離婚関連

特有財産とは|離婚時の財産分与で対象外となる財産の判定方法と立証実務

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離婚時の財産分与で最も争いになりやすいのが「どこまでが分与の対象か」という点です。とくに、結婚前から保有していた資産や、親から相続・贈与を受けた財産は「特有財産」として原則分与の対象外となりますが、その判定は形式的な名義だけで決まるものではありません。本記事では、行政書士の業務範囲である協議離婚に伴う離婚協議書・公正証書の作成を念頭に、共有財産と特有財産の区別、判定基準、立証資料の整え方までを解説します。

本記事の結論:

  • 財産分与の対象は「婚姻中に夫婦の協力で形成された財産」(共有財産)に限られ、婚姻前からの資産や相続・贈与で得た資産は特有財産として原則対象外(民法762条1項)。
  • 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は共有に属するものと推定されるため(民法762条2項)、特有財産であることを主張する側が取得時期・原資・取得経緯を客観資料で立証する必要があります。
  • 婚姻後の管理状況や混在の有無によって特有財産性が薄まるケースがあるため、取得時期・取得経緯・名義の三点から整理し、合意内容を離婚協議書(できれば公正証書)に明記することが重要です。
  • 令和8年(2026年)4月1日施行の改正民法768条2項ただし書により、家庭裁判所への財産分与請求の期間制限が従来の2年から5年に伸長されました(経過措置:施行日前の離婚は従来どおり2年)。
  • 調停・訴訟代理、相手方との交渉、慰謝料金額の算定助言は弁護士業務、不動産登記は司法書士業務、税務(譲渡所得・贈与税等)は税理士業務のため、必要に応じて提携専門家をご紹介します。

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1. 根拠法令と基本枠組み

1-1. 民法762条:夫婦別産制

民法762条1項は「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産とする」と定めています。これを夫婦別産制と呼び、夫婦であっても財産は原則として個別に帰属するというのが日本民法の建前です。同条2項は「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する」と定めています。

1-2. 民法768条:財産分与請求権と請求期間(2年→5年に伸長)

民法768条は、協議離婚における財産分与請求権(1項)、協議が調わないときの家庭裁判所への協議に代わる処分の請求(2項本文)、家庭裁判所が考慮すべき要素(3項)を定めています。財産分与の性質は、(1)清算的要素、(2)扶養的要素、(3)慰謝料的要素の三つに分けて議論されますが、実務の中心は(1)清算的財産分与、すなわち婚姻中に夫婦の協力で築いた財産の清算です。

同条2項ただし書は、家庭裁判所への財産分与請求の期間制限を定めています。令和8年(2026年)4月1日施行の改正民法(令和6年法律第33号)により、この期間制限が「離婚の時から2年」から「離婚の時から5年」に伸長されました。経過措置(民法附則4条)により、施行日前(2026年3月31日以前)に離婚した場合は従来どおり2年が適用されます。施行日以後(2026年4月1日以降)に離婚した場合に5年が適用されますので、離婚日が施行日の前後どちらかによって取扱いが大きく異なる点に注意が必要です。

1-3. 民法754条(夫婦間契約取消権)削除と共同親権制度の施行

令和6年法律第33号により民法754条(夫婦間契約取消権)は削除され、共同親権制度の導入を含む改正法は令和8年(2026年)4月1日に施行されました。民法754条の削除により、婚姻中に夫婦間で交わされた契約(婚前契約・夫婦間の財産契約・贈与契約等)を婚姻中に任意に取り消すことができなくなり、夫婦間契約の法的安定性が高まる方向の改正です。離婚後の親権・養育費・財産分与の運用にも影響するため、改正後の制度を踏まえて離婚協議書を整備することが望まれます。

2. 財産分与の対象になる共有財産と対象外となる特有財産の区別

2-1. 共有財産(財産分与の対象)

共有財産とは、婚姻期間中に夫婦の協力によって形成・維持された財産を指します。名義がいずれの配偶者であるかを問いません。代表例は次のとおりです。

  • 婚姻後に得た給与・賞与・自営業者の事業所得から形成された預貯金
  • 婚姻中に購入した不動産(自宅・収益物件等)
  • 婚姻中に積み立てた生命保険の解約返戻金相当額
  • 婚姻中に積み立てた個人年金・財形貯蓄
  • 婚姻中に取得した自動車・家財・貴金属
  • 退職金(婚姻期間に対応する部分)
  • 株式・有価証券・投資信託・暗号資産(婚姻中の取得分)

