詐欺被害に遭ったとき、警察に被害届を出しただけでは捜査が進まないケースが少なくありません。確実に刑事事件として捜査を求めるには、刑法第246条(詐欺罪)に基づく告訴状を作成し、管轄の警察署に提出する方法が有効です。告訴状が受理されると捜査機関には捜査義務が生じるため(刑事訴訟法第242条)、被害届よりも強い法的効果があります。この記事では、詐欺被害の告訴状の書き方と記載のポイントを解説します。
「告訴状を書きたいが何を書けばいいかわからない」「警察に被害届を出したが動いてくれない」という方は、行政書士法人Treeにご相談ください。告訴状の作成を代行いたします。相談は何度でも無料です。
目次
詐欺罪(刑法第246条)の構成要件
告訴状を作成するにあたり、まず詐欺罪がどのような場合に成立するかを理解しておく必要があります。詐欺罪は以下の4つの要素がすべて揃った場合に成立します。
| 構成要件 | 内容 | 告訴状への記載ポイント |
|---|---|---|
| 1. 欺罔行為(ぎもうこうい) | 相手を騙す行為(虚偽の事実を告げる等) | 被告訴人がどのような嘘をついたか具体的に記載 |
| 2. 錯誤 | 被害者が騙されて誤った認識を持つこと | 嘘を信じた経緯を記載 |
| 3. 処分行為 | 誤った認識に基づいて財産を交付すること | 金銭の振込日・金額・方法を明記 |
| 4. 財産的損害 | 被害者に財産上の損害が生じること | 被害総額を明示 |
これらの要素が時系列で因果関係をもってつながっていることが重要です。告訴状では、この流れを具体的に「告訴の事実」として記述します。
詐欺被害の告訴状の構成
告訴状には法定の書式はありませんが、捜査機関に受理されやすい構成があります。以下の項目を順に記載します。
1. 表題・宛先
「告訴状」と表題を記載し、宛先は被告訴人の住所地を管轄する○○警察署長 殿とします(行政書士が作成する告訴状は警察署長宛てのものです)。
2. 告訴人(被害者)の情報
氏名・住所・生年月日・職業・連絡先を記載します。法人が被害者の場合は、法人名・代表者名・所在地を記載します。
3. 被告訴人(加害者)の情報
氏名・住所が判明している場合はそのまま記載します。氏名不詳の場合でも「被告訴人 氏名不詳(○○と名乗る人物)」として告訴は可能です。振り込め詐欺やネット詐欺では加害者が特定できないケースも多く、その場合は判明している情報(使用された口座番号、電話番号、メールアドレス、SNSアカウント等)をできる限り記載します。
4. 告訴の趣旨
「被告訴人の下記行為は刑法第246条第1項(詐欺罪)に該当すると思料されるので、捜査の上、厳重に処罰されたく告訴いたします。」と記載します。
5. 告訴の事実(最重要)
詐欺の経緯を5W1H(いつ・どこで・誰が・誰に対して・何をしたか・どのように)で具体的に記述します。構成要件(欺罔〜錯誤〜処分行為〜損害)の流れが明確になるよう、時系列で整理します。
6. 告訴に至る経緯・証拠の説明
被害発覚の経緯、返金交渉の経過、被害届の提出状況などを補足します。添付する証拠の一覧もここに記載します。
告訴状に添付すべき証拠
告訴状の受理を確実にするためには、証拠を整理して添付することが重要です。詐欺被害の場合、以下のような資料が証拠になります。
| 証拠の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 金銭の授受を示すもの | 振込明細書、通帳のコピー、領収書、契約書 |
| 欺罔行為を示すもの | メール・LINE・SNSのやり取り、パンフレット、録音データ |
| 虚偽であることを示すもの | 会社登記簿(実在しない会社)、金融庁の無登録業者リスト |
