告訴状関連

迷惑防止条例違反の告訴状の書き方|痴漢・盗撮・つきまとい行為の告訴手続きを解説

約16分で読めます

痴漢、盗撮、つきまとい——これらの行為は各都道府県が定める迷惑防止条例によって規制されています。被害を受けた場合、警察への被害届に加えて告訴状を提出するという選択肢があります。告訴が受理されると捜査機関に捜査義務が発生するため(刑事訴訟法第242条)、被害届よりも強い法的効果が期待できます。

迷惑防止条例違反で告訴状を作成する際のポイントは、(1)該当する条例の条文番号と行為類型の特定、(2)行為の日時・場所・態様の具体的記述、(3)証拠資料の添付、(4)刑法犯やストーカー規制法との適用関係の整理の4点です。

「迷惑防止条例と刑法のどちらで告訴すべきかわからない」「証拠の集め方がわからない」という方は、行政書士法人Treeにご相談ください。告訴状の作成を代行いたします。相談は何度でも無料・全国対応です。

▶ まずはお気軽にお問い合わせください

迷惑防止条例とは?各都道府県の規制の概要

迷惑防止条例は、各都道府県が公衆に著しく迷惑をかける行為を規制するために制定した条例です。正式名称は都道府県ごとに異なり、東京都では「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」、大阪府では「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」と呼ばれます。

国の法律(刑法やストーカー規制法)とは異なり、条例は地方公共団体が地域の実情に合わせて制定するものです。そのため、規制対象や罰則の内容は都道府県によって差がある点に注意が必要です。告訴状を作成する際には、行為が行われた場所の都道府県の条例を確認する必要があります。

迷惑防止条例で規制される主な行為

多くの都道府県の迷惑防止条例で共通して規制されている行為は以下のとおりです。

行為類型 規制内容の概要 東京都条例の該当条文
痴漢行為 公共の場所や乗物における卑わいな言動(身体への接触等) 第5条第1項
盗撮行為 人の通常衣服で隠されている下着・身体の撮影 第5条第1項第2号
つきまとい行為 正当な理由なく特定の者を反復してつけ回す行為 第5条の2
客引き・スカウト行為 風俗店・居酒屋等の執拗な客引き、スカウト行為 第7条
不当な勧誘行為 公共の場所での不当な売買勧誘 第7条の2
ダフヤ行為 チケットの不正転売、転売目的の買占め 第2条
押売り行為 威圧的な態度での物品の販売 第3条
粗暴行為 多数で通行人に対し著しく粗野な言動をする行為 第4条

注意すべき点として、「つきまとい行為」は迷惑防止条例とストーカー規制法の両方で規制されていることがあります。両者の違いについては後述しますが、条例上のつきまとい行為は恋愛感情等の目的を要件としない場合が多く、適用範囲がより広い点が特徴です。

迷惑防止条例違反の罰則はどの程度か?

罰則は都道府県ごとに異なりますが、ここでは東京都の迷惑防止条例を例に確認します。2025年6月1日の刑法改正により「懲役」は「拘禁刑」に一本化されています。

違反行為 通常の罰則 常習の場合
痴漢行為(卑わいな言動) 6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
盗撮行為 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
つきまとい行為 6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
客引き・スカウト 50万円以下の罰金又は拘留もしくは科料 6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金

盗撮については近年の改正で罰則が引き上げられた都道府県が多く、東京都では2018年の改正で拘禁刑の上限が6か月から1年に引き上げられました。さらに、2023年7月に施行された性的姿態等撮影処罰法(性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律)により、盗撮行為は条例違反とは別に3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金という重い法定刑が適用される場合があります。

迷惑防止条例違反と刑法犯・ストーカー規制法の違いは?

