公開日:2026年5月11日
不動産業(宅地建物取引業)を営むためには、宅地建物取引業法(宅建業法)3条の免許取得とともに、各事務所への「専任の宅地建物取引士(専任宅建士)」の設置が必須です。宅建業法31条の3は、業務に従事する者の数に対して国土交通省令で定める数以上の成年の専任宅建士を置くことを義務づけており、この「5人に1人ルール」と「従業者数の数え方」は、宅建業免許申請・変更届出・実務運用の最重要論点となります。事務員・経理担当・パート従業員・派遣社員・代表取締役の取扱いなど、従業者の範囲認定で誤りがあると、専任宅建士の補充義務違反・免許の取消事由にも該当しかねません。本記事では、宅建業法31条の3に基づく専任宅建士の5人に1人ルールと従業者数の数え方を解説します。
本記事の結論:
- 宅建業法31条の3・宅建業法施行規則15条の5の3により、事務所ごとに業務従事者5人に1人以上(5分の1以上)の成年専任宅建士の設置が必須で、事務所複数の場合は各事務所ごとに独立計算します(本店・支店間の合算不可)。
- 「業務に従事する者」の範囲は、宅建業専業の事業者か兼業事業者かで整理が異なります。宅建業専業の場合は代表者・常勤役員・営業職・事務職・経理職など広く含まれます。兼業の場合は宅建業の業務に従事する者を中心に算入します。
- 専任宅建士の人数が基準を下回った場合は宅建業法31条の3第3項により2週間以内に必要な措置を講じ、専任宅建士の変更があった場合は宅建業法9条に基づき30日以内に変更届出を提出する必要があります。両者は別の義務です。
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目次
根拠法令
- 宅地建物取引業法3条(免許)・5条(免許の基準)・8条(免許証)
- 宅建業法31条の3(業務処理の原則・専任の宅地建物取引士の設置義務)
- 宅建業法施行規則15条の5の3(法第31条の3第1項の国土交通省令で定める数)
- 宅建業法施行規則15条の5の2(事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所)
- 宅建業法9条(変更の届出、専任宅建士の変更も含む)・50条2項(業務開始の届出)・66条(免許の取消し)
- 宅建業法施行令第2条の2(政令で定める使用人)
- 「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(国土交通省)
- 宅建業法22条の2(宅地建物取引士証の交付)・35条(重要事項説明)
- 2025年1月・4月施行 宅建業法施行規則改正(従業者名簿の記載事項削減等)
1. 専任の宅地建物取引士の設置義務(5人に1人ルール)
宅建業法31条の3第1項は、宅建業者が事務所ごとに、業務に従事する者の数に対して国土交通省令で定める数以上の成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならないと定めます。宅建業法施行規則15条の5の3は、「事務所にあつては当該事務所において宅地建物取引業者の業務に従事する者の数に対する同項に規定する宅地建物取引士…の数の割合が5分の1以上となる数、前条に規定する場所にあつては1以上とする」と規定しており、これが実務上「5人に1人ルール」と呼ばれる根拠条文です。事務所の業務従事者が5名以下であれば最低1名、6〜10名であれば2名、11〜15名であれば3名と、5名増えるごとに1名ずつ専任宅建士の必要数が増加します。事務所複数の場合は、各事務所ごとに独立して計算します(本店・支店間での合算は不可)。なお、専任宅建士自身も宅建業に従事する者であるため、分母の従業者数に含めて計算します。
1-2. 事務所以外の場所(案内所等)への専任宅建士設置義務
