結論から言えば、離婚に関する公正証書(養育費・財産分与・慰謝料などの取り決め)は、遺言や任意後見契約と違って「代理に親しまない法律行為」ではないため、本人が公証役場へ出頭できない場合でも、適切な委任状を備えた代理人による嘱託(代理嘱託)で作成できます。当事務所は行政書士として、公正証書の原案作成と事実整理、委任状の文面づくりや必要書類の確認をサポートします。一方で、相手方との交渉や慰謝料額の交渉・算定助言、調停・裁判の代理は弁護士、不動産の名義変更登記は司法書士、年金分割の手続は年金事務所の領域です。出頭が難しい事情がある方こそ、誰がどの場面を担うかを整理したうえで、各専門家と連携して進めることが大切です。
目次
代理嘱託(代理人による作成)とは|本人が出頭できなくても公正証書は作れる
公正証書は本来、当事者本人が公証役場に出頭し、公証人の面前で内容を確認して作成します。しかし、遠方への転居、入院・療養、就労や育児で平日に時間が取れないなど、出頭できない事情は珍しくありません。
日本公証人連合会および東京公証人会の案内によれば、遺言や任意後見契約のように「代理に親しまない法律行為」を除き、本人の委任状を持った代理人が出頭して公正証書を作成する手続き(代理嘱託)が認められています。離婚に伴う金銭給付の取り決め(養育費・財産分与・慰謝料の支払い、強制執行認諾文言付き公正証書など)は、この代理嘱託が可能な類型にあたります。ただし、離婚給付契約は身分に関わる契約であるため、代理嘱託を行うには担当公証人の事前承諾が必要で、公証役場や公証人によっては本人の出頭を求める場合もあります。利用の際は、事前に管轄の公証役場へ可否を確認することが不可欠です。
ただし注意点として、夫婦双方の代理を一人の代理人がまとめて行うことはできません。利益が相反するためで、当事者ごとに別々の代理人を立てる、または一方は本人が出頭しもう一方を代理人にするといった形をとります。
代理嘱託でできること・できないこと
代理嘱託で扱えるか否かは「その行為が代理に親しむか」で決まります。離婚分野での整理は次のとおりです。
| 内容 | 代理嘱託の可否 |
|---|---|
| 養育費・財産分与・慰謝料の支払合意(執行認諾付公正証書) | 可能 |
| 年金分割の割合に関する合意書面(公正証書化する場合) | 可能 |
| 遺言公正証書 | 不可(遺言者本人が公証人に意思を伝える必要あり。出頭困難な場合は公証人の出張等で対応) |
| 任意後見契約公正証書 | 原則として本人と公証人の直接面談・意思確認が必要(出張・リモート方式等の可否は公証役場に確認) |
なお、年金分割の按分割合についての合意は、お二人(それぞれ代理人可)がそろって年金事務所へ直接持参して請求する場合には、公証人の認証を受けていない私文書の合意書でも足りるとされています。一方のみが手続きする場合は、公正証書または公証人の認証を受けた合意書が必要です。公正証書に盛り込むか、年金事務所への直接提出にするかは、ご事情に応じて選択できます。また、合意分割の請求期限は原則として離婚等をした日の翌日から5年以内です。ただし、2026年4月1日前に離婚等をした場合は2年以内とされています。
代理嘱託に必要な委任状の作り方
代理嘱託の要は委任状です。白紙委任状は認められず、委任する内容が具体的に特定されている必要があります。実務上は、双方が合意した契約書面(離婚給付契約の案文)を委任内容として委任状に添付し、委任状本紙に本人の実印を押印したうえで、添付した契約書面との間に契印(割印)をして一体のものとして完成させる方法が一般的です。
代理嘱託では、委任状と次の確認資料を準備します。
- 本人(委任者)の印鑑登録証明書(発行から3か月以内のもの)
- 委任状(本人の実印を押印し、添付案文と契印したもの)
- 代理人の本人確認資料(「印鑑登録証明書と実印」「運転免許証と認印」「マイナンバーカードと認印」「パスポート・在留カード等と認印」のいずれか)
委任内容と添付案文の整合がとれていないと、公証役場で受理されず作り直しになります。文面の整え方や契印の打ち方を含めた原案づくりは、当事務所がサポートできる範囲です。
離婚公正証書に共通して必要な書類
代理嘱託かどうかにかかわらず、離婚に伴う公正証書には次のような資料が必要です(事案により増減します)。
- 当事者双方の本人確認資料(印鑑登録証明書+実印、運転免許証+認印など)
- 戸籍謄本(婚姻関係・子の確認のため)
- 不動産がある場合は登記事項証明書、固定資産評価証明書
- 年金分割を定める場合は「年金分割のための情報通知書」
- 養育費・慰謝料・財産分与の金額や支払方法を整理したメモ(原案)
印鑑登録証明書は発行から3か月以内のものに限られる点に注意してください。代理嘱託の場合は、これに本人の委任状が加わります。
公証人手数料の考え方(2025年10月1日改正後)
公正証書の作成手数料は「公証人手数料令」で定められており、令和7年政令第263号による改正後の内容が2025年(令和7年)10月1日から適用されています。手数料は、取り決めの「目的価額」に応じて決まります。
離婚公正証書では、慰謝料・財産分与をまとめた給付と、養育費とを別個の法律行為として、それぞれの目的価額から手数料を算定し、合算します。養育費は支払期間が長期にわたっても5年分の金額が目的価額の上限とされ、年金分割は割合にかかわらず価額を算定できないため「算定不能(目的価額500万円)」として扱われます。
2025年10月1日改正の主なポイントは次のとおりです。
