「東京から神奈川へ事務所を移す」「東京本店に加えて埼玉へ支店を出す」。同じ県外展開でも、宅建業免許の手続きは同じではありません。判断の軸は、移転・新設した後に、宅建業法上の事務所がどの都道府県にあるかです。
一つの都道府県だけなら知事免許、二つ以上なら国土交通大臣免許が基本。事務所の配置によっては、住所変更の届出だけではなく「免許換え」が必要です。新しいオフィスの契約や開設日を決める前に、現在の免許と変更後の配置を並べてみましょう。
移転先を決めたら、免許換えが必要か確認を
行政書士法人Treeでは、宅建業免許の申請・変更届を承ります。現在の免許番号、本店・支店の所在地、移転・新設・廃止の予定をお知らせください。申請先と必要な書類を確認し、手続きに合わせた見積もりをご案内します。
目次
変更後の事務所配置で、手続きが分かれる
宅地建物取引業法第3条は、事務所を置く都道府県数によって免許行政庁を分けています。第7条は免許換え時の従前の免許の効力、第9条は変更届を定めています。「本店の住所が変わった」という一つの情報だけでは、どの手続きになるか決めきれません。
| 現在と変更後の例 | 基本的な手続きの考え方 |
|---|---|
| 東京知事免許で、東京の事務所を別の東京の場所へ移転 | 同じ知事免許のまま事務所移転の変更届等を確認 |
| 東京の全事務所を廃止し、神奈川だけに事務所を置く | 東京知事免許から神奈川知事免許への免許換え |
| 東京の事務所を残して、埼玉にも事務所を置く | 知事免許から大臣免許への免許換え |
| 大臣免許で複数県の事務所を集約し、東京だけにする | 大臣免許から東京知事免許への免許換え |
| 大臣免許のまま本店を他県へ移し、事務所は引き続き複数県にある | 免許区分は大臣のまま。変更届と管轄の変更を確認 |
知事免許でも、事務所のある県以外の物件を扱うこと自体が直ちに大臣免許の理由になるわけではありません。物件の所在地や顧客の住所ではなく、宅建業法上の事務所の配置が基準です。出張先や、一時的な案内所を全て支店として数えるわけでもありません。
会社登記上の支店と、宅建業の事務所を照合する
会社で「営業拠点」「サテライト」と呼ぶ場所でも、宅建業法上の事務所に当たるかは実態の確認が必要です。名称だけを変えれば事務所ではなくなる、と考えないでください。そこに置く人員、契約を行う権限、継続的な施設の利用などを、申請先へ説明できるようにします。
検討の初期段階では、拠点ごとに所在地、業務内容、責任者、宅建士、開設・閉鎖予定日を一枚にまとめると便利です。そのうえで、宅建業の事務所として扱う拠点を確かめます。賃貸契約と人員配置を別々に進めるより、申請に必要な条件の抜けを見つけやすくなります。
今の免許先への届出と、新しい申請先を確認する
免許換えは、移転先の役所へ書類を出すだけで終わりではありません。東京都の手引では、従前の免許の内容に未届出の変更がある場合、あらかじめ変更届を提出する流れを案内しています。今の名簿に載っている役員・宅建士・事務所と現状が一致しているかを確認してください。
移転先が東京都知事免許になる場合は東京都の手引、他道府県知事免許になる場合は移転先、大臣免許になる場合は本店所在地を管轄する地方整備局等の手引を使います。書類の部数や添付資料を、すべて東京都の方法に合わせてはいけません。
なお、大臣免許の申請等は2024年5月25日から都道府県を経由する事務が廃止されています。東京都に本店がある業者の大臣免許関係手続きは、関東地方整備局へ直接提出する案内です。古い手引の「都庁へ大臣申請を提出」をそのまま使わないようにしましょう。
旧免許の期限と、移転日を別々に管理する
宅建業法第7条では、新たな免許を受けると従前の免許が効力を失うと定めています。また、所定の免許換え申請には同法第3条第4項の規定が準用されます。そのため、申請中に従前の満了日を迎えた場合の扱いは、申請状況と法律上の条件を確認する必要があります。
ここで避けたいのは「申請を出せばどんな状況でも営業が続けられる」という理解です。東京都の手引は、既存免許に十分な有効期間があるか確認するよう案内し、免許換え審査中に期限が経過して拒否となった場合の失効リスクも示しています。書類の提出日、受付、補正、新免許の処分を区別して予定に入れてください。
