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離婚協議書の管轄条項|合意管轄の仕組みと専属管轄条項の書き方

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離婚協議書を作成する際、慰謝料・財産分与・養育費といった金銭の取り決めや、親子交流に関する約束に目が向きがちで、「もし将来トラブルになったとき、どこの裁判所で争うのか」という点は見落とされやすいものです。しかし、当事者が遠方に引っ越したり、約束した支払いが滞ったりして紛争が表面化したとき、「どの裁判所に申し立てればよいのか」が問題になります。あらかじめ離婚協議書のなかで管轄裁判所を合意しておく「管轄条項」を設けておけば、いざというときの手続をスムーズに進めやすくなります。本記事では、合意管轄の法的な仕組みと、離婚協議書に管轄条項を盛り込む際の一般的な考え方を、書面作成の観点から解説します。

合意管轄とは何か|民事訴訟法11条の仕組み

合意管轄とは、当事者があらかじめ「この紛争が起きたら、この裁判所で審理する」と取り決めておくことをいいます。民事訴訟法11条は、当事者が「第一審に限り」、かつ「一定の法律関係に基づく訴え」に関して、合意により管轄裁判所を定めることができると規定しています。ここで重要なのは2つの要件です。第一に、合意できるのは控訴審以降ではなく第一審の管轄に限られること。第二に、その合意は「書面でしなければ、その効力を生じない」とされている点です(同条2項)。さらに同条3項では、合意の内容を記録した電磁的記録によってされた場合も、書面によってされたものとみなすとされています。

つまり、離婚協議書という書面のなかに管轄条項を盛り込むことは、この「書面による合意」の要件を満たす自然な方法といえます。口頭で「何かあったら地元の裁判所で」と話していても、それだけでは合意管轄としての効力は生じません。書面化しておくことに意味があるのです。

管轄が問題になる場面|なぜ離婚協議書で決めておくのか

離婚協議書を取り交わした後でも、紛争が裁判所に持ち込まれる場面は起こり得ます。たとえば、協議書で約束した金銭の支払いが履行されず、その履行を求めて訴えを提起するようなケースです。このとき、原則として訴えは被告(相手方)の住所地を管轄する裁判所などに提起することになりますが、離婚後に当事者の一方が遠方へ転居していると、申立てや出頭の負担が大きくなることがあります。

あらかじめ離婚協議書のなかで「将来この協議書に関して紛争が生じた場合の第一審の管轄裁判所」を合意しておけば、どこで手続を行うかについての見通しが立ちやすくなります。特に、当事者双方の生活拠点が離れる可能性がある場合や、遠隔地への転居が予想される場合には、管轄条項を設けておく実益があります。なお、合意管轄が機能するのはあくまで「訴え」、すなわち通常の民事訴訟の場面が中心であり、後述するとおり家庭裁判所での調停・審判には別のルールが及ぶ点に注意が必要です。

離婚協議書の管轄条項の文例|専属的合意管轄と付加的合意管轄の違い

合意管轄には、大きく分けて「専属的合意管轄」と「付加的合意管轄」があります。専属的合意管轄は、「指定した裁判所のみを管轄裁判所とする」という定め方で、法律上認められる他の管轄を排除する効果があります。一方、付加的合意管轄は、法律上もともと認められる管轄に加えて、合意した裁判所も管轄裁判所に含める、という定め方です。どちらを選ぶかによって、紛争時にどの裁判所を利用できるかが変わってきます。専属的合意管轄と付加的合意管轄の違いについて、より詳しくは契約書の管轄合意条項についての記事もあわせてご覧ください。

離婚協議書の管轄条項の一般的な記載例としては、「本協議書に関して生じた紛争については、○○地方裁判所(又は○○簡易裁判所)を第一審の専属的合意管轄裁判所とする」といった文言が考えられます。専属的とする場合は「専属的」の語を明記しておくことが、後の解釈をめぐる争いを避けるうえで有用です。どの裁判所を指定するか、専属的とするか付加的とするかは、当事者双方の住所や将来の生活設計を踏まえて、双方が納得できる形で取り決めることが大切です。

家事事件には特則がある|調停・審判は合意管轄とは別の枠組み

注意が必要なのは、離婚にまつわる紛争のすべてが通常の民事訴訟になるわけではない、という点です。婚姻費用の分担、養育費、親子交流といった事項は、家庭裁判所の家事調停・審判の対象となり、これらには家事事件手続法という別の法律が適用されます。