宅建業法31条の3第1項は「事務所その他国土交通省令で定める場所」を対象としており、宅建業法施行規則15条の5の2は事務所以外で専任宅建士を置くべき場所を4類型規定しています:(a)継続的に業務を行う施設、(b)10区画以上の一団の宅地または10戸以上の一団の建物を分譲する場合の案内所、(c)他の宅建業者が分譲する10区画以上の宅地・10戸以上の建物の代理・媒介をする案内所、(d)展示会等の催しをする場所のうち、契約締結・申込受付をする場所。これらの場所には1名以上の専任宅建士の設置が義務付けられています。また、宅建業法50条2項により、これらの案内所等での業務開始の10日前までに免許権者および所在地の都道府県知事へ届出が必要となります。
2. 従業者数の数え方|「業務に従事する者」の範囲
「業務に従事する者」(従業者)の範囲は、宅建業のみを営む事業者か、他業種を兼業する事業者かで整理が異なります。
2-1. 宅建業専業の事業者の場合
宅建業のみを営む場合は、原則として代表者、非常勤を除く役員、営業職・事務職・経理職などの従業員等が広く含まれます。国土交通省の解釈・運用の考え方によれば、受付・秘書・運転手等も原則として従業者に含まれ、宅地建物取引に直接的な関係が乏しい業務に臨時的に従事する者などのみが除外されます。
2-2. 兼業事業者の場合
建設業を主として宅建業を副次的に営む場合や、他業種を兼業する事業者では、宅建業を担当する役員や宅建業の業務に従事する者を中心に算入します。宅建業以外の業務に専ら従事する者は除外され、一般管理部門の職員も宅建業従事者に該当しないとされる運用が一般的です(広島県等の運用)。
2-3. 除外される者
除外されるのは、一時的に来訪する者、宅建業以外の業務に専ら従事する者、宅地建物取引に直接的な関係が乏しい業務に臨時的に従事する者などです。役員のなかでも、社外取締役・非常勤監査役は5人に1人計算の従業者算入から除外されます。
3. パート・派遣社員・契約社員の取扱い
非正規雇用者の取扱いは、雇用形態だけではなく「専ら宅建業に従事しているか」「常勤的に勤務しているか」「継続性があるか」の実態判断で行います。パート・アルバイトでも、週の大半を宅建業の業務に従事し、勤務時間が常勤者に近い場合は従業者に算入されます。一方、週1〜2日程度の短時間勤務で臨時的・補助的な勤務にとどまる場合は、免許権者の運用確認が必要です。派遣社員は、派遣元との雇用契約上の地位ではなく、派遣先(宅建業者)での実際の業務従事状況で判断し、専ら宅建業の業務に従事していれば算入されます。契約社員・嘱託社員も同様です。実務上は、社会保険加入の有無や月の勤務時間ではなく、業務の実態に基づき個別判断します。
4. 役員(代表取締役・取締役)・政令第2条の2で定める使用人の取扱い
役員のなかで、代表取締役および常勤の取締役で宅建業に従事する者は、原則として従業者に算入されます。社外取締役・非常勤の取締役・非常勤監査役は5人に1人計算の従業者数の分母から除外されますが、変更届出の対象(宅建業法9条)としては監査役・非常勤取締役も含まれる点に注意が必要です。実務上の論点として、代表取締役自身が専任宅建士を兼ねる場合、宅建業法31条の3第2項により当該役員が自ら主として業務に従事する事務所等についてはその者を専任宅建士とみなすとされており、(1)専任宅建士としてカウントされ、かつ、(2)従業者数(5人に1人計算の分母)にも算入されます。なお、宅建業免許上の重要登場人物として「政令第2条の2で定める使用人」(支店長・営業所長等、代表者の代わりに契約権限を行使する者)があり、本店代表者が非常勤の場合や支店設置時には設置が必要です。当該使用人の選任・変更も宅建業法9条の変更届出対象となります。
5. 専任宅建士の専任性|常勤性・専従性・兼務可否の考え方
「専任」の宅建士とは、宅建業者の事務所に常勤して、専ら宅建業の業務に従事する宅地建物取引士を指します。常勤性は、原則として宅建業者の通常の勤務時間を当該事務所の業務に従事しているかにより判断されます。専任性は、原則として専ら当該事務所に係る宅建業の業務に従事しているかにより判断されます。
5-2. テレワーク・在宅勤務時の常勤性
