結論から言えば、2027年4月1日に育成就労制度が施行されても、現在在留中の技能実習生が自動的に育成就労へ切り替わるわけではありません。経過措置により技能実習を継続できる一方、育成就労へ切り替える場合には「育成就労計画の認定」と「在留資格変更許可申請」という二段階の手続が必要になります。本記事では、外国人の在留資格手続を扱う行政書士の立場から、技能実習生から育成就労への移行をめぐる経過措置、在留資格の切替手続、必要書類、実務フローを出入国在留管理庁の公表資料に基づき整理します。なお、移行に伴う雇用契約の見直しや労務管理は社会保険労務士、税務は税理士の職域であり、当事務所では必要に応じて各士業と連携して対応しています。
目次
育成就労制度の施行日と根拠法令
育成就労制度は、2024年6月14日に成立し同月21日に公布された「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第60号)により創設された制度です。施行日は2025年9月の閣議決定を経て2027年(令和9年)4月1日と定められ、関係政省令も公布されています。
この改正により技能実習法は「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」(育成就労法)に改められ、制度目的は技能移転による国際貢献から、人手不足分野における人材の育成・確保へと転換されます。在留資格「育成就労」が新設され、外国人技能実習機構は外国人育成就労機構に改組されて育成就労計画の認定などを担います。従来の監理団体に相当する組織は、主務大臣の許可を受けた監理支援機関に再編されます。
経過措置──いまの技能実習生は施行後どうなるか
出入国在留管理庁の育成就労制度Q&Aによれば、2027年4月1日時点で既に来日している技能実習生は、引き続き認定を受けた技能実習計画に基づいて技能実習を続けることができます。施行と同時に技能実習が打ち切られるわけではありません。経過措置の主なポイントは次のとおりです。
| 対象 | 施行後の取扱い |
|---|---|
| 施行日時点で在留中の技能実習生 | 認定計画に基づき技能実習を継続可能 |
| 施行日前に技能実習計画の認定と在留資格認定証明書の交付を受けた者 | 2027年6月30日までに入国すれば経過措置により技能実習が可能 |
| 技能実習1号で在留中の者 | 施行後も技能実習2号への移行が可能 |
| 技能実習2号で在留中の者 | 2027年4月1日時点で2号の活動を1年以上行っていれば3号へ移行可能 |
注意すべきは技能実習3号への移行制限です。施行日時点で2号の活動期間が1年に満たない実習生は3号に進めないため、2号開始時期によっては、3号ではなく特定技能1号や育成就労への切替を前提としたキャリア設計が必要になります。また、施行日以降は、新たに技能実習生を受け入れるための技能実習計画の認定申請はできなくなります。ただし、経過措置の対象となる在留中の技能実習生が技能実習2号・3号へ移行するための技能実習計画の認定申請は、施行後も可能です。
技能実習から育成就労へ切り替える場合の期間通算ルール
育成就労は原則3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育成する制度です。ここで重要なのが期間の通算です。出入国在留管理庁のQ&Aでは、過去に技能実習を行った期間は育成就労を行った期間とみなされると明示されています。つまり技能実習として在留した期間の分だけ、育成就労で就労できる残期間は短くなります。さらに、2年以上の技能実習を行った外国人が再度来日し、技能実習と異なる分野で育成就労制度により働くことは基本的にできないとされています。
また、育成就労で受け入れられる分野(育成就労産業分野)は、特定技能の特定産業分野のうち就労を通じた人材育成になじむ分野に限定されます。技能実習の職種・作業と育成就労の分野・業務区分の対応関係は、2026年1月23日に閣議決定された分野別運用方針と、外国人技能実習機構が公表する対応表で既に確認できます。なお、クリーニング職種(一般家庭用クリーニング作業)、空港グランドハンドリング職種、ボイラーメンテナンス職種は育成就労産業分野の対象外とされているため、自社の業務が対象分野に含まれるかを必ず確認してください。新規に入国する外国人には就労開始前に日本語能力A1相当以上(日本語能力試験N5等)の試験合格または相当する講習の受講が求められますが、技能実習からの移行者への適用関係は運用要領等の最新情報の確認が必要です。