被害内容によっては、迷惑防止条例だけでなく刑法やストーカー規制法が適用される場合があります。告訴状でどの法令を適用条文として記載するかは、処罰の重さや立証の難易度に直結する重要な判断です。

痴漢行為: 条例違反と不同意わいせつ罪の境界

痴漢行為の態様が軽微な場合(衣服の上から身体に触れる等)は迷惑防止条例違反として処理されることが一般的です。一方、下着の中に手を入れる、執拗に触り続ける等の行為は刑法第176条の不同意わいせつ罪(旧: 強制わいせつ罪)に該当する可能性があります。不同意わいせつ罪の法定刑は6か月以上10年以下の拘禁刑で、条例違反よりも格段に重い処罰が科されます。

盗撮行為: 条例違反と性的姿態等撮影処罰法

2023年7月施行の性的姿態等撮影処罰法により、盗撮行為は全国統一の刑事罰(3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)の対象となりました。従来は条例でしか処罰できなかった行為が国の法律で規制されたことで、告訴状では条例違反と撮影処罰法違反の両方を適用条文として記載するケースが増えています。

つきまとい行為: 条例違反とストーカー規制法の使い分け

比較項目 迷惑防止条例 ストーカー規制法
目的の限定 特定の目的を要件としない(ねたみ・嫌がらせ等でもよい) 恋愛感情その他の好意の感情又は怨恨の感情が必要
反復の要件 条例による(反復を要件としない場合もある) 「反復して」行うことが要件
罰則 6か月以下の拘禁刑等(東京都の場合) 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
行政措置 なし 警告・禁止命令制度あり
適用範囲 行為地の都道府県のみ 全国統一

恋愛感情に基づくつきまとい行為であればストーカー規制法が優先的に適用されます。一方、近隣トラブルや職場での嫌がらせなど、恋愛感情以外の動機に基づくつきまとい行為には迷惑防止条例が適用されます。告訴状の記載では、行為の動機を正確に把握したうえで適用法令を選択することが重要です。

迷惑防止条例違反の告訴状はどう書く?作成手順を解説

告訴状に法定の書式はありませんが、捜査機関に受理されやすい構成があります。以下の手順に沿って作成してください。

ステップ1: 表題と宛先を記載する

告 訴 状」と表題を付け、宛先は被害地を管轄する「○○警察署長 殿」とします。検察庁への提出も可能ですが、現行犯に近い時期であれば警察署への提出が一般的です。

ステップ2: 告訴人・被告訴人の情報を記載する

告訴人(被害者)は氏名・住所・生年月日・連絡先を記載します。被告訴人(加害者)は判明している範囲で記載しますが、氏名不詳でも告訴は可能です。電車内の痴漢など加害者が特定できていない場合は、「被告訴人 氏名不詳(○○線○○駅付近で乗車していた○○の特徴を有する人物)」のように外見的特徴を記載します。

ステップ3: 告訴の趣旨を記載する

処罰意思を明確に示す部分です。適用条文は行為が行われた都道府県の条例の条文番号を正確に記載してください。

【告訴の趣旨 記載例 — 痴漢行為の場合】

被告訴人の下記所為は、○○都(道府県)公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例第○条第○項に該当すると思料されるので、捜査の上、厳重に処罰されたく告訴いたします。

ステップ4: 告訴事実を具体的に記述する

告訴状の核心部分です。以下の項目を漏れなく記載してください。

  • 日時: 「○年○月○日 午前(午後)○時○分ころ」と具体的に
  • 場所: 「○○線○○駅行き電車内」「○○市○○町○丁目○番○号 ○○ビル○階」等
  • 行為態様: 加害者の具体的な動作を客観的に記述
  • 被害状況: 身体的・精神的な被害の内容

【告訴事実 記載例 — 盗撮行為の場合】

被告訴人は、○年○月○日午後○時○分ころ、○○都○○区○○町○丁目所在の商業施設「○○」のエスカレーター上において、告訴人の背後から、スマートフォンのカメラ機能を使用して、告訴人のスカート内を撮影した。