国土交通省の解釈・運用の考え方によれば、ITの活用等により適切に業務を行える体制が確保されている場合には、事務所以外で通常の勤務時間を勤務する場合も常勤性に含まれるとされています。東京都の審査チェックポイント等でも、テレワーク勤務時の事務所への出勤頻度、居所と事務所所在地の関係、他の事業所との兼務がないことの立証方法が確認対象となっています。
5-3. 兼務可否
兼業事務所で一時的に宅建業務が行われていない間に他業種の業務に従事する場合や、賃貸住宅管理業の業務管理者との兼務など、業務量や体制によって専任性が認められる場合もあります。一方、他社勤務、他事務所の専任者、専任を要する他資格者との兼務は、専任性を否定される可能性があるため個別確認が必要です。違反例として、形式上は事務所登録されているが実態は別事業所に勤務している「ペーパー専任」が問題視されており、宅建業法65条の指示処分・66条の免許取消の対象となります。
6. 専任宅建士が欠員になった場合|2週間以内の補充・30日以内の変更届
専任宅建士の人数が基準を下回った場合、宅建業者は宅建業法31条の3第3項により、2週間以内に必要数を満たすための措置を講じる必要があります。また、専任宅建士の退任・就任、役員、事務所等に変更があった場合は、宅建業法9条に基づき、変更があった日から30日以内に変更届出を提出します。2週間以内の補充義務と30日以内の変更届出義務は、別の義務として整理する必要があります。
6-2. 補充措置の選択肢
補充措置の選択肢は、(1)社内の宅建士を専任宅建士として就任させる、(2)外部から宅建士を雇用して専任に登録する、(3)宅建業務に従事する者の配置・業務分担を実態として見直し、必要数を満たす体制にする、(4)事務所の一時休止・廃止等を検討する、などです。単に従業者名簿上の人数を減らすだけでは足りず、実際の勤務実態と整合している必要があります。届出を怠ると、業務改善命令・指示処分・免許取消の対象となります。
6-3. 宅建業者の主な期限一覧
- 専任宅建士欠員時の補充措置:2週間以内(宅建業法31条の3第3項)
- 宅建業者名簿登載事項の変更届出:30日以内(宅建業法9条)
- 案内所等の50条2項届出:業務開始10日前まで(宅建業法50条2項)
- 宅建業免許更新申請:有効期間満了の90日前から30日前まで
7. 宅建業免許申請時の専任宅建士の証明
宅建業免許の新規申請・更新申請時には、専任宅建士の在籍を証明する書類の添付が必要です。具体的には、(1)専任宅建士の宅地建物取引士証の写し、(2)専任宅建士の常勤性を立証する書類(資格確認書・資格情報のお知らせ、雇用証明書、賃金台帳、出勤簿、住民票等、免許権者が求める資料)、(3)専任の宅地建物取引士設置証明書(代表者が一括して誓約する書面、宅建業法31条の3第1項適合の証明)、(4)従業者名簿等を提出します。なお、2025年4月1日施行の宅建業法施行規則改正により、従業者名簿の記載事項から生年月日・住所・性別が削除されているほか、宅建業者票の様式変更・レインズ登録事項追加(囲い込み防止)等の改正も施行済みです。新規申請では事務所の写真・賃貸借契約書(事務所所在地の確認)も必要です。免許申請から免許通知までの処理期間は、免許権者、申請先、補正の有無、審査状況により異なりますが、一般に知事免許より大臣免許の方が時間を要するため、開業予定日から逆算して余裕をもって準備する必要があります。免許通知後も、営業保証金の供託または保証協会加入等の手続が完了するまで営業開始できない点に注意が必要です。
業務範囲の整理
行政書士業務(Treeで対応可能)
- 宅地建物取引業免許の新規申請(知事免許・大臣免許)
- 5年ごとの宅建業免許更新申請
- 変更届出(事務所新設・専任宅建士変更・代表者変更・政令第2条の2で定める使用人変更等)
- 事務所要件・専任宅建士要件の事前確認
- 宅建業者票・報酬額表等の事務所掲示物の準備、従業者名簿・帳簿等の備付け方法の確認
- 営業保証金供託の手続案内・保証協会加入の案内
- 案内所等の50条2項届出
業務範囲外(提携専門家をご紹介)
