結論から言えば、離婚公正証書を公証役場で作成する当日には夫婦それぞれの「本人確認書類」が必須で、①印鑑登録証明書+実印、②運転免許証+認印、③マイナンバーカード+認印、④在留カード等+認印のいずれか一組を用意します。どれを選ぶかで印鑑証明書の有効期限(発行から3か月以内)や認印の要否が変わるため、事前の確認が肝心です。なお、パスポートは2020年2月4日以降に発給申請されたものには住所欄がなく漢字の氏名も記載されないため、公証役場では単体では本人確認資料と認められないのが原則で、住民票など住所・氏名の分かる書類を併せて用意します。行政書士は離婚協議書・公正証書の原案作成と必要書類の整理を職域として担当します。慰謝料額の交渉や調停・裁判の代理は弁護士、不動産登記は司法書士、年金分割の手続は年金事務所と連携しながら手続全体が滞りなく進むようサポートします。本記事では本人確認書類の選び方と注意点を実務に即して整理します。
目次
なぜ公正証書の作成に本人確認書類が必要なのか
公正証書は公証人法に基づき公証人が作成する公文書で、強い証明力を持ちます。なりすましや本人の意思によらない作成を防ぐため、公証人は嘱託人(作成を依頼する当事者)が確かに本人であることを確認しなければなりません。公証人法第28条は嘱託人の人違いでないことを証明させなければならない旨を定めており、その方法として「印鑑証明書の提出」または「これに準ずべき確実な方法」が用いられます。
離婚公正証書(離婚給付等契約公正証書)は、養育費・財産分与・慰謝料・年金分割などの取り決めを記載する契約書で、特に養育費のように長期の金銭の約束を含みます。だからこそ作成段階で本人性を厳格に確認しておくことが、後日の紛争を防ぐ意味を持ちます。本人確認書類は、この本人確認のために提示・提出するものです。
本人確認書類は4パターンから1組を選ぶ
日本公証人連合会が案内する個人の本人確認資料は、次の①~④のいずれかの組み合わせです。夫婦それぞれが、いずれか一組を当日に持参します。
| パターン | 必要なもの | 印鑑の種類 |
|---|---|---|
| ① | 印鑑登録証明書+実印 | 実印(登録印) |
| ② | 運転免許証+認印 | 認印で可 |
| ③ | マイナンバーカード(個人番号カード)+認印 | 認印で可 |
| ④ | 在留カード・身体障害者手帳・パスポート(※)のいずれか+認印 | 認印で可 |
①の印鑑登録証明書を選ぶ場合は実印(市区町村に登録した印鑑)を、②~④の顔写真付き公的証明書を選ぶ場合は認印(登録不要の三文判で可)を併せて用意します。どの方法でも署名・押印のために印鑑は持参しておくのが安全です。
(※)パスポートは2020年2月4日以降に発給申請されたものから所持人記入欄(住所欄)が廃止され、また漢字の氏名も記載されません。このため公証役場では、パスポート単体では本人確認資料として認められないのが原則で、住民票など住所・氏名(漢字)が分かる書類を必ず併せて提示します。同じ④でも、在留カードは住居地(住所)が記載されるため単体で使用できます。
印鑑証明書を使う場合の有効期限(発行3か月以内)
①の印鑑登録証明書を本人確認資料とする場合、日本公証人連合会の案内では「印鑑登録証明書は発行3か月以内のもの」に限られます。作成予定日から逆算して期限内に収まるよう、取得のタイミングに注意してください。期限切れの証明書では受け付けてもらえず、作成日を改めて取り直す必要が生じます。
印鑑登録証明書は、住民登録のある市区町村の窓口のほか、マイナンバーカードを使えばコンビニ交付でも取得できる自治体が多くあります。財産分与で不動産を移転する場合は登記手続でも印鑑証明書が必要になり、登記用と公正証書用で別の通数・期限が求められることがあるため、どの手続にどの書類が必要かは司法書士とも連携して整理します。
運転免許証・マイナンバーカード・パスポートを使う場合
②運転免許証、③マイナンバーカード、④在留カードは、いずれも官公署発行の顔写真付き証明書で住所も記載されており、提示すれば印鑑登録証明書がなくても本人確認が可能です。印鑑登録をしていない方や平日に役所へ行きにくい方にとって現実的な選択肢になります。パスポートも顔写真付きですが、後述のとおり住所・漢字氏名が分からないため単体では足りず、住民票等の併用が必要です。
- 運転免許証:有効期限内で、現住所が記載(裏面の変更記載を含む)されていることを確認します。
- マイナンバーカード:顔写真付きの個人番号カードが対象。通知カードや「個人番号通知書」は本人確認書類としては使えません。
- パスポート:2020年2月4日以降に発給申請されたものは所持人記入欄(住所欄)が廃止され、漢字の氏名も記載されないため、公証役場では単体では本人確認資料として認められないのが原則です。住民票など住所・氏名(漢字)が分かる書類を必ず併せて用意します。
