離婚関連

離婚後の住居・住宅ローン整理|持ち家・賃貸住宅・契約者変更・敷金清算の実務

更新: 約13分で読めます

離婚後の生活で最も大きな課題となるのが「住居をどうするか」です。持ち家の場合は、誰が住み続けるか、所有名義・住宅ローン・売却時の精算をどう整理するかが問題になります。賃貸住宅の場合は、契約者変更、連帯保証人の差替え、敷金清算、原状回復費用の負担が問題になります。これらを曖昧なまま離婚すると、後年に大きなトラブルへ発展します。本記事では、行政書士の立場から、持ち家・賃貸それぞれのケース別整理、住宅ローンの取扱い、離婚協議書での明記事項、公正証書化のポイントまでを実務に即して解説します。

結論:離婚後の住居問題は「誰が住むか」「所有名義・賃貸契約名義をどうするか」「住宅ローンや住居費を夫婦間でどのように負担するか」「将来売却・退去・移転時の取扱い」の4点を離婚協議書で明確に定め、公正証書化することで紛争を防ぎやすくなります。もっとも、住宅ローンの債務者変更や連帯保証人解除は金融機関の承諾が必要であり、夫婦間の合意だけで金融機関に対する責任が当然に変更されるわけではありません。所有権移転登記は司法書士、譲渡所得税などの税務判断は税理士、住宅ローンの債務者変更・借換え・連帯保証人解除については金融機関の審査・承諾が必要です。金融機関との交渉や紛争性のある対応が必要な場合は、弁護士等への相談も検討します。

離婚協議書・公正証書サポート

行政書士法人Treeでは、住居・住宅ローン・養育費・財産分与等を網羅した離婚協議書の作成をサポートしています。公正証書化の起案・公証役場との調整まで対応可能です。

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1. 離婚後の住居問題はなぜ重要か

住居は婚姻生活の物理的・心理的な中心であり、離婚後も生活再建の基盤となる場所です。とくに未成年の子がいる場合、住居の選択は子の通学・通園・友人関係・心理的安定に直結します。住居を急に変えなければならない事態を避けるため、離婚協議の段階で「誰が」「どの住居に」「いつまで」「どのような費用負担で」住み続けるかを明確に決めておく必要があります。

また、住居には不動産(持ち家)であれ賃貸であれ、所有権・賃借権・住宅ローン債務・連帯保証人など複雑な法律関係が絡みます。離婚届の提出だけでこれらが自動的に整理されるわけではないため、離婚協議書での明記が不可欠です。

根拠法令・参考条文

  • 民法768条(財産分与請求権)
  • 民法762条(夫婦間における財産の帰属)
  • 民法819条(離婚又は認知の場合の親権者)※令和8年4月1日施行の改正民法により共同親権の選択が可能に
  • 民法766条・766条の3(離婚後の子の監護に関する事項・法定養育費)
  • 民法1028条以下(配偶者居住権/※相続発生時の権利であり離婚とは別制度)
  • 不動産登記法(所有権移転登記等)
  • 借地借家法(賃貸借契約の承継・更新)
  • 民事執行法22条5号(強制執行認諾文言付公正証書/金銭等の給付を目的とする一定の請求について債務名義となるもの)

2. 持ち家のケース別整理

ケース1:夫名義・夫が住み続ける(妻と子が転居)

最もシンプルなケースです。夫が住宅ローンを単独債務として支払い続け、妻は財産分与として住宅の評価額に応じた金銭(代償金)を受け取ります。住宅ローン残債が住宅評価額を上回る「オーバーローン」の場合、財産分与額はゼロまたはマイナスとなり、別途の精算方法を検討します。

ケース2:夫名義・妻が住み続ける(妻と子が居住、夫が転居)

子の生活環境を維持するため選択されることの多いケースですが、最も法律関係が複雑になります。

  • 所有名義は夫のまま、妻が無償または有償で居住する形が多い
  • 住宅ローンが夫名義で残っている場合、夫が支払いを継続するか妻が支払いを肩代わりするかを明確化
  • 将来、夫が住宅を売却した場合や住宅ローンを滞納して競売となった場合、妻と子の居住継続が困難になるリスクがあるため、使用貸借契約や賃貸借契約を別途締結することも検討します。ただし、使用貸借は第三者に対する対抗力が弱く、賃貸借であっても抵当権や競売との関係で保護に限界があるため、住宅ローンの返済状況・抵当権・売却禁止に関する合意などを総合的に確認する必要があります。
  • 名義変更(妻への所有権移転)を行う場合、住宅ローンの債務者変更について金融機関の承諾が必要