| 被害の経緯を示すもの | 時系列の経緯書、返金交渉の記録 |
証拠は原本ではなくコピーを添付し、原本は手元に保管してください。捜査機関から原本の提示を求められた場合に備えておきます。
告訴状の提出先と提出方法
提出先の選択
告訴状は警察署または検察庁に提出できます(刑事訴訟法第241条第1項)。一般的には、被害者の住所地または犯罪地を管轄する警察署の刑事課(知能犯係)に持参するケースが多いです。警察で受理されない場合は、検察庁に直接提出する方法もあります(検察庁宛ての告訴状の作成は司法書士・弁護士の業務で、行政書士は作成できません)。
提出時の注意点
- 事前に警察署に電話で相談し、持参する旨を伝えておくとスムーズ
- 告訴状は2部用意する(1部は受付印を押してもらい控えとして保管)
- 口頭での告訴も法律上は可能だが、書面の方が正確に記録が残る
- 郵送での提出も可能(配達証明付き書留郵便を推奨)
告訴が受理されない場合の対処法
実務上、警察署の窓口で告訴状の受理を渋られるケースがあります。しかし、刑事訴訟法第230条に基づく告訴は被害者の権利であり、捜査機関には正当な理由なく受理を拒否する権限はありません(犯罪捜査規範第63条)。受理されない場合は以下の対応を検討してください。
- 告訴状の内容を見直し、構成要件に対応した記述を充実させる
- 証拠を追加・整理して再度持参する
- 検察庁に直接提出する
- 公安委員会に苦情を申し出る(警察法第79条)
- 弁護士または行政書士に告訴状の作成を依頼する
告訴状が受理されない原因と対策については「告訴状が受理されない5つの理由と対策」で詳しく解説しています。
よくある質問
Q. 詐欺の告訴に期限(時効)はありますか?
詐欺罪の公訴時効は7年です(刑事訴訟法第250条第2項第4号)。告訴自体にはこの公訴時効の制限はありませんが、時効が完成すると検察官が起訴できなくなるため、実質的に告訴の意味がなくなります。被害に気づいたら早めに対応することが重要です。
Q. 民事の損害賠償請求と告訴は同時にできますか?
はい。刑事告訴(告訴状の提出)と民事の損害賠償請求(訴訟や内容証明郵便による請求)は別々の手続きであり、同時に進めることが可能です。刑事告訴をすることで加害者に心理的プレッシャーをかけ、民事での示談交渉が進みやすくなるケースもあります。
Q. ネット詐欺(通販詐欺・投資詐欺)でも告訴できますか?
はい。加害者の氏名や住所が不明でも告訴は可能です。判明している情報(サイトURL、振込先口座、メールアドレス、IPアドレス等)を記載し、「被告訴人 氏名不詳」として告訴状を作成します。捜査機関が口座情報等から加害者を特定する場合もあります。
Q. 告訴を取り消すことはできますか?
詐欺罪は非親告罪のため、告訴の取消し自体は可能ですが、取り消しても検察官の判断で起訴される可能性があります。示談が成立した場合などに告訴を取り消すケースがありますが、なお、刑事訴訟法第237条第2項の再告訴禁止規定は親告罪にのみ適用されるため、非親告罪である詐欺罪については告訴を取り消した後でも再度告訴を行うことが可能です。告訴の取消しの手続きと注意点は「告訴の取消し(取下げ)は可能?撤回の方法と注意点」で詳しく解説しています。
まとめ
- 詐欺被害の告訴状では構成要件(欺罔〜錯誤〜処分行為〜損害)を時系列で具体的に記述する
- 被告訴人が不明でも「氏名不詳」として告訴可能
- 証拠(振込明細・メール・契約書等)の整理が受理の鍵
- 詐欺罪の公訴時効は7年、早めの対応が重要
- 警察で受理されない場合は検察庁への直接提出も検討する
詐欺被害の告訴状作成は行政書士法人Treeにお任せください
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。