- 在留カード:外国籍の方に用い、氏名・ローマ字綴りを公正証書の記載と一致させます。
これら②~④では署名のうえ認印を押すのが一般的です。実印や印鑑登録証明書は不要ですが、念のため印鑑を持参すると手続がスムーズです。
代理人が作成に行く場合の追加書類
体調や遠方等の事情で本人が公証役場へ行けない場合、代理人による嘱託も可能です。その場合は次の書類が必要になります。
- 本人から代理人への委任状(委任内容=公正証書の作成嘱託であることが明記されたもの)
- 本人の印鑑登録証明書(委任状には実印を押印)
- 代理人自身の本人確認資料(前記①~④のいずれか一組)
代理人方式では委任状に実印・印鑑登録証明書が必須で、運転免許証だけで済ませることはできません。委任状は契約内容(養育費・財産分与等)の特定を求められることもあり、文言の不備で当日やり直しにならないよう、行政書士が原案作成の段階で委任状の整備までお手伝いします。なお、夫婦双方が同一人を代理人に立てる「双方代理」は利益相反のため認められず、立て方に注意が必要です。
離婚公正証書の必要書類チェックリスト(本人確認書類以外)
離婚公正証書の作成では、本人確認書類のほか、取り決めの内容に応じて次の書類を準備します。
- 戸籍謄本:作成時点で婚姻中なら当事者双方と未成年の子の関係が確認できる最新の戸籍謄本、離婚済みなら当事者双方の離婚後の戸籍謄本(必要に応じて子の戸籍謄本)。
- 不動産関係(財産分与で不動産を扱う場合):登記事項証明書、固定資産評価証明書または固定資産税納税通知書。
- 年金分割を行う場合:「年金分割のための情報通知書」など。請求手続自体は年金事務所(日本年金機構)で行い、合意分割の請求期限は2026年(令和8年)4月1日以後に離婚した場合、原則として離婚成立日の翌日から5年です(同日前の離婚は従前どおり2年)。
誰がいくらをいつまでに支払うか等の取り決めの草案を事前に整理することが原案作成の中心です。入口で書類が揃わないと作成日が後ろ倒しになります。
2025年10月改正後の公証人手数料と強制執行認諾
公正証書の作成には公証人手数料がかかります。公証人手数料令は2025年(令和7年)10月1日に改正され、法律行為に関する証書作成の基本手数料は、目的価額に応じて次のとおりです(改正後)。
| 目的価額 | 手数料(改正後) |
|---|---|
| 50万円以下 | 3,000円 |
| 50万円超~100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円超~200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円超~500万円以下 | 13,000円 |
| 500万円超~1,000万円以下 | 20,000円 |
| 1,000万円超~3,000万円以下 | 26,000円 |
| 3,000万円超~5,000万円以下 | 33,000円 |
| 5,000万円超~1億円以下 | 49,000円 |
離婚公正証書では、日本公証人連合会の公証人手数料表(令和7年10月1日から)によると、財産分与と慰謝料は合算して一つの目的価額を算定し、養育費はこれとは別個に算定したうえで、それぞれの手数料を合計するのが原則です。養育費は原則として支払総額のうち5年分までを目的価額とします。このほか、公正証書の正本・謄本等の交付手数料は1枚につき300円です。正確な金額は記載内容で変わるため、最終的には担当公証役場での算定が基準となります。
あわせて検討したいのが「強制執行認諾文言」です。これを付した公正証書(執行証書)は民事執行法第22条第5号の債務名義となり、養育費等の不払いがあったとき裁判を経ずに給与差押え等の強制執行を申し立てられます。養育費債権は給与の2分の1まで差押え可能とされ(民事執行法第152条第3項)、通常の4分の1より回収可能性が高まります。実際に不払いが生じた場合は、この執行証書をもとに地方裁判所へ強制執行を申し立てることになります(差押命令の申立書作成・代理は弁護士・司法書士の職域です)。この強制執行認諾文言の要否も原案作成の段階で整えます。
2026年4月の民法改正と離婚公正証書の記載
令和8年4月1日に施行された改正民法により、離婚後の子の養育ルールが変わります。主な点は、離婚後も父母双方を親権者とできる「共同親権」の選択制が導入されたこと(民法第819条関係)、「面会交流」から「親子交流」への用語変更、そして離婚原因を定める民法第770条第1項の旧4号(回復の見込みがない強度の精神病)が削除され後続号が繰り上がったことです。