ケース3:共同名義の住宅(共有持分の整理)

夫婦共有名義の場合、離婚後も共有状態が続くと将来のトラブルの温床になります。原則として、いずれかの名義に統一するか、売却して持分相当額を分配することが望ましい対応です。共有持分の移転登記は司法書士の業務範囲となります。

ケース4:売却して売却代金を分配

双方が住み続ける必要がない、またはオーバーローンを清算したい場合に選択されます。

  • 売却価格と住宅ローン残債を比較して、アンダーローン(売却益あり)かオーバーローン(売却損)かを確認
  • アンダーローンの場合、売却代金から諸費用・住宅ローン残債を控除した残額を財産分与の対象として分配
  • オーバーローンの場合、不足分を双方でどう負担するか(任意売却・自己資金補填等)を協議
  • 売却益が出た場合、譲渡所得税の課税対象となる可能性があり税理士の確認が必要

3. 住宅ローンの取扱い

住宅ローンの契約形態は離婚後の責任関係を大きく左右します。代表的な3形態は以下の通りです。

(1) 単独債務

夫または妻のいずれか一方のみが債務者となっているケース。離婚後も契約上の債務者がそのまま支払責任を負います。返済者と居住者が異なる場合、住宅ローンが滞納されると居住者に退去リスクが生じるため、離婚協議書で支払を約束させ、公正証書化して強制執行認諾文言を付しておくことが望まれます。

(2) 連帯債務

夫婦双方が同等の債務者となっているケース(フラット35の収入合算等で多い)。離婚しても双方が等しく全額の返済義務を負うため、片方の名義から外れるには金融機関の承諾を得て債務者変更を行うか、借換えによって単独債務化する必要があります。

(3) 連帯保証

主債務者が一方、もう一方が連帯保証人となっているケース。連帯保証人は主債務者が滞納した場合に全額の支払義務を負うため、離婚後は連帯保証人を外れたいというニーズが高い反面、金融機関は同等以上の信用力を持つ保証人への差替えを求めるのが通常です。

名義変更・債務者変更の手続

住宅ローンの名義変更は金融機関の承諾が必須であり、簡単には認められません。実務では以下の選択肢を組み合わせて対応します。

  • 借換え(別の金融機関で単独債務として組み直す)
  • 住宅の売却+一括返済
  • 親族からの援助で繰上げ返済
  • 所有名義はそのままに、内部負担割合を離婚協議書で明記

※ 不動産の所有権移転登記は司法書士の業務範囲です。提携司法書士をご紹介します。

4. 養育費・婚姻費用と住居費の関係

非監護親が住宅ローンを支払い続け、監護親と子がその住宅に住むケースでは、住宅ローンの支払が住居費補填の意味を持つことがあります。ただし、住宅ローンには不動産の資産形成部分も含まれるため、当然に養育費と相殺できるものではなく、原則としては財産分与の中で清算すべき問題として整理されます。

家裁実務では、住宅ローンが資産形成的側面を超えて義務者が二重に住居費を負担しているといえる場合に限って、標準的な住居関係費の範囲内で養育費・婚姻費用が調整されることがあります。住宅ローン支払全額をそのまま養育費から控除する整理は、一般的には採用されません。

離婚協議書では、住宅ローン支払と養育費の関係を明示的に定めること、また将来住宅ローンを完済した時点・売却した時点での養育費の見直し条項を入れておくことが望まれます。

5. 賃貸住宅のケース別整理

ケース1:契約者夫が転居・妻と子が住み続ける

妻と子が住み続ける場合、家主・管理会社の承諾を得て、契約者変更または新たな賃貸借契約の締結を行う必要があります。実務上は、単なる名義変更ではなく、妻を契約者とする再審査、保証会社への再加入、連帯保証人の差替え、敷金・礼金・事務手数料の再設定が求められることもあります。連帯保証人が夫の親族である場合は、保証人の差替えも併せて検討します。

ケース2:契約者夫が住み続け、妻が新住居へ

名義はそのままで問題ありませんが、妻が転居先の賃貸契約を新規に締結することになるため、敷金・礼金・引越費用等の負担を離婚協議書で取り決めておきます。

ケース3:双方転居(敷金・礼金の返還)

