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令和3年度の全国ひとり親世帯等調査によると、養育費の取り決めをしている母子世帯は46.7%、実際に「現在も受け取っている」と回答した世帯は28.1%にとどまります。養育費は子どもの生活と将来を支えるために欠かせないものですが、金額の決め方や取り決めの残し方が分からず、結果的に不十分な金額になったり不払いに悩まされたりするケースが後を絶ちません。
養育費の金額は、裁判所が公表する養育費算定表で父母双方の年収と子どもの人数・年齢から目安を算出できます。取り決めた内容は強制執行認諾文言付きの公正証書にしておけば、不払い時に裁判を経ずに強制執行を申し立てることができます。さらに、2026年4月施行の民法改正で法定養育費制度(子ども1人当たり月額2万円)が新設されます。本記事では、養育費の相場・算定表の見方・公正証書の作り方まで、実務に役立つ知識を整理します。
「養育費をいくらにすればよいか分からない」「取り決めを書面に残したい」とお悩みの方は、行政書士法人Treeにご相談ください。離婚協議書・公正証書の作成を通じて、養育費の取り決めを法的に有効な形で書面化いたします。相談は何度でも無料です。
目次
養育費とは?支払い義務の法的根拠
養育費とは、離婚後に子どもを監護していない親(非監護親)が、子どもの生活費・教育費として監護親に支払うお金のことです。法的な根拠は民法第766条・第877条にあり、親の子どもに対する扶養義務に基づきます。
扶養義務は親権の有無にかかわらず発生するため、親権者にならなかった親にも養育費の支払い義務があります。この義務は、一般に「生活保持義務」として理解されており、自分と同程度の生活を子どもにも保障するレベルが求められます。単に最低限の生活費を負担すればよいという「生活扶助義務」とは異なる点に注意が必要です。
養育費の支払い期間は、原則として子どもが経済的に自立するまでです。多くの場合は「18歳(成年)まで」または「大学卒業時(22歳の3月)まで」と取り決めます。2022年4月の民法改正で成年年齢が18歳に引き下げられましたが、成年年齢の変更だけを理由に養育費の終期を18歳に短縮する必要はないとされています。
養育費の相場はいくら?算定表の見方と使い方
養育費の金額を決めるときに参考にするのが、裁判所が公表している養育費算定表です。この算定表は2019年12月に改定された「新算定表」が現在の実務で使用されています。
算定表はどこで見られる?
裁判所の公式サイトで公開されています。子どもの人数と年齢に応じて9種類の表が用意されており、自分のケースに合った表を選んで使います。
算定表の見方・3ステップ
- 表を選ぶ:子どもの人数(1〜3人)と年齢(0〜14歳 / 15歳以上)の組み合わせで該当する表を選択
- 年収を確認する:縦軸が義務者(支払う側)の年収、横軸が権利者(受け取る側)の年収。給与所得者と自営業者で目盛りが異なるため、就労形態に合った欄を使う
- 交差する金額帯を読む:縦と横の交差する範囲に表示されている金額が、養育費の月額の目安
年収別・養育費の目安(子ども1人・0〜14歳の場合)
以下は、義務者・権利者ともに給与所得者、権利者の年収0円を前提とした概算例です。実際の養育費は権利者の収入・自営か給与か・子の年齢構成によって変動するため、正確な金額は算定表で確認してください。
| 義務者の年収(給与) | 養育費の月額目安 |
|---|---|
| 300万円 | 2〜4万円 |
| 400万円 | 4〜6万円 |
| 500万円 | 6〜8万円 |
| 600万円 | 6〜8万円 |
| 700万円 | 8〜10万円 |
| 800万円 | 10〜12万円 |
※ 上記は算定表に基づく概算です。子どもが2人以上の場合や15歳以上の場合は別の表を参照します。また、算定表は子ども3人までを想定しており、4人以上の場合は個別の計算が必要です。
養育費算定表だけでは決まらないケースとは?