協議離婚に伴う公正証書では、親権・監護・養育費・親子交流の取り決めを記載することが多く、現在は施行後の民法に合わせて、親権の定め方や交流の文言を新ルールに沿って整える必要があります。令和8年4月1日以後に作成する原案では、「面会交流」ではなく「親子交流」を用語として使用します。なお、親権の最終的な定めや調停・審判が絡む場面は弁護士・家庭裁判所の手続となり、裁判所提出書類(調停申立書等)の作成は行政書士の業務範囲外です。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、離婚協議書・離婚公正証書の原案作成と事実関係・必要書類の整理を行います。養育費・財産分与・慰謝料・親子交流などの取り決めの文章化、本人確認書類や戸籍・不動産・年金関係書類の案内、委任状文面の整備、公証役場との段取りの下準備までをサポートします。慰謝料額の交渉や調停・裁判の代理は弁護士、不動産登記は司法書士、年金分割の請求は年金事務所と連携し、越権のない範囲で手続全体が前に進むようお手伝いします。
料金は税込で、ミニマムプラン(離婚協議書の原案作成+PDFで納品)21,780円、スタンダードプラン(データ形式に加え、製本した離婚協議書を郵送)27,500円、公正証書作成サポートプラン(スタンダード内容+公証役場との全手続きサポート)32,780円です。お急ぎの場合の超特急お急ぎサービスは+5,000円(税込)、代理人作成サポートは+15,000円(税込・1名追加につき)で承ります。詳しくは離婚協議書・公正証書作成サポートのご案内をご覧ください。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
離婚公正証書の作成当日には、夫婦それぞれが①印鑑登録証明書+実印、②運転免許証+認印、③マイナンバーカード+認印、④在留カード等+認印のいずれか一組を持参します。パスポートは住所欄が廃止され漢字の氏名も載らないため単体では足りず、住民票など住所・氏名の分かる書類を併せて用意します。印鑑証明書を使う場合は発行から3か月以内のものに限られ、代理人方式では委任状・本人の印鑑登録証明書が別途必要です。本人確認書類のほか戸籍謄本や財産・年金関係の書類も内容に応じて求められ、公証人手数料は2025年10月の改正後の額が適用されます。2026年4月の民法改正にも対応した原案づくりが、後の紛争を防ぐ鍵となります。
離婚公正証書の本人確認書類に関するよくある質問
Q:本人確認書類は原本が必要ですか。コピーでもよいですか。
A:原本が必要です。運転免許証・マイナンバーカード・パスポート・在留カードはいずれも原本を提示します。印鑑登録証明書も原本を提出し、コピーでは受け付けられません。発行から3か月以内である点もあわせてご確認ください。
Q:印鑑登録をしていません。それでも公正証書は作れますか。
A:作成できます。運転免許証・マイナンバーカード(顔写真付き)・在留カードなど顔写真付きの公的証明書のいずれかと認印があれば、印鑑登録証明書・実印がなくても本人確認が可能です。ただしパスポートは住所欄がなく漢字の氏名も載らないため、単体では足りず住民票など住所・氏名の分かる書類の併用が必要です。また代理人に依頼する場合は、本人の印鑑登録証明書と実印を押した委任状が必要になります。
Q:パスポートだけで本人確認できますか。
A:原則としてできません。2020年2月4日以降に発給申請されたパスポートは所持人記入欄(住所欄)が廃止され、漢字の氏名も記載されないため、公証役場では住所・氏名(漢字)が分かる書類(住民票など)を併せて提示する必要があります。パスポート単体では受け付けられないことが多いので、住民票をセットでご用意ください。なお在留カードは住居地(住所)が記載されるため、単体で本人確認資料として使用できます。
Q:夫婦のうち一方だけが公証役場へ行けません。どうすればよいですか。
A:行けない方が代理人を立てる方法があります。委任状(実印押印)、本人の印鑑登録証明書、代理人の本人確認資料を用意します。なお、夫婦双方が同じ人を代理人にする双方代理は認められないため、立て方には注意が必要です。当事務所では委任状の原案作成からお手伝いします。
Q:マイナンバーの「通知カード」でも本人確認書類になりますか。
A:なりません。本人確認に使えるのは顔写真付きの「マイナンバーカード(個人番号カード)」です。顔写真のない通知カードやマイナンバー通知書は対象外ですので、運転免許証など他の顔写真付き証明書をご用意ください。
Q:本人確認書類を当事務所が代わりに取得してもらえますか。
A:戸籍謄本などは、受任した業務に必要な範囲で行政書士の職務上請求により、またはご本人からの委任状に基づき、取得を代行できる場合があります。一方、運転免許証・マイナンバーカード・パスポートはご本人しか取得・更新できません。どの書類をどう揃えるかはご相談時に整理してご案内します。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