- 目的価額が50万円以下の少額類型について、手数料3,000円の枠が新設されました。
- 正本・謄本の作成手数料が1枚250円から1枚300円に改められました。
- ひとり親家庭や身寄りのない高齢者など、支援が必要な方について、一定の要件のもとで手数料が軽減される制度が設けられました。
具体的な金額は目的価額の区分や書面の枚数によって変わるため、最終的な公証人手数料は管轄の公証役場でご確認ください。当事務所が公証役場との事前打合せをお手伝いすることも可能です。
2026年4月1日に施行された改正民法と離婚の取り決め
離婚後の子の養育に関するルールを見直す改正民法(令和6年法律第33号)は、2026年(令和8年)4月1日に施行されました。公正証書の内容にも関わる主な改正は次のとおりです。
- 離婚後の親権について、父母双方を親権者とする「共同親権」を選べる選択制が導入されました(改正前は一方のみ)。
- これまで「面会交流」と呼ばれていた取り決めは「親子交流」として整理され、対面だけでなく電話やメール等の多様な方法も含む趣旨が明確化されました。
- 裁判上の離婚原因を定める民法770条1項について、旧4号(配偶者が強度の精神病で回復の見込みがないとき)が削除され、旧5号が4号に繰り上がっています。
親権の定め方や親子交流の頻度・方法は、公正証書の文言にそのまま反映されます。施行後に作成・見直しを行う取り決めでは、用語や枠組みが新法に沿うよう原案を整える必要があります。なお、合意が調わず調停・裁判に進む場合の手続代理は弁護士の業務であり、調停申立書など裁判所提出書類の作成は行政書士の業務外です。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、離婚に関する公正証書の原案作成と事実整理を中心に、本人出頭が難しい方の代理嘱託をサポートします。具体的には、当事者間で合意済みの養育費・財産分与・慰謝料・親権・親子交流などの取り決めを、公正証書にふさわしい文面へ整える原案づくり、代理嘱託に用いる委任状の文面作成、必要書類の確認、公証役場との事前打合せの調整などを行います。
料金(いずれも税込)は、離婚協議書の作成がミニマムプラン21,780円・スタンダードプラン27,500円、公正証書作成サポートプラン32,780円です。お急ぎの場合の超特急お急ぎサービスは+5,000円、代理人作成サポートは1名追加につき+15,000円で承ります。
相手方との交渉や慰謝料額の交渉・算定助言は弁護士、不動産の名義変更登記は司法書士、年金分割の手続そのものは年金事務所と、それぞれの専門領域と連携して進めます。詳しくは離婚協議書・公正証書作成サポートのページをご覧ください。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
離婚に関する公正証書は、遺言など代理嘱託ができない類型と異なり、代理人による嘱託が可能です。本人が出頭できない場合でも、委任内容を具体的に特定した委任状(本人の実印による押印・印鑑登録証明書を伴うもの)を備えれば、代理人による作成ができます。手数料は2025年10月1日改正後の公証人手数料令に基づき、養育費は5年分、年金分割は算定不能(500万円)として目的価額を算定します。2026年4月1日に施行された改正民法では、共同親権の選択制や「親子交流」への整理が行われているため、施行後の取り決めは新法に沿った文面が必要です。年金分割の合意分割請求期限も原則5年以内に見直されています。職域を踏まえ、弁護士・司法書士・年金事務所と連携しながら、出頭が難しいご事情にも対応します。
離婚公正証書の代理嘱託に関するよくある質問
Q:本人が一度も公証役場に行かずに離婚公正証書を作れますか。
A:はい。離婚に伴う金銭給付の取り決めは代理に親しむ法律行為のため、委任内容を具体的に記載した委任状と本人の印鑑登録証明書を備えれば、代理人による嘱託(代理嘱託)で作成できます。遺言や任意後見契約とは異なり、本人出頭は必須ではありません。ただし、離婚給付契約は身分に関わる契約のため、代理嘱託には担当公証人の事前承諾が必要で、公証役場によっては本人の出頭を求める場合があります。事前に管轄の公証役場へご確認ください。
Q:夫婦の委任状を一人の代理人にまとめてお願いできますか。
A:できません。夫婦双方の代理を一人が兼ねることは利益相反のため認められていません。当事者ごとに別の代理人を立てるか、一方は本人が出頭し他方を代理人にする形で対応します。
Q:委任状に金額を空欄にして渡しても大丈夫ですか。
A:白紙委任状は認められません。委任する内容(合意した契約案文)を具体的に特定する必要があります。実務では合意案文を委任状に添付し、本人の実印で契印(割印)して一体の書面にします。
Q:公証人手数料はいくらになりますか。
A:取り決めの目的価額に応じて公証人手数料令(2025年10月1日改正後)で算定されます。慰謝料・財産分与と養育費は別個に計算し、養育費は5年分、年金分割は算定不能(500万円)として扱います。正確な額は枚数等で変わるため、管轄の公証役場でご確認ください。
Q:2026年4月の民法改正で公正証書の書き方は変わりますか。
A:共同親権の選択制導入や「面会交流」から「親子交流」への整理などにより、取り決めに用いる枠組みや用語が変わっています。2026年4月1日以後に作成・見直しを行う取り決めでは、新法に沿った文面で原案を整える必要があります。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


