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結論から言えば、業務上横領は親告罪ではないため告訴がなくても捜査は可能ですが、告訴状の提出が捜査開始の最も確実な手段です。会社の金銭を従業員が着服した場合、被害届だけでは警察が積極的に動かないケースも多く、刑事訴訟法第242条に基づき捜査義務が生じる告訴状の提出が有効です。本記事では、横領・業務上横領の告訴状の書き方と提出手続きを解説します。
「従業員の横領が発覚したが、どう対応すべきかわからない」「告訴状を出したいが書き方がわからない」という方は、行政書士法人Treeにご相談ください。告訴状作成の専門家が対応いたします。相談は何度でも無料・全国対応です。
目次
横領罪・業務上横領罪の基礎知識
告訴状を作成する前提として、横領罪と業務上横領罪の違いを正確に理解しておく必要があります。両罪は「他人の物を自分のものにする」という点では共通していますが、主体や法定刑が異なります。
横領罪(刑法第252条)と業務上横領罪(刑法第253条)の違い
| 比較項目 | 横領罪(刑法第252条) | 業務上横領罪(刑法第253条) |
|---|---|---|
| 主体 | 他人の物を占有する者 | 業務上他人の物を占有する者 |
| 「業務」の意味 | ― | 社会生活上の地位に基づき反復継続して行う事務 |
| 典型例 | 知人から預かった金銭の着服 | 経理担当者による会社資金の着服 |
| 法定刑 | 5年以下の懲役 | 10年以下の懲役 |
| 罰金刑 | なし(懲役のみ) | なし(懲役のみ) |
| 親告罪か | 非親告罪 | 非親告罪 |
| 未遂処罰 | なし | なし |
会社の従業員が業務として管理している金銭や物品を着服した場合は、通常業務上横領罪(刑法第253条)が適用されます。経理担当者、営業担当者(集金業務)、倉庫管理者などが典型的な主体です。なお、横領罪・業務上横領罪には罰金刑がなく懲役刑のみである点は、告訴の深刻さを示しています。
量刑の目安
業務上横領罪の量刑は、被害金額・期間・弁済の有無・動機などによって大きく異なります。一般的な傾向として、被害額が数百万円程度の場合は執行猶予付き判決となるケースがある一方、被害額が数千万円以上になると実刑判決の可能性が高まります。示談の成立や被害弁償の有無も量刑に大きく影響します。
公訴時効
横領罪・業務上横領罪の公訴時効は以下のとおりです(刑事訴訟法第250条)。
- 横領罪(法定刑5年以下の懲役):公訴時効 5年
- 業務上横領罪(法定刑10年以下の懲役):公訴時効 7年
時効の起算点は犯罪行為が終わった時点です。継続的に横領が行われていた場合、最後の横領行為の時点から起算します。長期間にわたる横領では、古い行為から順に時効が完成していくため、被害を発見した段階で速やかに告訴手続きを進めることが重要です。
横領の告訴状の書き方|記載すべき4つの項目
告訴状には法定の書式はありませんが、捜査機関に受理されるためには必要な情報を過不足なく記載する必要があります。横領事案では特に「犯罪事実」の記述が受理の可否を左右します。
1. 告訴人の情報(会社名・代表者・住所)
法人が告訴人となる場合は、以下の情報を記載します。
- 法人名(正式名称)
- 本店所在地
- 代表者の肩書と氏名(「代表取締役 ○○○○」等)
- 代表者印(法人実印)の押印
- 連絡先電話番号
告訴権者は被害者である法人自身であり、代表者が法人を代表して告訴状に署名・押印します。なお、代理人弁護士が告訴する場合は委任状の添付が必要です。
2. 被告訴人の情報
横領を行った従業員の氏名・住所・生年月日・職業(元職を含む)を記載します。会社の従業員による横領事案では通常、被告訴人の特定に困難はありませんが、退職済みの場合は最後に把握している住所を記載し、「現住所不詳の可能性あり」と付記します。
3. 犯罪事実(日時・場所・方法・被害金額を具体的に)
告訴状で最も重要な部分です。業務上横領の犯罪事実は、以下の要素を含めて具体的に記述します。