- 宅地建物取引士の登録申請・宅建士証交付申請(本人が行うのが一般的。書類作成・提出支援は運用確認が必要)
- 宅建業法違反による行政処分の不服申立て・取消訴訟(弁護士業務)
- 不動産取引のトラブル対応・損害賠償請求(弁護士業務)
- 宅建業者の法人税・消費税申告(税理士業務)
- 不動産登記(司法書士業務)
- 労務管理・社会保険手続(社会保険労務士業務)
FAQ|よくあるご質問
Q1. 5人ぴったりの場合、専任宅建士は何名必要ですか。
A. 従業者5名であれば1名で足ります。6名になった時点で2名必要となります。必要数は「業務に従事する者の数を5で除して切り上げた数以上」で計算します。なお、専任宅建士自身も宅建業に従事する者であるため、分母の従業者数に含めて計算します。
Q2. 代表取締役1人の会社で代表者が専任宅建士になれますか。
A. 可能です。1人代表の場合、代表者本人が宅建士登録を受けており、当該事務所に常勤し、主として宅建業に従事する実態があれば、宅建業法31条の3第2項により自身を専任宅建士として登録できます。ただし、他法人の常勤役員、他事務所の専任者、遠方居住、別事業への主たる従事などがある場合は、常勤性・専任性を個別に確認する必要があります。
Q3. 兼業(不動産以外の事業)の従業員はカウントしますか。
A. 専ら宅建業以外の業務に従事する者は従業者から除外されます。兼業の業務(建設業・コンサル等)に専従の社員は宅建業の従業者数にカウントされません。一般管理部門の職員も宅建業従事者に該当しないとされる運用が一般的です。両業務に関与する社員の取扱いは個別判断となります。
Q4. 派遣社員も従業者に含めますか。
A. 派遣社員でも、派遣先(宅建業者)の事務所で専ら宅建業の業務に従事し、常勤的に勤務している場合は従業者に算入します。雇用形態ではなく実態(業務従事の内容・継続性・勤務時間等)で判断します。
Q5. 専任宅建士の欠員発生から2週間で補充できなかった場合は。
A. 宅建業法31条の3第3項違反となり、業務改善命令・指示処分の対象となります。最悪の場合、免許取消事由(宅建業法66条)に該当します。さらに専任宅建士不在の事務所では、重要事項説明(宅建業法35条)の実施に支障が生じ、事実上の業務停止に近い状態となります。欠員時は休業届の提出または事務所閉鎖等の対応も検討が必要で、人材紹介サービスや業界ネットワークを通じた採用ルートを平時から確保しておくことが重要です。
Q6. 5人に1人ルールは事務所合計ですか、各事務所ごとですか。
A. 各事務所ごとに独立して判断します。本店・支店をまたいだ専任宅建士の合算配置は認められず、各事務所で必要数を確保する必要があります。また、施行規則15条の5の2の案内所等(10区画以上の宅地分譲案内所等)にも1名以上の専任宅建士設置が必要です。
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まとめ
宅地建物取引業免許における5人に1人ルール(宅建業法31条の3・施行規則15条の5の3)は、事務所ごとの業務従事者数に応じた専任宅建士の最低人数を定める基本ルールで、宅建業の事務所運営の根幹となる要件です。「業務に従事する者」の範囲は、宅建業専業か兼業かで整理が異なり、また雇用形態ではなく実態(専ら宅建業に従事しているか・常勤的に勤務しているか)で判断するため、パート・派遣・役員・政令第2条の2で定める使用人等の取扱いに迷うケースが多く発生します。専任宅建士の人数が基準を下回った場合は2週間以内の補充措置、変更があった場合は30日以内の変更届出が必要で、両者は別の義務です。テレワーク勤務時の常勤性・他資格との兼務可否は最新の解釈運用に従って個別確認します。Treeでは宅建業免許の新規・更新・変更届出を支援し、専任要件の事前確認から事務所掲示物の準備まで、宅建業者の運営をサポートします。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。