上記行為は、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機等を用いて撮影したものであり、○○都迷惑防止条例第5条第1項第2号に規定する盗撮行為に該当する。

ステップ5: 証拠資料の一覧を記載する

添付する証拠を一覧で記載します。証拠の具体的な種類と収集方法は次章で解説します。

告訴状の記載内容が不安な方へ

行政書士法人Treeでは、迷惑防止条例違反の告訴状作成を代行しています。適用条文の選定から証拠の整理までサポートいたします。

  • ✔ 各都道府県の条例に対応した正確な条文引用
  • ✔ 刑法犯・ストーカー規制法との適用関係の整理
  • ✔ 相談は何度でも無料・全国対応

▶ 専門家に状況を相談する(無料)

迷惑防止条例違反の証拠はどう集める?犯罪類型別の収集方法

迷惑防止条例違反は、行為の性質上、加害者が否認するケースが多いため、客観的な証拠の確保が極めて重要です。犯罪類型ごとに有効な証拠と収集のポイントを整理します。

痴漢行為の証拠収集

証拠の種類 収集方法・留意点
防犯カメラ映像 鉄道会社・施設管理者に保存期間内(通常7〜30日)に保全を依頼。警察経由の方が取得しやすい
目撃者の証言 その場で連絡先を確認。後日の確保は困難なため、可能な限り現場で対応する
被害直後のメモ 日時・場所・加害者の特徴・行為内容を可能な限り早く記録する
衣服の繊維・DNA 被害衣服を保全し、洗濯せずにビニール袋で保管する
医師の診断書 PTSD・不安障害等の診断がある場合、被害との因果関係を記載してもらう

盗撮行為の証拠収集

証拠の種類 収集方法・留意点
現行犯での確保 撮影に使用された端末が最大の証拠。発見時に加害者が端末を操作(画像削除)しないよう注意
防犯カメラ映像 撮影行為そのものが映っている場合、極めて有力な証拠となる
撮影画像・動画 加害者の端末から押収されるもの。被害者側では取得困難だが、告訴により捜査機関が差押え可能
目撃者の証言 スマートフォンを不自然な角度で差し向けていた等の目撃証言

つきまとい行為の証拠収集

証拠の種類 収集方法・留意点
被害記録ノート 日時・場所・行為内容を毎回記録。スマートフォンのメモアプリでタイムスタンプを残す方法も有効
写真・動画 つきまとい行為をしている加害者をスマートフォンで撮影(安全に配慮)
GPS・ドライブレコーダー 車両によるつきまといの場合、ドライブレコーダーの映像やナンバープレートの記録
SNS・メッセージの記録 加害者からの連絡をスクリーンショットで保存。送信日時が表示された状態で保全
防犯カメラ映像 自宅周辺の防犯カメラの設置・保全も検討する

証拠の収集において重要なのは、1回の行為ではなく複数回にわたる行為を時系列で立証することです。迷惑防止条例のつきまとい行為は反復を要件とする場合が多いため、被害記録ノートの継続的な記録が告訴状の説得力を大きく左右します。

迷惑防止条例違反の告訴でよくある不備・失敗

告訴状が受理されない、または捜査が進展しない原因として、以下のような不備が見られます。告訴状の作成前に確認してください。

適用条文の誤り

迷惑防止条例は都道府県ごとに条文番号や規制内容が異なります。行為地と異なる都道府県の条例を引用したり、条文番号を間違えたりすると、告訴状の信頼性が低下します。必ず行為が行われた場所の条例原文を確認してください。

行為の特定が不十分

「何度も触られた」「ずっとつけられていた」のような抽象的な記述では、構成要件に該当するかの判断ができません。いつ・どこで・どのような行為を・どの程度受けたかを具体的に記述することが不可欠です。