- 被告訴人の立場・業務内容:「被告訴人は、告訴人会社の経理部に所属し、業務として会社資金の管理を担当していた者であるが」
- 横領の日時:「令和○年○月○日頃から令和○年○月○日頃までの間」
- 横領の方法:「会社名義の○○銀行○○支店の預金口座から、被告訴人名義の口座に○回にわたり振替送金する方法により」
- 被害金額:「合計金○○○万円を横領した」
- 業務上の占有:被告訴人が業務として金銭等を管理していた事実を明記
横領が複数回にわたる場合は、個別の行為を時系列で列挙するか、「別紙一覧表のとおり」として明細を添付する方法があります。被害額が大きい事案では、後者の方が整理された印象を与え、捜査機関の理解を得やすくなります。
4. 証拠資料の一覧
横領事案の告訴では、証拠の充実度が受理を左右します。以下のような資料を添付します。
| 証拠の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 金銭の流れを示すもの | 銀行口座の取引履歴、振込明細書、出金伝票 |
| 不正行為を示すもの | 改ざんされた帳簿、架空請求書、偽造された領収書 |
| 業務上の占有を示すもの | 雇用契約書、職務分掌規程、組織図 |
| 社内調査の結果 | 調査報告書、本人の始末書・自認書、面談記録 |
証拠は原本ではなくコピーを添付し、原本は会社側で保管してください。また、本人が横領を認めた場合の自認書や始末書は、任意に作成されたものであることが証拠能力の観点から重要です。
告訴状の基本的な構成について詳しくは「告訴状の書き方ガイド|構成・記載例・提出先を行政書士が解説」も参考にしてください。
告訴状を提出する際の手続き
横領が発覚してから告訴状を提出するまでには、段階的な準備が必要です。闇雲に告訴状を提出しても受理されないことがあるため、以下の手順で進めます。
Step 1: 社内調査・証拠の収集
横領の疑いが生じた段階で、まず社内調査を実施し、証拠を確保します。この段階では被告訴人に察知されないよう慎重に進めることが重要です。会計帳簿・銀行口座の取引履歴・伝票類を確認し、不正な出金の有無を洗い出します。必要に応じて、外部の公認会計士や弁護士に調査を依頼することも検討してください。本人への事情聴取は、証拠を確保した後に行うのが鉄則です。先に聴取すると証拠隠滅のリスクがあります。
Step 2: 告訴状の作成
証拠が揃った段階で告訴状を作成します。前述の4つの項目(告訴人情報・被告訴人情報・犯罪事実・証拠一覧)を漏れなく記載します。犯罪事実の記述は、e-Gov法令検索で刑法第253条の条文を確認しながら、構成要件に対応した記述になっているかを確認してください。
Step 3: 管轄の警察署または検察庁へ提出
告訴状は犯罪地(会社の所在地)または被告訴人の住所地を管轄する警察署の刑事課に持参するのが一般的です(刑事訴訟法第241条第1項)。事前に電話で相談窓口に連絡し、持参する旨を伝えておくとスムーズです。告訴状は2部用意し、1部に受付印を押してもらい控えとして保管します。
警察で受理されない場合は、検察庁に直接提出する方法もあります。受理されない原因と対策については「告訴状が受理されない5つの理由と対策」で解説しています。
Step 4: 告訴受理後の流れ
告訴が受理されると、捜査機関は捜査を開始します。刑事訴訟法第242条により、司法警察員は告訴を受けた場合は速やかに書類・証拠物を検察官に送付する義務があります。その後の一般的な流れは以下のとおりです。
- 警察による被告訴人の任意の事情聴取(出頭要請)
- 関係者への聞き取り・裏付け捜査
- 必要に応じて被告訴人の逮捕・勾留
- 検察官への事件送致(書類送検)
- 検察官による起訴・不起訴の判断
告訴人には処分結果の通知がなされます(刑事訴訟法第260条・第261条)。不起訴処分の場合は理由の告知を請求することも可能です。
告訴状の作成に不安がある方へ
