結論から言えば、離婚調停の調停委員(家事調停委員)は、最高裁判所が任命する非常勤の裁判所職員であり、裁判官1人とともに「調停委員会」を構成して、夫婦双方の言い分を交互に聴き取り、合意による解決を仲介する中立の調整役です。判決のように結論を命じる権限はありませんが、調停が成立して合意が調停調書に記載されると、その記載は確定判決と同一の効力を持ちます(家事事件手続法268条1項)。本記事では、家事事件手続法と最高裁判所規則に基づき、調停委員の選任手続き・進行・調停成立までの役割を制度として解説します。行政書士法人Treeは、協議離婚における離婚協議書・公正証書原案の作成と事実整理を担う行政書士法人です。調停・訴訟の代理は弁護士の職域のため、必要な場合は提携弁護士と連携してご案内します。
目次
調停委員とは|家事調停委員の法的な位置づけ
離婚調停(夫婦関係調整調停)は、家庭裁判所の「調停委員会」が主宰します。調停委員会は、裁判官1人および家事調停委員2人以上で組織すると定められており(家事事件手続法248条1項)、離婚調停の実務では男性・女性各1人の計2人の家事調停委員が指定される運用が一般的です。裁判所の説明でも、家事調停では男女1人ずつを指定する配慮がされているとされています。
家事調停委員は、非常勤の裁判所職員という身分を持ち、担当した事件の処理状況に応じて手当が支給されます。調停委員会としての判断が必要な場面では評議が行われ、決議は過半数の意見により、可否同数のときは裁判官が決します。評議の内容は秘密とされています。
調停委員の選任手続き|任命権者・資格要件・任期
家事調停委員の選任は、最高裁判所規則である「民事調停委員及び家事調停委員規則」(昭和49年最高裁判所規則第5号)に定められています。同規則1条により、家事調停委員は次のいずれかに該当し、人格識見の高い、原則として年齢40歳以上70歳未満の者の中から、最高裁判所が任命します。
- 弁護士となる資格を有する者
- 民事・家事の紛争の解決に有用な専門的知識経験を有する者
- 社会生活の上で豊富な知識経験を有する者
実際には、弁護士、医師、大学教授、公認会計士、不動産鑑定士、建築士などの専門家のほか、地域社会に密着して幅広く活動してきた人など、さまざまな分野から選ばれています。任期は2年です(同規則3条)。当事者が特定の委員を指名することはできず、どの家事調停委員が事件を担当するかは、事件ごとに家庭裁判所が指定します(家事事件手続法248条)。
離婚調停の申立てから調停委員の指定まで
離婚のように人事訴訟を提起できる事件は、原則として、訴訟提起前に家庭裁判所へ調停を申し立てる必要があります(調停前置主義・家事事件手続法257条1項)。申立ての概要は次のとおりです(裁判所「夫婦関係調整調停(離婚)」参照)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申立先 | 相手方の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所 |
| 申立手数料 | 収入印紙1,200円分 |
| そのほかの費用 | 連絡用の郵便切手(金額・組合せは裁判所ごとに異なる) |
| 主な必要書類 | 申立書、夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)、事情説明書など。年金分割の割合も求める場合は「年金分割のための情報通知書」 |
申立てが受理されると、家庭裁判所が担当の裁判官と家事調停委員を指定して調停委員会を組織し、第1回期日を指定して双方を呼び出します。なお、調停申立書をはじめとする裁判所提出書類の作成は司法書士または弁護士の職域であり、行政書士は取り扱うことができません。
調停期日における調停委員の役割と進行
調停期日では、調停委員2人が調停室に在席し、申立人と相手方を交互に調停室へ呼び入れて話を聴くのが一般的な進め方です。待合室も原則として別々に用意され、DV等の事情があれば顔を合わせない配慮を求めることもできます。調停委員の主な役割は次のとおりです。
- 双方の言い分・希望を聴き取り、争点(離婚の可否、親権、養育費、財産分与、年金分割、慰謝料など)を整理する
- 一方の主張のうち相手に伝えるべき内容を、感情的対立を増幅させない形で伝える
- 合意の可能性がある範囲を探り、解決案の調整を行う
- 法的判断や重要な進行判断が必要な場面では、裁判官を交えた調停委員会の評議につなぐ
期日は1回あたり2時間程度で、おおむね1〜2か月に1回のペースで重ねられることが多い運用です。調停委員はあくまで中立の立場であり、どちらかの代理人でも、結論を決める裁判官でもありません。住所・勤務先などを相手方に知られたくない場合は、提出書類が閲覧・謄写される可能性を踏まえ、裁判所所定の非開示希望の申出や秘匿申立てを検討してください。
調停成立・不成立とその後の手続き
双方の合意がまとまると、裁判官と調停委員の立会いのもとで合意内容が確認され、調停調書に記載された時点で調停が成立します。この記載は確定判決と同一の効力を有し(家事事件手続法268条1項)、養育費等の金銭給付について不履行があれば強制執行の債務名義になります。調停離婚では調停成立日が離婚成立日となり、戸籍法77条(63条の準用)により、成立の日から10日以内に、申立人が調停調書の謄本を添えて市区町村へ離婚届(報告的届出)を提出する必要があります。正当な理由なく期間内に届出をしないと、5万円以下の過料に処されることがあります(戸籍法137条)。
