公開日:2026-05-24
給与ファクタリングは、労働者が勤務先に対して有する賃金債権を、給与支払日前に額面額より低い金額で買い取る名目で金銭を交付し、給与支払日または買戻し日に労働者本人から額面額または買戻金を回収する仕組みです。最高裁令和5年2月20日第三小法廷決定は、給与ファクタリングについて、形式上は賃金債権の譲渡であっても、実質的には顧客との二者間における返済合意のある金銭交付と同様の機能を有するものとして、貸金業法第2条第1項および出資法第5条第3項にいう「貸付け」に当たると判断しました。これにより無登録業者の取引は貸金業法違反、業として年109.5%を超える高金利での回収は出資法第5条第3項違反として、刑事告訴・告発の対象となります。本記事では貸金業法・出資法の罰条、年利換算、証拠保全、告訴状と告発状の使い分け、業務範囲を実務目線で整理します。
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目次
目次
- 給与ファクタリングとは(最高裁事案のスキーム)
- 最高裁令和5年2月20日決定のポイント
- 貸金業法違反・出資法違反となる理由
- 適用法令と法定刑(貸金業法・出資法・刑法)
- 年利換算の方法と手数料・買戻差額の整理
- 違法な督促・取立て行為の証拠保存
- 告訴状と告発状の違い・公訴時効
- 民事救済・債務整理・督促停止との並行
- 金融庁・財務局・消費生活センターへの相談
- 業務範囲の整理
- FAQ・まとめ
1. 給与ファクタリングとは(最高裁事案のスキーム)
給与ファクタリングは、労働者が勤務先に対して有する賃金債権を、給与支払日前に額面額より低い金額で買い取る名目で金銭を交付し、給与支払日または買戻し日に、労働者本人から額面額または買戻金を回収する仕組みです。
勤務先への債権譲渡通知を留保し、実際には利用者本人から回収する二者間取引となっている場合、経済的には貸付けと同様の機能を有すると評価されやすくなります。最高裁令和5年2月20日決定の事案でも、賃金債権を額面から割り引いて買い取り、買戻し日に額面額で買い戻す仕組み、債権譲渡通知を留保する仕組みが重要なポイントでした。
短期間で高額な手数料・買戻差額を支払わせる仕組みのため、年利換算すると出資法上の上限を大きく超える高金利となる事案があります。実際の利率は、交付額、手数料・買戻差額、取引日数、天引きの有無をもとに個別計算します。
2. 最高裁令和5年2月20日決定のポイント
最高裁令和5年2月20日第三小法廷決定は、給与ファクタリングと称する取引について、形式上は賃金債権の譲渡であっても、実質的には顧客との二者間における返済合意のある金銭交付と同様の機能を有するものとして、貸金業法第2条第1項および出資法第5条第3項にいう「貸付け」に当たると判断しました。
これにより、無登録で給与ファクタリングを業として行うことは貸金業法・出資法に違反する違法な行為であることが明確になりました。最判令和5年により給与ファクタリングが違法と明確化された後は、業者が「後払い現金化」「先払い買取現金化」「先払い商品券買取現金化」等の新たな脱法的手口に移行している点にも注意が必要です。
3. 貸金業法違反・出資法違反となる理由
給与債権の売買という形式であっても、利用者本人から回収する仕組みで、経済的に貸付けと同様の機能を有する場合は、貸金業法・出資法上の「貸付け」と評価されます。このような取引を業として行うには貸金業登録が必要であり、無登録で行えば貸金業法違反となります。さらに高額な手数料・買戻差額が利息と評価され、出資法違反が問題となることがあります。
4. 適用法令と法定刑(貸金業法・出資法・刑法)
貸金業法違反(無登録営業)
- 貸金業法第11条第1項:第3条第1項の登録を受けない者は、貸金業を営んではならない(無登録営業の禁止)
- 貸金業法第47条:無登録で貸金業を営んだ者等に対する罰則。10年以下の拘禁刑もしくは3,000万円以下の罰金、またはこれらの併科。法人については両罰規定により、より高額の罰金が問題となります
出資法違反(高金利)
| 条項 | 類型 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 出資法第5条第1項 | 業として行わない年109.5%(うるう年109.8%)超の利息の契約等 | 5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれらの併科 |
| 出資法第5条第2項 | 業として年20%超の利息の契約・受領・支払要求 | 5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれらの併科 |