横領事案の告訴状は、犯罪事実の記載や証拠の整理に専門知識が求められます。行政書士法人Treeでは、告訴状作成の専門家が受理されやすい書面を作成いたします。
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告訴前に検討すべきポイント
横領事案では、告訴(刑事手続き)だけでなく、民事上の対応や労務上の対応も同時に検討する必要があります。これらは互いに影響し合うため、全体を見据えた判断が求められます。
示談交渉との比較
会社によっては、刑事告訴よりも示談による被害回復を優先するケースがあります。告訴を行うと社内外に横領の事実が知れ渡る可能性があるため、風評リスクを考慮して示談を選ぶ企業も少なくありません。一方で、示談だけでは再発防止の抑止力として不十分との判断から、あえて告訴に踏み切る企業もあります。なお、告訴を条件に示談金を釣り上げる行為は恐喝に該当するおそれがありますので、交渉の進め方には注意が必要です。
損害賠償請求(民事)との並行
刑事の告訴とは別に、横領された金銭の返還を求める民事の損害賠償請求を並行して行うことが可能です。不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、被害者が損害および加害者を知った時から3年(民法第724条第1号)です。刑事告訴を行うことで加害者に対する心理的プレッシャーとなり、民事での弁済交渉が進みやすくなる場合もあります。
懲戒解雇との関係
横領を行った従業員に対しては、通常懲戒解雇の対象となります。ただし、懲戒解雇を先に行うと本人との接触が困難になり、証拠収集や事情聴取に支障が出る場合があります。告訴・損害賠償・懲戒処分の順序とタイミングは、事案の内容に応じて弁護士と相談のうえ決定することが望ましいでしょう。就業規則に横領に関する懲戒規定が整備されているかの確認も重要です。
よくある質問
Q. 横領は親告罪ですか?告訴しなくても処罰されますか?
横領罪・業務上横領罪はいずれも非親告罪です。告訴がなくても検察官は起訴できますが、実務上は被害者からの告訴がないと捜査機関が積極的に動くことは稀です。確実に刑事手続きを進めるためには、告訴状を作成して提出することが重要です。
Q. 横領額が少額でも告訴できますか?
法律上、横領額に関する告訴の制限はなく、少額でも告訴は可能です。ただし、被害額が極めて少額の場合は捜査機関が受理に消極的な傾向があります。その場合でも犯罪事実と証拠が明確であれば受理される可能性はありますので、まずは告訴状を整えて提出することが大切です。
Q. 横領した従業員が全額弁済した場合でも告訴できますか?
はい。被害が弁済されても犯罪事実がなくなるわけではないため、告訴は可能です。ただし、全額弁済の事実は検察官の起訴・不起訴判断や裁判所の量刑において被告訴人に有利な事情として考慮されます。弁済と引き換えに告訴を行わない旨の合意(示談)をすることも実務上は多くあります。
Q. 告訴と告発の違いは何ですか?
告訴は犯罪の被害者またはその法定代理人が行うもの(刑事訴訟法第230条)、告発は被害者以外の第三者が行うもの(同第239条第1項)です。横領事案では被害者である会社(代表者)が行うため「告訴」となります。詳しくは「告訴と告発の違いとは?誰が・どんな場合に提出できるかを解説」をご覧ください。
まとめ
- 会社の従業員による横領は通常業務上横領罪(刑法第253条・10年以下の懲役)に該当する
- 告訴状には告訴人情報・被告訴人情報・犯罪事実・証拠一覧の4項目を記載する
- 犯罪事実では「業務上の占有」と「横領行為の具体的な日時・方法・金額」を明確にする
- 告訴前に社内調査と証拠確保を十分に行うことが受理の鍵
- 刑事告訴と並行して民事の損害賠償請求や懲戒処分も検討する
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| サービス | 料金 |
|---|---|
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