合意に至らない場合、調停は不成立として終了しますが、家庭裁判所は、双方の衡平や一切の事情を考慮し、当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で、職権により「調停に代わる審判」をすることができます(家事事件手続法284条)。この審判には、告知を受けた日から2週間以内に異議を申し立てることができ(同法286条)、適法な異議があると審判は効力を失います。不成立・審判失効後に離婚を求めるには、家庭裁判所に離婚訴訟(人事訴訟)を提起することになります。
2026年4月1日施行の改正民法と調停での話合い
2026年4月1日に施行された改正民法により、離婚後の親権について父母双方を親権者とする「共同親権」を選択できるようになり、従来「面会交流」と呼ばれてきた制度は「親子交流」に改められました。また、裁判上の離婚原因を定める民法770条1項は、旧4号(回復の見込みのない強度の精神病)が削除され、旧5号(婚姻を継続し難い重大な事由)が4号に繰り上げられています。調停でも、親権の在り方や親子交流の方法・頻度が話合いの重要なテーマになります。あわせて、離婚時年金分割の請求期限は、令和7年年金制度改正法により、2026年4月1日以後に離婚等をした場合は従来の2年から5年に延長されました(同日前に離婚等をした場合は従前どおり2年です)。改正直後は運用が固まっていない論点もあるため、最新の取扱いの確認をおすすめします。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeは、夫婦間の話合いで離婚条件に合意できる見込みがある場合の離婚協議書の作成、公正証書(公証人手数料は2025年10月1日改正後の額が別途必要)の原案作成と公証役場との調整、そして合意の前提となる事実関係・財産資料の整理を行います。調停を申し立てる前に「協議で決められることは書面化しておきたい」という段階のご相談も可能です。一方で、調停申立書等の裁判所提出書類の作成は司法書士または弁護士の職域、調停・裁判・交渉や慰謝料請求の代理は弁護士の職域、登記は司法書士、年金分割の請求手続は日本年金機構の年金事務所等で行う手続のため、必要に応じて各専門家と連携してご案内します。料金は、離婚協議書ミニマム21,780円(税込)、スタンダード27,500円(税込)、公正証書作成サポート32,780円(税込)で、超特急対応は+5,000円(税込)、代理人による作成対応は+15,000円(税込)です。詳細は離婚協議書作成サポートのご案内をご覧ください。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
離婚調停の調停委員は、民事調停委員及び家事調停委員規則に基づき最高裁判所が任命する非常勤の裁判所職員で、原則40歳以上70歳未満・任期2年です。裁判官1人と家事調停委員2人以上で調停委員会を構成し(家事事件手続法248条1項)、双方から交互に事情を聴いて合意形成を仲介します。調停が成立すれば調停調書の記載は確定判決と同一の効力を持ち(同法268条1項)、成立日から10日以内の離婚届(報告的届出)が必要です。調停委員は中立の調整役であることを理解し、伝えたい事実と資料を整理して臨むことが、納得できる合意への近道です。調停に進む前に、協議で決められることを書面化しておきたい方は離婚協議書作成サポートをご覧ください。ご相談は何度でも無料です。
離婚調停の調停委員に関するよくある質問
Q:調停委員は誰がどうやって選ぶのですか。自分で選べますか。
A:家事調停委員は、専門的知識経験または社会生活上の豊富な知識経験を持つ人格識見の高い原則40歳以上70歳未満の人の中から最高裁判所が任命し、個々の事件の担当者は家庭裁判所が指定します。当事者が特定の調停委員を指名することはできません。
Q:調停委員に不公平な対応をされたと感じた場合はどうすればよいですか。
A:調停委員は中立が原則です。担当の調停委員を当事者の希望で変更してもらうことは原則としてできません。進行に疑問がある場合は、家庭裁判所の書記官に相談したうえで、期日で裁判官に説明を求める方法があります。手続上の主張・交渉の代理は弁護士の職域のため、深刻な場合は弁護士にご相談ください。
Q:調停委員に話した内容は、すべて相手に伝わりますか。
A:調停委員は、合意形成に必要な範囲で相手方に主張を伝えます。口頭で述べた事情については伝達方法への配慮を求めることもできますが、提出書類に記載された情報を秘匿するには、非開示希望の申出や秘匿申立て等の正式な手続を裁判所に申し出る必要があります。詳しくは各家庭裁判所にお問い合わせください。
Q:裁判官はいつ登場するのですか。調停委員だけで決めるのですか。
A:期日の進行は主に家事調停委員2人が担いますが、調停委員会の決議は裁判官を含む過半数で行われ、可否同数のときは裁判官が決します。成立時の合意内容の確認や、調停に代わる審判(家事事件手続法284条)の判断には裁判官が関与します。
Q:調停が成立したら、離婚届は出さなくてよいのですか。
A:届出は必要です。調停離婚は調停成立日に効力が生じますが、戸籍に反映させるため、成立の日から10日以内に調停調書の謄本を添えて離婚届(報告的届出)を提出しなければなりません(戸籍法77条・63条準用)。
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