算定表は標準的な生活を前提とした目安であり、個別の事情によっては増額・減額が認められることがあります。
増額が考慮される事情
- 子どもが私立学校に通っている(または進学予定の合意がある)場合
- 子どもに持病や障がいがあり、医療費が通常より高額な場合
- 義務者の収入が算定表の上限(給与所得2,000万円)を超える場合
減額が考慮される事情
- 義務者が再婚して扶養家族が増えた場合
- 義務者の失業・病気により収入が大幅に減少した場合
- 権利者の収入が大幅に増加した場合
このような事情変更があった場合は、家庭裁判所の調停を通じて養育費の変更(増額・減額)を申し立てることができます。
養育費の取り決め方法は?口約束のリスクと書面化のメリット
養育費は父母の協議で自由に金額を決めることができます。ただし、口約束のままにしておくと後から「そんな約束はしていない」と言われるリスクがあります。取り決めの方法には主に3つの選択肢があります。
| 方法 | 強制執行力 | 費用の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 口約束のみ | なし | 0円 | 証拠が残らず不払い時に無力 |
| 離婚協議書 | なし(訴訟が必要) | 行政書士への依頼で2〜5万円程度 | 合意内容を書面化。不払い時は訴訟→判決→強制執行の流れ |
| 公正証書 | あり(強制執行認諾文言付き) | 公証人手数料+専門家費用 | 不払い時に裁判不要で差押えが可能 |
養育費の取り決めで最もおすすめなのは、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成することです。この文言があれば、相手が養育費を支払わなくなった場合に、裁判所の判決を待たずに給与や預金の差押え手続きに進むことができます。
公正証書の作成手順や費用については「離婚公正証書の作り方|必要書類・費用・手続きの流れ」で詳しく解説しています。
養育費の取り決めを書面に残しませんか?
行政書士法人Treeでは、離婚協議書や公正証書原案の作成を通じて、養育費・財産分与・親子交流(面会交流)の取り決めを書面化いたします。
- ✔ 養育費の金額・支払い方法・終期を明確に記載
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2026年4月の法改正で養育費はどう変わる?
2026年4月1日施行の改正民法(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)では、養育費に関して大きな制度変更が行われます。
法定養育費制度の創設(子ども1人当たり月額2万円)
父母が養育費の取り決めをしていない場合でも、取り決めが成立するまでの間、非監護親に対して子ども1人当たり月額2万円の支払いを請求できる制度です。法務省令で金額が定められました。
- 子ども1人:月額2万円
- 子ども2人:月額4万円(2万円 x 2人)
- 子ども3人:月額6万円(2万円 x 3人)
この制度は2026年4月1日以降に離婚したケースに限り適用され、施行前(2026年3月31日以前)の離婚には遡及しません。また、暫定的・補充的な位置づけであり、最終的な養育費の金額は父母の協議または裁判所の手続きで別途定めることが想定されています。「月額2万円で足りる」というわけではなく、最低限の生活費を迅速に確保するための仕組みです。
養育費の先取特権
養育費の不払いがあった場合に、他の債権より優先して弁済を受けられる「先取特権」が付与されます。先取特権の上限は子ども1人当たり月額8万円とされています。これにより、確定判決や公正証書などの債務名義がなくても、父母間で作成した文書に基づいて差押えの申立てができるようになり、養育費回収の入口が大きく広がります。なお、施行前に養育費の取決めがされていた場合でも、2026年4月1日以降に発生する養育費に限って先取特権が付与されます。
共同親権と養育費の関係
同じ改正法で導入される共同親権制度のもとでも、養育費の支払い義務は変わりません。共同親権を選択した場合でも、子どもと同居しない側の親は養育費を負担します。共同親権の詳細については「子どもの親権とは?決め方と判断基準を解説」の関連記事もご参照ください。
養育費で詰まりやすいポイント・よくある不備
養育費の取り決めでは、以下のような点で見落としが発生しやすくなっています。事前に押さえておくと後のトラブルを防げます。