| 出資法第5条第3項 | 業として年109.5%(うるう年109.8%)超の利息の契約・受領・支払要求 | 10年以下の拘禁刑もしくは3,000万円以下の罰金、またはこれらの併科 |
給与ファクタリング業者のように業として超高金利(年200〜500%以上)で行う場合、最高裁令和5年が引用した出資法第5条第3項が適用され、法定刑は10年以下の拘禁刑・3,000万円以下の罰金です。年20%超〜109.5%以下の事案では第5条第2項が問題となります。
刑法第246条詐欺罪
業者が虚偽説明により金銭を交付させた、返済義務や手数料・勤務先への通知・取立方法等について欺罔行為がある場合に個別に検討します。給与ファクタリング一般について常に詐欺罪が成立するものではなく、欺罔・錯誤・財産処分行為・故意の有無を事案ごとに確認します。なお、刑法第247条背任罪は構成要件上「他人のためにその事務を処理する者」を要するため、給与ファクタリング業者に当然に当てはまるものではありません。
5. 年利換算の方法と手数料・買戻差額の整理
給与ファクタリングが実質的に貸付けと評価される場合、手数料・割引料・買戻差額等の名目にかかわらず利息相当額を年利換算し、業としての貸付けについて年20%を超える場合は出資法第5条第2項、年109.5%を超える場合は同条第3項の超高金利違反が問題となります。
年利換算の概算式
利息相当額(手数料・割引料・買戻差額等)÷ 実際に交付された金額または元本相当額 × 365日 ÷ 取引日数 × 100(%)で概算します。
出資法の適用では、利息天引きの場合の元本額の扱い、15日未満の貸付期間の計算、名目にかかわらず利息とみなされる金銭の範囲を確認します。
6. 違法な督促・取立て行為の証拠保存
違法な督促・取立て行為については、以下の事項を日時・相手方・発言内容とともに記録します。
- 勤務先・家族・知人への連絡
- 早朝・深夜の電話
- 威迫的なメッセージ
- SNSでの晒し示唆
- 第三者への弁済要求
- 勤務先への債権譲渡通知を利用した圧力
証拠保全はスクリーンショット、録音、着信履歴、メール、SNS DMの保存等が基本です。
7. 告訴状と告発状の違い・公訴時効
告訴状と告発状の使い分け
- 告訴状:被害者本人が自らの被害について処罰を求める場合
- 告発状:第三者または被害者以外が犯罪事実を申告する場合
貸金業法違反・出資法違反は非親告罪ですが、警察に提出する書面の形式は事案に応じて告訴状または告発状として整理します。
公訴時効
公訴時効は、成立し得る罪名と法定刑により異なります。
- 刑法第246条詐欺罪:7年(刑事訴訟法第250条第2項第4号)
- 貸金業法第47条違反(無登録営業):法定刑10年以下の拘禁刑のため公訴時効7年
- 出資法第5条第3項違反(業として年109.5%超):法定刑10年以下の拘禁刑のため公訴時効7年
- 出資法第5条第2項違反(業として年20%超):法定刑5年以下の拘禁刑のため公訴時効5年
具体的には罪名・行為日・最終取引日ごとに確認します。
8. 民事救済・債務整理・督促停止との並行
給与ファクタリングは貸金業法・出資法違反のヤミ金融的取引として、通常の消費者金融の過払金請求とは異なる法的構成が問題になります。
- 支払済み金銭の返還請求
- 不当利得返還請求
- 不法行為に基づく損害賠償請求
- 債務不存在確認
- 督促停止対応
これらは弁護士または認定司法書士の業務範囲です。違法な取立てが継続している場合は、早急に弁護士・司法書士へ相談し、督促停止や安全確保を優先します。
9. 金融庁・財務局・消費生活センターへの相談
刑事告訴・告発と並行して、以下の機関への相談も実務上重要です。
- 金融庁・財務局(無登録貸金業者の情報提供)
- 都道府県の貸金業担当部署
- 消費生活センター(消費者ホットライン188)
- 弁護士会・司法書士会の法律相談
10. 業務範囲の整理
行政書士業務範囲
- 警察署長宛ての告訴状・告発状の文案作成
- 被害経緯、取引履歴、振込記録、年利換算、督促状況等を整理した事実関係整理書面の作成
- 添付証拠目録の整理
業務範囲外(連携先専門家)
- 業者に対する取引履歴開示請求、督促停止交渉、返還交渉(弁護士または認定司法書士業務)
- 不当利得返還請求・損害賠償請求・債務不存在確認の代理(弁護士または認定司法書士)
- 過払金返還請求・債務整理(弁護士または認定司法書士)
- 警察・検察との代理交渉、訴訟代理(弁護士)
- 金融庁・財務局への情報提供・行政処分申立てに関する代理(弁護士)
