離婚関連

離婚公正証書の作り方と費用|養育費・財産分与を確実に取り決める

更新: 約13分で読めます

養育費の支払日や金額を決めても、支払いが続くか不安は残ります。離婚公正証書は、合意内容を明確にし、要件を満たす金銭支払条項に執行力を備えるための書面です。この記事では、作成の流れ・費用・必要な取り決めを整理します。まずは双方が合意した内容と、不払いへの備えを確認しましょう。

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離婚公正証書とは?離婚協議書との違い

離婚公正証書とは、離婚時の取り決め(養育費・財産分与・慰謝料・面会交流など)を、公証役場の公証人が作成する公文書のことです。私人間で作成する離婚協議書とは、法的な効力に大きな違いがあります。

公正証書の法的効力(強制執行認諾条項)

公正証書の最大の特徴は、「強制執行認諾条項(強制執行認諾文言)」を付けられる点にあります。この条項は「債務者が支払いを怠った場合、直ちに強制執行に服する」という趣旨の文言で、公正証書にこの条項が記載されていれば、裁判を起こさずに相手の給与や預金口座を差し押さえることができます(民事執行法第22条第5号)。

公正証書は合意内容を明確に残し、不払い時の執行手続きを備える書面です。ただし、作成しただけで毎月の支払いが続く保証ではありません。相手の収入・資産の状況、具体的な支払条件と手続きも確認してください。

離婚協議書だけでは不十分な理由

令和3年度(2021年度)全国ひとり親世帯等調査では、離婚した母子世帯のうち、養育費を取り決めていた割合は46.7%、現在も受け取っていた割合は28.1%でした。こども家庭庁の調査資料に示された当時の推計値で、現在のすべてのひとり親家庭の割合を示す数字ではありません。取り決めと、実際に受け取れることは別の問題です。金額・支払日・終了時期を具体的に残し、不払い時の手続きを確認しておきましょう。

2026年4月1日から、取り決めた養育費には子1人あたり月8万円を上限とする先取特権が設けられました。公正証書がなくても、合意を示す文書などで裁判所へ差押えを申し立てられる場合があります。施行前の取り決めでは、施行後に生じる養育費が対象です。ただし自動的な回収ではなく、請求額・必要書類など裁判所の手続条件を満たす必要があります。公正証書は、金額や支払日を明確にし、先取特権の上限を超える養育費や財産分与・慰謝料などの金銭支払条項にも、要件を満たせば執行力を備えられる点にメリットがあります。

強制執行認諾文言付き公正証書の金銭支払条項は、要件を満たせば、支払いを命じる判決を別途得ずに強制執行を申し立てるための債務名義になります。ただし、差押えなどの裁判所の手続きは必要で、相手の財産や収入によっては回収できないこともあります。公正証書の作成だけで支払いが保証されるわけではありません。

離婚公正証書の作り方|5つのステップ

Step 1: 離婚条件の話し合い(養育費・財産分与・慰謝料・面会交流)

公正証書を作成する前提として、まず夫婦間で離婚条件を話し合い、合意する必要があります。主な取り決め事項は以下の通りです。

  • 親権者の指定(未成年の子がいる場合は必須。※2026年4月1日施行の改正民法により、離婚後も共同親権を選択できるようになりました)
  • 養育費の金額・支払方法・支払期間
  • 財産分与の内容(不動産・預貯金・車・保険など)
  • 慰謝料の有無・金額・支払方法
  • 面会交流の頻度・方法
  • 年金分割の按分割合

養育費の金額は、裁判所が公表している「養育費算定表」を参考にすると、双方が納得しやすくなります。

Step 2: 離婚協議書の作成

話し合いで合意した内容を離婚協議書として文書化します。この段階で条件を明確にしておくと、公証役場での手続きがスムーズに進みます。あいまいな表現(「適当な額を払う」「子どもが望めば会わせる」など)は避け、金額・日付・条件を具体的に記載することが大切です。

離婚協議書の作成に不安がある場合は、行政書士に依頼すると法的に必要な条項を具体的に盛り込むことができます。

Step 3: 公証役場への申し込み

離婚協議書の内容が固まったら、最寄りの公証役場に連絡して公正証書の作成を申し込みます。日本公証人連合会のホームページから全国の公証役場の所在地・連絡先を確認できます。

