと、減点を防ぐチェックポイント
経審は、(1)経営状況分析(登録分析機関へ申請しYの結果通知を受領)→(2)経営規模等評価申請(許可行政庁へX・Z・Wを申請)→(3)総合評定値の請求 という流れで進みます。実務上は、解体の技術者を経過措置終了後の要件を満たさないまま計上してしまう、解体以外の完成工事高を解体に混ぜてしまう、社会保険の証明書類が不足する、CCUSや建設機械の加点を反映し忘れる、といった点で評点を取りこぼしがちです。いずれも事前の書類整備でほぼ防げます。申請直前に慌てるのではなく、決算前から逆算して準備することが評点アップの最大のコツです。
解体工事業の経審・入札参加資格申請サポート
行政書士法人Treeでは、解体工事業を含む建設業許可および経営事項審査について、申請書類の作成と提出代行を行います。具体的には、工事経歴書・財務諸表の建設業会計への組替え、技術職員名簿の資格区分の整理、経営状況分析申請、経営規模等評価申請、総合評定値の請求まで、書面手続を一貫してお手伝いします。技術者要件の適否や税務・労務の最終判断が必要な場面では、所管行政庁・税理士・社会保険労務士と連携し、越権のない形で進めます。
経審に関する料金の目安は、経審スポット159,500円(税込)、経審スタンダード192,500円(税込)、入札ワンストップ220,000円(税込)です(経営状況分析機関への分析手数料・行政手数料等の実費は別途)。詳しくは経営事項審査(経審)代行のご案内をご覧ください。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
解体工事業の経審で評点を上げる要点は、(1)P=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W の式を踏まえ係数の大きいZ・X1を狙うこと、(2)令和3年6月30日に終了した技術者みなしの経過措置を踏まえ解体の技術者を正しい区分で数えること、(3)CCUS・建設機械・社会保険などW評点の加点を取りこぼさないこと、の三点です。経審は決算が締まると数字を動かせないため、決算前からの準備が何より効きます。
解体工事業の経審に関するよくある質問
Q:解体工事業だけでも経審は受けられますか。
A:はい。解体工事業の建設業許可があれば、解体工事業単独でも経審を受審できます。公共の解体工事を元請で受注したい場合は、解体工事業について経審を受けておく必要があります。
Q:とび・土工工事業の技術者は、今も解体工事業の技術者として経審で数えられますか。
A:とび・土工の技術者を解体の技術者とみなす経過措置は令和3年6月30日で終了しています。令和3年7月1日以降は、原則として登録解体工事講習の修了か、解体工事に関する1年以上の実務経験のいずれかを満たさないと、解体工事業の技術者として扱えません。要件の適否は所管行政庁にご確認ください。
Q:評点を上げるのに一番効果が大きい項目はどれですか。
A:P点の計算式ではZ(技術力)とX1(完成工事高)がともに係数0.25で最も大きく、効果が高い項目です。技術者を高い資格区分で正しく計上すること、解体の完成工事高を正確に積み上げることが王道です。
Q:経審の結果はいつまで有効ですか。
A:審査基準日(原則として直前の決算日)から1年7か月です。入札参加資格を切らさないためには、毎年の決算ごとに継続して受審する必要があります。
Q:書類作成や提出代行はどこまでお願いできますか。
A:工事経歴書・財務諸表の作成、技術職員名簿の整理、経営状況分析申請、経営規模等評価申請、総合評定値の請求まで、書面手続を一貫して代行します。技術者要件の判断や税務・労務の最終確認は、行政庁・税理士・社会保険労務士と連携して対応します。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


