オープンマリッジ契約書は、婚姻を続けながら配偶者以外の人との関係について話し合い、夫婦が合意した範囲や見直し方を記録する書面です。どこまで合意したかを確認する資料にはなりますが、書面に署名しても、将来の離婚や慰謝料請求を一律に防いだり、交際相手を拘束したりすることはできません。
作成前に、双方が自由に断れるか、どこまでを合意とするか、どちらかが休止したいときにどう伝えるかを確認しましょう。配偶者との取り決めと、実際の関係に関わる一人ひとりの同意は別です。
夫婦で合意した取り決めを書面にしたい方へ
合意できている項目と未決定の項目、希望する書面の形式をお知らせください。初回の相談で相手の氏名や診療情報など、詳しい個人情報をお送りいただく必要はありません。
目次
オープンマリッジ契約書とは
オープンマリッジとは、一般に、夫婦双方が婚姻を続けながら、一定の範囲で配偶者以外との恋愛や性的な関係を認め合う関係を指します。法令で定められた婚姻の種類ではありません。婚姻に限らない「オープンリレーションシップ」や、複数の人との合意に基づく親密な関係を指す「ポリアモリー」と重なることはありますが、名称だけで合意の内容は決まりません。
夫婦間の合意も、法令が許す範囲で内容を決められます(民法521条)。書面にすると、作成時点で何を確認したか、どの版に同意したかを後から確かめやすくなります。家計や費用の分担、話合いの手順などと、本人の意思に反して履行を求められない約束は、性質を分けて考えてください。公の秩序や善良の風俗に反する法律行為は無効です(民法90条)。婚姻中の協力・扶助や婚姻費用に関する規定も、関係の取り決めとは別に適用されます(民法752条・760条)。
「夫婦間契約書」は婚姻中の個別の取り決めを記録する書面の総称として使われます。不貞誓約書は、たとえば発覚した行為の再発を防ぐ約束を記録する書面です。婚前契約書のすべてが、婚姻届出前の財産関係を定める民法755条の夫婦財産契約に当たるわけではありません。離婚に伴う支払や子の監護などを決めるときは、離婚協議書として別に整理します。
2026年4月1日施行の改正で、旧民法754条は削除
婚姻中の夫婦間の契約について、一方から取り消せるとしていた旧民法754条は、2026年4月1日に削除されました。廃止されたのは婚姻中の夫婦間契約に特有の取消権です。公序良俗違反による無効や、錯誤・詐欺・強迫による取消し、合意の見直し、個々の行為への同意の撤回とは別です。改正法附則第2条には、改正前の法律により生じた効力を妨げないという定めがあるため、施行前にすでに取消しをした書面などは、その経緯を確認します。根拠は現行民法と令和6年法律第33号をご確認ください。
離婚・不貞慰謝料への影響と、第三者に対する限界
| 問題 | 書面だけで決まらないこと |
|---|---|
| 裁判上の離婚 | 合意書は当時の意思や範囲を示す資料の一つ。事前に離婚の申立てを封じたり、裁判所の判断を決めたりすることはできません。 |
| 配偶者への慰謝料 | 何に、いつ、自由意思で同意したか、その範囲を超えた行為や撤回後の行為か、ほかに権利侵害があったかなどが問題になります。 |
| 第三者への慰謝料 | 夫婦の合意だけで第三者に義務を課したり、その人の責任がなくなると確定したりはできません。請求の根拠、行為時の事情、故意・過失などを分けて判断します。 |
離婚事由と、合意があったかどうかは個別に判断
民法770条1項1号は、配偶者の不貞な行為を裁判上の離婚事由の一つとしています。最高裁昭和48年11月15日判決は、配偶者のある人が自らの自由意思で配偶者以外の人と性的関係を結ぶ場合について示した判決です。夫婦が婚姻外の関係を合意していた事案の判断ではありません。親密なやり取りがあったというだけで、当然に同号の不貞に当たるわけでもありません。
実際に争われる場合は、署名の有無だけでなく、真意、合意した範囲、変更・撤回の時期、行為の内容やその後の経緯を確認します。事情によっては、同項4号の「婚姻を継続し難い重大な事由」も問題になります。同条1項1〜3号の事由があっても、裁判所は一切の事情から婚姻の継続を相当と認めれば請求を棄却できます(同条2項)。