賃貸借契約を解約する場合、敷金返還請求権は原則として賃貸借契約上の賃借人に帰属します。そのうえで、婚姻中に形成された実質的な財産として夫婦間でどのように精算するか、原状回復費用を誰が負担するかを離婚協議書で明記します。

6. 離婚協議書での明記事項

住居に関する条項は、離婚協議書で以下の項目を最低限カバーする必要があります。

  1. 住居の所有名義・居住権限:誰が所有者または賃借人で、誰がどの根拠(所有、賃貸借、使用貸借等)により使用するかを明確化
  2. 住宅ローン残債の支払責任:誰が、いつまで、どの口座から支払うか
  3. 名義変更の手続協力義務:所有権移転登記・住宅ローン名義変更等への協力
  4. 居住継続の期間:例「子が満20歳に達する月まで」「妻が再婚するまで」等
  5. 将来の売却・移転時の取扱い:売却益の分配方法、移転費用の負担、事前通知義務
  6. 固定資産税・管理費・修繕費の負担:日常的に発生する費用の分担
  7. 火災保険等の名義と保険料負担
  8. 住宅ローン滞納時の対応:通知義務・代位弁済の取扱い

7. 公正証書化のメリット

代償金、養育費、賃料相当額、立替金の精算金など、夫婦間で一方が他方に支払う金銭債務については、強制執行認諾文言を付した公正証書(民事執行法22条5号)にしておくことで、債務不履行があった場合に裁判を経ずに強制執行に移れる可能性があります。一方、住宅ローンを金融機関へ支払う義務そのものは金融機関との契約に基づくため、元配偶者が公正証書により当然に金融機関への支払を強制執行できるわけではありません。夫婦間では、滞納時の通知義務、立替払いをした場合の求償、売却時の精算方法などを定めておくことが重要です。

2025年10月1日施行の改正公証人手数料令により、目的価額が算定不能の場合は13,000円、目的価額が50万円以下の場合は3,000円とする区分など、手数料体系が見直されています。離婚協議書を公正証書化する場合は、養育費、財産分与、慰謝料、代償金など、定める金銭債務や財産給付の内容ごとに手数料が算定されるため、実際の費用は事案により異なります。事前に公証役場へ確認することをお勧めします。

8. 配偶者居住権との区別・その他の周辺手続

民法1028条以下に定める「配偶者居住権」は、相続発生時に配偶者が被相続人所有の建物に居住し続けられる権利であり、離婚時には適用されません。離婚時の住居確保は、所有権移転・賃貸借契約・使用貸借契約等の個別の契約で対応する必要があります。

その他、離婚と同時に検討・実施すべき手続として以下があります。

  • 住民票の異動・世帯主変更
  • 健康保険・年金の切替
  • 子の転校・転園手続
  • 運転免許証・銀行口座等の住所変更
  • 火災保険・地震保険の契約者変更
  • 水道・電気・ガス等の契約者変更

料金プラン

プラン 料金(税込) 主な内容
離婚協議書(基本プラン) 21,780円 シンプルな取り決めの協議書作成
離婚協議書(標準プラン) 27,500円 住居・養育費・財産分与等を網羅
離婚協議書(充実プラン) 32,780円 住宅ローン関連条項・将来見直し条項等を含む
公正証書化サポート 62,780円 起案・公証役場との調整・同行

※ 公証役場手数料は別途実費。改正公証人手数料令(2025年10月1日施行)に準拠。

※ 不動産の所有権移転登記費用は別途、提携司法書士の見積によります。

※ 譲渡所得税等の税務についてのご相談は提携税理士をご紹介します。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 持ち家を売らずに妻と子が住み続けたいのですが可能ですか。
A. 可能です。所有名義・住宅ローン名義・実際の居住者を切り分け、離婚協議書で居住の根拠(使用貸借・賃貸借等)と期間、住宅ローン支払責任を明記します。

Q2. 住宅ローンが夫名義のままで妻が住み続ける場合、夫が滞納したらどうなりますか。
A. 住宅ローンが滞納されると、金融機関は抵当権に基づき競売を申し立てる可能性があり、最終的に妻と子は退去を余儀なくされるおそれがあります。公正証書を作成しても、金融機関の競売手続を当然に止められるわけではありません。そのため、離婚協議書では、滞納時の事前通知義務、妻が立替払いをした場合の求償、売却時の精算方法、居住終了時の転居費用負担などを具体的に定めておくことが重要です。