2-2. 特有財産(原則対象外)

民法762条1項に基づき、次の財産は特有財産として原則分与の対象になりません。

  1. 婚姻前から所有していた財産(婚姻前の預貯金、独身時代に購入した不動産、相続予定で承継済みの資産等)
  2. 婚姻中に親族から相続・贈与された財産(親からの相続預金、祖父母からの贈与、特別受益として扱われる金銭等)
  3. 社会通念上、配偶者の協力と無関係に取得したと評価できる財産(個人の慰謝料、人身傷害保険金のうち精神的損害填補部分等)

3. 特有財産の判定基準

特有財産の判定は、形式的な名義のみで行うのではなく、次の三要素を総合考慮して実質的に判断されます。

3-1. 取得時期

婚姻成立日(婚姻届の受理日)を基準として、その前後どちらに取得したかが第一の判断要素です。婚姻前取得であれば原則特有財産、婚姻中取得であれば、原資や取得経緯を踏まえ、夫婦の協力によって形成された実質的共有財産かどうかを検討します。なお、夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、民法762条2項により共有に属するものと推定されます。

3-2. 取得経緯

婚姻中の取得であっても、原資が相続・贈与・婚姻前資産の換価金である場合は特有財産性が認められます。取得経緯の追跡(トレース)が可能かどうかが鍵です。

3-3. 名義

名義は重要な判断要素ですが決定的ではありません。配偶者名義の預金であっても、原資が他方配偶者の婚姻中の収入であれば共有財産と評価される一方、自己名義の預金でも原資が相続金である場合は特有財産と評価されえます。

4. 個別資産ごとの取扱い

4-1. 婚姻前購入の不動産と住宅ローン

婚姻前に取得した不動産は原則として特有財産です。ただし、婚姻後に夫婦の収入(共有財産)から住宅ローンを返済している場合、返済に充てられた共有財産相当額は財産分与の対象となるのが実務の一般的取扱いです。具体的には、婚姻時点のローン残高と離婚時点のローン残高の差額のうち、共有財産で返済した部分を清算対象に算入します。さらに婚姻後の値上がり益のうち、共有財産による返済が寄与した割合に対応する部分を分与対象に含める考え方もあります。

4-2. 婚姻前預貯金の混在

婚姻前から保有していた預貯金は特有財産ですが、婚姻後に給与振込・生活費引落しに使う口座と一体化させてしまうと、婚姻後の入出金が混ざり、特有財産部分の特定が困難になります。判例・実務では、混在によりトレースができない部分は共有財産と推定されやすく、特有財産性を主張する側が婚姻時点残高や入出金履歴で立証する必要があります。婚姻時に独身時代の資産は別口座に分けておくことが有効な防衛策です。

4-3. 婚姻中の親族からの贈与(暦年贈与・特別受益)

婚姻中に親族から受けた贈与は特有財産です。親からの結婚資金、住宅取得資金贈与、暦年贈与、孫への教育資金贈与の名義人が配偶者本人である場合等は、贈与契約書・通帳記録・贈与税申告書等で取得経緯を立証することが重要です。なお、贈与税の課税関係や住宅取得等資金の非課税特例の適用可否は税務判断であり税理士の専門領域です。

4-4. 相続財産

婚姻中に親族から相続した財産は特有財産です。遺産分割協議書・相続登記の登記事項証明書・被相続人の死亡日記載書類等で取得経緯と時期を立証します。相続不動産から得られる賃料収益については、特有財産から生じた果実として整理される余地がある一方、婚姻中の管理・維持への配偶者の寄与、賃料収入の管理方法、生活費への充当状況などによって、清算対象として考慮されることがあります。

4-5. 退職金

退職金は賃金の後払い的性質をもつため、すでに支給されている場合や、近い将来に支給される蓋然性が高い場合には、婚姻期間に対応する部分が財産分与の対象となり得ます。実務では、基準時点で自己都合退職した場合の退職金額や退職金見込額を基礎に、婚姻期間と勤続期間の割合で按分する方法などが用いられますが、具体的な算定方法は事案により異なります。すでに支給済みの退職金は預貯金に混在しているケースが多いため、入金履歴と支給明細で原資を特定します。