終期(いつまで支払うか)を明確にしていない
「子どもが成人するまで」とだけ書くと、2022年の民法改正で成年年齢が18歳に引き下げられたことから、18歳なのか20歳なのか22歳(大学卒業)なのかで争いになることがあります。「子どもが満20歳に達する月まで」「大学を卒業する年の3月まで」のように具体的な年齢や時期を明記しましょう。
支払い方法の細部を決めていない
毎月の振込日、振込先口座、手数料の負担者まで決めておくと、後から「いつ払えばよいか分からない」というトラブルを回避できます。一般的には「毎月末日までに、権利者指定の口座に振り込む。振込手数料は義務者負担」と定めます。
事情変更条項を入れていない
養育費を公正証書で定めても、その後の事情変更(失業・再婚・物価変動等)に対応できるよう、「協議の上、養育費の額を変更できる」旨の条項を入れておくことが実務上は重要です。
養育費と親子交流を交換条件にしてしまう
「養育費を払わないなら子どもに会わせない」「子どもに会わせてもらえないなら養育費を払わない」という主張は法的には認められません。養育費は子どもの権利であり、親子交流は子どもの福祉のための制度です。この2つは別々の問題として切り離して取り決める必要があります。
養育費シミュレーション|算定表で目安を簡単に計算
「自分の年収だと養育費はいくらになるのか」を知りたい方は、裁判所の養育費算定表に基づく無料シミュレーションをご活用ください。父母の年収・子どもの人数と年齢を入力するだけで、養育費の目安額をすぐに確認できます。
詳しくは「養育費の相場と計算方法|無料シミュレーターで簡単に算出」をご覧ください。算定表の読み方や、年収別の早見表も掲載しています。
よくある質問
Q. 養育費はいつから請求できますか?
養育費の問題は離婚後に生じますが、従来の実務では「請求した時点から」認められるケースが大半で、過去にさかのぼって請求が認められる範囲は限定的です。離婚時に取り決めをしていなかった場合でも、後から家庭裁判所に調停を申し立てることで養育費を請求できます。2026年4月以降は、同日以降に協議離婚した場合に限り、取り決めがなくても法定養育費(月額2万円/子ども1人)が離婚時から発生するようになります(施行前の離婚には遡及適用されません)。
Q. 相手が養育費を払ってくれない場合はどうすればよいですか?
強制執行認諾文言付き公正証書がある場合は、裁判を経ずに給与や預金の差押え(強制執行)が可能です。公正証書がない場合は、家庭裁判所に養育費請求の調停を申し立て、調停調書または審判を得たうえで強制執行を行います。2026年4月からは、養育費に先取特権が付与され、債務名義がなくても差押えの申立てが可能になるなど、回収手段が拡充されます。
Q. 再婚したら養育費はどうなりますか?
権利者(受け取る側)が再婚しただけでは、養育費の支払い義務は消滅しません。ただし、再婚相手が子どもと養子縁組をした場合は、再婚相手が第一次的な扶養義務者となるため、養育費の減額が認められる可能性があります。一方、義務者(支払う側)が再婚して扶養家族が増えた場合も、減額の調停を申し立てることができます。
Q. 養育費算定表と異なる金額で合意してもよいですか?
はい、可能です。算定表はあくまで裁判所の実務で使われる目安であり、法律で定められた金額ではありません。父母の協議で算定表より高い金額・低い金額で合意することは自由です。ただし、調停や審判に進んだ場合は算定表を基準に判断されるため、著しく低い金額での合意は後から変更を申し立てられるリスクがあります。
まとめ
養育費は子どもの生活と将来を支える重要な費用です。取り決めにあたって押さえるべきポイントを整理します。
- 養育費の目安は養育費算定表で算出可能。父母双方の年収・子の人数と年齢で決まる
- 取り決めは強制執行認諾文言付き公正証書で残すのが最も安全。不払い時に裁判不要で差押え可能
- 2026年4月からは法定養育費制度(月額2万円/子ども1人・施行後の離婚に限り適用)と先取特権が新設される
- 終期・支払い方法・事情変更条項まで具体的に記載することが後のトラブル防止に不可欠
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|---|---|
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではございません。具体的なケースについては専門家へのご相談をおすすめいたします。