家事事件手続法245条1項は、家事調停事件は「相手方の住所地を管轄する家庭裁判所」または「当事者が合意で定める家庭裁判所」の管轄に属すると定めています。そして同条2項により、この合意については民事訴訟法11条2項・3項(書面・電磁的記録による合意の要件)が準用されます。したがって、家事調停についても書面による管轄の合意をしておくことは可能ですが、適用される条文の枠組みは民事訴訟の合意管轄とは異なります。また、養育費に関する事項などでは、調停が不成立になった場合に審判へ移行する仕組みがあり、審判の管轄については子の住所地を基準とするなど、調停とは異なる定めが置かれている点にも留意が必要です。離婚協議書の管轄条項を考える際は、「想定している紛争が通常の民事訴訟なのか、家事事件なのか」を意識しておくと、過不足のない取り決めにつながります。

離婚協議書を確実な書面に|公正証書化という選択肢

管轄条項を含む離婚協議書は、当事者間で署名・押印した私文書として作成することもできますが、より確実な書面にしたい場合には、公正証書として作成する方法があります。離婚協議書を公正証書化しておくと、金銭の支払いに関する約束について「強制執行認諾文言」を付すことで、相手方が支払いを怠った場合に、あらためて訴訟を起こさなくても強制執行の手続に進める道が開けます。

支払いが滞ったときの備えとしては、紛争時の管轄をあらかじめ合意しておく管轄条項と、強制執行認諾文言付きの公正証書化を組み合わせて検討するのが実務的です。当事務所では、行政書士として、当事者間で合意した内容を離婚協議書という書面に正確に落とし込むサポートや、公正証書化に向けた文案づくり・準備のサポートを行っています。なお、慰謝料や財産分与の金額が妥当かどうかといった相場の判断・算定、あるいは話し合いがまとまらず調停・訴訟に進んだ場合の代理は弁護士の職務となりますので、そうした場面では弁護士にご相談ください。

管轄条項を定めるときの実務上の注意点

離婚協議書に管轄条項を盛り込む際には、いくつか気をつけたい点があります。まず、合意管轄はあくまで「第一審」に限って定められるものであり、また「一定の法律関係に基づく訴え」に関するものである必要があります。漠然と「すべての紛争」とするのではなく、「本協議書に関して生じた紛争」のように対象を特定しておくことが望ましいといえます。次に、書面でしなければ効力が生じない以上、協議書本文に明記し、当事者双方が署名・押印しておくことが基本です。

さらに、指定する裁判所は、地方裁判所と簡易裁判所のいずれを念頭に置くかによって扱える事件の範囲(訴額など)が変わるため、想定する紛争の内容と整合するように定めることが大切です。そして繰り返しになりますが、養育費・婚姻費用・親子交流などの家事事件は家事事件手続法の枠組みに服するため、これらをめぐる手続まで管轄条項一本でカバーできるわけではない点を理解しておく必要があります。条項の文言が当事者の意図と食い違っていると、いざというときにかえって争いの種になりかねませんので、書面化の段階で慎重に整えておくことをおすすめします。

離婚協議書の管轄条項の書き方や、公正証書化に向けた書面作成について、料金は個別にお問い合わせください。ご相談は何度でも無料です。詳しくはこちらからお問い合わせください。

まとめ

離婚協議書の管轄条項は、将来の紛争に備えて「どこの裁判所で第一審を争うか」をあらかじめ書面で合意しておく条項です。民事訴訟法11条により、合意管轄は第一審に限定され、書面(または電磁的記録)でしなければ効力を生じません。一方で、養育費・婚姻費用・親子交流などの家事調停・審判には家事事件手続法という別の管轄ルールが及ぶため、通常の民事訴訟に関する管轄条項と、家事事件に関する管轄の合意を混同しないことが重要です。当事務所では、当事者間で合意した内容を離婚協議書として正確に書面化し、公正証書化に向けた準備までサポートいたします。金額の妥当性の判断や調停・訴訟の代理が必要な場面では弁護士と連携・お住み分けのうえ、適切な専門家へおつなぎします。離婚協議書の作成をお考えの方は、お気軽にご相談ください。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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