申し込み時に必要なものは、おおむね以下の通りです。

  • 離婚協議書(または取り決め内容のメモ)
  • 夫婦双方の本人確認書類(以下のいずれか)
    • 印鑑登録証明書(発行から3か月以内)+実印
    • 運転免許証+認印
    • マイナンバーカード+認印
  • 戸籍謄本(婚姻関係を確認するため)
  • 不動産の財産分与がある場合は登記事項証明書・固定資産評価証明書
  • 年金分割を記載する場合は年金分割のための情報通知書
  • そのほか公正証書に記載する財産がある場合は、その財産を疎明する資料(預貯金の通帳コピー、車検証、保険証券など)

Step 4: 公証人との打ち合わせ

公証人は合意内容と提出資料を確認し、公正証書の案を作成します。支払日・支払期間・振込先・特別な費用など、不明確な点を事前に整理しましょう。確認や修正に必要な回数は、内容と資料によって変わります。

Step 5: 公正証書の作成・署名

内容の最終確認を経て、公正証書を作成します。2025年10月1日から指定公証人の役場でデジタル化が順次始まり、原則として電子データで作成・保存する方式では電子サインを行います(押印不要)。紙での作成等もあるため、役場の案内に従ってください。

希望があり、公証人が相当と認める等の要件を満たせば、ウェブ会議による作成も可能です。全員が無条件にスマートフォンだけで完結できるわけではありません。本人確認・機器・代理人利用の要否を申し込み先で確認します。

正本・謄本は、紙または電子データで交付されます。紙の交付は1枚300円、電子データの提供は1通2,500円で、作成手数料とは別です。公証人連合会:デジタル化と手数料をご確認ください。

離婚公正証書に記載すべき項目一覧

公正証書に盛り込む内容は、離婚後のトラブルを防ぐために重要です。以下の項目を具体的に記載しましょう。

記載項目 記載内容の例
離婚の合意 双方が協議離婚することに合意した旨
親権者の指定 未成年の子の親権者を父母のどちらにするか(※2026年4月以降は共同親権も選択可能)
養育費 金額・支払日・振込先・支払終期(例: 子が満20歳に達する日の属する月まで)
養育費の変更条件 事情変更(失職・再婚・進学等)があった場合の協議条項
財産分与 不動産・預貯金・車両・保険解約返戻金等の分配方法
慰謝料 金額・支払方法(一括 or 分割)・支払期限
面会交流 頻度(月1回等)・場所・連絡方法・宿泊の可否
年金分割 合意分割の按分割合(上限0.5)
通知義務 住所・勤務先が変更になった場合の通知義務
清算条項 本公正証書に定めるもののほか、互いに債権債務がないことの確認
強制執行認諾条項 金銭債務の支払いを怠った場合に直ちに強制執行に服する旨

見落としがちなのが「養育費の変更条件」と「通知義務」です。子どもの進学や再婚など将来の事情変更に備えた条項を入れておくと、後々のトラブルを避けやすくなります。また、相手が転居や転職をした場合に連絡先を通知する義務を定めておかないと、いざ強制執行をしようとしても相手の所在や勤務先がわからず手続きが進まないケースがあります。

慰謝料の相場や請求方法については「離婚の慰謝料相場と請求方法」で詳しく解説しています。

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離婚公正証書の費用

公証役場の手数料(目的の価額別テーブル)

公正証書の作成手数料は、目的の価額に応じて法令で定められています(日本公証人連合会のホームページでも確認できます)。

目的の価額 手数料
50万円以下 3,000円
100万円以下 5,000円
200万円以下 7,000円
500万円以下 13,000円
1,000万円以下 20,000円
3,000万円以下 26,000円
5,000万円以下 33,000円
1億円以下 49,000円

離婚給付契約では、慰謝料・財産分与等と養育費を分けて目的の価額を算定します。2025年10月1日以降、養育費は全支払期間の総額(5年分を上限)で手数料を算定します。月額5万円を5年以上支払う養育費なら目的価額300万円に対する手数料13,000円、財産分与1,000万円なら20,000円で、この例の基本手数料は計33,000円です。分量等の加算や交付費用は別で、紙の正本・謄本は1枚300円、電子データの提供は1通2,500円です。契約内容による最終額は、公証役場の見積もりで確認してください。

