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賃金未払いの刑事告訴|告訴状の書き方と手続きを行政書士が解説

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「何度請求しても給料が振り込まれない」「残業代が長期間にわたって支払われていない」——賃金未払いは労使間の民事トラブルとして扱われることが多いですが、実は労働基準法第24条違反として刑事罰の対象にもなり得ます。労働基準監督署への申告で解決しないケースや、悪質な未払いが繰り返されるケースでは、刑事告訴が有効な手段となることがあります。本記事では、賃金未払い・労働問題で刑事告訴が可能なケースとその要件、告訴状の作成方法について解説します。

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賃金未払いが刑事罰の対象となる根拠

賃金の支払いに関するルールは、労働基準法第24条(賃金支払いの5原則)に定められています。使用者がこの規定に違反して賃金を支払わなかった場合、同法第120条により30万円以下の罰金に処されます。

さらに悪質なケースでは、別の条文が適用される場合もあります。

違反内容 根拠条文 法定刑
賃金未払い(全額払い違反等) 労基法第24条→第120条 30万円以下の罰金
最低賃金法違反 最低賃金法第4条→第40条 50万円以下の罰金
割増賃金の未払い(残業代等) 労基法第37条→第119条 6か月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金
強制労働 労基法第5条→第117条 1年以上10年以下の拘禁刑又は20万円以上300万円以下の罰金

労働基準法違反の罰則は罰金刑が中心ですが、強制労働の禁止(第5条)違反のように重い刑罰が科されるものもあります。刑事告訴は、労働基準監督署への申告とは異なり、捜査機関に対して処罰を求める正式な法的手続きです。

刑事告訴が可能なケースと労基署への申告との違い

労働基準監督署への申告との違い

賃金未払いに対する主な対処法は「労働基準監督署への申告」と「刑事告訴」の2つです。両者は別個の手続きであり、併用も可能です。

比較項目 労基署への申告 刑事告訴
根拠 労基法第104条 刑事訴訟法第230条
提出先 所轄の労働基準監督署 警察署又は検察庁
手続きの性質 行政上の監督権限の発動を求める 刑事処罰を求める
効果 是正勧告・指導(強制力は間接的) 捜査→起訴→刑事処罰の可能性
結果通知 申告者への結果通知義務なし 告訴人への処分通知義務あり(刑訴法第260条)

刑事告訴を検討すべきケース

以下のような状況では、労基署への申告に加えて刑事告訴の検討が有効です。

  • 労働基準監督署の是正勧告に対して使用者が従わず、賃金の支払いが改善されない場合
  • 使用者が意図的に賃金を支払わず、悪質性が高いと考えられる場合(資金はあるのに支払わない等)
  • 複数の労働者に対して組織的に賃金を搾取している場合
  • 使用者が所在不明となり、労基署による行政指導が困難な場合

ただし、単なる経営悪化による支払遅延で使用者に支払意思がある場合は、直ちに刑事責任が問われるとは限りません。告訴にあたっては、使用者の故意(支払えるのに支払わない意思)を示す事実が重要となります。

どの手段を選ぶべきか:3つの選択肢の比較

賃金未払いに対しては、労基署への申告・刑事告訴のほかに労働審判という民事上の手続きもあります。目的に応じて使い分けるか、併用を検討してください。

比較項目 労基署への申告 刑事告訴 労働審判
目的 行政指導・是正勧告 刑事処罰を求める 未払い賃金の民事回収
費用 無料 告訴状作成費用のみ 申立手数料(数千円〜)
賃金回収への直結 間接的(是正勧告止まり) 直接ではない 直接的(支払命令)
解決までの期間 数週間〜数か月 不定(起訴・判決まで) 原則3回以内(数か月)

賃金の回収が第一の目的であれば労働審判が最も直接的です。使用者の悪質性を社会的に問いたい場合や、行政指導では動かない場合は刑事告訴が有効です。これらは併用可能であり、労基署への申告も並行して行うことができます。