11. FAQ|よくあるご質問
Q. 給与ファクタリングは合法ですか?
A. 給与債権の売買という形式であっても、利用者本人から回収する仕組みで経済的に貸付けと同様の機能を有する場合は、貸金業法・出資法上の「貸付け」と評価されます(最判令和5年2月20日決定)。このような取引を業として行うには貸金業登録が必要であり、無登録で行えば貸金業法違反となります。さらに高額な手数料・買戻差額が利息と評価され、出資法違反が問題となることがあります。
Q. 出資法第5条第3項違反の法定刑は?
A. 業として年109.5%(うるう年109.8%)を超える利息の契約・受領・支払要求をした者は、10年以下の拘禁刑もしくは3,000万円以下の罰金、またはこれらの併科が問題となります。最判令和5年2月20日決定が給与ファクタリングについて引用したのも同項です。
Q. 公訴時効は?
A. 刑法第246条詐欺罪は7年です。無登録営業(貸金業法第47条)や出資法第5条第3項違反は法定刑が10年以下の拘禁刑であるため公訴時効7年(刑事訴訟法第250条第2項)。出資法第5条第2項違反(業として年20%超、法定刑5年以下)は公訴時効5年です。罪名により異なるため個別の確認が必要です。
Q. 支払った金銭の返還請求はできますか?
A. 返還請求の可否・範囲は、取引が貸付けと評価されるか、無登録営業・出資法違反の程度、支払済み金額、元本相当額、利息制限法の上限利率(元本額に応じて15%・18%・20%)、不法原因給付・不当利得・不法行為の構成等により異なります。返還請求、債務不存在確認、督促停止対応は弁護士または認定司法書士に確認します。
Q. 告訴状と告発状はどちらを出せばよいですか?
A. 被害者本人が自らの被害について処罰を求める場合は告訴状、第三者または被害者以外が犯罪事実を申告する場合は告発状として整理します。貸金業法違反・出資法違反は非親告罪のため、第三者からの告発も可能です。
Q. 違法な取立てが続いています。どうすればよいですか?
A. 勤務先・家族・知人への連絡、早朝・深夜の電話、威迫的なメッセージ、SNSでの晒し示唆等の違法取立てが継続している場合は、早急に弁護士・司法書士へ相談し、督促停止や安全確保を優先します。同時に、日時・相手方・発言内容を記録し、スクリーンショット・録音・着信履歴を保存します。
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まとめ
給与ファクタリングは、賃金債権を額面額より低い金額で買い取る名目で金銭を交付し、給与支払日または買戻し日に労働者本人から額面額または買戻金を回収する仕組みです。最高裁令和5年2月20日第三小法廷決定は、給与ファクタリングについて、貸金業法第2条第1項および出資法第5条第3項にいう「貸付け」に当たると判断しました。
無登録で給与ファクタリングを業として行うことは、貸金業法第11条第1項違反(無登録営業)として同法第47条により10年以下の拘禁刑もしくは3,000万円以下の罰金(併科あり、法人両罰)の対象となります。さらに、業として年109.5%を超える高金利での回収は出資法第5条第3項違反として10年以下の拘禁刑もしくは3,000万円以下の罰金、年20%超〜109.5%以下の場合は同条第2項違反として5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金が問題となります。
適用罪名としては上記の貸金業法・出資法違反が中核で、欺罔行為が明確な事案では刑法第246条詐欺罪も個別検討します。背任罪(刑法第247条)は構成要件上、当然に成立するものではありません。公訴時効は、無登録営業・出資法第5条第3項違反はいずれも7年、出資法第5条第2項違反は5年です。
立証は、業者の登録番号確認、利息相当額の年利換算(利息相当額÷交付額×365÷取引日数)、契約書・振込明細・支払履歴の保全、違法取立て(勤務先連絡・早朝深夜・威迫・SNS晒し示唆等)の記録で進めます。最判令和5年以降、業者が後払い現金化・先払い買取現金化等の新たな脱法的手口に移行している点にも注意が必要です。
警察署長宛ての告訴状(被害者本人)・告発状(第三者)の文案作成、事実関係整理書面・添付証拠目録の整理は行政書士業務範囲で対応します。業者との交渉、督促停止、返還請求、債務不存在確認、債務整理、警察・検察との代理交渉は弁護士または認定司法書士の業務範囲です。違法取立てが継続している場合は、金融庁・財務局・消費生活センターへの相談と並行して、弁護士・司法書士による督促停止・安全確保を優先します。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。