在留資格切替の実務フロー
在留中の技能実習生を育成就労に切り替える場合の手続は、大きく二段階です。
- 第一段階:育成就労計画の認定──受入れ機関(育成就労実施者)が外国人ごとに育成就労計画を作成し、外国人育成就労機構の認定を受けます。認定申請は施行日前から可能です。原則として育成就労開始予定日の7か月前から5か月前までに申請し、具体的な受付期間は機構の最新案内を確認してください。
- 第二段階:在留資格変更許可申請──現に有している在留期間内に育成就労計画の認定を受けたうえで、認定通知書等を添付して住居地を管轄する地方出入国在留管理局に在留資格変更許可申請を行います。
実務上の最大の注意点は、在留期限から逆算したスケジュール管理です。機構の計画認定には審査期間を要するため、技能実習の在留期限が近い実習生について切替を検討する場合、認定申請から在留資格変更許可までを期限内に収められるよう、早期の準備が欠かせません。在留資格変更許可の手数料は2025年4月1日の改定により6,000円(オンライン申請の場合は5,500円)で、窓口申請では収入印紙で納付します。ただし、2026年5月に成立した改正入管法を受け、出入国在留管理庁は2026年7月3日に手数料を大幅に引き上げる政令改正案を公表しました。案では在留資格変更が在留期間に応じた段階制(窓口1万円〜7万5,000円)となり、2026年10月1日以降に受け付けられる申請から適用される方針です。詳細は申請時点の額を必ずご確認ください。
在留資格変更に必要な書類
技能実習から育成就労への在留資格変更で必要となる書類は、正式な申請様式・提出資料一覧の公表後に確認する必要があります。現時点で想定される基本書類は次のとおりです。
- 在留資格変更許可申請書
- 証明写真(規格を満たすもの)
- パスポートおよび在留カード(窓口で提示)
- 育成就労計画の認定通知書等
- 手数料納付書(許可時に収入印紙6,000円を納付、オンラインは5,500円)
育成就労計画の認定申請側では、雇用条件を明らかにする書類や受入れ機関の体制に関する書類などが必要になる見込みですが、育成就労制度運用要領は2026年2月20日に公表され(同年4月に一部改正)、申請様式や添付書類の詳細も外国人育成就労機構から公表されています。確定前の情報で書類を準備すると差し戻しの原因になるため、申請直前に必ず機構の公式ページで最新の案内を確認してください。
特定技能1号への移行という選択肢との比較
技能実習生の進路は育成就労への切替だけではありません。技能実習2号を良好に修了し、従事しようとする業務と2号の職種・作業に関連性が認められる場合は、施行後も当分の間は特定技能1号への移行が可能です(試験免除の取扱いは経過的なものとされており、恒久的な制度ではありません)。既に2号を修了した、または修了見込みの実習生にとっては、原則3年の育成就労期間が技能実習期間の通算で短くなることを踏まえると、特定技能1号への移行が現実的な選択肢となる場面が多いと考えられます。
一方、技能実習1号の段階にある実習生については、経過措置による2号への移行継続と育成就労への切替のどちらが適切か、在留期限・分野の対応関係・日本語要件を踏まえた個別判断が必要です。なお、育成就労から特定技能1号へ移行する際は、技能に係る試験(技能検定3級等または特定技能1号評価試験)と日本語能力A2相当以上の試験(日本語能力試験N4等)の双方への合格が要件とされ、試験が免除される技能実習2号良好修了ルートとは要件が大きく異なります。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeでは、技能実習生の特定技能1号への在留資格変更許可申請をはじめ、就労系在留資格の申請取次・書類作成を行っています。育成就労制度についても、施行日前申請の開始(2026年9月1日)を見据え、経過措置の適用判断や移行スケジュールの設計、必要書類の整備を含めた移行準備のご相談に対応しています。登録支援機関としての特定技能外国人支援も提供しており、義務的支援の内容・費用および在留資格申請の報酬は、受入企業様の状況や案件内容に応じて個別にお見積りします。なお、外国人材の人材紹介はグループの株式会社TreeGlobalPartners(許可番号13-ユ-317879)が担当し、当法人は在留資格手続と支援業務を担う体制です。詳細は就労ビザサポートのご案内をご覧ください。ご相談は何度でも無料です。