賃金未払いの告訴状に記載すべき事項と作成手順

ステップ1: 雇用関係と賃金の約定を証明する

告訴の前提として、告訴人と被告訴人(使用者)の間に雇用関係が存在し、賃金の支払い義務があることを示す必要があります。雇用契約書、労働条件通知書、給与明細(支払われていた期間のもの)等を準備してください。

ステップ2: 未払い賃金の内容を特定する

未払いの対象が基本給なのか、残業代なのか、最低賃金違反なのかによって、問題となる条文や必要な証拠が異なります。未払い期間・金額・計算根拠を具体的に整理しましょう。なお、退職金については就業規則や退職金規程などの根拠確認が特に重要であり、当然に刑事罰の対象になるとは限りません。

未払いの類型 主な根拠条文 必要な証拠例
基本給の未払い 労基法第24条 雇用契約書、給与明細、銀行口座の入出金記録
残業代の未払い 労基法第37条 タイムカード、出退勤記録、業務メール・チャットのログ
最低賃金割れ 最低賃金法第4条 給与明細、労働時間の記録、都道府県別最低賃金の公示
退職金の未払い 就業規則・退職金規程 就業規則、退職金規程、退職証明書
※退職金は就業規則等に支給の定めがある場合に限り賃金に該当。定めがない場合は労基法の適用外となり得る

ステップ3: 告訴状の犯罪事実を記載する

犯罪事実には、以下の要素を盛り込みます。

雇用関係の特定: 「告訴人は、被告訴人が経営する○○株式会社に令和○年○月○日から雇用され、月額○○万円の賃金を毎月○日に支払う旨の合意があった」のように、労働契約の内容を具体的に記載します。

未払いの事実: 「被告訴人は、令和○年○月分から同年○月分までの合計○か月分の賃金、合計○○万円を所定の支払日に支払わなかった」のように、未払い期間・金額を明示します。

違法性の根拠: 「上記行為は、労働基準法第24条(賃金全額払いの原則)に違反し、同法第120条第1号に該当する」と、適用条文を明記します。

【記載例:基本給未払いのケース(第24条・第120条違反)】

被告訴人(住所:○○県○○市○○町○丁目○番○号、氏名:○○○○、○○株式会社代表取締役)は、○○株式会社の事業主として労働者を使用する者であるが、告訴人を令和○年○月○日、正社員(職種:○○)として雇用し、基本給月額○○万円を毎月○日締め・翌月○日に告訴人名義の○○銀行○○支店普通預金口座(口座番号○○○○○○○)へ振込送金する方法により支払う旨合意していたにもかかわらず、令和○年○月分から同○年○月分までの○か月分の賃金合計金○○万○○○○円を、各所定の支払日が経過しても正当な理由なく支払わなかった。

以上の行為は、労働基準法第24条第1項(賃金全額払いの原則)に違反し、同法第120条第1号の罪に該当するものである。

【記載例:残業代未払いのケース(第37条・第119条違反)】

被告訴人(住所・氏名:上記に同じ)は、○○株式会社の事業主として労働者を使用する者であるが、告訴人が令和○年○月○日から同○年○月○日までの間、1日8時間・1週40時間を超えて行った時間外労働合計○○時間○○分、及び同期間における深夜労働(午後10時から午前5時)合計○○時間○○分に対し、労働基準法第37条第1項に定める2割5分以上の率(深夜労働については5割以上の率)で計算した割増賃金合計金○○万○○○○円を、各賃金支払日が経過しても正当な理由なく支払わなかった。

以上の行為は、労働基準法第37条第1項(時間外労働・深夜労働の割増賃金の支払い義務)に違反し、同法第119条第1号の罪に該当するものである。

上記はあくまで犯罪事実部分のひな形であり、実際の告訴状では個別の事情に応じて記載内容を調整する必要があります。○の部分には具体的な事実を記入してください。被告訴人の特定(住所・氏名・法人の場合は代表者名)、未払い金額の正確な計算、支払日の特定が告訴状の受理にあたって特に重視されるポイントです。