刑法犯との適用関係の整理不足

痴漢行為が不同意わいせつ罪に該当する可能性がある場合や、盗撮行為が性的姿態等撮影処罰法の対象となる場合に、条例違反のみで告訴すると、適用する法令によっては処罰が軽くなるおそれがあります。重い法令の適用を併記することで、より厳正な処分を求めることが可能です。

証拠の不保全

防犯カメラの映像は保存期間が限られています。被害を受けたら可能な限り早く警察に相談し、映像の保全を依頼してください。時間の経過とともに証拠が失われるリスクが高まります。

よくある質問

Q. 迷惑防止条例違反は親告罪ですか?告訴がないと処罰できませんか?

迷惑防止条例違反は非親告罪です。告訴がなくても検察官は起訴できますし、現行犯逮捕も可能です。ただし、告訴を行うことで捜査機関に捜査義務が発生し、被害事実を正確に記録できるため、被害者にとっては告訴状の提出に実務上の意義があります。

Q. 迷惑防止条例違反の告訴期間(告訴の時効)はいつまでですか?

迷惑防止条例違反は非親告罪であるため、親告罪に適用される「犯人を知った日から6か月以内」の告訴期間の制限(刑事訴訟法第235条)は適用されません。ただし、公訴時効は存在します。条例違反の法定刑が拘禁刑の上限1年以下の場合、公訴時効は3年です(刑事訴訟法第250条第2項第6号)。時効完成前に告訴状を提出してください。

Q. 電車内の痴漢で加害者の名前がわかりません。告訴できますか?

被告訴人が不明でも告訴は可能です。「被告訴人 氏名不詳」として、加害者の外見的特徴(性別、年齢層、服装、体格等)と行為の状況を具体的に記載してください。防犯カメラの映像やICカードの乗車履歴等から、捜査機関が加害者を特定する場合もあります。

Q. 迷惑防止条例違反で告訴する場合、どの警察署に提出すればよいですか?

原則として、犯罪行為が行われた場所を管轄する警察署に提出します。電車内の痴漢であれば、降車駅を管轄する警察署が一般的です。検察庁への直接提出も法律上は可能ですが、迷惑防止条例違反の場合は初動捜査の観点から警察署への提出が通常です。

Q. 迷惑防止条例の「つきまとい」とストーカー規制法の「つきまとい等」はどう違いますか?

最大の違いは行為の目的(動機)の要件です。ストーカー規制法は恋愛感情又は怨恨の感情を充足する目的が必要ですが、迷惑防止条例のつきまとい行為にはそのような目的の限定がないのが一般的です。たとえば、近隣住民による嫌がらせ目的のつきまとい行為は、ストーカー規制法では処罰できない場合がありますが、迷惑防止条例であれば対象となり得ます。

Q. 迷惑防止条例違反と性的姿態等撮影処罰法の両方で告訴できますか?

はい、両方の法令を適用条文として告訴状に記載することが可能です。盗撮行為であれば、迷惑防止条例違反と性的姿態等撮影処罰法違反の両方を告訴の趣旨に記載し、捜査機関と検察官の判断に委ねるのが実務的です。

迷惑防止条例違反の告訴状作成は専門家にお任せください

サービス 料金
告訴状作成 34,800円〜(税抜)
  • ✔ 各都道府県の条例に対応した適用条文の正確な引用
  • ✔ 刑法・ストーカー規制法との適用関係の整理
  • ✔ 証拠の構成・時系列整理のサポート
  • ✔ 相談は何度でも無料・全国対応

まずはお気軽にお問い合わせください。被害状況をヒアリングし、最適な対応をご提案いたします。

▶ 告訴状作成サービスの詳細はこちら

※ 本記事の内容は2026年4月時点の刑事訴訟法および各都道府県の迷惑防止条例に基づく一般的な情報提供です。告訴・告発の受理判断は捜査機関の裁量による部分があります。具体的な事案は弁護士にもご相談ください。なお、細心の注意を払って執筆しておりますが、個別の法的助言を目的とするものではありません。

行政書士法人Tree