4-6. 子の名義の預貯金

子の名義の預貯金であっても、原資が夫婦の収入である場合は実質的に夫婦の共有財産と評価されることがあります。一方、祖父母からの贈与・お年玉など、子に帰属する趣旨が明確な原資のみで構成される場合は、子固有の財産として分与対象から外す扱いが考えられます。児童手当の積立については、管理状況や当事者の合意、生活費への充当状況等により評価が分かれるため、個別に整理する必要があります。原資の区別と入出金記録の保存が判断の決め手となります。

4-7. 借入金・住宅ローン

夫婦共同生活のために負担した債務(住宅ローン、教育ローン、生活費の借入等)は、財産分与の枠組みで考慮されます。プラスの財産から夫婦共同債務を控除した純資産を分与の基礎とするのが一般的な処理です。一方、配偶者の個人的浪費・ギャンブル・個人事業の負債等は、原則として共同債務として控除されません。

4-8. 事業用財産・自営業者の事業財産

個人事業主の事業用資産(店舗・機械設備・在庫・売掛金)は、婚姻中に夫婦の協力で形成された部分が分与対象となり得ます。配偶者が経理・事務を担っていた場合は協力寄与が認められやすく、寄与度の評価が論点になります。一方、法人化されている場合、法人名義の資産そのものは原則として法人に帰属するため、配偶者個人が保有する株式・出資持分の評価が中心的な問題になります。

4-9. 株式・有価証券・投資信託・暗号資産

婚姻中に取得した株式・投資信託・暗号資産は共有財産です。婚姻前からの保有分は特有財産ですが、配当・分配金の再投資や売買繰り返しによる混在が生じやすく、口座履歴・取引報告書での原資追跡が必要になります。暗号資産はウォレットアドレス・取引所の取引履歴で時期と取得価額を特定します。財産分与の対象範囲を確定する基準時(別居時・離婚時等)と、評価額を算定する基準時を合意で明確にしておきます。

5. 特有財産の立証責任・証拠資料・必要書類

5-1. 立証責任の所在

民法762条2項により、夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は共有に属するものと推定されます。財産分与実務では、婚姻中に形成された財産について、特有財産性を主張する側が取得時期・原資・取得経緯を客観資料で説明する必要があります。漠然と「相続で得た」「親からもらった」と述べるだけでは足らず、客観資料による裏付けが必要です。

5-2. 取得時期の証明

  • 不動産:登記事項証明書(取得年月日)、売買契約書
  • 預貯金:婚姻日時点の残高証明書、通帳の取引履歴
  • 有価証券:口座開設書類、取引報告書、保有銘柄の取得日記録

5-3. 取得経緯の証明

  • 贈与:贈与契約書、贈与税申告書(提出している場合)、振込記録
  • 相続:被相続人の戸籍謄本、遺産分割協議書、相続税申告書、相続登記済み登記事項証明書
  • 婚姻前資産の換価:売却契約書と入金記録、預貯金からの振替履歴

5-4. トレース(資金追跡)

特有財産性を維持するには、取得から現在までの資金の流れを口座記録で追えることが望ましいです。混在を避け、可能であれば特有財産専用口座を設けておくと、後の紛争予防に有効です。

6. 公正証書化のメリット

離婚協議書は当事者間の合意書ですが、公正証書化(強制執行認諾文言付)することで、養育費・財産分与金等の一定額の金銭支払債務について、相手が支払を怠った場合に裁判手続を経ずに強制執行が可能となります。財産分与の対象範囲・特有財産の確認・分与金額・支払方法・期限等を明文化しておくことで、将来の紛争予防効果が高まります。なお、特有財産の確認条項や財産分与の対象範囲の確認条項それ自体は、直ちに強制執行の対象となるものではなく、将来の紛争予防・証拠化の意味が中心です。

2025年10月1日施行の公証人手数料令改正により、目的価額の算定が不能な場合の手数料は13,000円、目的価額50万円以下の場合は3,000円と改正されています。もっとも、離婚給付契約では慰謝料・財産分与・養育料などを別個の法律行為として扱い、それぞれ手数料を算定する取扱いがあるため、具体的な手数料は公証役場での見積りが必要です。

7. 行政書士法人Treeの料金(離婚関連)

サービス 料金(税込) 内容
離婚協議書作成サポート(基本) 21,780円 協議内容のヒアリング・基本条項の協議書作成
離婚協議書作成サポート(標準) 27,500円 財産分与・養育費等の条項を含む協議書作成
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公正証書サポート 62,780円 協議書原案作成・公証役場との連絡調整・同行

※ 公証役場手数料は別途。初回相談無料、オンライン相談対応。

8. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 結婚前から持っていたマンションは財産分与の対象になりますか?