第三者への不貞慰謝料と、離婚そのものによる慰謝料は別
第三者に不貞行為自体による慰謝料を請求する場面では、婚姻共同生活の平和に関する利益の侵害、故意・過失、損害などが問題になります(民法709条・710条)。最高裁平成8年3月26日判決は、関係を持った時点で婚姻が既に破綻していたときは、特段の事情がなければ第三者は責任を負わないとしました。夫婦が関係の範囲を取り決めたことは、婚姻の破綻と同じではありません。
最高裁令和8年6月5日判決は、その事案では、離婚済みと信じる相当な理由がなかったことだけで直ちに第三者の過失とはいえず、婚姻が既に破綻していると信じる相当な理由の有無も検討する必要があるとして差し戻しました。合意書があれば第三者が免責されるとした判決ではありません。
これに対し、最高裁平成31年2月19日判決は、第三者に離婚そのものに伴う慰謝料を求める場合、離婚させる意図で婚姻関係に不当な干渉をするなどし、夫婦が離婚を余儀なくされたと評価できる特段の事情が必要としました。夫婦の一方が相手への請求をしないと約束すること、すでに発生した債権について権利者が債務者に免除の意思を示すこと(民法519条)、第三者に対する請求がそもそも成立するかどうかは別の問題です。
夫婦で合意して書面に残す項目
| 項目 | 話し合って確認すること |
|---|---|
| 目的・適用範囲 | 当事者、作成日、取り決めの目的、認める範囲と対象外、宿泊や家への招待、連絡が必要な場面。合意できない点は保留と明記します。 |
| 休止・終了 | どちらかが不安や中止の希望を伝える方法、休止後に何を再協議するか、変更を記録する方法。再開は改めて双方の意思を確認します。 |
| 健康・妊娠時の連絡 | 必要時に医療機関へ相談する方法、避妊・感染予防について話し合うこと、費用や連絡の扱い。診療情報の開示や妊娠に関する判断を強制しません。 |
| 子の生活と費用 | 子の生活や予定に影響を及ぼさない配慮、日常の養育の分担、生活費の確認。子や第三者の権利を夫婦だけで処分しません。 |
| プライバシー | 写真、メッセージ、健康情報を取得・共有する範囲、保管と削除。医療、安全確保、専門家への相談、法令上必要な説明を妨げないようにします。 |
| 約束と異なる行為 | 事情を確認する方法、休止、見直し、専門家への相談。金銭を定める場合は対象となる事実、金額、支払条件の妥当性を個別に確認します。過大な違約金など、公序良俗に反する定めの効力は認められません。 |
一方が「やめたい」と伝えたら
通知方法は、たとえば「どちらかが休止の意思を伝えたら新しい関係の開始を控え、再開は双方の合意を改めて確認する」と整理できます。通知の方法や、話合いの日程を決めることと、その間の行為への同意を義務づけることは別です。同意を撤回するために相手の許可を必要としたり、撤回したこと自体に違約金を課したりする取り決めは避けてください。夫婦の書面は、交際相手本人の意思や、個々の性的行為に対するその時点での同意の代わりにはなりません。
健康情報・子ども・第三者を守る
性感染症の検査時期や項目は、感染症の種類、状況、検査方法によって異なります。契約書に一律の頻度を定める必要はありません。検査の相談先、必要な連絡、共有する情報を本人が選べる方法を話し合いましょう。検査結果の詳細を契約書に添付することは避け、医学的な判断は医療機関や保健所に相談してください。厚生労働省の性感染症検査・相談マップで相談先を確認できます。
妊娠した場合の連絡や支援の分担は話し合えますが、妊娠の継続・中断を強制したり、法律上の親子関係や子の扶養を夫婦間の書面だけで変更したりすることはできません。親には子の人格を尊重し、養育・扶養する責務があります(民法817条の12等)。子に秘密を守らせたり、必要な相談を妨げたりしないよう配慮してください。第三者の個人情報を相手の了解なく共有したり、第三者に守秘義務を一方的に課したりすることも避けます。
署名を迫られている、同意を断ると不利益を受ける、相手との間ですでに請求や紛争があるといった場合は、文案作成より先に、自分の立場で弁護士等に相談してください。
私文書と公正証書:違約金はすぐに差し押さえられる?