ステップ4: 証拠書類を整理して提出する

告訴状に添付する主な証拠は以下のとおりです。

  • 雇用契約書又は労働条件通知書
  • 給与明細(支払われた期間と未払い期間の両方)
  • 銀行口座の入出金明細(賃金が振り込まれていない事実を示す)
  • タイムカード・出退勤記録(残業代請求の場合)
  • 労基署への申告書のコピーと是正勧告書(申告済みの場合)
  • 使用者とのやり取り(支払催促のメール、LINE等の記録)

証拠収集の全般については「告訴状に必要な証拠の集め方」で解説しています。

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賃金未払いの告訴における注意点

公訴時効に注意

労働基準法第120条違反(30万円以下の罰金)の公訴時効は3年です。同法第119条違反(6か月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金)の公訴時効は5年です(刑訴法第250条第2項第4号:長期5年未満の拘禁刑に当たる罪)。未払いが長期間にわたる場合、古い期間の分は時効が完成している可能性があるため、早期の対応が求められます。

民事上の未払賃金請求権の時効

民事上の賃金請求権の消滅時効は、2020年4月施行の改正労働基準法により、当面の間は3年(本来は5年)とされています(労基法第115条、附則第143条第3項)。刑事告訴とは別に、民事上の賃金請求も検討する場合は、この時効にも注意が必要です。民事上の請求については弁護士にご相談ください。

行政書士ができること・できないこと

行政書士は告訴状の作成を業務として行うことができます。一方、告訴状の提出後の刑事手続きにおける代理や、未払い賃金の回収に関する示談交渉や民事手続きにおける代理は行政書士の業務範囲外です。これらについては弁護士にご相談ください。

よくある質問

Q. 労基署に相談しても動いてくれない場合、告訴できますか?

告訴は労基署への申告とは別個の手続きです。労基署の対応に関わらず、犯罪被害者として警察署又は検察庁に告訴状を提出することが可能です。なお、労働基準監督官にも労働基準法第102条に基づく司法警察権限があり、労基署に対して告訴・告発を行うことも制度上は可能です。

Q. 経営不振で支払えない場合でも告訴できますか?

賃金未払いの違法性は、支払能力の有無にかかわらず成立し得ます。ただし、捜査機関の実務においては、資力があるにもかかわらず支払わないケース(悪質性が高いケース)の方が、捜査の対象として優先される傾向があります。経営破綻の場合は、未払賃金立替払制度(厚生労働省の賃金ページ参照)の利用も検討してください。

Q. パート・アルバイトでも告訴できますか?

労働基準法の賃金支払い義務は、雇用形態を問わずすべての労働者に適用されます。正社員・パート・アルバイト・契約社員のいずれであっても、賃金未払いに対する告訴は可能です。

Q. 退職後でも告訴できますか?

退職後であっても、未払い賃金に対する告訴は可能です。公訴時効(第120条違反は3年、第119条違反は5年)が完成していなければ、退職後に告訴状を提出することに法律上の制約はありません。むしろ、在職中は告訴をためらう方も多く、退職後に告訴を検討するケースも少なくありません。

Q. 告訴すれば必ず未払い賃金は回収できますか?

刑事告訴は処罰を求める手続きであり、未払い賃金の回収を直接の目的とするものではありません。賃金の回収には別途、民事上の請求(支払督促、労働審判、民事訴訟等)が必要です。ただし、告訴を契機として使用者が支払いに応じるケースもあります。民事上の請求手続きについては弁護士にご相談ください。

まとめ

賃金未払いは労使間のトラブルに留まらず、労働基準法違反として刑事責任を問える場合があります。

  • 労基法第24条違反(賃金未払い)の法定刑は30万円以下の罰金。残業代未払い(第37条違反)は6か月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金
  • 労基署への申告と刑事告訴は別個の手続きであり、併用可能
  • 告訴状には雇用関係の特定、未払い賃金の金額・期間、適用条文を具体的に記載する
  • 公訴時効は、第120条違反(賃金未払い)が3年、第119条違反(割増賃金未払い)が5年。未払いが長期化する前に早期の対応が重要

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