行政書士に依頼した場合の費用

離婚公正証書の作成を行政書士に依頼する場合は、上記の公証役場手数料に加えて、行政書士への報酬が必要になります。行政書士は離婚協議書のドラフト作成・条件の整理・公証役場との事前調整を代行するため、内容と必要な条項を確認した書面をスムーズに仕上げることができます。

行政書士法人Treeでは、以下の料金で離婚関連書類の作成に対応しています。

サービス 料金
離婚協議書作成(ミニマム) 21,780円(税込)
離婚公正証書作成サポート 32,780円(税込)

公正証書作成の報酬には、離婚協議書の原案作成・公証役場との文案調整・必要書類のご案内が含まれます。行政書士法人Treeでは代理人プランもご用意しており、公証役場へ出向くことなく公正証書を作成することも可能です。「自分で公証役場に行くのは不安」「条件をうまく整理できない」という方は、専門家に依頼することで手間とリスクを軽減できます。

よくある質問

Q. 離婚公正証書は離婚届の提出前に作成すべきですか?

原則として、離婚届の提出前に公正証書を作成するのが望ましいです。離婚届の提出後でも作成は可能ですが、離婚が成立してしまうと相手方が交渉に応じなくなるケースがあります。協議がまとまっている段階で公正証書を作成しておくことをおすすめします。

Q. 公正証書を作成するのにどのくらいの期間がかかりますか?

合意内容、必要資料の収集、公証人との確認、役場の予約状況で変わります。初回原案の納期と、公正証書の完成日は別です。作成前に希望する期限と資料の状況を伝えて確認してください。

Q. 相手が公証役場に来てくれない場合はどうすればよいですか?

相手方が出向けない場合は、代理人を立てることで対応できます。代理人には、本人からの委任状(実印押印+印鑑登録証明書)が必要です。なお、夫婦の一方が他方の代理人を兼ねることはできません。

Q. 公正証書を作った後に内容を変更できますか?

双方が合意すれば、改めて新しい公正証書を作成して内容を変更することは可能です。合意が得られない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることで変更を求めることもできます。特に養育費は、双方の収入変動や子どもの進学など「事情の変更」があれば増減が認められることがあります。

Q. 養育費の取り決めだけでも公正証書にできますか?

養育費だけなど、特定の合意項目を公正証書にすることもできます。関連する項目を一通に整理すると確認・保管しやすくなりますが、一通にまとめるだけで手数料が安くなるとは限りません。内容ごとの算定と見積もりは公証役場に確認してください。

Q. 離婚公正証書と調停調書の違いは何ですか?

公正証書は、夫婦が合意した条件を公証役場で作成する書面です。所定の金銭支払条項に強制執行認諾文言がある場合は、別途支払判決を得ずに執行を申し立てるための債務名義になります。すべての記載が強制執行できるわけではありません。調停調書は家庭裁判所の調停で成立した内容を記録します。いずれも回収の保証ではなく、差押えなど裁判所の手続きは必要です。安全に双方の合意を得られるか、争いがあるかを踏まえて進め方を確認してください。

まとめ

離婚公正証書は、合意した養育費・財産分与等を具体的に記録するための書面です。要件を満たす強制執行認諾文言付きの金銭支払条項は債務名義になりますが、差押えには裁判所への申立てが必要で、回収を保証するものではありません。料金と役場の日程を確認して、双方の合意内容を書面化しましょう。

  • 離婚協議書だけでは強制執行力がないため、公正証書の作成を検討すべき
  • 作成の流れは「条件の話し合い〜協議書作成〜公証役場への申込〜打合せ〜署名」の5ステップ
  • 公証役場の手数料は目的の価額に応じて決まり、項目ごとに算定される
  • 養育費の変更条件・通知義務・清算条項など、見落としがちな項目も忘れずに記載する

離婚協議書・公正証書作成サポート

離婚協議書・公正証書作成について、行政書士法人Treeで対応します。ミニマム 21,780円(税込)/スタンダード 27,500円(税込)/公正証書作成サポート 32,780円(税込)。

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※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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