夫婦が合意の内容を確認することが目的なら、双方が内容を確認して署名し、日付と版が分かる状態で保管する方法があります。法令に特別の定めがない契約では、成立に書面や実印が常に必要なわけではありません(民法522条)。公正証書を代理人で作る場合の委任状や本人確認書類とは別に考えます。
公正証書は公証人が作成する公文書で、作成の経緯を証明する助けになります。公正証書にしても、記載された事実がすべて正しいと確定したり、無効な条項が有効になったりはしません。公証人は法令に違反する事項や無効な行為などについて作成できません(公証人法26条)。希望する条項を公正証書にできるかは、内容を示して公証人に事前に確認します。
一定額の金銭を支払う義務について、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述を記載・記録した公正証書は、要件を満たせば執行の根拠になります(民事執行法22条5号)。実際の差押えには執行文の付与、送達、裁判所への申立てなどが必要です。将来の約束違反を支払いの条件とする場合、違反があったことを文書等で証明できず、執行文が得られない場合があります。行動の約束や関係の継続を、認諾条項だけで強制することはできません。法務省の公証制度案内、日本公証人連合会の条件成就に関する案内、裁判所の債権執行手続の案内もご確認ください。
公証人手数料はTreeの報酬と別
法律行為についての基本手数料の例は、目的の価額が50万円以下なら3,000円、50万円を超え100万円以下なら5,000円、100万円を超え200万円以下なら7,000円、200万円を超え500万円以下なら13,000円です。算定できない法律行為は、原則として目的価額を500万円とみなします。これは法律行為1件の基本額の話です。違約金がないことだけで総額は決まりません。複数の法律行為の扱い、枚数・交付等の加算を含め、依頼する公証役場に確認してください。日本公証人連合会の基本手数料表を参照できます。
行政書士法人Treeの作成費用と依頼の流れ
双方が合意した取り決めをもとに、行政書士が文案を作成します。全国からオンラインでご相談いただけます。相談料は無料です。以下は公開している夫婦間契約書の基本報酬(税込)です。
| プラン | 税込報酬 | 内容 |
|---|---|---|
| ミニマム | 21,780円 | 原案作成・PDF納品。無料修正は2週間。 |
| スタンダード | 27,500円 | 原案作成・PDFに加え、製本して郵送。無料修正は1か月。 |
| 公正証書代理人サポート | 62,780円 | 原案・公証役場との調整と代理人2名分。無料修正は1か月。公証人手数料等の実費は別途。 |
| 超特急(追加) | 5,000円 | 入金確認の翌営業日までに初回原案をお渡し。最終納品や公正証書の完成時期とは別です。 |
無料修正期間は入金確認の翌日からです。プランの条件や期間後の修正は、夫婦間契約書の専用ページと総合料金表をご確認ください。公正証書の作成可否と時期は内容や公証人の確認によります。
- 希望する書面の目的、双方が合意済みの項目、検討中の項目を整理します。
- 形式と料金をご案内し、合意している内容をもとに原案を作成します。
- 双方が文案を確認し、修正を経て納品します。公正証書をご希望の場合は、対象となる事項と必要書類を確認し、公証役場との連絡を支援します。
行政書士が支援するのは、合意済みの事項を書面にすることと、対応可能な公証手続きです。相手方との交渉、慰謝料の請求をめぐる紛争、調停・訴訟・強制執行の代理は弁護士にご相談ください。
合意した内容をどの書面にするか相談できます
「話し合った内容を残したい」「費用の分担や休止の条件を整理したい」など、目的をお知らせください。私文書と公正証書の違い、費用、依頼できる範囲をご案内します。
よくある質問
Q. オープンマリッジ契約書は法的に有効ですか?
法令の範囲内で成立した合意は、内容に応じて効力を持ち得ます。公序良俗に反する内容は無効です。合意書に署名しても、個々の行為への同意を義務づけたり、第三者や子の権利を処分したりはできません。
Q. 合意書を作れば不貞を理由とする離婚や慰謝料請求は防げますか?
一律には防げません。合意の範囲、自由意思、撤回の時期、実際の行為などが判断材料になります。配偶者への請求、第三者への不貞慰謝料、離婚そのものによる慰謝料は、根拠や条件が異なります。
Q. 一方が「やめたい」と言ったらどうしますか?
中止・休止の意思を伝える方法と、その後の話合いをあらかじめ定めておくと確認しやすくなります。個々の行為への同意はその都度必要です。署名済みでも、同意の撤回を妨げる条件を設けないようにしてください。
Q. 旧民法754条の削除で、どんな契約も取り消せなくなりましたか?
削除されたのは婚姻中の夫婦間契約に特有の取消権です。公序良俗に反する内容の無効、錯誤・詐欺・強迫による取消し、個々の同意の撤回とは別です。施行前に生じた効力が問題になる場合は、締結や取消しの経緯を確認してください。
Q. 公正証書にすれば違約金をすぐに回収できますか?
違約金を記載するだけでは回収できません。一定額の金銭債務、債務者の執行認諾、執行文や送達などの要件が必要です。違反が支払いの条件なら、その事実を文書等で証明できるかが問題になります。
Q. 夫婦間の合意書を行政書士に依頼する費用はいくらですか?
Treeの税込基本報酬は、PDF納品21,780円、製本・郵送付き27,500円、公正証書代理人サポート62,780円です。公正証書にする場合、公証人手数料等は別途です。すでに請求や交渉が必要な場合は、書面作成とは別に弁護士へご相談ください。
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※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。