【監理団体・受入れ機関の方へ】行政書士法人Tree|監理支援機関の許可申請代行・外部監査人就任
行政書士法人Treeでは、育成就労制度の監理支援機関 許可申請の書類作成・提出代行から、許可要件として求められる外部監査人への就任・月次外部監査まで、行政書士法人がワンストップでお引き受けしています。外部監査人は監理支援機関から独立した中立の立場で監査を行う必要があるため、外部の専門家に委任する方法が実務的です。施行日前申請の受付は2026年4月15日から2027年3月31日までですが、申請は監理支援事業を開始する6か月以上前までに行う必要があるため、施行日(2027年4月1日)から監理支援事業を行うには2026年9月30日までの申請が求められています。
料金プラン:監理支援機関 許可申請代行 198,000円(税抜/税込217,800円)/外部監査人就任+月次外部監査 29,800円/月(税抜/税込32,780円・監理支援事業所1か所、受入れ機関20社まで)/育成就労計画 認定申請 29,800円/人(税抜/税込32,780円・2〜9人目19,800円、10人目以降14,800円)。月次外部監査を12ヶ月同時にご契約の場合、許可申請代行を148,000円(税抜/税込162,800円)に割引し、初年度セットは505,600円(税抜/税込556,160円)です。不許可時の再申請は無料です。全国オンライン完結です。
育成就労制度への対応でお困りの企業様へ。行政書士法人Treeでは、育成就労計画の認定申請や監理支援機関の許可申請、在留資格の申請取次までをサポートします。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
育成就労制度は2027年4月1日に施行されますが、在留中の技能実習生は経過措置により技能実習を継続でき、1号から2号への移行も可能です。ただし3号への移行は施行日時点で2号活動1年以上という条件があり、育成就労へ切り替える場合は技能実習期間が育成就労期間に通算されます。切替の実務は、外国人育成就労機構による育成就労計画の認定と、在留期間内の在留資格変更許可申請の二段階で進みます。制度の細部は政省令・運用要領で今後も具体化されるため、確定情報を追いながら、在留期限から逆算した早めの準備をおすすめします。
技能実習から育成就労への移行に関するよくある質問
Q:いま技能実習中ですが、2027年4月以降も技能実習を続けられますか?
A:続けられます。2027年4月1日時点で在留中の技能実習生は、認定を受けた技能実習計画に基づき技能実習を継続できます。2027年3月31日までに計画認定申請がなされ、2027年6月30日までに実習を開始する場合も原則継続可能です。
Q:技能実習2号から3号への移行はできますか?
A:2027年4月1日時点で技能実習2号の活動を1年以上行っていることが条件です。これを満たさない場合は3号に進めないため、特定技能1号への移行や育成就労への切替を検討することになります。
Q:技能実習生が育成就労に切り替える手続の流れは?
A:受入れ機関が育成就労計画を作成して外国人育成就労機構の認定を受け、その認定通知書等を添付して、現に有する在留期間内に地方出入国在留管理局へ在留資格変更許可申請を行います。施行日前申請は、原則として育成就労開始予定日の7か月前から5か月前までに行い、具体的な受付期間は機構の最新案内を確認します。
Q:技能実習をした期間は育成就労の期間に影響しますか?
A:影響します。過去に技能実習を行った期間は育成就労を行った期間とみなされ、原則3年の育成就労可能期間から差し引かれます。また2年以上技能実習を行った方が再来日して異なる分野で育成就労に就くことは基本的にできません。
Q:在留資格変更の費用はいくらかかりますか?
A:在留資格変更許可の手数料は6,000円(オンライン申請は5,500円)です(2025年4月1日改定)。行政書士に依頼する場合の報酬は事務所・案件により異なり、当事務所では内容を伺ったうえで個別にお見積りします。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