なお、更新申請中に満了日を迎えた場合の扱いは、宅建業免許の更新期限と申請資料で整理しています。
移転工事が遅れる、宅建士の採用日が変わる、申請後に役員が変わるなど、当初の申請内容から動きがあったときも申請先に確認します。申請中だから予定変更を伝えなくてよいわけではありません。事務所移転の契約日から営業開始まで、必要な確認を残した工程表を作ると進めやすくなります。
事務所・専任宅建士・営業保証をセットで準備する
新しい事務所には、物的な要件だけでなく、人員と営業保証の確認が必要です。内装が完成しても、専任宅建士の勤務体制や営業保証金等の手続きがそろわなければ、予定どおりの営業開始に結び付くとは限りません。
| 確認するもの | 整理しておきたい資料・情報 |
|---|---|
| 現在の免許 | 免許番号、有効期間、申請・変更届の控え |
| 事務所 | 新旧所在地、移転・廃止・設置の予定、平面図、写真、使用権原 |
| 役員・宅建士等 | 変更後の役員、人員配置、勤務先等の変更資料 |
| 営業保証 | 現在の供託又は保証協会利用状況、新事務所・免許換えの手続き |
人数と専任性は専任宅建士の設置要件、資金と加入方法は営業保証金・保証協会の解説で確認できます。免許換えの記事では金額比較を繰り返すより、変更後の事務所配置に合わせてその手続きも必要になるかを見落とさないことが重要です。
よくある質問
知事免許で他県の物件を仲介すると、大臣免許が必要ですか?
物件が他県にあるというだけで決まるわけではありません。免許区分は宅建業法上の事務所を置く都道府県数を基準に確認します。
本店だけ他県へ移し、元の県に支店を残す場合は?
変更後も二つ以上の都道府県に宅建業法上の事務所があるなら、知事免許から大臣免許への免許換えを確認します。全事務所を一つの県へ移す場合とは区別してください。
免許換えをすると、免許番号はそのままですか?
東京都の手引では、新しい番号となり、括弧内の更新数字も1になります。免許後の標識やウェブサイト等の表示変更も予定に入れてください。
大臣免許の申請は、都庁を経由しますか?
2024年5月25日から経由事務が廃止されています。東京都に本店がある場合は、関東地方整備局への直接提出等を現行案内で確認します。
免許換えの申請中なら、旧免許の期限を気にしなくてよいですか?
いいえ。所定の申請では満了後の効力に関する規定が準用されますが、拒否となった場合の失効などを含め、条件と申請状況の確認が必要です。旧免許の残存期間を確かめ、期限直前まで準備を延ばさないでください。
同じ県の中で移転する場合にも免許換えですか?
同じ知事免許の区域内だけで事務所を移す場合は、通常、事務所移転の変更届等を確認します。免許行政庁が変わる免許換えとは別です。
事務所展開に必要な申請を、まとめて整理する
Treeの宅建免許の変更届は33,000円(税込)から。免許換えは申請先、事務所数、変更内容を確認して個別に見積もります。知事免許の新規申請66,000円・大臣免許の新規申請121,000円という通常プランを、そのまま全ての免許換えに適用すると約束するものではありません。
東京都知事への免許換え申請手数料は33,000円、大臣免許を新たに受ける際の登録免許税は90,000円です。これらの公的費用や書類取得費等はTreeの報酬と別です。移転先の手数料・納付方法も申請先に合わせて確認します。
まとめ
免許換えの判断は、変更後の事務所配置から始めます。一県のみから複数県へ、複数県から一県へ、ある県だけから別の県だけへ移る場合は、免許行政庁が変わる手続きを確認してください。県外物件を扱うことと、県外に事務所を置くことは別です。
従前の免許先への変更届と、新しい申請先の準備を分けて進めます。未届出の変更を整理し、旧免許の期限、事務所・専任宅建士・営業保証の予定を工程表に並べれば、開設日だけが先に決まる事態を防ぎやすくなります。
移転や支店追加が決まったら、宅建免許の申請・変更届を早めにご相談ください。Treeでは現在と変更後の体制を伺い、必要な書類と費用をご案内します。事務所の場所と専任宅建士の配置も、変更前後で分かる資料をそろえましょう。
根拠・参考資料
2026年10月2日確認。申請先により提出方法等が異なります。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。