Q3. 共有名義のままにしておくとどうなりますか。
A. 将来の売却・贈与・相続時に元配偶者の同意が必要となり、紛争の原因になります。離婚を機に名義を統一するか売却するのが望ましい対応です。

Q4. 連帯保証人を外れるにはどうすればよいですか。
A. 金融機関に同等以上の信用力を持つ代替保証人を立てるか、借換えにより単独債務化する必要があります。離婚しただけでは自動的には外れません。

Q5. オーバーローンの住宅はどう整理すればよいですか。
A. 任意売却・自己資金補填・住み続けながら返済継続のいずれかが選択肢になります。それぞれメリット・デメリットがあるため、金融機関と協議のうえ決定します。

Q6. 賃貸住宅で契約者が夫の場合、妻が住み続けるには名義変更が必要ですか。
A. 家主・管理会社の承諾を得て名義変更を行うのが原則です。連帯保証人の差替えも併せて検討します。

Q7. 住宅ローン支払を養育費の代わりにすることはできますか。
A. 住宅ローン支払が、監護親と子の住居費を支える意味を持つことはあります。ただし、住宅ローンには資産形成部分も含まれるため、当然に養育費の代わりになるわけではありません。養育費は子の生活保持義務に基づくものとして別途算定し、住宅ローン支払をどの範囲で住居費負担として考慮するかを明確に定めることが重要です。

Q8. 売却益が出た場合の税金はどうなりますか。
A. 譲渡所得税の課税対象となる可能性があります。マイホーム特例(3,000万円特別控除)は、配偶者間の譲渡では適用されないため、特例の適用を前提とする譲渡は離婚成立後に行うのが原則です。具体的な適用判定や試算については、税理士法2条により税務相談・税務代理は税理士の独占業務であるため、提携税理士をご紹介します。

Q9. 離婚協議書を公正証書にしなくても効力はありますか。
A. 私文書としての効力はありますが、強制執行を行うには別途裁判手続が必要です。住宅ローン残債や代償金等の金銭債務がある場合は公正証書化を強く推奨します。

Q10. 配偶者居住権を離婚時に設定できますか。
A. 配偶者居住権は民法1028条以下に基づく相続時の権利であり、離婚時には適用されません。離婚時の居住確保は、所有権・賃貸借・使用貸借等の個別契約で対応します。

Q11. 共同親権制度の施行により住居の取扱いに影響はありますか。
A. 令和6年法律第33号により、令和8年(2026年)4月1日から離婚後の共同親権制度が施行されています。共同親権を選択する場合、子の居所、転居、進学など子の監護に関する重要事項について、父母間で協議・合意が必要となる場面が想定されます。ただし、日常的な監護に関する事項や急迫の事情がある場合などは個別の整理が必要です。離婚協議書で住居・転居・連絡方法・協議方法に関する取り決めを明確化しておくことの重要性が高まっています。

Q12. 離婚協議書作成から公正証書化までどのくらい期間がかかりますか。
A. 内容のヒアリングから原案作成まで概ね2〜4週間、公証役場との調整・案文確認・当事者の意思確認・必要書類の準備を含めると、全体で1〜2か月程度を要することが多いです。ただし、公証役場の混雑状況、相手方の確認スピード、委任状・印鑑登録証明書等の準備状況により、さらに時間がかかる場合があります。

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まとめ

離婚後の住居問題は、感情的な対立が生じやすく、また法律関係も複雑です。持ち家・賃貸を問わず、「誰が住むか」「名義をどうするか」「住宅ローン・住居費を夫婦間でどう負担するか」「将来売却・退去・移転時の取扱い」を離婚協議書で明確に定め、夫婦間の金銭債務については公正証書化することで、将来のトラブルを未然に防ぎやすくなります。所有権移転登記は司法書士、譲渡所得税などの税務判断は税理士、住宅ローンの債務者変更・連帯保証人解除・借換えは金融機関の審査・承諾が必要です。また、金融機関や相手方との交渉代理、紛争性のある対応は弁護士等の専門領域となります。行政書士法人Treeでは、これらの業務分担を踏まえ、離婚協議書の作成・公正証書化の入口をサポートします。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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