原則として特有財産であり対象外です。ただし、婚姻後に夫婦の収入で住宅ローンを返済している場合、その返済に充てた共有財産相当額や寄与に応じた値上がり益部分が分与対象になることがあります。

Q2. 親から相続した預金は対象になりますか?

相続による取得は特有財産であり原則対象外です。遺産分割協議書・通帳の入金履歴等で取得経緯を立証できるよう備えてください。

Q3. 配偶者名義の預金でも、原資が私の婚姻前の貯金なら特有財産ですか?

名義よりも原資が重視されるため、立証ができれば特有財産として扱われる余地があります。婚姻前残高証明と振替記録の保存が鍵となります。

Q4. 婚姻中に親から贈与された住宅取得資金はどうなりますか?

受贈者個人の特有財産です。贈与契約書・振込記録・贈与税申告書等で立証します。なお、贈与税の申告要否や住宅取得等資金贈与の非課税特例の適用は税務判断のため税理士にご確認ください。

Q5. 退職金はまだ受け取っていません。それでも分与対象ですか?

近い将来に支給される蓋然性が高い場合は、婚姻期間に対応する部分が分与対象になりえます。具体的な算定方法は事案により異なるため、争いがある場合は弁護士にご相談ください。

Q6. 子ども名義の預金通帳はどう扱いますか?

原資が夫婦の収入であれば実質的に共有財産と評価されることがあります。原資が祖父母からの贈与等で明確に子に帰属する場合は子固有の財産として扱います。原資別の入出金記録が判断材料になります。

Q7. 住宅ローンはどう清算しますか?

夫婦共同生活のための債務はプラスの財産から控除する処理が一般的です。オーバーローン(債務超過)の場合の取扱いや債務引受の方法は複雑なため、住宅の処分方針も含めて慎重な検討が必要です。

Q8. 暗号資産も財産分与の対象ですか?

婚姻中に取得した暗号資産は対象になります。評価の基準時(別居時か離婚時か)と価額の算定方法を合意で明確にしておくことが望まれます。

Q9. 別居後に得た収入は分与対象ですか?

別居以後は夫婦の協力関係が解消されたとみて、別居後に新たに形成された財産を分与対象から外す扱いが多いです。ただし、別居後も経済的協力や資産形成への寄与がある場合には評価が分かれるため、基準時を合意で確定させておくことが重要です。

Q10. 不動産の名義変更や住宅ローンの債務者変更は誰が手続しますか?

不動産の所有権移転登記は司法書士業務、住宅ローンの債務者変更は金融機関との手続です。当事務所では提携司法書士をご紹介します。

Q11. 財産分与に税金はかかりますか?

不動産等の財産分与に伴う譲渡所得課税や、過大分与とされた場合の贈与税等の論点があります。税務に関する具体的判断は税理士法2条により税理士の専門領域のため、提携税理士にご相談いただけます。

Q12. 相手と話し合いが進まない場合はどうすればよいですか?

協議で合意に至らない場合は、家庭裁判所の調停・審判による解決となります。調停申立書類の作成代理や相手方との交渉・代理人活動は弁護士業務のため、当事務所では提携弁護士をご紹介します。

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まとめ

財産分与の対象は「婚姻中に夫婦の協力で形成された財産」に限られ、婚姻前資産・相続贈与資産は特有財産として原則対象外です。判定は名義のみではなく、取得時期・取得経緯・名義の三要素を総合考慮して実質的に行われます。婚姻前資産の混在による特有財産性の希薄化、住宅ローン返済の処理、退職金の按分、子名義預金の実質判断など、論点は多岐にわたります。客観資料による立証準備を整え、合意内容を離婚協議書(できれば公正証書)に明記することが、将来の紛争予防につながります。協議離婚に伴う書面化のサポートは行政書士の業務範囲ですので、お気軽にご相談ください。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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